●情報のみならずリアルのために
新潟県の北部にある新発田市、阿賀野市、胎内市、聖籠町を主な所管区域として、市や町単独では成し難かったり括って対応した方が効果が上がる事案、例えば道路河川などのインフラ整備や農業の産地育成支援、保健福祉などのセーフティネット機能といったものが、広域行政を担う県の出先機関である新発田地域振興局の主だった仕事。
社会と経済の右肩上がりの時代には、官はそうした下支えとなる部分に注力すれば、民間の主導力により地域の振興は推進していたのだが、人口減少等に伴う停滞の下で、役所において地域の振興のためにこれまでにない汗のかき方が必要とされている。一方で、経済低迷は税収の伸び悩みをもたらしており、官には活性化のために投入できる財源が厳しさを増しているというジレンマの中においてである。
とりわけ、我が新潟県は、バブル景気崩壊後に経済再興を狙って積極財政を進めて来たのだが、目論見どおりの成長に繋がらず、他県と比較して借金が嵩んでいるという自ら招いた苦境の中に在る。よそ様以上にリスクの高い投資ができない状況なのだ。
そんな中で、私の前任者達は、カネのかからない振興策として、情報発信に注力してきた。地域の魅力を内外にアピールして、住民にこの地の良さを再認識してもらって住み続ける人ができるだけ減らないように、そして、外部から関心を持って関与してくれる人が増えるようにして、地域の社会経済の維持増進に繋げようというものだ。
ところが、全国的に同じ状況になっている中で魅力情報の発信は過当競争となり、膨大な情報の中で発信内容は埋没しがちなのが実情。十人十色の志向を持つ閲覧者から能動的に調べてもらわなければ認知されないネット配信情報などへの掲載は、役所としては「魅力発信やってます」のアリバイ作りに実質的に陥っているように思える。
砂漠に宝石を投げる姿を見せて探しに来てくださいというような情報発信には虚しさも感じるが、割り切って辞めてしまうわけにもいかない。大きな器に幾本ものパイプで水を満たしているところから撤退すれば止めたパイプに他者の水が流れ込み、浸食されてしまうだろう。皆で作り上げた均衡を崩したものは押し流されてしまう緊張の仕組みなのだ。
そうした、飽和の中から我が新発田地域の情報を検索して拾い上げる動作につながるう動機付けこそ、今求められていることなのであろう。そして、見出した情報から紐解いた地域が、自分の生活を関わらせるに裏切らないことを確信させるものであることが伝わることが肝要なのだろう。
それは、外からこの地に入ってきて、良い事も悪い事も様々に経験して、それでも居続ける関わり続けるヒトのリアルが最も響くことではないか。
地域振興という問題意識から、こんなあたりまえのような考えに結局は至るのであるが、そう考えた時に、正にそんなヒトが現実に居るではないかと改めて思いが及ぶ。
少し閉鎖的な雰囲気も残る地方都市において、愛と金を掛けて育てた子息を東京にせっせと送り出すことを続けて来た挙句という住民の自業自得による過疎化や社会経済の低迷であるにも関わらず、ヨソからわざわざやってきて何とか地域を活性化しようという、敢えて火中の栗を拾うような人達。そう、「地域おこし協力隊員」だ。
現在、新潟県全体の250人余り、管内では新発田市で11人、阿賀野市2人、胎内市3人がいるのだが、各々の情報を見てみると中々多様な取組みをされ奮闘されておられる。
3市の協力隊員は各市としての固有のミッションに基づき活動されていて、それそのものを各々から掘り下げて聴いて地域振興のヒントを探りたいとも思うのだが、それだけでは市域で括られた話となり、県はただの”しゃしゃり出”か”冷やかし”になってしまう。県として寄与できる隊員達との関わり方を考えたいのだ。
この新発田地域ならではの風土や環境を踏まえて、管内で隣り合う3市の協力隊員達に共通して底上げしたい知見やスキルであるとか、協力隊員相互や市域を越えた異分野との連携により取組効果が向上することがあれば、県出先機関としての立ち位置で課題を抽出して役立てる事を見出せるかも知れない。隣の自治体に居ながら日頃接点が薄い協力隊員が会して意見交換することで知恵や工夫の芽が生まれるかもしれない。
地域を”振るわせて” 化学反応や相乗効果につなげようという趣旨で始めた「地域ふるわせ座談会」の第6回は「地域おこし協力隊編」で開催することにしたのだ。
(「新発田地域ふるわせ座談会21・「情報のみならずリアルのために」」終わります。「新発田地域ふるわせ座談会22・「地域おこし協力隊に学ぶ」」に続きます。)
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