新潟久紀ブログ版retrospective

移住検討者に適う職を考える(都市郊外・農村編)

 コロナ禍という災厄が皮肉にも、地方からの若者流出と東京一極集中の流れの潮目を変えようとしている。
 今こそ、数年来にわたる地方創生の取り組みが、住処として選ばれるための本物であるのかどうか、東京から逆流する若者たちにより測られるのかもしれない。
 移住定住促進に特効薬は無いとは言いがちだが、突き詰めると、やりがいや生活を形成する各種要素のバランスを踏まえて「自分に適うしごと」があることが重要。
 きらびやかで選択肢がなんでもある東京に暮らす若者たちからも求めてもらえるような「地方でも働いていける職」というものはどんなものだろう。特に、高所得が得られる大企業等は無いが都会人に魅力の自然環境が豊かで若者の移住が待望される都市部郊外や農村部を想定した時に、何か共通的・汎用的な考え方がないだろうか…。
 かつて人口減少問題を政策横断的に検討するための事務局を担当していた頃に、後に新潟で起業してくれた、とても優秀で好感度の高い青年とやり取りした際のメモが発掘されたので、以下のとおり"蔵出し"掲載します。
*******************************************************************

 都内で就業中で地方移住を検討している人について言えば、「会社勤めを希望している場合」が最も多く、新潟でも求人倍率が高い昨今、企業ブランド等に拘らなければ、業種職種は東京での現職と同種又は関連性のある求人はあります。
 問題は基本的に給与水準が低くなること。新潟では一般的に生活コストも下がるのですが、車所有や光熱水費などの負担増も目立つため、給与額面の減少が移住の大きな支障となります。要は、それを超える「仕事でのやりがい」か生活価値や余暇活動など「仕事以外の誘因」を優先して仕事に妥協できるかどうかとなります。
 人は「自己実現」と「社会貢献」の欲求が相まみえて動くように見えますが、「自分好みのナリワイを持ちたい」としても個人の都合に適う仕事を地域は用意してくれないし、「地域に貢献したい」という場合も地元住民が採算が見出せないためビジネスが生まれていないわけなので、いずれにしても移住者自ら開拓(起業)するしかありません。
 現実的には「地域おこし協力隊員」という年300万円弱程度任期3年以内の役所の臨時職員的な制度を利用して仕事を開拓し、任期後に生業化して地元に定着するというケースが多いようです。既に成功事例が多いのでご存知かもしれませんが、地域特産物を活かした農産加工の製造販売や、住民交流のカフェや趣味を活かした工房等を開店したり等々。これまでは、クラフト商品系の起業が多かったと思いますが、高齢化が進み買物難民などが深刻化していく中で、地方の都市部であれば高齢者は意外に貯蓄もあるので、ITと物流を連携させたソフトデータ系の起業の市場も期待できるかもしれません。
 いまや経済規模右肩"下がり"基調の時代ですから、革新的な収益機会創出というより、当該地域で外に流出している消費の域内化により、子を望む若手夫婦も呼び込める程度の収益を生むこと(所得創出)が基本となりそうです。島根県の藤山浩教授は「世帯当たり年間3万円のパン購入費を仮に町内会規模の300世帯で域内化すれば1千万円程度の需要になる」と例示。移住者がいかに集落の合意形成を促して結束させられるかがカギのようです。個別単位のコストを共同化して効率化による費用軽減分を地域振興ビジネスの財源に当てるという商店街振興などで有名な木下斉さんの常套手法も似たようなものの考え方ですね。
 いずれにしても、県域や全国、世界など生活圏域外を相手にして収益を取れるほどのスペシャルティを持たない起業希望者は、移住先の住民や利害関係者をいかに合意形成に持ち込めるかという手間があってこそ、求める職・仕事の実現につながるようです。
 まとめてみると、移住希望者が「求める仕事」は人それぞれ千差万別なれど、食べていける所得を得るためには、地域において住民からお金を出して(消費して)もらえてナリワイとして成り立つような、つまり「求められるような仕事」でなければならないという、主観と客観のメビウスなのですね。
 以上、新潟暮らし推進課長としてUIターン促進に取り組んだ経験から、反射的に思うところを徒然なるままに綴ってみました。

(「移住検討者に適う職を考える(都市郊外・農村編)」終わり。)
☆ツイッターで平日ほぼ毎日の昼休みにつぶやき続けてます。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「蔵出し」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事