新潟久紀ブログ版retrospective

柏崎こども時代40「校外学習は宿泊キャンプ」

●校外学習は宿泊キャンプ

 昭和半ばの柏崎市立比角小学校においては、小学5年生の10月に松波キャンプ練習という行事があった。柏崎市街地にある小学校から5kmほど離れた海岸近くの松林の中にあったキャンプ場にて数人ずつの班に分かれてテントを張って野外で一泊体験をするもので、班の児童が協力して夕食を作ったり、広場に学年皆が参集してキャンプファイヤーを囲んでレクレーションするなどといったものだったと思う。
 私の両親は中小企業と町工場での共働きで平日はもとより休日も仕事関係での付き合いだとかたまった家事だとかに忙しく、野外キャンプなどというものには連れて行ってもらったことは無かった。まして、現在のようにオートキャンプ場が至る所で整備されていて日常的な生活に近いままでキャンプの雰囲気を味わえるような状況でも無かった。
 なので、平日は住宅街を通って小学校と往復するだけの日々と、週末も近所で子供たちと草野球でもして遊ぶか天気が悪ければ家の中で自作の下手な漫画でも描くしかなかった私には、たった一晩とはいえ外で級友達と過ごす行事は期待と不安で少しワクワクドキドキさせるものであった。
 当日は運よく秋の爽やかな晴れに恵まれ、予定どおり児童は貸し切りバスに乗りあって比角小学校を出発した…と思うのだが記憶は定かでない。5km程度の距離なので、リュックを担いだ体操着姿で皆で行軍したのかもしれない。何せ昭和半ばの当時は全般にスパルタンな世相だったので。いずれにしても覚えていないのは、何事でもトラブルがちな私の行動において道中にて何ら揉め事などがなかった証だと思う。
 到着した「松波キャンプ場」は、その名のとおり海岸の防砂防風林として植栽されたものなのか、立派な松の大木に囲まれた緑地で、長年にわたり日本海からの強風にさらされながら育ってきた松の木々が海側から内陸側へと軒並み斜めになっていて、その風情が子供心に芸術的に思わせるようで、非日常を感じさせる空間だった。
 その松の木々の間が丁度良く開けているから、4ないし5人程度に分かれた班が組み立てるテントを近すぎず離れすぎずいい具合に配置できる広がりだった。私が一員となった班も到着すると早々に先生方からテント用具の支給と組み立て方の指導を受けて、地面にトンカチとペグ打ちを始めた。
 テント設営が終わると夕食づくりの準備を始めたように思う。予めの指示により各々が自分用にと家から持ってきた米を集めて研ぎ始める者、同様に予め分担して持ち込んだ野菜や肉などを切って下準備する者、といった進め方だったと思うが、キャンプのお約束通り、米は飯盒で炊き、メニューはカレーというものだった。
 子供心に級友達の暮らしぶりというか貧富の違いも何となく分かってくるような年頃であり、食べているものや質も各々違うのだろうなあと思うところもあったが、飯盒で炊いたメシというのは何故か特別に美味い感じがしたし、カレーというのも市販のルー使いとは言え誰が作っても同じような無難な味になるので、皆が屈託なく楽しめる食事になったと思う。
 夕食後に一息ついているとつるべ落としの秋のとおり夕闇は早く、井形に組み上げた細い丸太に火をともしたキャンプファイヤーを囲んで5年生児童達がクイズ大会などの企画で楽しんだ。当時キャンプといえば鉄板のフォークダンスもやったのではなかったか。すいずれにしても、何にせよ”コテコテのオーソドックススタイル”というのは一度は経験しておくのは良いことだと思う。テレビのコントなどでいじられる行事もそのものの経験が有ると無しでは面白さが全く異なるものだ。
 イベントがおわり班ごとにテントに戻って消灯時間となっても非日常に興奮する10歳くらいの児童達が素直に寝付くわけがない。我がテントでも暗闇で取り留めも無い雑談を続けては巡回する教諭の懐中電灯の明かりが近寄ってくると寝たふりをすることを繰り返した。当然ながら男女別に組まれたテントごとの班員だったのだが、Y君が言うにことかいて「今、はだかの女子が入ってきたらどうする?」と暗闇でつぶやくと、M君が「かまう」と即答。声を殺しての爆笑が止むこと無く秋の夜長は更けていったのだ。

(「柏崎こども時代40「校外学習は宿泊キャンプ」」終わり。仕事遍歴を少し離れた実家暮らしこども時代の思い出話「柏崎こども時代41「修学旅行は会津(その1)」」に続きます。)
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