本日は
イングランド王「獅子心王」リチャード一世の忌日でございます。
獅子心王リチャードと聞いてワタクシの頭にまず浮かぶのは、1968年の映画『冬のライオン』でございます。この映画での断片的な印象から、のろの中には久しく「リチャード一世=マザコン ジョン=アホの子」のイメージが定着してしまっておりました。
リチャードを演じたのは、これが映画デビューとなる当時30歳のアンソニー・ホプキンス。デビュー作でいきなりピーター・オトゥールとキャサリン・ヘップバーンという大御所と渡り合う役に大抜擢されたのは、それまで舞台で培ってきた演技が評価されたためでありましょう。近年、インタヴューの中でこの作品を振り返るサー・ホプキンスがよく語るのは、キャサリン・ヘップバーンからもらったというアドバイスでございます。即ち「演じるのはおやめなさい。ただ台詞を言えばいいの。あなたはいい肩と、いい顔と、いい眼と、いい声を持ってるんだから、他に何もいらないわ」というもの。このアドバイスのおかげで今のサー・ホプキンスがあるとするならば、キャサリン・ヘップバーンには大いに感謝せねばなりますまい。
ちなみにこの作品、のろには録画していたビデオが途中で切れたために半分しか観られなかったという、いささか淋しい思い出がございます。この間レンタル屋の歴史ものコーナーで見つけたから、そのうちちゃんと観ようっと。
さておき、歴史上のリチャードは十字軍の英雄(つまりイスラム教徒の殺戮者)であり、騎士道の華と唄われる人物でございます。
多額の国費を国外での戦争に費やし、戦費捻出のため臣民に重い租税を課した上、個人的確執のすえにオーストリア公の捕虜となり、その身柄を解放してもらうためにこれまた莫大な身代金を支出させたこの人物に何故人気があったかといえば、つまるところ、戦上手だったからでございます。彼の死後イングランドを継いで、内政においてはそれなりの才覚を示し、少なくともリチャードのように国をほったらかしにしたわけではなかった弟ジョン王に何故全く人気がないのかといえば、つまるところ、戦下手だったからでございます。
ジョン王と言いますと、中学か高校の世界史の副読本に堂々と「悪王」だの「欠地王」だのと書かれていて驚いた記憶がございます。まあ「カール禿頭王」にはもっと驚きましたけれど。
ロビン・フッドの悪役というイメージも手伝って、重税と圧政を強行して民衆および諸候から大ブーイングを受けたアホ王、というぐらいの認識が一般的な悪王ジョン。しかし、そもそも戦費捻出のための重課税を始めたのはリチャード兄ちゃんでございますし、王がその気になれば有無を言わせず臣下の領地を差し押さえできてしまうという行政機構を(それを抑制するシステムを全く欠いたままに)作り上げたのは、ヘンリー父ちゃんでございます。つまり先代の積み上げた問題がジョンの代に至って先鋭化し、民衆および諸候がこの搾取システムの酷さに気付き始めたと、そしてその不満を抑える、または誤摩化すだけの求心力がジョンには無かったというわけでございますね。
ジョン王の性格的・能力的問題がいかに甚だしいものだったとしても、失政の全てがジョン王という一個人の問題に帰せられるはずはございません。にもかかわらずこの欠地王が長年に渡ってけちょんけちょんにけなされて来たのは、アグレッシヴでいくさ上手で容貌も振る舞いも華やかだったリチャード兄ちゃんに比べて、あまりにも見劣りが激しかったということなのでございましょう。
さて、ロビン・フッドと言えばリドリー・スコット監督の新作が、海外ではこの5月に公開されますね。日本での封切りは秋になるとの事。
国家権力者に対抗・復讐するラッセル・クロウってまんま『グラディエーター』じゃんかと思いつつも、のろはこの作品を観に行かねばならないことになっております。別にリドリー・スコットのファンではございませんし、ラッセル・クロウの顔を大画面で拝まねばならないのはいささか苦痛ではありますが、それでも観に行かねばならないのは、ソーターさんことマーク・ストロングが出演しているからでございます。
「ジョン王の忠実な部下サー・ゴドフリー*」役、ということはつまり、悪役でございますね。やっは~い!
トレーラーを見ると、要所要所で顔を出してらっしゃいます。うーむ、これはなかなかのご活躍が期待できそうではございませんか。
*(2011.1.16追記)実際はぜんぜん「忠実な部下」ではなかったわけですが、この記事を書いた時点ではこういう情報が出回っていたのです。
↓鎖かたびらを着込んだ背の高いハゲがソーターさん。
画面のどこにいてもすぐに見つけることができて、たいへん結構でございます。
*当記事のイングランド史についての記述は主に『世界歴史大系 イギリス史1』および『新版世界各国史11 イギリス史』(共に山川出版社)を参考にしました。
イングランド王「獅子心王」リチャード一世の忌日でございます。
獅子心王リチャードと聞いてワタクシの頭にまず浮かぶのは、1968年の映画『冬のライオン』でございます。この映画での断片的な印象から、のろの中には久しく「リチャード一世=マザコン ジョン=アホの子」のイメージが定着してしまっておりました。
リチャードを演じたのは、これが映画デビューとなる当時30歳のアンソニー・ホプキンス。デビュー作でいきなりピーター・オトゥールとキャサリン・ヘップバーンという大御所と渡り合う役に大抜擢されたのは、それまで舞台で培ってきた演技が評価されたためでありましょう。近年、インタヴューの中でこの作品を振り返るサー・ホプキンスがよく語るのは、キャサリン・ヘップバーンからもらったというアドバイスでございます。即ち「演じるのはおやめなさい。ただ台詞を言えばいいの。あなたはいい肩と、いい顔と、いい眼と、いい声を持ってるんだから、他に何もいらないわ」というもの。このアドバイスのおかげで今のサー・ホプキンスがあるとするならば、キャサリン・ヘップバーンには大いに感謝せねばなりますまい。
ちなみにこの作品、のろには録画していたビデオが途中で切れたために半分しか観られなかったという、いささか淋しい思い出がございます。この間レンタル屋の歴史ものコーナーで見つけたから、そのうちちゃんと観ようっと。
さておき、歴史上のリチャードは十字軍の英雄(つまりイスラム教徒の殺戮者)であり、騎士道の華と唄われる人物でございます。
多額の国費を国外での戦争に費やし、戦費捻出のため臣民に重い租税を課した上、個人的確執のすえにオーストリア公の捕虜となり、その身柄を解放してもらうためにこれまた莫大な身代金を支出させたこの人物に何故人気があったかといえば、つまるところ、戦上手だったからでございます。彼の死後イングランドを継いで、内政においてはそれなりの才覚を示し、少なくともリチャードのように国をほったらかしにしたわけではなかった弟ジョン王に何故全く人気がないのかといえば、つまるところ、戦下手だったからでございます。
ジョン王と言いますと、中学か高校の世界史の副読本に堂々と「悪王」だの「欠地王」だのと書かれていて驚いた記憶がございます。まあ「カール禿頭王」にはもっと驚きましたけれど。
ロビン・フッドの悪役というイメージも手伝って、重税と圧政を強行して民衆および諸候から大ブーイングを受けたアホ王、というぐらいの認識が一般的な悪王ジョン。しかし、そもそも戦費捻出のための重課税を始めたのはリチャード兄ちゃんでございますし、王がその気になれば有無を言わせず臣下の領地を差し押さえできてしまうという行政機構を(それを抑制するシステムを全く欠いたままに)作り上げたのは、ヘンリー父ちゃんでございます。つまり先代の積み上げた問題がジョンの代に至って先鋭化し、民衆および諸候がこの搾取システムの酷さに気付き始めたと、そしてその不満を抑える、または誤摩化すだけの求心力がジョンには無かったというわけでございますね。
ジョン王の性格的・能力的問題がいかに甚だしいものだったとしても、失政の全てがジョン王という一個人の問題に帰せられるはずはございません。にもかかわらずこの欠地王が長年に渡ってけちょんけちょんにけなされて来たのは、アグレッシヴでいくさ上手で容貌も振る舞いも華やかだったリチャード兄ちゃんに比べて、あまりにも見劣りが激しかったということなのでございましょう。
さて、ロビン・フッドと言えばリドリー・スコット監督の新作が、海外ではこの5月に公開されますね。日本での封切りは秋になるとの事。
国家権力者に対抗・復讐するラッセル・クロウってまんま『グラディエーター』じゃんかと思いつつも、のろはこの作品を観に行かねばならないことになっております。別にリドリー・スコットのファンではございませんし、ラッセル・クロウの顔を大画面で拝まねばならないのはいささか苦痛ではありますが、それでも観に行かねばならないのは、ソーターさんことマーク・ストロングが出演しているからでございます。
「ジョン王の忠実な部下サー・ゴドフリー*」役、ということはつまり、悪役でございますね。やっは~い!
トレーラーを見ると、要所要所で顔を出してらっしゃいます。うーむ、これはなかなかのご活躍が期待できそうではございませんか。
*(2011.1.16追記)実際はぜんぜん「忠実な部下」ではなかったわけですが、この記事を書いた時点ではこういう情報が出回っていたのです。
↓鎖かたびらを着込んだ背の高いハゲがソーターさん。
画面のどこにいてもすぐに見つけることができて、たいへん結構でございます。
*当記事のイングランド史についての記述は主に『世界歴史大系 イギリス史1』および『新版世界各国史11 イギリス史』(共に山川出版社)を参考にしました。