『オフサイド・ガールズ』を観てまいりました。
イランでは、女性がスタジアムで男子スポーツを観戦することは禁止されているんだそうで。
しかしサッカー大好きな女の子たちが、サッカーW杯の本戦出場がかかった予選の大一番に
男装してスタジアムに潜り込み.....というお話。
いやー、サイコーでございます、ほんとに。
90分間、のろの口角は上がりっぱなしでございました。
楽しくて、おかしくて、そして切ない。
痛快で心温まるエンタテイメントであると同時に、
女性差別的な制度のバカバカしさ、不条理さを静かに訴える、社会的な作品でもございまして
見終わった後、空を仰いで口笛を吹きながら歩きたくなります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/21/e66ee47933a751023621091830d4b81c.jpg)
人間を描く視点が、とても優しい。
場内で捕まった少女たちは勾留所に連行されてしまうのですが、
少女たちを連行する兵士らも、決して悪者として描かれてはおりません。
勤務中のくせに、少女から没収した携帯電話でカノジョのご機嫌をうかがう若造。
実家に残して来た家畜とお母さんのことが心配でならない、田舎出の現場責任者。
地元出身の選手が代表に選ばれなかったと愚痴る兵士は、
イランがゴールを決めると同僚に飛びついてキスを浴びせるほどのサッカー狂。
彼らは「兵士(=既存の制度従う者)」としてひとくくりにされるのではなく
あくまで、個性と来歴を持った「◯◯さん」として描かれております。
「敵」という悪者を設定して身内の結束を高めようとする風潮が世界的に広がっている昨今、
こういう視点は非常に大切であると思います。
しかしなんと申しましても見どころは
少女たちの「どーーーしても試合を見たい!」というバイタリティでございます。
捕まってしまった少女らは、分隊の留置所に搬送されるまで
スタジアム内の一カ所に集めて勾留されるんでございますが
その勾留場所が、観客席のすぐ裏という位置取りでございまして
歓声やら、ホイッスルやらがじゃんじゃん聞こえて来るんでございますね。
試合を見たい一心でここまでやって来た少女たちが黙っているわけはございません。
ちょっとでいいから試合を見せて!
どうせバレやしないってば!
見せてくれたらあんたの家畜の世話だってするよ!
見せないんならせめて実況して!...
分隊に搬送される車の中でも
やれカーラジオを直せ、アンテナをしっかり持ってろ...と、
危険物(花火)持ち込みで補導されたボーズも巻き込んで大騒ぎでございます。
おとなしい子も溌剌とした子もみな生き生きと、キラキラとしていて、とっても素敵でございましたねえ。
のろ的にとりわけ印象不深かったのが ↑ イラスト一番上の子。
余裕しゃくしゃくの自信に満ちた態度で、少々ケンカっ早いけれども周囲への気遣いを忘れない彼女。
タバコをとがめられれば「タバコを吸うのも試合を見るのも犯罪じゃないだろ」と切り返し
「なぜ女はスタジアムに入れないんだ?」とストレートな質問を兵士に浴びせ、
女だからという理由だけで少女たちを「ヒヨッ子ども」呼ばわりするボーズには強烈な
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/ee/e5cea80ef1e0220707e30f0bcd4adf86.jpg)
頭突き。
ボーズが「殴ればいいだろ、みんなが俺を殴るんだ」とふてくされると
「自分を哀れむんじゃねーよ。みっともない」と一喝。
いやあ実にオトコマエでございます。
かと思えば、落ち込んでいる子(や、兵士)に誰よりも早く気付いて
声をかけ、慰め、元気づけてやるのです。
オトナでございますねえ。
いわゆる「女らしい」振る舞いを全くしない彼女。
おろおろしてすぐに怒鳴ってしまう兵士や、言いつけを守らなかったからといって姪っ子を殴るジイ様よりも
よっぽど人間ができております。
そう、大切なのは「人として」どうであるか、なのであって
「女だから」どうとか「男だから」どう、というのは「人」としてのありかたの前には全く瑣末なことでございます。
そういうことをサラっと、しかししっかりと、
男性サイド・女性サイドのどちらかに肩入れするわけではなく、人間愛と適度な距離感を持って描いているのが素晴らしい。
しかし現在のイラン政府にとっては、本作は「大いに女性に肩入れしている作品」ということになってしまうようでございます。
パナヒ監督の前2作、それぞれカンヌとヴェネチアで受賞した『白い風船』『チャドルと生きる』と同様に本作も
イラン国内では公開が許可されておりません。
観る人の背中をそっと、ごくごく優しく押して意識変革を促すような本作。
ぜひともイランの男性にも女性にも見ていただきたい作品でございます。
また「イランは危ない国」というイメージが高まっている中、
世界中のひとりでも多くの人に、観ていただきたいものでございます。
イランでは、女性がスタジアムで男子スポーツを観戦することは禁止されているんだそうで。
しかしサッカー大好きな女の子たちが、サッカーW杯の本戦出場がかかった予選の大一番に
男装してスタジアムに潜り込み.....というお話。
いやー、サイコーでございます、ほんとに。
90分間、のろの口角は上がりっぱなしでございました。
楽しくて、おかしくて、そして切ない。
痛快で心温まるエンタテイメントであると同時に、
女性差別的な制度のバカバカしさ、不条理さを静かに訴える、社会的な作品でもございまして
見終わった後、空を仰いで口笛を吹きながら歩きたくなります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/21/e66ee47933a751023621091830d4b81c.jpg)
人間を描く視点が、とても優しい。
場内で捕まった少女たちは勾留所に連行されてしまうのですが、
少女たちを連行する兵士らも、決して悪者として描かれてはおりません。
勤務中のくせに、少女から没収した携帯電話でカノジョのご機嫌をうかがう若造。
実家に残して来た家畜とお母さんのことが心配でならない、田舎出の現場責任者。
地元出身の選手が代表に選ばれなかったと愚痴る兵士は、
イランがゴールを決めると同僚に飛びついてキスを浴びせるほどのサッカー狂。
彼らは「兵士(=既存の制度従う者)」としてひとくくりにされるのではなく
あくまで、個性と来歴を持った「◯◯さん」として描かれております。
「敵」という悪者を設定して身内の結束を高めようとする風潮が世界的に広がっている昨今、
こういう視点は非常に大切であると思います。
しかしなんと申しましても見どころは
少女たちの「どーーーしても試合を見たい!」というバイタリティでございます。
捕まってしまった少女らは、分隊の留置所に搬送されるまで
スタジアム内の一カ所に集めて勾留されるんでございますが
その勾留場所が、観客席のすぐ裏という位置取りでございまして
歓声やら、ホイッスルやらがじゃんじゃん聞こえて来るんでございますね。
試合を見たい一心でここまでやって来た少女たちが黙っているわけはございません。
ちょっとでいいから試合を見せて!
どうせバレやしないってば!
見せてくれたらあんたの家畜の世話だってするよ!
見せないんならせめて実況して!...
分隊に搬送される車の中でも
やれカーラジオを直せ、アンテナをしっかり持ってろ...と、
危険物(花火)持ち込みで補導されたボーズも巻き込んで大騒ぎでございます。
おとなしい子も溌剌とした子もみな生き生きと、キラキラとしていて、とっても素敵でございましたねえ。
のろ的にとりわけ印象不深かったのが ↑ イラスト一番上の子。
余裕しゃくしゃくの自信に満ちた態度で、少々ケンカっ早いけれども周囲への気遣いを忘れない彼女。
タバコをとがめられれば「タバコを吸うのも試合を見るのも犯罪じゃないだろ」と切り返し
「なぜ女はスタジアムに入れないんだ?」とストレートな質問を兵士に浴びせ、
女だからという理由だけで少女たちを「ヒヨッ子ども」呼ばわりするボーズには強烈な
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/ee/e5cea80ef1e0220707e30f0bcd4adf86.jpg)
頭突き。
ボーズが「殴ればいいだろ、みんなが俺を殴るんだ」とふてくされると
「自分を哀れむんじゃねーよ。みっともない」と一喝。
いやあ実にオトコマエでございます。
かと思えば、落ち込んでいる子(や、兵士)に誰よりも早く気付いて
声をかけ、慰め、元気づけてやるのです。
オトナでございますねえ。
いわゆる「女らしい」振る舞いを全くしない彼女。
おろおろしてすぐに怒鳴ってしまう兵士や、言いつけを守らなかったからといって姪っ子を殴るジイ様よりも
よっぽど人間ができております。
そう、大切なのは「人として」どうであるか、なのであって
「女だから」どうとか「男だから」どう、というのは「人」としてのありかたの前には全く瑣末なことでございます。
そういうことをサラっと、しかししっかりと、
男性サイド・女性サイドのどちらかに肩入れするわけではなく、人間愛と適度な距離感を持って描いているのが素晴らしい。
しかし現在のイラン政府にとっては、本作は「大いに女性に肩入れしている作品」ということになってしまうようでございます。
パナヒ監督の前2作、それぞれカンヌとヴェネチアで受賞した『白い風船』『チャドルと生きる』と同様に本作も
イラン国内では公開が許可されておりません。
観る人の背中をそっと、ごくごく優しく押して意識変革を促すような本作。
ぜひともイランの男性にも女性にも見ていただきたい作品でございます。
また「イランは危ない国」というイメージが高まっている中、
世界中のひとりでも多くの人に、観ていただきたいものでございます。