定番の焼きそばに、イタリアンの名がつく長浜の「イタリアン焼きそば」。
一見「絶対に合わない」と思う組み合わせだが、一口ほおばれば不思議と懐かしい。
ソース焼きそばにミートソースという独特のマッチングに、やみつきとなる。
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↑写真:中日新聞より
明治元年創業の老舗「茶しん」の看板メニュー。
半世紀以上にわたり愛され、今や長浜のソウルフードに定着した。夕方の営業が始まる17:00には、開店を待っていた客が続々と入る。店長の広瀬直樹さんは「昔からのファンの方々に来てもらい、支えられている」と語る。
創業当時は店の名前の通り、あんみつなどを出すお茶屋だった。やがて名前はそのままに、中華そばや定食なども提供する食事処に。その変遷の中で、3代目の直治郎さん(故人)が「イタリアン焼きそば」を開発した。
新メニューの開発に熱心だった直治郎さん。全国の名物料理をメニューに取り入れようと、各地の料理店などと交渉した。現在提供している暫(しばらく)(大判焼き)やイタリアン焼きそばと二枚看板のホワイト餃子(ぎょうざ)も、直治郎さんが神戸や千葉の店に行って教えを乞い、ラインアップに加えた。イタリアン焼きそばも、新潟の名物を取り入れた。
元々は、当時メニューにあった中華風焼きそばに合わせて「南欧風焼きそば」と呼んでいた。その後、キャッチコピーを考えるのが得意だった直治郎さんが「もっとイメージが伝わりやすいように」と「イタリアン焼きそば」に改めた。
そうは言っても、ただのソース焼きそばにミートソースが乗っただけでは? しかし、麺やミートソースには強いこだわりがあった。麺はまっすぐの細麺で、長浜市内の自社工場で毎朝その日の分だけを製麺する。広瀬さんは「毎朝作れば、保存料など余計な物を入れずに済む」という。廃棄もほぼ発生していない。
焼きそばにからめるのは完全オリジナルの配合で、食品会社に発注している特注ソース。あっさりめで、ソース焼きそばとして単体で食べるには物足りないくらいの味になっている。「最後にミートソースをかけることで完成するから」と広瀬さんが解説する。
そのミートソースは自家製。焼きそばにからめたのと同じ特注ソースを加えることで、味のバランスを整える。ケチャップより特注ソースの配分が多い。酸っぱさは抑えられ、やや茶色がかった色味が特徴だ。ミートソースをかけ、青のりと刻みショウガを添えれば完成だ。
「定番は常に進化しないといけない」という客の声も聞こえたが、昔食べた味を求める客のためにも、製法や材料を開発当初からほとんど変えていない。「高校時代に食べたお客さんが、子どもを連れて食べに来てくれることもある。だからこそ、続けられる」と広瀬さんは言う。
並盛り510円、大盛り740円。ホワイト餃子などとともにテークアウトにも対応する。新型コロナウイルスの感染拡大で、現在は夕方のラストオーダーを18:00にしている。
問い合わせ: 茶しん駅前通り本店
長浜市元浜町5−3
0749(62)0414
<中日新聞より>