滋賀県知事選(来月10日投開票)は22日告示され、公共交通の維持存続も論戦に上る。
赤字が続く近江鉄道(米原~甲賀の全長約60キロ)は、2024年度から公有民営の「上下分離方式」に移行する。少子高齢化で利用者が減るなか、維持存続の鍵を探った。
赤字が続く近江鉄道(米原~甲賀の全長約60キロ)は、2024年度から公有民営の「上下分離方式」に移行する。少子高齢化で利用者が減るなか、維持存続の鍵を探った。
↑写真:滋賀報知新聞より(高校生と通勤客で混み合う朝の近江鉄道八日市駅)
近江鉄道の乗客数は、1967年の1126万人をピークに減少を続け、ここ数年は400万人台後半で横ばい。コロナ禍で20年度は前年度比で2割減少した。
近江鉄道の乗客数は、1967年の1126万人をピークに減少を続け、ここ数年は400万人台後半で横ばい。コロナ禍で20年度は前年度比で2割減少した。
滋賀県と沿線5市5町などが近江鉄道のあり方を議論する法定協議会では、施設を管理する管理会社(県と沿線市町で構成)を今年12月に設立予定で、新会社の規約や譲渡資産の協議を進めている。
「絶対、失敗するわけにはいかない」と語るのは、法定協の副会長、小椋正清東近江市長だ。沿線市町をまとめたのは、滋賀県のリーダーシップと評価する。
片や、県と市町にのしかかるのは大幅に増加した負担金。2022―23年度の負担金は、滋賀県は従来の10倍の3億2千万円、沿線自治体計3億2千万円。このうち東近江市分は、駅数などで案分した結果、昨年度の380万円から1億4千万円に増額した。
これについて小椋東近江市長は、「鉄道がなくなれば(内陸の市町に)代替路線はない。自治体の負担は未来への投資だ」と必要性を訴える。
また、上下分離の施設譲渡に向けて、「血税を投入するからには、なるべく不良資産は受けたくない」というのが、市町担当者の本音だ。
近江鉄道では脱線事故が昨年12月、今年2月で相次いで発生。全線で緊急点検が行われ、496本の枕木の金具で問題が見つかった。近江鉄道は枕木の交換や金具の補修とともに、枕木のコンクリート化を前倒しして実施する。
乗客増への取り組みも不可欠だ。法定協は定期を収入の柱に据え、沿線の高校17校に出向き、鉄道通学のメリットを周知。企業との意見交換は9月に行う。
一方で、住民が自発的に沿線を盛り上げる動きが芽吹く。その一つが、日野駅の交流施設「なないろ」。駅舎の休憩室を地元住民がつくる一般社団「こうけん舎」が指定管理者となって運営する。日替わりカフェでは一般のオーナーに交じり、日野高校の生徒も「日野高カフェ」で一役買う。
「こうけん舎」社団代表理事の西塚和彦さんは、「駅舎は人々が行き交う社会的結節点。人口減のなかで施設機能が低下したりなくなると過疎に拍車がかかる。駅が単なる人の乗り降りだけでなく、にぎわいの拠点となれば」と期待する。
なお、滋賀県税制審議会は今年4月、鉄道やバスなど地域公共交通を支える新税「交通税」の導入に向けて議論を進めるべきとの答申を滋賀県に提出、この2年で議論が深まりそうだ。
<滋賀報知新聞より>