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人の感情を読み取るコンピュータ  №231

2015-01-08 14:33:04 | 日記
 私たち人間には生まれながらにして、「笑い」や「怒り」等の喜怒哀楽の情動の表出がプログラムされています。先天的に耳が聞こえず目が見えない子どもの表情を研究したアメリカの発達心理学者フロレンス・ グッドイナフ(1886-1959)によると、彼らは感情を表出する自分の表情を誰からもフィードバックできないにもかかわらず「笑い」や「怒り」、「泣き顔」などの典型的な表示用や仕草を発達させていました。
 また、アメリカの心理学者ポール・エクマン博士は、「怒る」「恐れる」などの表情が人種によらず、人類共通であることを初めて読み出した人のようです。その成果をもとに、教え子たちの手で開発されたのが、「エモティエント」(Emotient)という、感情を読み取る人工知能です。
 正月に放送されたNHKのネックストワールドという番組で紹介されたところによると、「エモティエント」は画像として取り込んだ顔の表情から、その人の感情を瞬時に判別しようとするもので、「表情の行動科学」を提唱したエクマン博士と、ソーク研究所の人工知能と機械学習の専門家テリー・セジュノウスキー博士の、1990年代初頭に行われたコラボレーションから、このプログラムが誕生したということです。
 「エモティエント」(Emotient)には、エクマン博士が収集した膨大な数の人の表情の写真データを読み込ませ、17の顔の筋肉の動きによってこの表情の写真を分類し、人工知能に学習させました。すると、人間では決して見抜けないようなわずか0.1秒間に生じた表情も判定できるほど人工知能が発達したということです。人間には意図的に操作できる表情と、意図的には制御できない微細な表情がありますが、開発した会社では、この微細な表情に着目し、その表情を瞬時に読み取ることで、様々な人間が将来どのような決定・決断を下すのかを予測しようとしているようです。
 また、グーグル・グラスでこの人工知能が導き出した結果から、見た目の表情からは相手本人も気付いていないような真の感情さえも読み取ることを目指しており、マーケティング、接客業などビジネスの現場や、教育の場などでの活用に向けて開発が進んでいるということです。
 「面従腹背」で世渡りをしてきたサラリーマンには恐るべきマシンかもしれません。
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幸福になるための3つの要素 №230

2014-11-05 16:07:39 | 日記
 人が本当の意味で幸福になれるのは次の3つの要素が合わさったときだけだというのが、ポジティブ心理学の考え方です。
①ポジティブな感情や笑いを数多く経験すること。
②自分にとって大きな何か意味があると思えることに積極的に取り組むこと。
③昨日や今日のことでなく、長期的な視野で人生に意義を見いだすこと。
 どんな障害にぶつかっても、ものごとは必ずよい方向に進むと心から信じていればそれに負けることはありません。
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メンタルヘルスと経済学 №229

2014-10-22 11:43:57 | 日記
 こころと経済学という日経新聞(10月22日付朝刊)のコラム欄に興味深い記事がありました。経済学は人々の心理や行動原理を描写する学問として発展してきました。しかし、心を扱う学問と考えられながらも、メンタルヘルスに関する経済学的な研究はあまり行われてきませんでした。うつ病など気分障害と分類された場合、医学領域としてすみ分けられてきたのが理由の一つといわれているようです。
 厚生労働省の患者調査によると2011年時点の精神疾患の患者は約266万人で、ガン患者の153万人を上回ります。なかでも、うつ病など気分障害の患者は96万人を占め、15年前の2.2倍に相当します。また、年間約3万人の自死(自殺)の9割がうつ病などの精神疾患にかかっていたともいわれています。
 メンタルヘルスによる不調で休職したりする労働者が増加傾向にあることも指摘されています。病気の原因はストレス耐性や性格など個々人の要因が関係しているとはいえ、臨床・精神医学の分野では過重労働や成果主義が密接に関係しているといわれてきました。 
新聞によると早稲田大学の黒田祥子教授と慶応大学の山本勲教授が労働経済学の立場からメンタルヘルスと企業関係をひもといていくというので、期待したいと思います。
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前向きな性格と後ろ向きの性格 №228

2014-10-07 16:09:23 | 日記
 なぜ、前向きな性格と後ろ向きの性格があるのでしょうか。遺伝的な気質によるものなのでしょうか。それとも成育環境によるものなのでしょうか。「脳科学は人格を変えられるか」(文藝春秋社刊)の作者エレーヌ・フォックスは、前向きに考えられる人の脳をお天気脳、サニーブレイン(楽天的な脳)とよび、後ろ向きの考えに陥りやすい人を、雨天脳、レイニーブレイン(悲観的な)とよび、次のように説明しています。
 一時的な状態ではなく、「楽観的な気質」の人は総じて陽気で明るく、まわりの人々をも明るく楽しくしてくれます。ですが、そういう人たちは、ただ単に陽気でハッピーな人間なわけでありません。「楽観的な気質」とは、未来に真の希望を抱くことです。それは、「ものごとは必ず打開できる」という信念であり、「どんなことがあっても必ず対処できる」とい揺るがぬ思いなのです。単なる脳天気とはまるで違います。楽天的な人は、自分の身に悪いことが怒らないと思っているのではありません。悪いことは起きるかもしれないが、起きても必ず対処できると信じているのです。
 一方、「悲観的な気質」の人も、いつもは悲しみや不安にさいなまれているわけではありません。そういう人たちは、未来に不安や懸念を抱きがちで、どこかに危険はないかと絶えず気を配っているのです。そして、うまく行きそうなことよりも、うまくいかなそうなことに、つい多くの注意を向けてしまうのです。言ってみれば、慎重の度合いがすぎる人なのです。むろんこうした傾向が非常に強い人でも、時には大きな喜びや幸福を感じ、未来に希望も抱きます。それでも、リスクを冒すよりは安全な道を選ぶのが悲観的な人たちの特徴です。
 私たちの行動原理を単純化して考えると、食欲や性欲のように快楽をもたらすもの(報酬)には引き寄せられ、自分の生存の安全を脅かす危険なもの(脅威)から離れようとします。この報酬と脅威のどちらにより強く反応するかかが人生観をきめるだと、作者のエレーヌ・フォックスはいます。
 ある出来事に対して快楽の引力に強く反応する人もいれば、危険が醸す不安に人一倍反応し、危険からできるだけ遠ざかろうとする人もいます。ごくわずかな相違でも、生きるうちに何百回、何千回と繰り返されることで、個々の人生観に深く影響してくる可能性があります。サニーブレイン(楽天脳)とレイニーブレイン(悲観脳)の反応のせめぎあいが、物事の認識にバイアスをもたらし、その結果として、前向きな性格と後ろ向きの性格が形成されてくるというのが結論のようです。
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高齢者の「価値」とは? №227

2014-09-09 16:54:00 | 日記
 高齢者の社会的「価値」とは何でしょうか。仕事をしないのに年金を受給し、現役世代の収入を搾取している。生活保護を受給し、税金を無駄遣いしている。やたらと病院に通い税収のほとんどが高齢の医療費となってしまう等々、あまりよい評価は聞きません。だからといって退職もせずに職場で頑張っていると、老害だと陰口をたたかれたりします。
 OECDの統計によると日本の人口10万人当たりの自殺者数は21.7人で、加盟34ヶ国中第3位で、特に働き盛りの34歳~64歳に多いということです。一方で韓国の自殺率は29.1人で、10年連続で第1位ということです。65歳以上の高齢者の自殺率はこの2.5倍になり、日本と異なり高齢の自殺が増加しているのが特徴のようです。
 韓国江原大学医学部 朴鐘翼(パク・ジョンイク)教授は、このことについて、「高齢者の自殺は貧困だけの問題ではない。『もうすぐ死ぬから、病気治療などにこれ以上金をかけず、子どもに財産を残した方がいい』と自殺を図る人が意外に多い。格差が激しく、競争の敗者が復活しにくくなった韓国社会は高齢者の『価値』を見失いつつある。高齢者も、自分たちに役割がないと感じている。」(2014.9.2読売新聞)と語っています。
 高齢者の「価値」とは何でしょうか。韓国の統計によると、「子どもが親の老後をみるべきだ」とい考える人の割合がこの10年で90%から36%に激減したということです。超学歴社会の韓国では、すべてをなげうって子どもの教育費を捻出してしまうため、老後の資金を蓄える経済的に余裕を失っています。韓国の高齢者の約半数が相対的貧困率(国民の平均所得の半分以下)で、独居老人に限ると70%が貧困層だということです。年金受給者は35%にすぎず、その額も日本円にして月1万円~2万円にすぎず、生活保護受給者は6%(子どもがいれば仕送りがなくても適応除外のため)にとどまります。
 日本でも生活保護の受給者は年々増加しおよそ216万人の人が受給し、そのうち60歳以上の高齢者が5割をしめています。平均寿命は延び続けている一方、貧困率が増加しています。息子や娘たちには経済的に親の面倒をみる余裕がないことが多く、多少の余裕があってもその気がない場合もあります。高齢の父母の方が同居を拒むことが多いのも事実です。
 2400年前古代ギリシャのある劇作家は、「一番いいのは生まれなかったこと。次によいのは、早く死ぬこと」と語っています。人生いかに生きるべきかと悩んだ果てに、人生いかに死ぬべきかという問いに直面しているのが高齢者の現状です。
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女性の好きな10の言葉 №226

2014-08-21 10:55:53 | 日記
 久々に愉快な本に出会ったという気がします。新潮社から出版されている「女の好きな10の言葉」です。著者は哲学博士で、かつて大学教授をしていた中島義道氏です。巻末に、女性を理解するための文学作品や映画、オペラ、ミュージカル、歌謡曲等 111の作品が紹介されていますが、私と同じ団塊の世代なので、紹介されている作品はどれも読んだり聞いたりしたことのある作品です。
 取り上げられている「女性の好きな10の言葉」は以下の通りです。すべての女性がこれらの言葉を好きというわけではありませんが、たいていの女性はこうした言葉を好んで使うように思われる、と作者は言います。

 1「本当の愛って何」
 2「私はあなたの何なの」 
 3「私を人間としてみて」
 4「あなたには私が必要なの」 
 5「あなたは不潔よ」   
 6「私に何でも言って」
 7「私に心配かけないで」   
 8「わかんなーい」    
 9「かわいーい」     
 10「すごーい」

 いかがでしょうか。ほとんどの男は恥ずかしくてこんな言葉は使えません。そして、ほとんどの男は、恋人や妻から、「本当の愛って何」とか「私はあなたの何なの」とか「私を人間としてみて」などと返答に窮する質問を投げかけられてタジタジとなったことがあるのではないでしょうか。どのように返答をしても、その返答に対する女性からの非難や攻撃の言葉が予測できます。なぜなら、1~7の言葉は、ほとんどの場合、男を非難・攻撃するために投げつけられた言葉の罠なのです。
 何とかその場をやり過ごそうと男たちが苦し紛れに答えを絞り出したとしても、次にくるのは、「だったらどうして ○○ してくれないの」という言葉です。
 なぜか。中島氏は明快に断じています。それは、「生ませる性」または「ばらまく性」と「生む性」の違いではないかと。なるべく多くの精子を多くの雌に受胎させたい性と、強く優秀な雄の精子を受胎して子どもと共に安全に行きたい性の違いなのだと。女性はこの本を読んでどのように感じるのか聞いてみたい気もしますが、気が弱いせいかその勇気がありません。
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「毒」になる言葉と「薬」になる言葉 №225

2014-08-10 10:45:04 | 日記
 言葉は、時に「毒」となって人を傷つけ、死に至らしめる凶器にもなります。一方で、「薬」のように心身ともに癒してくれる言葉もあります。消化器内科・心療内科が専門の医師梅谷薫氏が、医師としての経験や患者さんへのアンケートをもとに書いた「病になる言葉」(講談社刊)のなかで、「毒」になる言葉と「薬」になる言葉をあげています。
 梅谷医師は、大腸ガンの内視鏡手術で全国3位(平成7年)にランクされたこともあるトップクラスの専門医ですが、胃腸の不調を訴える人に原因不明のものが多いのを感じ、精神科の医師のもとで学び、心療内科医としてうつ病、不登校、引きこもり、DVなどの治療に当たってきたということです。梅谷医師が感じたのは、いわば「言葉」の暴力によって心ばかりか身体的にも傷ついた人がいかに多いかということだったそうです。
1 「毒」になる言葉
(1)生存そのものを否定する言葉 
  ・死ねば。              ・あんたなんか、産みたくなかった。
  ・生まれてこなければよかったのにね。 ・よく生きてるね。
(2)ハラスメント
  ・クサイ、汚い、普通じゃない。   ・ちび、デブ、ブス、短足、ハゲ。
  ・洋服のサイズないんじゃない?   ・変な子、あんた友達いないでしょ。
  ・まえなんかに関係ない。      ・耳、聞こえてる?
2 「薬」となる言葉
(1)これまでの苦労を認めてくれる言葉
  ・つらかったでしょうね。よくがんばってきましたね。
  ・あなたが頑張っていることはよくわかっています。
  ・これ以上頑張らなくていいんですよ  
  ・大変な人生でしたね。
  ・これまで来れたことはすごいことです。
(2)安心と希望を与えてくれる言葉
  ・私はあなたの味方ですよ       ・ちょっと疲れただけですよ
  ・ゆっくり休めばよくなります     ・心配しなくても大丈夫ですよ
(3)信頼を表明する言葉
  ・あなたのことを信じています    
  ・あなたがいたからここまで来られたのです
  ・ぜひ、もっと教えてください
(4)自分でも気づかなかった視点からのほめ言葉
  ・笑顔がとてもすてきで癒されます  
  ・お会いするときの笑顔がとてもうれしい
  ・一緒にいるだけでほっとするんです
(5)その他
  ・「にゃー」(ペットの猫の鳴き声)  
  ・笑顔とあいさつ
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お一人様行動スタイルに潜む危うさ №224

2014-08-08 10:49:30 | 日記
 旅行やライブ、カラオケ、居酒屋、焼き肉店、映画館、テーマパークなど、グループや家族で行く方が楽しいと思われる場所でも、一人の方が気楽でいいという、「お一人様」で行動するスタイルが急増していると言われています。
 自分一人で過ごす時間や自分のために使うお金を削ってまで、家族や恋人を持ちたいと思わない人が増えているのは、経済的な問題だけではないように思われます。群れることを嫌う一匹オオカミというのでもなく、どちらかといえば、人と親密になるのを避け、家族や恋人、友人を持つことに消極的で、親密になることで負わなければならない責任や束縛を受けることを避けたい気持ちが根底にあるように思われます。
 「お一人様」行動スタイルの人が社会生活に適応し、それなりに充実した人生を送っているのであれば、それは一つのライフスタイルとして特に周りの人たちがあげつらう問題ではないかもしれません。ただ、「お一人様」行動スタイルが社会の大きな流れとなってきた場合、個人のライフスタイルのレベルを超えて、種の保存や共同体としての社会の持続的な維持という観点からの危うさがあります。
 「回避性愛着障害 ~絆が希薄な人たち~ 」(光文社新書刊)の著者で精神科医の岡田尊司氏は、回避性パーソナリティ障害のように不安が強く、消極的なタイプではなく、一見すると自信に満ち、傲慢で冷酷に見える人でも、親密な関係や持続的な関係をもつことを避けようとする人たちを「回避型愛着スタイル」という言葉で説明しています。岡田氏は
社会適応に支障をきたすレベルを「回避性」、健常レベルを「回避型」というように使い分けています。
 「回避型愛着スタイル」とは、岡田氏によれば、乳幼児期に十分な愛着関係を持つことができずに、人との関係に安定した信頼関係を築くことができず、親密な関係を楽しむことができなかった人、つまり「愛着スタイル」をもてなかった人ということです。
 「回避型愛着スタイル」の持ち主の最大の特徴は、他人との間に親密な関係を求めようとしない点にあると岡田氏はいいます。他人と過ごすことに興味がないわけではないが、そこに苦痛と努力を必要とする人。また、家族や親友のように、深い関わり方しなければならないような緊密な関係を避けたり嫌う傾向があるといいます。
 なぜ、親密な関係を避けるのでしょうか。親密な信頼関係を築くということは、関係する妻や恋人や子ども等の相手に対して持続的に責任を持つことになります。また、親密な関係は当然のこととして情緒的な結びつきが前提となります。回避型愛着スタイルの人は
それを面倒なことと感じて避けようとします。社会的にも経済的にも結婚や子育てが十分に可能な境遇にあっても、それらを重荷に感じ、避けることを選ぶ傾向があるということです。おそらく、根底に潜むのは、不信感や不安感、自信のなさからくるものではないかと思います。
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父親は必要なのか?(2) №223

2014-07-29 21:14:08 | 日記
 自己愛的で未熟な母親は、自分の支配権を維持しようとして、子どものご機嫌取りをし、自立心を奪い、社会性を損なっていきます。就職活動も出来ずに立ちつくす我が子の姿をみて、自分の育て方に原因があったのではないかとは思わず、別れたり、目の前にいる男に、不満や責任を転嫁し、あなたは何もしてくれないと、恨み言をいいます。
 父親が企業戦士として不在の中で、社会と家庭のつなぎ役として規範意識やルールを身につける役割を担ったのが学校教育です。そのため、仕事を通じて社会貢献することや、価値観、社会規範について父親が子どもたちに語る機会がほとんどなくなりました。たまに、話かけても聞く耳をもたないか、うっとうしいといわれるのが落ちです。父親は子どもの学費や生活費を稼ぐ役割を担うだけとなりました。その役割でさえ、母親の対応一つで稼ぎの悪いだめな父親という否定的なレッテルを貼られてしまいます。毎日残業でくたくたになるまで働き、ようやく家に帰ってもねぎらいの言葉もなく、嫌われ、疎まれるとしたら、父親というのは何という悲しい存在なのでしょうか。
 否定的な父親像のほとんどは母親によってねつ造されたものです。あなたが父親のことを嫌いだとしても、それはあなたが傷つくことから自分を守るために身につけた防衛反応かもしれないし、母親の断片的な評価を鵜呑みにした結果かもしれません。
 子どもたちは、父親を愛したいと思っていますし、尊敬し、自分の目標にしたいと願う気持ちがあります。なによりも、愛されてこの世に生まれたのだ願う気持ちがあります。父親だって、できることなら残業などせず定時に帰宅し、将来のことや社会の有り様について子どもたちと話し、休日には一緒に遊びたいと願っているはずです。 
 父親がいなくても、またその存在感が希薄な場合でも子どもは育ちます。しかし父親像の不在は、家庭の中で自我を否定されることなく育つことが多く、幼い頃の万能感を抱えたまま脆弱な自我をもち続けるため、思春期に社会にコミットすることが難しくなります。甘えや依存心、不安感が強く、ストレスに弱い傾向を持ちます。また、同世代の女性を愛することが難しく、母親代わりとして年上の女性か意のままになる幼い少女を愛する小児性愛の嗜好を持ったりします。女性の場合、男性嫌いや男性不信に陥ったりします。 
 岡田氏は最後にこういいます。「母という病」も「父という病」も利益追求を優先する社会の問題でもある、と。
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父親は必要なのか?(1) №222

2014-07-28 13:54:38 | 日記
 母親かまたはその代わりに母親役をしてくれる存在がなければ子どもは育たないが、「父親は子どもの成長や発達に不可欠なものとして必要なのか」という問いかけが、精神科医の岡田尊司氏の著書「父という病」(ポプラ社刊)の冒頭部分にあります。
 父親としての権力を絶対的なものにしていた家父長制度が終わり、乗り越えるべき父権がなくなり、フロイトのいうエディプス・コンプレックスが存在しなくなり、母子一体の段階から、子どもも母もなかなか抜け出せなくなります。そこで生じる様々な葛藤が著者の前作「母という病」(ポプラ社刊)に書かれています。
 しかし、母親の過剰な支配や干渉に苦しむ人が増えたのも、逆に母親から見捨てられた寂しさを抱えている人が増えたのも、そこには父親の不在が横たわっているのではないか、というのが岡田尊司氏がこの本を書いた動機ということです。
 自分の思い通りに子どもを育てたい母親は、その支配権を強固なものにするために父親の様々な欠点や問題行動をあることないこと子どもに吹き込み、父親に対する愛着を嫌悪や憎しみに変えようとします。だらしがない、不潔だ、お酒やたばこ臭い、横暴だ、というような父親に対するネガティブな感情は、ほとんどすべてが母親の仕組んだたくらみによるものだと岡田氏はいいます。
 しかし、母親が子どもを思い通りに出来るのは、せいぜい思春期までです。やがて、子どもは気づきます。自分にとって必要だったかもしれない父親を放り出し、憎しみを持たせたのは母親の身勝手な都合によるものだったのではないか。自分が子どもを独占したいために父親を閉め出しただけではないのか。あなたになんか、独占されたくなかった、と子どもは怒りを母親にぶつけ始めます。母親を殴り、暴言を吐き、それが出来ない子は、自傷行為や拒食症になり、自らを痛めつけたり、損なうことで間接的に母親に怒りと苦しみを味わわせます。子どもは一人の親に独占されるよりも、両親に共有され、父親にも母親にも愛されたいと願っています。ところが、誰よりも信頼し、愛していた母親が実は最大の裏切り者として父親を奪ったといことに怒りの矛先を向けます。
 母親は慌てます。こんなにも苦労して自分を犠牲にして育ててきた我が子が、歯向かい、怒りをぶつけてくることが理解できず、情けなくなり、悲嘆にくれます。こんなに一生懸命この子のために尽くしてきたのに、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。自分が子どもから父親を奪ってしまったことが原因であることに気づく母親は希です。

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