心理カウンセリング ウィル

https://yoriwill.com/
ご予約はホームページの予約申し込みフォームからお願いします。
 

アスペルガーという個性を生かす №215

2014-03-31 18:10:33 | インポート
 アスペルガー症候群は、別名、「シリコンバレー症候群」ともよばれているほど、アメリカのシリコンバレ-でIT産業や先端科学、先端技術で働く人たちの中に占める割合が多いそうである。マイクロソフトの創始者ビル・ゲイツやアップルの創始者スティーブ・ジョブスに代表されるように、対人関係の困難さを抱えながらも既成の概念を打ち破って新しいものを生み出すアスペルガーの人たちの並はずれた情熱や想像力によって、私たちの文明は大きな恩恵を受けているといってもよいでしょう。 
 アスペルガーについては、DSM-V-TR(精神疾患の分類と診断の手引き)に診断基準がありますが、「アスペルガー障害」の診断基準を満たす人は少なく、その中のどれかの項目が当てはまるのが、「アスペルガー症候群」といわわれる人たちです。特徴的な傾向として、以下のようなものがあげられています。
(1)社会性の障害 他の人と一緒にいても周りのことに対して関心を示さず、孤立的にふるまうことが多く、相手を喜ばせようとしたり、気に入られようとしません。
(2)コミュニケーションの障害  いわれた言葉を額面どおりに受け取り、冗談やユーモアが通じない。感情や感覚を表現するのが苦手です。
(3)同一行動に固執する なじんだ行動にこだわり、急な変更に対して不安やパニックを起こしやすい傾向がみられます。。
(4)限られた狭い領域に深い興味をもつ 適応の仕方により長所になりますが、実用とは無縁の知識に熱中することもあります。
 アスペルガー症候群と自閉症はどのように異なるのでしょうか。精神科医の岡田尊司先生の「アスペルガー症候群」(幻灯舎刊)の中で、次の4つの要件をあげています。
①言葉の発達の遅れがない。(2歳までに一つ以上、3歳までに二語文を話している)
②知能が正常である。
③その他の面(身の回りのことを自分でできる能力)で発達に遅れがない
④社会生活で問題が生じている。(社会生活に著しい支障がなければ障害とはみなさない)
 岡田尊司先先生は、アスペルガー症候群の困難な部分を治そうとするよりも、次のような長所を生かすべきではないかと提言されています。
 ①高い言語的能力がある、②優れた記憶力と豊富な知識がある、③視覚的処理能力が高い、④物への純粋な関心がある、⑤空想する能力がある、⑥秩序や規則を愛する、⑦強く揺るぎない信念を持つ、⑧持続する関心つね情熱を持つ、⑨孤独や単調な生活に強い、⑩欲望や感情におぼれない。
 ちなみに、岡田先生は、アインシュタインもエジソンも、ウォルト・ディズニー、ヒッチコック、ジョージ・ルーカス、ガウディ、ゴッホ、ピカソ、そしてマハトマ・ガンジーもアスペルガー症候群であったと紹介されています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

未来の記憶または展望記憶について №214

2014-03-15 09:54:02 | インポート
記憶は、思い出のように、後で思い出す過去の出来事ばかりだけではありません。会議の予定やデートの約束のように、将来のある時点で行う行為を覚えておかなければならない記憶もあります。このような記憶を、未来記憶または展望記憶といいます。未来記憶の特徴は次のように説明されています。
①記憶の対象が「計画された『行為』」であること
②その行為を意図してから実行に移すまでの間に、ある程度の「遅延期間」があること
③その行為を実行しようとする意図が一度意識からなくなり、再度それを「タイミングよく自発的に想起」する必要があること。
 未来の記憶では③の「想起のタイミング」が最も重要な特徴と言われています。お客との約束や恋人とのデートの約束などを忘れると信頼を失い、契約の破棄や破局を迎えることになるからです。
 私たちは、大事な約束を忘れないように、手帳やメモなどの補助記憶用具を利用しますが、その効果には限界があります。なぜなら、多くの補助記憶用具は行為の内容を思い出す際に手がかりにはなりますが、「タイミングよく」その行為を想起させてくれるわけではないからです。
 年を取ると誰もが経験することですが、認知機能が衰えたのを自覚してメモを取るようにしていても、メモしたことを忘れてしまうこともあります。近年は、パソコンや携帯電話の普及により、自分の頭で物を考えなくても済んでしまう傾向が強くなり、若年性健忘症になる人も少なくないといわれています。年齢とは関係なく、刺激が少なかったり使う機会が減ると、脳が衰えて健忘症を引き起こす可能性が高くなります。
 20代~30代で人の話している事が理解できなかったり、聞いた事もすぐに忘れてしまったり、日にちや曜日など同じ事を何度も尋ねたり、食べたものを思い出せないなどの症状のある人は要注意です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

向精神薬、多剤大量投与の危険 №213

2014-02-13 12:20:27 | インポート
 2月11日付け読売新聞に、うつ病の薬や睡眠薬を大量に服用して救急医療機関に搬送される患者がかなりの数に上るという記事が大きくとりあげられていました。
 副作用や依存性が強く現在ではあまり処方されていないはずのバルビツール酸系の睡眠薬を大量に服用して死亡したり、重い合併症を起こす患者も少なくないということです。不眠や不安、筋弛緩作用などに処方されるベンゾジアゼピン系の薬を大量に服用し、入院中に興奮状態となって暴れる患者を6割の病院が経験しているということです。
 脳科学者の中野信子博士は「脳内麻薬」(幻冬舎刊)という本の中で次のよう書いています。「向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬等)は一つの症状に対して多種類存在します。それぞれの神経伝達物質が、脳の異なる場所で様々な機能を果たしていることがあります。したがって、ある神経伝達物質の量を増減する薬を投与すると、必然的にその伝達物質が働いている他の部分にも影響が及びます。向精神薬にとって、副作用は避けがたいのです。ですから効き方の微妙に異なる薬品を多数組み合わせて効果が上がる方法を探るわけです。
 しかし、今度は別の問題が生じます。向精神薬の副作用は、意図しなかった場所での神経伝達物質の増減なので、その症状は何らかの精神病と類似していることが多いのです。統合失調症の治療のためにドーパミンの効果を抑える薬を投与すると、ドーパミンの不足によって起こるパーキンソン病の症状があらわれるのもその例です。そうすると今度はその症状を抑えるために別の向精神薬を投与する必要があります。さらに離脱症状といってある薬の量を減らそうとすると不快な症状が出ることがあります。
 こうなるとどれが本来の症状なのか、副作用なのか、離脱症状なのか見極めにくくなり一度投与をはじめた薬はなかなか止められなくなります。こうして患者が飲む薬の量も種類もどんどん増えていくのが多剤大量処方です。これについては学会や国からも何度も注意喚起されていますが、なかなかなくならないのが実情です。」
 さらに問題なのは、うつ病の薬や睡眠薬を大量に服用して意識を失うなどして倒れても、精神科では「身体のことは診られない」と対応を拒否され、一般病院では、「精神疾患には対応できない」との理由で受け入れを拒まれ、受け入れ先がないということです。
 日本では、人口あたりのベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用量が世界一で、アメリカの6倍とされているということです。依存性があるため海外では処方の目安を4週間程度としているのに対して、日本では手間と時間のかかるカウンセリングなどの心理療法を行う施設が少ないこともあって、半年、1年と長期処方されているのが原因ということです。
 安易に薬に頼らず、カウンセリングによるセラピーもあるということを考えてもらいたいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スピリチュアルペインとは? №212

2014-02-10 17:47:10 | インポート
 スピリチュアルケアはスピリチュアルペインを和らげるための試みとされています。WHO(世界保健機関)は、「健康とは、身体的(フィジカル)・精神的(メンタル)・社会的(ソーシャル)に完全に良好な状態(ウェルビーイング)であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義しています。
 この定義に対して、オックスフォード大学教授トワイクロス博士が1999年に、「身体的(フィジカル)」「精神的(メンタル)」「社会的(ソーシャル)」の他に、「霊的(スピリチュアル)」という概念を加えるべきだと提唱しました。しかし、この提言は、さまざまの宗教をもつ国、あるいは無宗教の国などの考え方を統一することができず、全加盟国の3分の2以上の賛成がなされなかったため、現在も討議中ということです。
 霊的(スピリチュアル)に良好であるということはどのような状態でしょうか。きわめてシンプルに考えれば、自分という存在に対して不安のない状態とでもいえるのでしょうか。精神的(メンタル)に不安がないと言うよりは、もっと根源的なものと思われます。では、スピリチュアルに苦痛(ペイン)がある状態というはどのような状態でしょうか。
 スピリチュアルペインは、「自分という存在の揺らぎや不安」とでも言ったらよいのかもしれません。宗教家や哲学者でもない私たちは、普段は「何のためにいきているのか」などと深くは考えません。命に関わるような病気や不慮の事故、老いを感じた時のように平穏な日常が破綻するような状況に出会った時、初めて、「なぜ自分は生まれてきたのか」、「何のために生きるのか」、「毎日こんな生活をしていくことに意味があるのか」、「なぜ自分はこんな病気になったのか」、「なぜ今、自分が死ななければならないのか」という問いを発します。
 怪我や疾患などによる身体の痛みのケアには薬を用います。精神的な病やストレスのケアには薬やカウンセリングがあります。失業や障害などによる経済的困窮のケアには社会福祉制度があります。しかし、スピリチュアルペインは、薬や社会制度などで取り除くことはできません。
 スピリチュアルケアについて、「人生のあらゆる事象に意味や価値を見出すことができるような、適切な思考法や有益な情報を効果的に伝えることによって、対象者が自分自身で、「心の免疫力」や「心の自己治癒力」を高めていくよう導くこと。」語っている人がいました。
 自分自身でさえ安易に答えることのできないスピリチュアルな問いに対して、それも、死に直面している人に寄り添いながらその問いの答えを導くためには、人間に対する深い洞察や愛、宗教的なものに対する畏敬や哲学に対する造詣が必要とされるのではないでしょうか。スピリチュアルケアが必要であることに疑問はありませんが、ケアに携わる人を
育成するのは簡単ではないような気がします。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心の機能の低下と退行 №211

2014-02-03 21:22:20 | インポート
 精神分析理論では、ストレス等により心の機能が低下することを「退行」といいます。ショックな出来事があったり、とても疲労したり、ある特殊な環境に置かれたりすると、知覚、思考、感情、行動をコントロールする「心の機能」が低下します。精神分析学者E・クリスは「退行」を「病的退行」と「自我の安定を図るための一時的・部分的退行」にわけて説明しています。
 病的退行とは、ストレスが加わり現在の状況より以前の状態へ、より未発達な段階へと逆戻りするもので、精神分析では口唇期(1歳位)まで退行するとうつ病、肛門期(3歳位)に退行すると強迫神経症、エディプス期(6歳位)に退行するとヒステリーを発病するというように考えます。
 一時的、部分的退行というのは、健康な自我の一次的・可逆的な退行現象であり、カラオケにいったり、お酒を飲んだり、ゲームに没頭したりしてストレスを発散させ、自我の安定を図ることです。「赤ちゃんがえり」も一時的・部分的退行といえます。
 病気になったり、高齢となってケアを受けることは心の機能が低下し「退行」の要素をはらんでいるといわれています。病気やけがは私たちを欲求不満の状態に置くことになります。この状況で退行が生じてきます。病気やけがに対して回復への不安や痛み、恐怖におそわれ、それを緩和してくれる医師や看護師、家族に依存状態となります。依存は心の中にある幼児体験を呼び起こします。母親に依存していた状態と同様に受動的になるからです。
 その場合、こんなことになった自分を周りの人は陰で笑ったり、悪口を言っているのではないかという「被害者意識」が強いと、「妄想的・分裂的」な精神状態になり、周りの人に迷惑をかけて申し訳ないという「自責的感情」が強いと、「抑うつ的」な精神状態になるといわれています。
 「ケアを受ける人の心を理解するために」(中央法規)の著者、精神科医の渡辺俊之高崎健康福祉大学教授は、介護者や家族はこうしたことを理解した上で、病気やけがで傷ついた人や高齢者の方の「退行」した心の回復に寄り添っていくことが必要だと述べています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

性格力(スキル)を高める! №210 

2014-01-27 15:03:48 | インポート
 先日、若者の就業支援には性格力を高めることが効果的である、という趣旨の提言が日経新聞に(1月20日付)掲載されていました。提言したのは、慶応大学の鶴光太郎教授です。ポイントは①学力より性格の方が職業人生に大きな影響がある、②性格力は青年期以降でも向上する、③それには職場実習が効果的である、ということでした。
 「性格力(スキル)」というのは聞きなれない言葉ですが、人間の性格を真面目さや協調性、情緒の安定、好奇心など5つの項目で判断する「ビッグファイブ」という特性論の理論に基づいています。「ビッグファイブ」というのは、性格について万人に共通する項目で表せるのは5つであり、その量的比較によって性格を捉えようとする考え方で、共通項目とされているのは以下の5つです。
①「開放性」は、知的好奇心の強さ、想像力、美の理解・興味、新しいものへの親和性、遊び心に関係する特性で、知能や創造性との関連も  指摘されています。
②「真面目さ」というのは、計画性、責任感、勤勉性などの特性で、自己統制力、粘り強さなどです。
③「外向性」は、積極的に外の世界へ行動していく志向性を意味する特性で、人間関係の社交性よりも広い意味で、活動的、上昇志向、エネ ルギッシュな傾向を表しています。
④「協調性」は、利他的な度合い、嘘のない態度、控えめといった事が関係する特性で、やさしさや思いやりに近いものです。
⑤「情緒の安定性」は、敏感さ、不安や緊張の強さを意味する特性で、これが高いと感情面・情緒面での不安定さやストレスを感じやすく、逆に 低いと情緒が安定しています。
 これらの能力は、知的能力に比べて青年期においても伸びしろが高いので、青年期の矯正は性格力(スキル)の向上に集中すべきではないかということです。公共訓練施設等で教育訓練を行うよりも実際の職場において訓練を受けさせることで効果が高いのは、技術の習得と同時に、仕事をさぼらない、他人とうまくやる、根気よく仕事に取り組むといった性格力(スキル)を高めることができるからだと言うことです。
 スウェーデンの例では、失業者が新たな職を見つけるために最も効果的だった方法は、民間に補助金を与えて常用として雇い入れるようなプログラムだったということです。公共職業訓練等、企業外でのフルタイムの授業による訓練は何もプログラムを受けない失業者よりも就職確率がむしろ低下したそうです。
 実際に企業で責任を持って働くことで、職業に必要な技術以外に、責任感をもって粘り強く仕事に取り組むこととか、協力しながら仕事を進めることなどが身につき、性格スキルを高めることができたことによるものではないかと考えられています。
 勤勉で協調性があり、積極的な人材を育成することが重要であるということは、専門高校の校訓などでも掲げていることで、格別、目新しいことではありません。ただ、こうしたことが、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘッグマン教授等の研究成果に基づいているところに、説得力があります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

発達障害の増加と愛着障害 №209

2014-01-21 14:49:50 | インポート
 心の病は社会環境の歪みを映しだす鏡だともいわれています。近年、統合失調症が軽症化してきた一方でうつ病や不安障害、境界性パーソナリティ障害を中心とするパーソナリティ障害、依存症、摂食障害、発達障害が増加しているということです。
 統合失調症が軽症化してきた理由として考えられているのが、社会の規範や縛りが緩くなったために、統合失調症の人にかかる精神的緊張が薄らいでいるのではないかということです。個人主義で他人への関心や干渉が希薄な社会環境のほうが、統合失調症の人にとって暮らしやすいのではないかといわれています。
 しかし、うつ病や不安障害、境界性パーソナリティ障害を中心とするパーソナリティ障害、依存症、摂食障害、発達障害はなぜ増加しているのでしょうか。
 うつ病は働く人達だけでなく、主婦や高齢者、若者や子どもにまで増加しています。パニック障害をはじめとする不安障害は遺伝的要因も考えられますが、短期間で遺伝的要因が変化することは考えられません。境界性パーソナリティ障害や摂食障害は、1980年代から急激に目立ち始めたといわれています。
 特筆されるのが「発達障害」の増加で、とりわけ増加率が目立つのが自閉症スペクトラムで、この30年間で数十倍に有病率が上がっているようです。学習障害やADHDも増加し、ADHDの有病率は5~6%、学習障害は10%に上るとも言われています。発達障害は統合失調症と同じくらい生物学的要因が強く、高い遺伝率もつものと考えられてきましが、統合失調症の有病率が横ばいか減少傾向なのに対して、発達障害は増加し続けているということです。
 精神科医の岡田尊司先生は「愛着崩壊」(サブタイトル~子どもを愛せない大人たち~)という著書の中で、その根本原因は、乳幼児(2歳位まで)の頃に十分に母親等の養育者と接する時間が少なかったからではないかと言っています。愛着(アタッチメント)は、イギリスの児童精神科医ボウルビィの、人と人との親密さを表現しようとする愛着行動についての理論です。子どもは社会的、精神的発達を正常に行うために、乳幼児の頃に、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無いと、子どもは社会的、心理学的な問題を抱えるようになるという理論です。
 離婚や経済的な問題等によりやむを得ず働きに出なければならないため、乳幼児の時期に十分接する時間が持てない環境が根本にあるのではないかということです。祖父母が近くに住んでいれば預けることもできますが、ほとんどの場合は保育所に預けることになります。愛着障害による子どもをつくらないためには、安心して子育てができる環境を社会全体が支えるシステムが必要です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東大を目指すロボット №208

2014-01-08 16:40:50 | インポート
  1月7日付けの日経新聞に東大入学を目指しているロボットの記事が掲載されていました。このプロジェクトは、国立情報学研究所が中心となって、細分化された人工知能分野を再統合することで新たな地平を切り拓くことを目的に、2021年度に東京大学入試を突破することを目標に研究活動を進めているということです。
  思い起こせば、今から17年前、平成9年(1997年)5月、IBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」が、当時チェスの世界王者だったゲイリー・カスパロフと対戦し、「コンピューターに負けることなどない」と豪語していた世界チャンピンを破り話題となりました。一昨年(2012年)1月には、東京・将棋会館(東京都渋谷区)で富士通研究所の伊藤英紀研究員が開発したコンピュータ将棋ソフトの「ボンクラーズ」が、当時日本将棋連盟会長だった米長邦雄永世棋聖と対局し、「ボンクラーズ」が113手で勝利しました。
  コンピュータによる翻訳の世界でも、膨大な対訳文を統計的に分析して規則性を見つけ出す、「機械学習」が突破口となり、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の翻訳ソフトは「特許の出願など対訳データが豊富にある分野なら90%以上の精度で翻訳が可能になった。」ということです。これまで困難と思われていた通訳の機械化が実現する日が近づいています。
 現在のところ、国立情報学研究所が推進しているロボットの能力は「代ゼミ」のセンター模試で平均点以下ということです。それでも、私立大学の学部のほぼ半数で合格可能性80%以上のA判定が出るところまではきているということです。プロジェクトリーダーの新井紀子教授は、「もし、AI(人工知能)が東大に入学できる能力をもったら社会が変わる。文章を要約できるレベルになれば、ホワイトカラーで影響を受けない職種はない。」と言っています。
 製造業では無人工場というのがありますが、電話番以外の無人オフィスが出現する可能性もあるわけです。労働から解放され、余暇時間が増え、理想的なライフスタイルが築けるのであれば良いのですが、知的な労働までロボットに奪われ十分な賃金が得られなくなる大量失業時代になってしまう恐れもあります。
 コンピュータに仕事を奪われず使いこなすには、創造性に富み、コンピュータを操るプログラミング技術が不可欠となりますが、果たしてそうしたクリエイティブな業務に携われる人がどれだけいるのでしょうか。なかなか楽観的な気持にはなれません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「発達障害かもしれない大人たち」(2) №207

2014-01-07 16:04:48 | インポート
 自閉症スペクトラムに属する人の特徴や生きづらさについて、林先生は次のようなことをあげています。
 ①物事に固執し柔軟な考え方ができない。
 ②物事に対する認識が狭小で、独特な考え方をもっていることが多い。 
 ③納得がいかなくても頑張ってしまい、疲れ果ててしまう。
 ④能力のばらつきが多く、できることとできないことの差が大きく、自尊心を持ちにくい。
 ⑤表情を読みとるのが苦手で、暗黙の了解ができない。細かいところまで言われないとできない。
 ⑥外からの刺激と概念を結ぶセンサーが少ないので、感情表出が苦手である。 
 こうした生きづらさをどのように社会と適応させていったらよいのか、林先生は、本人と周囲の人達のケアとして以下のことをあげています。
<発達障害をもつ本人にできること>
 ①苦手なことは、手伝ってもらったり、迷惑にならない範囲で人にまかせる。
 ②できないからといってあきらめず、できるように工夫する
 ③自分がどのような人間かを知り、ひとのせいしない。
<発達障害の周囲の人がとるべき態度>
 ①頭ごなしに否定しない。失敗しても叱ったり、怒鳴ったりしない。
 ②得意、不得意があることを理解し、可能な限りほめる。
 ③ 一つ一つ丁寧に理を説いて諭すよう努める。
 ④してはいけないことをしたとき、しっかり叱る。
 自閉的特性を持っている人は、選択すべき可能性が多いと、それを絞り込んで決断することができず「結局どうすべきかわからない。」という状態に陥り、脳がフリーズしてしまい、仕事が進まない、できないという事態に陥ります。こまかく手順を教えても想定外の出来事が起こるとパニックになってしまうので、想定外のことが起きても大丈夫だと安心させておくことが必要だと言います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「発達障害かもしれない大人たち」(1) №206

2014-01-07 15:59:20 | インポート
 落ち着きがない、忘れ物が多い、人の話を聞かない、できることとできないことの差が多く、集中力が足りない。以前は、こうしたことは、家庭のしつけや教育の問題であり、脳機能の障害であるということはほとんどありませんでした。
 この本の著者、精神科医師の林寧哲先生は、ご自身のことを「アスペルガー障害を経た広汎性発達障害」と診断しています。ご自身が長いこと自分が発達障害であることを知らずに苦しんできた体験があるのだそうです。そうしたことから、社会の中で普通のことに対してどのようにふるまったら良いのかわからずに困ったり、他人に迷惑をかけたりしている人たちの多くは、アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムに属する人たちだったり、その他の発達障害だったりする場合が多いのではないか、とこの本を書いたきっかけを話しています。
 発達障害については、平成17年4月に施行された発達障害者支援法で、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」とされています。
 自閉症スペクトラム(「スペクトラム」は「連続体」ということで、自閉的特性の程度が軽いものから重いものまでを含んでいる)については、その特性が強くなると対人関係がほとんど構築できなくなってしまうので、本人が生きづらいという感覚におちいることはなく、むしろ、自閉的特性が軽い人、特定不能の広汎性発達障害といわれる人達が対人関係で一番苦労しているのではないかといいます。
 アスペルガー障害(症候群)は、自閉的な特徴を有してはいるものの、言語発達の遅れがなく、重大な認知の遅れ、適応上の障害が希薄であるとされています。つまり、言語発達の遅れがあるかないかが、自閉症スペクトラムとの診断上の違いということです。
 学習障害は他の能力は普通なのにもかかわらず、漢字の読み書きや算数など特定の科目に限って著しく能力が劣る場合を言います。
 注意欠陥多動性障害は、衝動性が高く脳の活動が不安定であり、耐性が低く、我慢が苦手なことが特徴ですが、ほぼ薬でコントロールできることが多いといっています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする