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「仮面うつ」と「微笑みうつ」 №205

2013-11-25 15:52:09 | インポート
 「仮面うつ」の人は、「うつ病」でありながら、便秘や食欲不振などの消化器症状、頭痛・めまいなどの神経症状、身体各部の慢性的な痛み等どちらかというと身体症状を訴え、精神症状としての「うつ症状」についてはあまり訴えません。
 そのため内科に受診し、うつ病の診断がつかないことが多いのです。睡眠障害、寝付きが悪い、朝早く目覚める、眠りが浅い、食欲低下、性欲低下、だるい、下痢、便秘、腹痛、頭痛、筋肉痛、四肢痛、肩こり、しびれ、めまい、動悸、発汗、口のかわき、胸やけ、息苦しさ、胸の圧迫感、熱感、目のつかれ、食べ物の味がしない、頻尿など多彩な症状がみられます。最近では、「過食」の人もみられるようです。
 身体の症状が全面に出てくるため、精神症状がマスク(仮面)されているという意味で、「仮面うつ病」と呼ばれています。特にサラリーマンに増加しており、仮面うつ病患者では自殺することがあるので注意しなければならないといわれています。頑張りやさんの学生や、猛烈サラリーマンタイプに多いようです。外出したくない、人に会いたくない、ボーッと閉じこもって何もしない、出社しない、登校しないなどが特徴です。
 また、最近、中高年の間に「微笑みうつ」といわれる症状を呈する「うつ病」の人が増加傾向にあるといわれています。集中力がなくなり、仕事上のミスも目立つようになり、ボーっとしていることが多くなるので、周囲の人がそれとなく指摘しても、にこにこと微笑みを浮かべて元気そうに振る舞うので、「大丈夫かな」と思ってしまいます。しかし、じつはうつ状態にあるのを隠そうとして無理に明るくしているに過ぎません。心療内科などの受診を勧めても、医師の前でさえにこやかに振る舞うので、医師も診断にとまどうようです。
 「微笑みうつ」には、うつ病特有の日内変動という生活リズムの変化が見られるといわれます。午前中はボーっとし、それでいて話しかけると明るく振舞い、午後から退社まで頑張り通すというのがパターンです。これが続くと、ストレスはますますたまり、突然、蒸発や自殺といった最悪のケースも考えられます。重傷のうつ病の場合は自殺する気力も起きませんが、「微笑みうつ」のような軽症のうつ病の場合はまだ気力が残っているので、むしろ危険だと言われます。
 「微笑みうつ」は、仕事や人間関係からくるストレスが主な原因で、真面目で責任感が強く、体面を気にして自己犠牲をいとわないタイプがかかりやすいうつ病といわれています。「微笑みうつ」は「うつ病」でも軽症な場合が多いようですが、危険なのは、本人に悩みがあっても周りの人に気づかれないようニヤニヤと体裁笑いをして振る舞うので、「病」が進行してしまうところだといわれます。
 「仮面うつ」も「微笑みうつ」も、特に職場や家庭での人間関係などで無理をすることから生じやすいので、時には周囲に弱みを見せる心のゆとりと勇気を持つことが大切です。ただ、それができるのならそもそも「うつ病」にかからないのかもしれませんが、自分を守るのは自分自身であることを忘れないでいたいものです。
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道徳の評価について №204

2013-11-21 15:29:19 | インポート
 文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」は平成25年11月11日、正式な教科となっていない小中学校の「道徳の時間」を教科に格上げするべきだとする報告書案を示しました。ただし、評価については、他の教科と異なり、「数値による評定」は不適切とし、児童生徒が成長を振り返ったり、学校側が指導の改善に生かしたりするため、「記述式の評価」を検討すべきだとしています。また、指導に必要な教員免許は設けず、授業は小中ともに担任が受け持つとされています。
 現行の学習指導要領では「道徳教育は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、その他社会における具体的な生活の中に生かし、豊かな心をもち、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、個性豊かな文化の創造を図るとともに、公共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に努め、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人を育成するため、その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。」とされています。
 反対する立場の人達からは、特定の価値観を教えることにつながりかねないという反発があるほか、いじめ問題にこと寄せて政府のいう「愛国心」をかなめとする国家主義的な道徳教育のいっそうの徹底をはかろうとするものではないかという批判が出ています。
 そもそも道徳は評価になじむのかという疑問を抱く人も多いかと思いますが、アメリカの心理学者ローレンス・コールバーグ(1927年~1987年)は、「道徳性発達理論」の中で、人間の道徳的判断は3つのレベルと6つの段階をもつと述べています。
 レベルⅠは、前道徳的あるいは、慣習以前のレベルと呼ばれるものです。その第1段階は道徳発生以前の無道徳の時期であり叱られなければ良いという段階です。第2段階は、罰を恐れ、権威のある者に服従する段階です。つまり、この水準にいる就学前から8歳位までの子どもは、規則を守り大人が求める規則に従いますが、それは、そうすることが正しいことというよりは、罰を避けたり報酬を得るために行動する段階だといわれています。
 レベルⅡは慣習的レベルと言われる段階です。第3段階の自己の利害を考えて行動する日和見主義的段階と、第4段階の周囲の期待に応えて行動しようとする段階です。このレベルでは先生や親からの承認を得ようとしてそれに同調し、「よい子」としてふるまうようになるといわれています。
 レベルⅢは自律的、道徳的原理による判断の段階です。第5段階が契約と民主的に受容された規則に従う段階で、第6段階は、それぞれの小さな規則よりも、もっと根本的・普遍的な原理から自律的な行動ができる段階です。このレベルでは法や規則にしばられずに普遍的な原理にしたがって道徳性を判断できるようになるといわれています。
コールバーグは道徳性の発達レベルを測定するために、愛する人を救うために犯罪を犯してしまうというような、「モラルのジレンマ」がある物語を使って考えさせ、どの道徳レベルで認知するかによって道徳性の発達レベルを決定するように提唱しています。
 簡単なことではありませんが、発達段階の目安があれば評価することも可能ではないかと思いますが。
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おひとりさまの老後とソリチュード №203

2013-11-07 14:53:45 | インポート
 上野千鶴子さんの「おひとりさまの老後」を読みました。その中で、日本語の「孤独」という言葉は、英語では、「ロンリネス(Loneliness)」と「ソリチュード(Solitude)」という2つの言葉で表わされるという一節がありました。
 「ロンリネス」は、友達がいない、交友関係がないというような場合の、寂しいとか心細いという時に使われる言葉で、「ソリチュード」は、むしろ独りでいることが快適で、静かにくつろぐことができるというようなニュアンスで使われるようです。
 上野さんは、「おひとりさま」だからといって「ロンリネス」とは限らない。むしろ「おひとりさま」だからこそ、「ソリチュード」の人もいると言っています。趣味のサークルやデイケアセンターにでかけて寂しさを紛らわしたいと言う人もいるでしょう。独りきりで読書をしたり、音楽を聞きながら自分だけの世界に浸り、食事も入浴も就寝も誰に気を使うことなく自分のペースで生きていくことで充実感に浸れる人もいるのです。
 イシドロ・リバスというイエズス会司祭は、『同じ孤独でも「ロンリネス」と「ソリチエード」とはその意味するところはたいへん違う。両者は無関係なのではなく、むしろ深い関係があるとも言える。「ロンリネス」に陥って寂しくなる時に、もしそれをごまかさないで正面から見つめれば,多くの場合「ソリチュード」へのきっかけとなる。すなわち寂しい時に一人になって考えたり、本を読んだり、黙想したりして、深い「ソリチュード」を味わうことができるようになる。
 現代人の多くの不安と寂しさは、「ソリチュード」の時間がほとんどないところからくるのではないか。「ロンリネス」に悩んで仲間を求めるが、「ロンリネス」になるのは仲間がいないからではなく、心の底からの本当のコミュニケーションが足りないからだ。いつも他人と共にいて「ソリチュード」がないから、本当の自分を失って、本当の自分を分かち合うことができなくなってしまいる。一言で言えば、「ロンリネス」になるのは「ソリチュード」が無いからだ。』といっています。
 私たちはともすると一人でいることが不安で、さして関わりたくない人達と群れることで寂しさを紛らわせていますが、ふと我に返ったとき言いようのない虚しさや不安を感じるときがあります。あえて「おひとりさま」を選ぶこともありませんが、一人でいても、自分が世界や周囲の自然の中で人として生き、生かされていることを感じられることができるようにありたいものです。
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「ひきこもり」と「孤立無業者」 №202

2013-10-29 17:05:10 | インポート
 景気が上向いてきたとはいえ、学生の就職状況はまだまだ厳しいものがあります。20社~30社、多い学生は50社前後受験します。それでも内定をとることができずに自信を失い、そのまま「ひきこもり」状態になってしまう学生もいます。自分が社会から必要とされていないのではないかと暗澹たる気持になるのは良くわかります。「どうにかなるさ」と楽天的に考えられればよいのですが、「どうにもならない」と悲観的になり、自分の部屋に閉じこもり、外出もしなくなり、昼夜が逆転してきます。
 厚生労働省は「ひきこもり」について次のように定義しています。「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊)などを回避し、原則的には、6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしている場合も含む)。」2010年の内閣府調査では69.6万人いると推計されています。
 それでも、学生のうちは、学校にいけば何らかのかたちで人と接する機会もありますが、いったん社会人となってしまうと、仕事に就いていないとほとんど人と接する機会がなくなってきます。年齢が高くなればなるほどそうした傾向は強くなります。東京大学の玄田有史教授は、「20歳以上59歳以下の在学中を除く、未婚、無業者のうち、ふだんずっと1人か一緒にいる人が家族以外いない人々。」を「孤立無業者(Solitary Non-Employed Persons:SNEP(スネップ))」と呼んでいます。 2011年の調査で162万人いると推計しています。「孤立無業者」の約9割が6ヶ月以上無業を続けていて、めったに外出しない人もいることから、20歳以上の「ひきこもり」の人は「孤立無業者」に含まれているといってよいでしょう。
 「ニート」は求職活動をしない若年無業者ですが、「孤立無業者」は消極的ではあっても求職活動をしています。ただ、産業構造が変化していく中で、社会の求める新たなスキルを手に入れることはなかなか難しいことです。玄田教授は「孤立無業者の増加は、生活保護受給者の更なる増加など、社会の不安定化と財政負担の要因となり得るものであり、アウトリーチの充実や福祉から就労への移行支援など、早急な 政策対応が求められる。」と語っています。
 私たちの国が成熟した豊かな社会となるためには、「ひきこもり」や「孤立無業者」の人達に働く場所を提供できるよう、いったん社会人となった後でも、職業能力を開発し、新たな技術や知識を手に入れられるリカレント教育の制度的な仕組みをつくっていく必要があります。
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強迫性貯蔵症という病 №201

2013-10-26 12:46:35 | インポート
 あまり必要でもなさそうなモノをため込んで、片づけたり、捨てることができない人がいます。これが高じると、いわゆる「ゴミ屋敷」状態となり、家族や近隣の人たちに迷惑をかけるようになり、本人の健康被害も心配されてきます。
 これは強迫性貯蔵症(ホーディング)という病気で、アメリカではおよそ300万人がこの病気に該当すると言われているようです。強迫性貯蔵症(ホーディング)の人をホーダー(Hoader)といいますが、この人たちがなぜモノをため込み、捨てられないのかについては、以下のように説明されるようです。
①今拾って(集めて)おかないと、後で二度とそのチャンスがなくなるのではないかという強迫観念から、必要もないモノを集めてしまう。
②集めた個々のモノに愛着を持ち、それらに囲まれていることでくつろぎや安心を感じる。
③捨ててしまうことで、そのモノを無駄にしてしまうのではないか、という不安や罪悪感 があって捨てることができない。
 ホーダー(強迫性貯蔵症の人)は、その行為による不安や罪悪感を感じつつも、病気であるという意識が希薄であるために自ら受診するようなケースは少ないようです。ホーディングを行う本人にも、それなりの考えがあるため、周囲の人には、本人の話に耳を傾けるなどコミュニケーション、信頼関係が重要だということです。
 海外ではホーダーを対象にした専門的治療を行っている機関もあるそうですが、日本国内ではまだまだ認知度も低く、現在、そのような溜めこみを対象にした専門治療を正式に行っているところはないと思いますが、最近、金子書房から五十嵐透子上越大学教授の訳でゲイル・スティケティー/ランディ・フロスト共著の「ホーディングへの適切な理解と対応 ~認知行動療法的アプローチ~」という本が出版されました。セラピストガイドの他に、ホーダー(強迫性貯蔵症の人)のためのワークブックも出版されています。
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「なりたい職業」と「なれる職業」 №200

2013-10-21 17:03:02 | インポート
 一般的に職業選択には三つのプロセスがあるといわれています。第一段階が、「興味・関心」です。第二段階が、「能力・適性」です。スポーツに例をとってみればわかりやすいと思いますが、野球やサッカーに興味・関心があり、そこそこ上手くても、それだけではプロになれません。プロとして報酬を得るには、興味・関心があるだけでなく、高い能力や適性が要求されます。
 第三段階が、「環境因子」です。環境因子というのは、自分の成育環境をめぐる様々な要因のことです。例えば、長男であるとか、一人っ子であるとかという家庭環境であれば、保護者の面倒をみるため、自宅通勤可能な職場を選ぶということになります。また、医師や先生になりたいと思っても、経済的な要因で進学そのものを断念せざるを得ない人もいます。
 子どもの頃、「将来どんな仕事をしたいの」と聞かれると、たいがいの子どもは素直にあこがれの仕事を言うことができます。ベネッセ教育総合研究所が行った「子ども生活実態基本調査」のアンケート結果(20009年)によると、小学生の男の子が「なりたい職業」の上位は、①野球選手②サッカー選手③医師④大工、ゲームクリエイター、大学教員の順で、5年前とほとんど変わっていません。女の子は①ケーキ屋さん・パティシエ②保育園・幼稚園の先生③芸能人④看護師⑤デザイナーの順です。漫画家の人気が落ちてデザイナーがあがっています。
 同じ調査で高校生男子が「なりたい職業」は、①学校の先生②公務員③大学教員④医師⑤SEの順で、高校生女子では、①保育園・幼稚園の先生②学校の先生③看護師④薬剤師⑤理学療法士、臨床検査技師、歯科衛生士の順となっています。当然のことながら、高校生になり、自分の能力・適性や家庭環境などが客観的に把握できるようになるにしたがい現実的で安定的な志向が目立ってきます。
 問題は、能力・適性等から判断して、「なりたい職業」に就くことはほとんど不可能だと周囲の人には思えるのに本人が「現実と妥協」することなく、「夢」を追い続ける場合や、「なりたい職業」を見失い「現実逃避」してしまう場合です。
 ベネッセの調査によると、5年前に比べて「なりたい職業」が「ない」と回答する子どもの数が増加しているということです。特に、高校生男子の54%が「なりたい職業がない」と答え、5年前の調査に比べ18%も増加しています。女子でも39.3%が「なりたい職業がない」と答え、14%も増加しています。
 就職そのものが難しい時にあって、「なりたい職業」を選択する余地はほとんどなく、とりあえず「なれる職業」を選択せざるを得なくなっているというのが現実です。そこで問われるのは、「適性」よりもむしろ「適応力」といった方が良いのかもしれません。
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自殺と天候 №199

2013-10-03 10:47:12 | インポート
 日照時間が少ない曇りや雨の日が連続した後に、鉄道自殺や未遂が増加する傾向があることを、京都大と滋賀医大のチームが明らかにし、先頃発表しました。
 チームによると、自殺が増える日を予測して踏切や駅をパトロールしたり、光を浴びると症状が改善するうつ病治療用の高照度白色光などをホームや車両につけたりすることで、自殺予防に役立つのではないかと提言しています。
 調査は、鉄道自殺が最も多い東京、神奈川、大阪の3都府県で、2002年からの5年間に、自殺や自殺未遂が理由で鉄道の運休や30分以上の遅れが発生した日の直前の日照時間を調べて行われました。滋賀医大の角谷寛特任教授は「当日の天気より、直前の数日間太陽光を浴びないことの方が感情の落ち込みやうつ症状に影響を与えているのでは」と話しています。
 実際、季節によるストレスが影響する心の病いもあります。春から夏にかけてうつが現れやすいという人がいるようですが、なかでも多いのが秋から冬にかけてうつ病になる人で、「季節性うつ病」とよばれています。
 「季節性うつ病」の特徴は、日照時間が短くなり、気温が低下するにつれて、心身が重くなり、気分も落ち込み、悲観的なことばかり考えるようになり、何時間寝てもまだ眠く、朝はなかなか起きることができなります。さらに大きな特徴としては、食べ物が偏って過食になりがちなところだといわれています。まるで、冬眠を迎えるかのような状態になるのです。 
 ドイツの文豪ゲーテが死に瀕して「もっと光を」と言ったことは有名な話しですが、どんよりした天気が続き、気分が滅入った時には、自然のものであれ、人工的なものであれ、「もっと光を」浴びることが死の誘惑から身を守るすべなのです。
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ホンダのバイクが疾走するハノイの街 №198

2013-09-23 16:06:31 | インポート
 先日友人と連れだってベトナム・ハノイに旅行してきました。かつては東京(トンキン)と呼ばれたこともあるハノイ(河内)の街は「若者」と「バイク」であふれるような熱気に包まれていました。
 1975年のベトナム戦争終結後も周辺国との戦いが継続し、ようやく戦火が収まったのは1990年代です。長い間過酷な状況に置かれ、多くの尊い命が奪われました。このため、国民の平均年齢は27歳という若い国です。
 ヘルメットに防塵マスク姿の若者が、信号のほとんどない市内を警笛を鳴らしながら慌ただしく行き交っていました。2人乗りが多く、中には3人乗り、4人乗りの人もいます。子供を含めて4人乗りまでは違反にならないということです。
 スクーターを運転する父親のハンドルの前に子供が立ち、後ろのシートには乳飲み子を抱えた母親が乗っている姿も多く見ました。片手で携帯メールを打ちながら運転しているポーニーテールの若い女性の姿や、赤ちゃんを左手に抱えて運転する若い母親がいたりして驚きます。
 鉄道はありますが、一日一便ということで輸送手段としてはほとんど役立たないようです。幌付きの大型トラックは時折見かけますが、軽トラックはほとんど見かけません。荷物の運搬もバイクが中心です。缶ジュースを満載したバイク、トイレットペーパーや洗剤などの日用雑貨を積み上げて走るバイク。なかには、ニワトリを何十羽も押し込めた篭を載せたバイクを運転している人もいます。
 そのバイクの9割近くがホンダのバイクというのも驚きです。ベトナムでのホンダの知名度やブランド力は圧倒的で、かつては、オートバイのことが、一般名詞として「ホンダ」と呼ばれていたこともあったそうです。ホンダ以外、ヤマハとスズキのバイクを見かけましたが、他の国のものは見かけませんでした。一時、中国製のバイクが値段の安さで流行ったようですが、故障が多く信頼を失い早々と撤退したということです。
 なぜ、ホンダのバイクが圧倒的な信頼を得たのでしょうか。それは、先進国の常識では到底考えられない100キログラムを超す重貨物搭載や、3人乗り、4人乗りといった曲乗り状態にも耐える高い信頼性によって、オートバイを生活の道具として重要視するベトナムのユーザーから強い支持を得たことにあるようです。乗用車もトヨタやホンダ、マツダ、ベンツが走っていますが、その周囲をバイクが取り囲むように走り回っています。警笛が絶えず鳴っていますが、誰も気にしません。
 平均年齢27歳という若さが、アクロバティックな交通社会をもたせていると言っても過言ではありません。交通信号のない交差点で渋滞することなくバイクが流れていくのをみると、とても私たちには真似できないと思います。信号が極端に少なく、あっても守らない人もいて、4日間の滞在中、現地の女性ガイド「ズン」さんの先導してくれたとき以外、怖くて誰も横断歩道を渡ることはできませんでした。
 ガイドの「ズン」さんによると、早く渡ろうとしてはだめで、ゆっくり渡っているとバイクや車が避けながら走ってくれるのだそうです。川の中に障害物があるのを避けて流れる水のように考えればよいのかもしれません。適切な政治運営がなされれば、おそらく、10年後、20年後には素晴らしい発展を遂げているだろうと予感させる若さとエネルギーを感じさせる街でした。
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コーヒーは身体に良いのか悪いのか? №197

2013-09-09 14:50:12 | インポート
 先日新聞にコーヒーが糖尿病の発症を抑制するという記事が掲載されていました。コーヒーに含まれるポリフェノールの抗酸化作用が糖尿病の発症を抑制する効果があるということです。また、カフェインがエネルギーを熱のかたちで放出することにより、体内にたまる脂肪を減少させるという可能性もあるということでした。
  一方で、コーヒーに含まれるカフェインが膀胱ガンのリスクを高めたり、動脈硬化のある人では心筋梗塞の発症、妊娠中の人では、流産や早産の恐れがあるとも書かれています。腎不全の患者ではカリウム濃度が高くなりすぎる心配もあるとされています。
 何事もほどとほどにといってしまえばことは簡単ですが、コーヒー好きの人にとってはいったいどの程度なら大丈夫なのかと気をもむところではあります。コーヒーの最も特徴的な成分は、カフェインですが、カフェインの薬理作用としては以下のものがあるといわれています。
①眠気や疲労感を取り除き、思考力や集中力を増す
②中枢神経に作用し、呼吸機能や運動機能を高める
③腎臓に作用して利尿効果を促進する
④胃液分泌を促進し、消化を助ける
⑤アセトアルデヒド(二日酔いの原因)の排泄を促進し、二日酔いの頭痛に効果がある
⑥脳内の血流を良くすることによって、脳血管性の偏頭痛を静めたり、ボケを予防する
⑦過酸化脂質の発生を抑えることにより、肝臓 ガンや消化器官のガンなどを予防する
 カフェインの作用とは別に、コーヒーには、飲酒による肝臓の負担を軽減したり、コレステロール値を下げ動脈硬化を予防する効果があるといわれています。
 では、コーヒーの害についてはどうなのでしょう。基本的にコーヒーは胃にやさしい飲み物で、ドイツでは開腹手術をした患者さんが術後最初に口に入れる飲み物としてコーヒーを勧める病院もあるということです。ただ、胃液分泌を促進するため「消化性胃潰瘍」を助長する危険もあるようです。また、コーヒーに含まれるタンニンなどの成分は鉄イオンと結びついて、鉄分の吸収を阻害してしまうことがあるので、貧血気味の人は食後30分はコーヒーを飲まないようにした方が良いということです。
 いずれにしろ、カフェイン摂取が1日に400ml(コーヒー3~4杯)程度であれば、健康的な成人にとって、副作用的な影響はみられないとのことです。ただし、妊娠中の人や子どもでは、1日200mg(コーヒー1~2杯)程度にしたほうが良いようです。
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ダイエットに失敗するのはなぜ? №196

2013-08-28 17:55:54 | インポート
 ダイエットに失敗する最大の理由は、空腹ではなく、偏食や栄養不足により、心のエネルギー源が不足し、うつ傾向となり、心がおれ、やる気を失ってしまうからのようです。
 稲毛病院健康支援科部長の佐藤努医師(8月28日付け埼玉新聞)によると、ダイエットのために食事を減らすことで、カロリーだけでなく、エネルギー消費に必要なビタミンB群、特にB3(ナイアシン)の摂取量も減らしてしまうことにより、脳内の心系アミノ酸が不足し、心の代謝に失調を来し、継続性に支障がでて失敗するのだということです。
  ビタミンB3(ナイアシン)は、ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称で、熱に強く、糖質・脂質・タンパク質の代謝に不可欠なものです。循環系、消化系、神経系の働きを促進するなどの働きがあり、欠乏すると皮膚炎、口内炎、神経炎や下痢などの症状を生じます。
 このビタミンB3(ナイアシン)が不足すると、それを補うために、体内の「トリプトファン」(必須アミノ酸の一種)からビタミンB3を合成します。このため、今度は体内の「トリプトファン」(必須アミノ酸の一種)が不足してしまいます。
 「トリプトファン」が不足すると、脳内神経伝達物質の一つであるセロトニンが減少し、うつ状態、不安症、恐怖症、多動、不眠症、痛みなどの症状を引き起こします。ダイエットのために偏食や栄養不足になり、食材から十分な「トリプトファン」をとれなくなるため、やる気が失なわれ、続ける気持を失ってしまうことが失敗の原因だということです。
 ちなみに、この「トリプトファン」を多く含むといわれている食品は、バナナ、緑黄色野菜、赤身肉、チーズ、パイナップル、アボガド、大豆、カボチャの種等です。
 ダイエット成功の鍵は、心の栄養に十分配慮し、心身のバランスをとり、心をコントロールできるかどうかにかかっているようです。

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