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自殺と天候 №199

2013-10-03 10:47:12 | インポート
 日照時間が少ない曇りや雨の日が連続した後に、鉄道自殺や未遂が増加する傾向があることを、京都大と滋賀医大のチームが明らかにし、先頃発表しました。
 チームによると、自殺が増える日を予測して踏切や駅をパトロールしたり、光を浴びると症状が改善するうつ病治療用の高照度白色光などをホームや車両につけたりすることで、自殺予防に役立つのではないかと提言しています。
 調査は、鉄道自殺が最も多い東京、神奈川、大阪の3都府県で、2002年からの5年間に、自殺や自殺未遂が理由で鉄道の運休や30分以上の遅れが発生した日の直前の日照時間を調べて行われました。滋賀医大の角谷寛特任教授は「当日の天気より、直前の数日間太陽光を浴びないことの方が感情の落ち込みやうつ症状に影響を与えているのでは」と話しています。
 実際、季節によるストレスが影響する心の病いもあります。春から夏にかけてうつが現れやすいという人がいるようですが、なかでも多いのが秋から冬にかけてうつ病になる人で、「季節性うつ病」とよばれています。
 「季節性うつ病」の特徴は、日照時間が短くなり、気温が低下するにつれて、心身が重くなり、気分も落ち込み、悲観的なことばかり考えるようになり、何時間寝てもまだ眠く、朝はなかなか起きることができなります。さらに大きな特徴としては、食べ物が偏って過食になりがちなところだといわれています。まるで、冬眠を迎えるかのような状態になるのです。 
 ドイツの文豪ゲーテが死に瀕して「もっと光を」と言ったことは有名な話しですが、どんよりした天気が続き、気分が滅入った時には、自然のものであれ、人工的なものであれ、「もっと光を」浴びることが死の誘惑から身を守るすべなのです。
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ホンダのバイクが疾走するハノイの街 №198

2013-09-23 16:06:31 | インポート
 先日友人と連れだってベトナム・ハノイに旅行してきました。かつては東京(トンキン)と呼ばれたこともあるハノイ(河内)の街は「若者」と「バイク」であふれるような熱気に包まれていました。
 1975年のベトナム戦争終結後も周辺国との戦いが継続し、ようやく戦火が収まったのは1990年代です。長い間過酷な状況に置かれ、多くの尊い命が奪われました。このため、国民の平均年齢は27歳という若い国です。
 ヘルメットに防塵マスク姿の若者が、信号のほとんどない市内を警笛を鳴らしながら慌ただしく行き交っていました。2人乗りが多く、中には3人乗り、4人乗りの人もいます。子供を含めて4人乗りまでは違反にならないということです。
 スクーターを運転する父親のハンドルの前に子供が立ち、後ろのシートには乳飲み子を抱えた母親が乗っている姿も多く見ました。片手で携帯メールを打ちながら運転しているポーニーテールの若い女性の姿や、赤ちゃんを左手に抱えて運転する若い母親がいたりして驚きます。
 鉄道はありますが、一日一便ということで輸送手段としてはほとんど役立たないようです。幌付きの大型トラックは時折見かけますが、軽トラックはほとんど見かけません。荷物の運搬もバイクが中心です。缶ジュースを満載したバイク、トイレットペーパーや洗剤などの日用雑貨を積み上げて走るバイク。なかには、ニワトリを何十羽も押し込めた篭を載せたバイクを運転している人もいます。
 そのバイクの9割近くがホンダのバイクというのも驚きです。ベトナムでのホンダの知名度やブランド力は圧倒的で、かつては、オートバイのことが、一般名詞として「ホンダ」と呼ばれていたこともあったそうです。ホンダ以外、ヤマハとスズキのバイクを見かけましたが、他の国のものは見かけませんでした。一時、中国製のバイクが値段の安さで流行ったようですが、故障が多く信頼を失い早々と撤退したということです。
 なぜ、ホンダのバイクが圧倒的な信頼を得たのでしょうか。それは、先進国の常識では到底考えられない100キログラムを超す重貨物搭載や、3人乗り、4人乗りといった曲乗り状態にも耐える高い信頼性によって、オートバイを生活の道具として重要視するベトナムのユーザーから強い支持を得たことにあるようです。乗用車もトヨタやホンダ、マツダ、ベンツが走っていますが、その周囲をバイクが取り囲むように走り回っています。警笛が絶えず鳴っていますが、誰も気にしません。
 平均年齢27歳という若さが、アクロバティックな交通社会をもたせていると言っても過言ではありません。交通信号のない交差点で渋滞することなくバイクが流れていくのをみると、とても私たちには真似できないと思います。信号が極端に少なく、あっても守らない人もいて、4日間の滞在中、現地の女性ガイド「ズン」さんの先導してくれたとき以外、怖くて誰も横断歩道を渡ることはできませんでした。
 ガイドの「ズン」さんによると、早く渡ろうとしてはだめで、ゆっくり渡っているとバイクや車が避けながら走ってくれるのだそうです。川の中に障害物があるのを避けて流れる水のように考えればよいのかもしれません。適切な政治運営がなされれば、おそらく、10年後、20年後には素晴らしい発展を遂げているだろうと予感させる若さとエネルギーを感じさせる街でした。
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コーヒーは身体に良いのか悪いのか? №197

2013-09-09 14:50:12 | インポート
 先日新聞にコーヒーが糖尿病の発症を抑制するという記事が掲載されていました。コーヒーに含まれるポリフェノールの抗酸化作用が糖尿病の発症を抑制する効果があるということです。また、カフェインがエネルギーを熱のかたちで放出することにより、体内にたまる脂肪を減少させるという可能性もあるということでした。
  一方で、コーヒーに含まれるカフェインが膀胱ガンのリスクを高めたり、動脈硬化のある人では心筋梗塞の発症、妊娠中の人では、流産や早産の恐れがあるとも書かれています。腎不全の患者ではカリウム濃度が高くなりすぎる心配もあるとされています。
 何事もほどとほどにといってしまえばことは簡単ですが、コーヒー好きの人にとってはいったいどの程度なら大丈夫なのかと気をもむところではあります。コーヒーの最も特徴的な成分は、カフェインですが、カフェインの薬理作用としては以下のものがあるといわれています。
①眠気や疲労感を取り除き、思考力や集中力を増す
②中枢神経に作用し、呼吸機能や運動機能を高める
③腎臓に作用して利尿効果を促進する
④胃液分泌を促進し、消化を助ける
⑤アセトアルデヒド(二日酔いの原因)の排泄を促進し、二日酔いの頭痛に効果がある
⑥脳内の血流を良くすることによって、脳血管性の偏頭痛を静めたり、ボケを予防する
⑦過酸化脂質の発生を抑えることにより、肝臓 ガンや消化器官のガンなどを予防する
 カフェインの作用とは別に、コーヒーには、飲酒による肝臓の負担を軽減したり、コレステロール値を下げ動脈硬化を予防する効果があるといわれています。
 では、コーヒーの害についてはどうなのでしょう。基本的にコーヒーは胃にやさしい飲み物で、ドイツでは開腹手術をした患者さんが術後最初に口に入れる飲み物としてコーヒーを勧める病院もあるということです。ただ、胃液分泌を促進するため「消化性胃潰瘍」を助長する危険もあるようです。また、コーヒーに含まれるタンニンなどの成分は鉄イオンと結びついて、鉄分の吸収を阻害してしまうことがあるので、貧血気味の人は食後30分はコーヒーを飲まないようにした方が良いということです。
 いずれにしろ、カフェイン摂取が1日に400ml(コーヒー3~4杯)程度であれば、健康的な成人にとって、副作用的な影響はみられないとのことです。ただし、妊娠中の人や子どもでは、1日200mg(コーヒー1~2杯)程度にしたほうが良いようです。
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ダイエットに失敗するのはなぜ? №196

2013-08-28 17:55:54 | インポート
 ダイエットに失敗する最大の理由は、空腹ではなく、偏食や栄養不足により、心のエネルギー源が不足し、うつ傾向となり、心がおれ、やる気を失ってしまうからのようです。
 稲毛病院健康支援科部長の佐藤努医師(8月28日付け埼玉新聞)によると、ダイエットのために食事を減らすことで、カロリーだけでなく、エネルギー消費に必要なビタミンB群、特にB3(ナイアシン)の摂取量も減らしてしまうことにより、脳内の心系アミノ酸が不足し、心の代謝に失調を来し、継続性に支障がでて失敗するのだということです。
  ビタミンB3(ナイアシン)は、ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称で、熱に強く、糖質・脂質・タンパク質の代謝に不可欠なものです。循環系、消化系、神経系の働きを促進するなどの働きがあり、欠乏すると皮膚炎、口内炎、神経炎や下痢などの症状を生じます。
 このビタミンB3(ナイアシン)が不足すると、それを補うために、体内の「トリプトファン」(必須アミノ酸の一種)からビタミンB3を合成します。このため、今度は体内の「トリプトファン」(必須アミノ酸の一種)が不足してしまいます。
 「トリプトファン」が不足すると、脳内神経伝達物質の一つであるセロトニンが減少し、うつ状態、不安症、恐怖症、多動、不眠症、痛みなどの症状を引き起こします。ダイエットのために偏食や栄養不足になり、食材から十分な「トリプトファン」をとれなくなるため、やる気が失なわれ、続ける気持を失ってしまうことが失敗の原因だということです。
 ちなみに、この「トリプトファン」を多く含むといわれている食品は、バナナ、緑黄色野菜、赤身肉、チーズ、パイナップル、アボガド、大豆、カボチャの種等です。
 ダイエット成功の鍵は、心の栄養に十分配慮し、心身のバランスをとり、心をコントロールできるかどうかにかかっているようです。

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肉食は心をいやし、うつや認知症を予防する? №195

2013-08-21 15:54:40 | インポート
 肉食は心をいやし、うつや認知症を予防し、幸福感を与えてくれるという記事が埼玉新聞の医療サイエンスのコーナー(8月14日付け)に掲載されていました。
 私たちは、高脂血症や糖尿病、高血圧などを指摘されると、低コレステロールや低カロリーの食品を摂取し、塩分は控えめにし、動脈硬化予防のために低脂肪の食品を摂るように努めます。また、糖質を抑えるためにご飯を減らし、コレステロールやカロリーを心配して、肉や卵の摂取を控えたりします。
 そうすると、例えダイエットがうまくいっても、同時にやる気がなくなったり、うつの傾向が現れるのだそうです。なぜでしょうか。脳生理学や栄養学、発達心理学の観点から次のように説明されるようです。
 肉類には、私たちに幸福感を与え、心をいやす「アナンダマイド」という物質が含まれているのだそうです。コレステロールや肉の脂である「アラキドン酸」は、動脈硬化や血栓の原因になるといわれています。しかし、コレステロールには「うつ予防」の効果があり、「アラキドン酸」には、「心を癒す」効果があるということです。
 「アラキドン酸」が体内に入ると、酸素の働きによって『アナンダマイド』が作られ、私たちに幸福感を与えたり、リラックスさせたり、不安を和らげてくれるのだそうです。さらに、記憶力を上げるということも指摘されているすごい物質で、「至福物質」ともよばれるようです。
 翌週の記事では、「心によい食事の取り方」が紹介されていました。タンパク質は、腸で分解されアミノ酸として吸収されますが、筋肉の修復などによい「身体系のアミノ酸」と、うつを予防したりやる気を起こさせる「心系のアミノ酸」に分けられるということです。心の栄養に良い必須アミノ酸が含まれているとして紹介されていたのが次のような食品です。
 1 心を穏やかにする食品(トリプトファン)   バナナ、ゴマ、里芋、そば
 2 うつ状態を改善する(メチオニン)      しらす干し、きんめ鯛、さば
 3 記憶力や学習能力を向上する食品(ヒスチジン)まぐろ、かつお、さば
 4 やる気を起こす食品(チロシン)       キウイ、竹の子、のり
 
 身体も大切ですが、心のバランスも大事です。心の栄養不足になって、心の病にならないようにしたいものです。食生活はもちろんですが、十分な睡眠や運動、家族や友人も心には欠かせない栄養です。

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「誤った記憶」と「つくられた記憶」 №194

2013-08-07 16:52:01 | インポート
 先頃、理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らのグループが、マウスの記憶を操作し、実際の出来事とは違う誤りの記憶を人為的に作り出すことに成功したというニュースが報道されました。
 グループはマウスを遺伝子操作し、記憶をつかさどる脳の神経細胞に光をあてると記憶を思い出すようにし、そのマウスを箱に入れて、安全な環境だと記憶させたということです。次に別の箱に入れ、脳の神経細胞に光をあてて安全な環境を思い出させながら電気刺激を与えて不快な気持ちにさせました。再び元の箱に入れると、安全な環境に戻したにもかかわらず、マウスは恐怖を感じる反応を示したそうです。
 このことにより、グループは、安全な環境にいた状態と恐怖の体験が結びつき、記憶が実際の出来事とは違う状態で再構成される「過誤記憶」が形作られることを確認したということです。
 しかし、人間は記憶をつくり出してしまうこともあるのです。アメリカで実際にあった事例では、19歳の女性が父親に性的虐待を受けたと訴えた事件があります。彼女はこう語っています。「セラピーを受け始めてから2年半たつ頃には、自分が父親に2度妊娠させられたと固く信じるようになっていました。最初の妊娠の時には、父親が中絶処置を施し、2度目は自らの手で中絶したのを思い出しました。」
 父親は聖職者だったのです。そのことにより地位を追われましたが、じつはまったく事実無根の出来事で、医療機関が行った検査で彼女は処女であることがわかったのです。他にも、ノースカロライナ州で29人の園児達の証言により、幼稚園の職員7人が性的虐待の罪で告発された事件がありました。しかし、これも後に事実無根であると判明しました。なんと、29人の園児全員が「記憶をつくりだした」のです。
 なぜ、このような「ありもしない記憶」がつくられるのでしょうか。冤罪事件では、警察官の誘導に追いつめられた被告が、無理矢理「記憶」を創作させられるといわれていますが、幼い子どもたちや暗示を受けやすい人々は、先生やカウンセラーなど権威ある人達に対して、真実を報告するよりも、その人たちが暗に求めているような答えをしようと迎合するため、「ありもしない記憶」を語ってしまう傾向があるからです。
 私たちは、「真実」をありのままに記憶するよりも、自分にとって都合のよい「物語」として記憶する傾向にあります。あえて、自分に嘘をつくつもりがなくても過ぎ去った時間は楽しく美しいものでありたいと願う心が、そうさせるのかもしれません。

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心の取扱い説明書「WRAP(ラップ)」について №193

2013-08-05 17:47:09 | インポート
 心の変調に備え、元気を回復するための方法をあらかじめ自分で整理しておく、アメリカ生まれの自己管理方法「WRAP(ラップ)」が8月3日(土)付けの埼玉新聞に紹介されていました。
 精神疾患経験者の知恵を集めた「当事者発」の手法という点が大きな特徴で、心の取扱説明書(とりせつ)づくりにも例えられるということです。
 国内のWRAP普及に取り組んでいるNPO法人WRAP研究会の坂本明子理事によるとWRAPは、「Wellness Recovery Action Plan」 の頭文字をとったもので、日本語では、「元気回復行動プラン」と訳されているようです。アメリカで自分自身が躁うつ病を患ったメアリー・コープランド博士が同様の体験をした人々の調査を基に提唱したものだそうです。
・いい感じのときの自分ってどんな感じなのだろうか?
・調子を崩すかもしれない出来事が起きたらどう対処したらよいのだろうか?
・もし調子を崩してしまったらよいのだろうか?
 その時々の状態にあった対応の仕方を考えておくことで、より早く元気を取り戻し、自分の本来の生き方を送ることを目指しています。
 具体的な「元気回復行動プランの」立て方は、自分の心の状態を6つにわけ、段階ごとに元気になるための方法をあらかじめノートなどに書いておくのだそうです。そうすると、不調になったとき、どのようにすれば元気が回復できるかの手助けになるほか、具体的な備えがあるという安心感が、心の状態を安定させるメリットもあるということです。

<段  階>   <自 分 の 状 態>    <対  応  策>
①いい感じの日常    ・元気がある、おしゃべり  ・散歩する、毎日入浴する
②調子を崩しきっかけ ・仕事のストレスが多い  ・落ち着ける場所で休息する
③注意信号  ・酒の量が増える  ・スポーツをする
④調子の悪化 ・怒りを抑えられなくなる  ・親しい友人に慰めてもらう
⑤助けが必要な不調 ・ベッドから起きあがれない  ・医療機関を頼る
⑥不調を脱した ・食欲が出てきた ・無理せずにできることをやる

 この心の取扱説明書のポイントは、「自分のことを一番よく知っているのは自分自身であるから、自分の元気をつくる責任も自分である。」という自己管理の考え方に基づき、自分自身プランを作るところにあるようです。

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やせてる人の方が飲酒による糖尿病リスクが高い? №192

2013-08-01 15:40:13 | インポート
 先日の日経新聞(7月28日(日))に飲酒と糖尿病に関する記事が掲載されていました。飲酒は糖尿病の発症を増やすものと考えがちですが、記事によると、日本酒換算で一日1~2合までのアルコール摂取は、血糖値を下げインスリンの作用を高め、むしろ、糖尿病リスクを軽減するというのです。アルコール好きの人にとっては願ってもないニュースではないでしょうか。
 ただし、このコホート研究は欧米からの報告で、日本人の場合、もともとインスリン分泌能力が弱いため、むしろ、飲酒によって膵臓がインスリンを分泌する能力を低下させ、慢性的に血糖が高まり糖尿病となる危険が高いというのです。
 特に、BMIが22(標準体重)以下のやせ形の男性で、一日1~2合飲む人の糖尿病発症割合は飲まない人の2倍、一日2合以上飲む人の場合は3倍の発症リスクに達するというのです。
 では、BMIが22をオーバーしている人はどうなのでしょうか。じつは、標準体重をオーバーしている場合には、一日のアルコール摂取と糖尿病発症のとの間に明確な関係は認められなかったということです。こと糖尿病に関しては、やせている人よりも肥満傾向の人の方が、アルコール摂取によるリスクが少ないようです。日頃ダイエットを気にしている人達にとっては朗報かもしれません。
 もっとも、毎日2合以上飲酒した場合、ガンや脳卒中、高血圧症、脳の萎縮、うつ病等様々なリスクが飛躍的に高まるということですから、ほどほどに嗜むことが大切なようです。
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母親との関係に苦しむ人たち №191

2013-07-07 14:08:24 | インポート
 私たちは、「母親というのは無条件で我が子を愛してくれる」ものだという神話を、無意識のうちに持っているものなのかもしれません。だからこそ、その愛情が自分に十分に降り注がれていないと感じたり、愛されていないと感じたりすることによって深く傷つき、時には憎しみさえ抱くようになるのではないかと思います。
 かつて(1979年)愛知医科大学教授久徳重盛氏の著書『母原病 ~母親が原因でふえる子どもの異常~ 』(サンマーク出版)という本がベストセラーになりました。久徳教授は母原病を次のように定義しています。
 「ぜんそくや胃潰瘍の子、熱を出しやすい子などの症状と、家庭内暴力ややる気のない子などの症状とは、表面的に見た 現象は異なりますが病根は同じなのです。いずれも親の育て方の誤りに原因があり、子どもの心身形成・人間形成にひずみができ、その結果、子どもたちに病気や異常があらわれたのものです。育児の中心的役割を果たすのはやはり母親なので「母親が原因の病気」という意味で、私たちは「母原病」といっています。」
  しかし、この考え方は、子育てを母親に押しつけている父親や社会構造に責任はないのかという批判にさらされ急速に説得力を失っていきました。
  「母という病」(ポプラ社刊)を書いた精神科医の岡田尊司先生はもちろんそのことは十分に承知しているものと思います。 久徳教授のように、「母親の育て方」が原因とは書かれていません。母親との関係による影響を次のように指摘しています。
 「幼い頃、母親からよく世話をされ、愛情を注がれて育っていれば、母親との関係は安定したものになりやすい。しかし、不幸にして、母親が他のことに気を取られたり、さまざまな事情で幼いあなたに、気持ちや手をかけることができなかったりするとその関係は不安定なものになりやすい。そして、体や脳や心を形作るかけがえのない時期だけに、その影響は、対人関係の持ち方やストレスへの敏感さ、子どもや異性の愛し方、精神的健康のみならず、身体的健康や寿命、老化の速度にまで影響を及ぼす。」 つまり、母親との愛着関係が十分でなかったことが、境界性パーソナリティ障害や摂食障害、うつや不安障害など、心の病や生きにくさを感じている人たちの原因であるといっています。
 母親もまた、生身の人間ですから、過度に子どもに干渉したり、自己愛的で子どもに興味をもてなかったり、別れた夫に似てくる我が子に複雑な気持ちを抱いたり、育てやすい子とそうでない子を無意識のうちに差別したりしてしまうのは、仕方のないことです。母親自身の生育歴や結婚生活の様々な要因も子育てに影響してくるのも当然です。
 それでも私たちは心のどこかで、無条件で自分に愛情を降り注いでくれる母親幻想を持っているからこそ、「母という病」が存在するのかもしれません。
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孤独でいられる能力 №190

2013-06-17 22:10:59 | インポート
 「孤独」は独りでいる状態のことで、「孤立」は人とのつながりが切れている状態のことを言います。孤独は自ら選ぶことができますが、「孤立」は自ら選んだわけではなく、集団から切り離されてしまっている状態です。
 「孤独」ではあっても、いざとなれば、誰かが駆けつけて援助の手を差しのべてくれる状態にあるとき、人は孤独であることに耐えることができますし、むしろ孤独な状態を心地良く感じる場合もあり、「孤独」な時間を求める場合もあります。
 しかし、「孤立」というのは、たくさんの人に囲まれていながらも、誰ともつながりがない状態ですから、望まないのに「孤独」な状態にさせられ、なかなか耐え難い苦しさがあるものと思われます。「孤独」が「孤立」に移行することはあっても、「孤立」から「孤独」に移行することはありません。私たちは、「孤立」を怖れる一方で、「孤独」に耐えうる能力の程度に応じて他者を愛することができるとも言われています。
 では、孤独でいられる能力、独りでいられる能力とはどのように培われるものなのでしょうか。「ひとりでいられる能力」というのは、イギリスの児童精神科医のウィニコットが、幼児と母親の行動を観察することから発見した能力です。「怖くなったらすぐ母親が助けに来てくれる。母親のところへ戻れば自分は安全である。」これを基本的信頼感といいます。この基本的信頼感があるからこそ幼児は、親が何をしているかには注意を払わず、「ひとり遊び」が出来るようになって行くのだということを発見したのです。
 つまり、人間に対する信頼が根底にある人が、孤独に耐えられる能力があるわけなのです。見かけは、独りでいる状態でもその気になれば、親しい人や仲間とつながっている状態にあるとき、人は「孤独」ですが「孤立」はしていません。だから耐えることができるのです。しかし、見かけは、大勢の人と一緒にいても、心のつながりがない場合は、「孤独」ではないかもしれませんが、「孤立」しています。「孤立」は一種の「ひきこもり」状態です。周囲の人に心を開かないとなかなか「孤立」状態からは抜け出せません。「孤独でいられる能力」は、「他者に依存しない生き方」でもあります。
   私は私のために生きている
   あなたはあなたのために生きている
   私はあなたのために生きているわけではありません
   あなたもまた私のために生きているわけではありません
   私は私
   あなたはあなた
   けれど私たちの心がたまたま触れ合うあうことがあれば
   それに越したことはありません
   たとえ心が触れ合うことがなくても
   それはそれで仕方のないことです
             (フレデリック・S・パールズ「ゲシュタルトの祈り」)
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