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がん治療薬の悩ましい問題 ~命の費用対効果~ No.239

2016-06-01 16:44:13 | 日記
 かつてガンは死の病と言われましたが、今は早期発見ならば生存率が大幅に改善されています。ガンの治療薬も効果的な新薬が相次いで登場していますが、問題は効果も高いが値段も高いことで、このままでは公的な医療制度が崩壊するのではないかという新聞記事が読売新聞(5月16日付け)に掲載されていました。
 記事によると、国立がんセンターが我が国に入る可能性のあるガン治療薬一ヶ月の薬剤費を調べたところ、100万円を超すものが23種類もあり、もっとも高価なものは1900万円もするとあります。
 例えば、肺ガンの生存率(1年間)を39%~51%に引き上げた「オプジーボ」という薬は月2回で260万円もします。これを進行した肺ガンで苦しむ患者5万人が一年間使うとすると年間薬剤費が1兆7500億円になり、年間8.5兆円の医療費の 2割に達するということです。
 ここで議論されるのが、限られた医療予算の中で、誰にコストをかけるのかという問題です。日本赤十字社の国頭英夫化学療法部長は「75歳以上の後期高齢者の延命目的で使わせる必要はないなど、使用を抑える方法を真剣に考える必要がある。さもないと保険制度が崩壊し、若い人にしわ寄せが行く」と警告しています。しかし、当然のことながら、命の重さに年齢や貧富の差による軽重があってはならず、高齢者ということで一律に治療を制限することはおかしいという意見もあります。
 ただ、現実問題として、高度先進医療については健康保険の適用がないものもあります。その医療費を負担できない人は治療を受けることはできません。事実上、すでに命はお金で買える状態にあるともいわれています。
 これまで、一部の関係者の間で密かに語られていた命の費用対効果が公然と議論される時代になるのでしょうか。「高齢者の延命はしない」という選択を本当に受け入れられるのか。どのステージになれば、本人も周囲の人もそれを受け入れることができるのか、私たちに突きつけられた生命倫理の問題はあまりに重いものです。