NHKが受信料未払い対策として,簡易裁判所の支払督促を用いた法的措置に出ることを検討しているようです(ニュースソースはこちら)。
そりゃあ,たぶん無理でしょう!
NHKの気持ちは分かります。でも,次の理由から,きっと法的措置は無理です。
1 費用倒れ(申立時)
どのくらいの期間未払いの人を対象にするのか分かりませんが,まあせいぜい2,3万円程度の人が多いのではと推測します。
それを前提にした場合,申立時の費用がおよそ2千円程度かかります。しかし,もしも支払督促に対して異議が出た場合,通常訴訟に移りますが,その場合,更に約7千円ほどかかります。
つまりトータルで1万円弱の申立費用がかかります。
100万人近く未払いの人がいるようですが,仮に全員に対してやるとなった場合,申立だけでも約100億円近くの費用がかかることになります。
2 費用倒れ(強制執行)
仮に督促や判決で全面勝訴したとしても,それでも任意に支払わない場合,強制執行(差押え)が必要となります。
金額的に不動産を押さえることはあり得ないため,債権執行という手段になります。
これは,預貯金や給料を差し押さえることになります。
この申立の費用が,約1万円程度かかります。また,押さえる対象を調査して特定する必要があります。つまり,約100万人について預貯金はどこにありそうか,またどこに勤務しているのかを調査する必要が出てきます。おそらく,この調査費用は安く見積もっても5万円くらいはかかるのではないでしょうか。
とすると,強制執行をするためには約6万円近くかかることになります。100万人に対してすべて強制執行をするとした場合,600億円が必要となります。
そして,強制執行のための費用も差押えが成功すれば一応取り戻すことも可能ですが,すべてがすべてうまくいくとは限りません。その場合は,申立費用はパーです。
100万人のすべての人がサラリーマンである,または分かりやすい銀行に預金口座があるとは限りません。
おそらく半数近くは強制執行がうまくいかないのではないでしょうか。とすると,300億円近くをどぶに捨てることになります。
3 そもそも支払督促または判決になるか
そもそも,NHKの申立が認められるのか,問題となります。
おそらく,NHKの主張としては,放送法32条により支払義務がある,ということから請求することになるでしょう。
ところが,放送法32条は次のように規定されています。
第32条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
この条文は,契約義務を課しているが,契約したことをみなすものではありません。
となると,まず不払いの理由として,契約を解除した場合や,そもそも契約をしていない場合,支払の根拠がなくなってしまいます。
よって,この場合,裁判所はNHK請求を認めない可能性が高いです。
では,単に支払を止めているだけの場合はどうでしょうか。
この場合は,契約の効力が争いとなりますが,32条の適法性が争いとなるでしょう。
そして,32条が適法か否かについては,学者の間でも議論がある部分であることからすると,支払督促に対して異議が出て通常訴訟になった場合,裁判所でも判決が分かれる可能性があります。
したがって,100万人に対して訴えを提起しても,勝訴率がどの程度なのか,正直分かりませんし,かなり低い勝訴率になるのではないかと推測されます。
以上の観点から,NHKの法的措置は絵に描いた餅ではないかなあ,と思います。
むしろ,法的措置により感情的に支払いを辞めてしまったり,意地でも払わないと言う人が出てきて,結果的により減収になるのではないでしょうか。
そもそも,以前も書きましたが,強制的に取ろうという発想自体,間違っていると思います。本来は,みてもらってなんぼのはずです。
目先のことよりも,先のことをよーく考えて検討してほしいものです。
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
TB先一覧(途中から始めましたので,一部です)
http://plaza.rakuten.co.jp/machine10/diary/200602030000/
http://blog.livedoor.jp/qryuu/archives/50374722.html
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/579c284521b9405825c3264534280058
そりゃあ,たぶん無理でしょう!
NHKの気持ちは分かります。でも,次の理由から,きっと法的措置は無理です。
1 費用倒れ(申立時)
どのくらいの期間未払いの人を対象にするのか分かりませんが,まあせいぜい2,3万円程度の人が多いのではと推測します。
それを前提にした場合,申立時の費用がおよそ2千円程度かかります。しかし,もしも支払督促に対して異議が出た場合,通常訴訟に移りますが,その場合,更に約7千円ほどかかります。
つまりトータルで1万円弱の申立費用がかかります。
100万人近く未払いの人がいるようですが,仮に全員に対してやるとなった場合,申立だけでも約100億円近くの費用がかかることになります。
2 費用倒れ(強制執行)
仮に督促や判決で全面勝訴したとしても,それでも任意に支払わない場合,強制執行(差押え)が必要となります。
金額的に不動産を押さえることはあり得ないため,債権執行という手段になります。
これは,預貯金や給料を差し押さえることになります。
この申立の費用が,約1万円程度かかります。また,押さえる対象を調査して特定する必要があります。つまり,約100万人について預貯金はどこにありそうか,またどこに勤務しているのかを調査する必要が出てきます。おそらく,この調査費用は安く見積もっても5万円くらいはかかるのではないでしょうか。
とすると,強制執行をするためには約6万円近くかかることになります。100万人に対してすべて強制執行をするとした場合,600億円が必要となります。
そして,強制執行のための費用も差押えが成功すれば一応取り戻すことも可能ですが,すべてがすべてうまくいくとは限りません。その場合は,申立費用はパーです。
100万人のすべての人がサラリーマンである,または分かりやすい銀行に預金口座があるとは限りません。
おそらく半数近くは強制執行がうまくいかないのではないでしょうか。とすると,300億円近くをどぶに捨てることになります。
3 そもそも支払督促または判決になるか
そもそも,NHKの申立が認められるのか,問題となります。
おそらく,NHKの主張としては,放送法32条により支払義務がある,ということから請求することになるでしょう。
ところが,放送法32条は次のように規定されています。
第32条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
この条文は,契約義務を課しているが,契約したことをみなすものではありません。
となると,まず不払いの理由として,契約を解除した場合や,そもそも契約をしていない場合,支払の根拠がなくなってしまいます。
よって,この場合,裁判所はNHK請求を認めない可能性が高いです。
では,単に支払を止めているだけの場合はどうでしょうか。
この場合は,契約の効力が争いとなりますが,32条の適法性が争いとなるでしょう。
そして,32条が適法か否かについては,学者の間でも議論がある部分であることからすると,支払督促に対して異議が出て通常訴訟になった場合,裁判所でも判決が分かれる可能性があります。
したがって,100万人に対して訴えを提起しても,勝訴率がどの程度なのか,正直分かりませんし,かなり低い勝訴率になるのではないかと推測されます。
以上の観点から,NHKの法的措置は絵に描いた餅ではないかなあ,と思います。
むしろ,法的措置により感情的に支払いを辞めてしまったり,意地でも払わないと言う人が出てきて,結果的により減収になるのではないでしょうか。
そもそも,以前も書きましたが,強制的に取ろうという発想自体,間違っていると思います。本来は,みてもらってなんぼのはずです。
目先のことよりも,先のことをよーく考えて検討してほしいものです。
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
TB先一覧(途中から始めましたので,一部です)
http://plaza.rakuten.co.jp/machine10/diary/200602030000/
http://blog.livedoor.jp/qryuu/archives/50374722.html
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/579c284521b9405825c3264534280058
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます