3回に1回は身内の病院通いに付いていく。
東門から入っていくと右側にたぬきさんが迎えてくれている。リリオーはいつも「おはよう!今日も元気!」と声をかけ、「さよなら」と言って手を振り帰るんだ。
去年の夏、ちょこんと帽子が掛けられていた。「暑いから誰かさんに被せてもらったの。良かったね」
優しい人がいるもんだと感謝した。
だんだん寒くなって冬がやってきた。それでもたぬきさんは夏の帽子を被っている。毛糸の帽子を被せてやらなあかんわ、今度持ってくるわねと言って帰った。ところがどっこいそうはいかないよ。何でって?それはリリオーは忘れん坊だから。
この前、やっぱし忘れた!ゴメン!
今日は絶対忘れないよと前の晩から用意しておいた。さあ、かわいい毛糸の帽子を被せてあげよう。
あ・あ・あ・たぬきさんの頭に帽子が・・・・誰かさんが被せてあげたんだ。遅かりし由良之助・・・だ。
でも良かったわ、みんな心配してたんやね。それにリリオーが持ってきたのよりずっと格好よく上物ものだ。
写真を撮っていたら、後ろを通る女性が「今日はええ帽子被っているわ、誰やろう?退院した人がもう病院には2度と来ないつもりやから置いて帰るわと被せていったのかなあと主人と話してたんです」と言われた。
リリオーはシャレで被せたのか面白いねくらいしか浮かばなかったが、そうか、そうかも知れないね。病院には来たくないもんね、誰もいやだよね。「ずっと預かっておくよ、取りに来るようではだめだよ、もらっておくよね」とたぬきさんと話して帰った。