松下啓一 自治・政策・まちづくり

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自治体の仕事範囲の広がり

2005-09-18 | 4.政策現場の舞台裏
 自治体の仕事は、自治体だけで完結する仕事と市民との協働が必要な業務に区別することができます。そして、市民との協働が必要な業務が実に多いのです。
 自治体だけで完結する仕事の典型例が内部管理の仕事です。
 この仕事の場合は、内部だけで調整ができるから、最終的にはトップの意向で決定できることです。
 自治体の場合、首長の権限は絶大で、助役以下の実質上の権限とは雲泥の差があります。これは国では議院内閣制区で首相は議員から選ばれるのに対して、自治体の首長は内部職員とは別に、選挙で市民から選ばれるという違いがあるからです。それがさまざまな点に影響を与えますが、人事権が大きい。役所の関心のひとつが、人事だからです。人事をてこにトップが方針を貫徹しようとすれば、かなりのことができるのです。
 また、一見、市民の参加・協力が必要な仕事でも、自治体側のイニシアティブでできる仕事は、こちらに入ると思います。
 例えば、個人情報保護制度ですが、これは市民の権利を付与する規定と内部管理に関する規定でできています。開示請求権や訂正請求権を付与するかどうかは、自治体側のイニシzティブで決まります。自治体側が付与しようと決め、制度化すればできるのです。
 情報公開制度も基本的に同じです。
 こうした制度が有効に機能するためには、市民の参加・協力が必要ですが、自治体側に制度づくりのレベルでは、自治体が決めればできるのです。
 個人情報保護や情報公開の分野で先進的な条例をつくっている自治体がありますが、それは自治体側の自己統制を厳しくすることで、制度がつくられています。
 余談ですが、制度は立派で先進的ですが、実務や職員の意識がそれについていけず、条例と実態が乖離している自治体も知っています。職員と話をすると、「あれは都市のPR用だから」という思いもかけない話を聞くことがあります。
 同じ個人情報保護条例でも、今度は民間の個人情報保護を守る制度を取り入れようとすると、この条例の性質が変わります。自治体だけではできない「協働型」の仕事になるのです。相手方の協力が必要になるとたんに難易度が高くなるのです。
 最近では、こうした市民との協働型の政策分野が増えているのです。
 個人情報保護で言えば、役所の個人情報保護はそれはそれでしっかりやってもらいたいけれども、民間部分についても役所として取り組んでもらいたいというニーズがあるからです。
 それは自治体の範囲外で、国の仕事ですといっていられたのが分権の前でした。 しかし、分権時代になって、自治体に政策領域は事実上制約がなくなりました。それは国の仕事とはいってはおれなくなったのです。
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