松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙㊾まちづくりとしての公開政策討論会(新城市)

2017-10-21 | 1.研究活動

 3回にわたる公開政策討論会が終わった(ただ、時間がなくて、3回目の市民自治は、飛ばし飛ばしで見ただけである。あとでゆっくり見ることにしよう)。

 この3回を通して、改めて気が付いたのは、これは、まちづくりなのだということである。本来は、この公開政策討論会は、直接には、市民に市長選びの判断材料を提供するためのものであるが、やった結果として、まちづくりになったし、公開政策討論会は、市民全体によるまちづくり会議になった。

 新城市では、自治基本条例に市民まちづくり会議の規定がある。市民、行政、議員が集まって、まちの問題を考える会議である。全国では新城市と焼津市しかなく、新城が最初である。

 今回の公開政策討論会は、立候補予定者が論じ、そこに、市民、行政、議員が参加したが、何よりも論じたことが、新城市の町が抱える課題が、3日に凝縮され、それが市民の前に出され、立候補予定者の議論を通して、その課題や進むべき方向性のヒントが、市民や行政職員や議員に示され、それぞれが考えるきっかけを作ることができた。

 例えば、私は、2回目の稼ぐまちに参加したが、穂積さんと白井さんの論争は面白かった。

 穂積さんの産業政策は、税金を払い、人が雇用されるのは工業だから、新東名が開通した今をとらえて、取り組んでいこうというものである。特に、愛知県はトヨタであるが、自動車産業全体としては、遅れて自動車産業に参入した中国が、国家戦略として、ガソリン車を禁止し、電気自動車に転換することで、従来の自動車産業をスクラップ化しようというのが、中国の戦略、世界の動きであるが、この世界の動向のなかで、いわば焦るトヨタに働きかけて、新城市に研究施設や工場を誘致しようというものである。その一環として、トヨタに働きかけているという話は面白かったし、2018年に新城市で行われる世界新城アライアンス会議をそうした「商談」の場として使うという発想は、視野と展望があって面白かった。課題は、地方自治から起こるが、地域から、国や世界をリードするのが地方自治であるが、久しぶりにそんな地方自治に出会えて、楽しかった。

 白井さんは、「田舎の資源を活かすことで永続する社会が実現する」というもので、「農業」「林業」「観光」に重点を置いている。このアプローチは、成果が出るまで時間もかかるし、他から稼ぐという点で弱いので、実際、穂積さんからも厳しい批判があったが、ある種の豊かさを達成した日本が、もう一つの目指す豊かさであることは間違いない。もう一つの産業政策として、大事に育てていくべきことだろう。

 要するに、本丸を攻めるのか、周辺の出城から落としていくのかの違いで、新城などが舞台のNHKの「直虎」を見ている私とすると、とても面白かった。こうした議論を通し、自分の政策を深め、相手の政策を勉強することで、立候補予定者も大いに勉強になったのだろう。自分が市長になったら、それぞれのよいところを取り入れて、市政をすればよく、それを支える市民も、行政職員も、議員も、今回の論議を通して、ああそういうことなのかと、自分の考えを深めることができたと思う。

 スタートから最後まで、こうした会議を運営したのが、市民による実行委員会である。これも市民まちづくり会議の経験や蓄積があってのことだし、その経験が運営の随所に活かされていたように思う。それを市民も整然とヤジもなく聞くというのは、まさにまちづくりである。大いに誇るべきだと思う。住民投票、リコールと続き、猜疑や不信、孤立や分断でうんざりしている人も多い。この公開政策討論会は、新城の人たちをつなぐ、まちづくりになったと思う。

 告示後は、今度は3者による合同演説会が行われるそうである。公職選挙法の縛りが厳しくて、いつ、どこでやるとは言えないとのことであるが、最後に、司会の田村さんが、「いつとは言えないが、告示後の22日と間髪を置かず開催し、会場はどことはいえないが、今回の会場(新城市文化会館小ホール)と至近の場所で1000人位は入る会場」といって、みんなの笑いを誘っていたが、こうした軽口が言えるということが、今回の公開政策討論会の成果を表しているのだと思う。

 

 

 

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