松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆はじめての条例づくり㉛条例の分類4

2020-09-28 | はじめての条例づくり
5.私は、政府の機能から分類したほうが、条例の性格が明確になると考えている。

(1)夜警国家的な政府機能に応じた条例
 政府の役割に謙抑的であるという政府観である。法治主義の原則がぴったり来る部分で、法律による行政を地方自治に当てはめた部分である。地方自治法でも唯一、条例でなければいけないのが、住民の権利を制限し義務を課す場合である。

(2)福祉国家的な政府機能に応じた条例
 福祉部門の膨大な条例群が、これに当てはまる。政府は、住民の権利を守るために、積極的に関与する。そのツールが条例である。

(3)自治体ならではの政府機能に応じた条例
 主権が基本の国とは違って、共同体の事柄をなめらかに運営するのが、自治体のメインの仕事に着目するものである。共同体では、関係者の当事者性、連携・協力が基本なので、条例もそれを後押しするものである。広義でまちづくり条例と言われる物がこれに当たる。

 (1),(2)では、条例は、国法体系の一部で、独自性は乏しく、国法の下請けに甘んじることになる。(3)では、国法体系の一部ではあるが、条例は独自の輝きを持っているということになる。

 自主条例は、(3)というわけではない。むしろ最初は(2)の条例(医療費の無料化など)、次いで(1)の自主条例(個人情報保護条例など)が制定された。(3)の代表例は自治基本条例であるが、当初は、(1)の自治基本条例がメインであった。それが大きく転換するのが、東日本大震災である。私は、当初から(3)の自治基本条例を志向していたが、流れが変わったのが、大震災というのは皮肉である。

 (1)、(2)では、条例の主体は、役所であるが、(3)では、役所の外、市民、事業者等も含まれる。

 (3)の場合は、条例を作っただけでは、条例の目的は実現されない。決まった条例を粛々と実施するだけでは、先に進めない。条例を市民等にどう働きかけるのか、政策実施論が、あらためて、クローズアップされる。

 条例の作り方も違ってくる。市民等も当事者なので、当事者として巻き込みながら、条例を作っていくことになる。従来では、パブコメをやり、口語体の条例づくりにとどまることになる。口語体は、要するに、市民も読めるようにするということで、相変わらず、お客さんである。

 こんなことを考えている人はいないだろうから、私の説は、異説扱いだろう。学会の評価は、関心がないが、実務への影響力がないと、わざわざ、こんな事を考える意味がない。

 これまでの条例本とは違う、実務をリードする条例本を書いたほうがいいだろうか。本を書くには、力量と熱意が大事であるが、条例本の場合、オリジナリティあふれる・・・という内容には、ならないので、熱意を引き出すきっかけづくりがポイントである。多摩市の条例づくりが、そのきっかけになるか・
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆はじめての条例づくり㉚条例... | トップ | ☆はじめての条例づくり㉜適切... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

はじめての条例づくり」カテゴリの最新記事