松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆書評もひとつの論文だと思う

2023-01-06 | 1.研究活動
 書評もひとつの論文だと思う。きちんと記録しておこう。アマゾンに出した書評である。

 全47都道府県幸福度ランキング (2022年度版)  寺島実郎 (監修), 一般財団法人日本総合研究所 (著)

松下啓一 5つ星のうち5.0
「志の高さを評価したい」 2023年1月4日に日本でレビュー済み

 自治体は、ランキングに一喜一憂するが、ランキングのなかには、都市開発・住関連等のマーケティングの一環として調査が行われているもの(例えばシビックプライド調査)などがあり、価値基準が違う自治体の評価に使うのには注意を要する。

 その点、この日本総研の「幸福度ランキング」は、志が高い。
 まず、幸福とは何かであるが、「その社会に暮らす個人がそれぞれの私生活主義的な豊かさによる幸福を超えて、利他や地域との一体感を共有でき、その中で自己の存在意義を認めていける」ことを幸福と考えていることである。

 民主主義とは、市民一人ひとりの自律性と、共同体のことがらを我がことのように思う社会性が要素であるが、そうした思いになれることが、幸福ということである。この真正面からの向き合う姿勢は、好感が持てるし、何か嬉しくなってくる。

 「地域における幸福を再考するならば、正に自我と社会を適切につなぐことの基本条件を整備すること」として、「幸福度の指数化という作業も、そうした視界を拓くための入り口」という位置づけになる。

 ランキングは、正直、まゆつば感が強いが、その意味では、この『幸福度ランキング』は、ネーミングのお手軽さに比べて、なかなか骨太である。

 普通、ランキングは、人々に「幸せかどうか」を聞く主観的指標を採用するが、日本総研の幸福度ランキングでは、幸福に関係しそうな指標を集めて合成するという客観的指標を採用している。

 主観的指標法は、アンケートを作れば、あとは調査の対象をうまく拾えばいいが、客観的指標法のほうは、既存の指標を集めて合成するという作業が必要で、日本総研のようなたくさんのデータを収集でき、それを処理する能力のあるところしかできないので、これが強みである。

 問題は、指標の選択で、この幸福度ランキングでは、2022年度版では80指標を設定して、都道府県別の「幸福度ランキング」を算出している。
幸福ランキングを「自我と社会を適切につなぐことの基本条件を整備する」ことと考えると、これで足りるのかという議論もあるが、2012年度の55指標より、毎年、増やしている。幸福は、一気に実現するよりも、漸進的に実現されほうが長続きするだろうから、よしとしよう。

 主観的指標を採用した場合は
 ①まち・地域に対する肯定的な認識・評価(安全・安心、美しさ・豊かさ、快適さ・利便性)
 ②まち・地域の人々に対する肯定的な認識・評価(自立的・自律的ふるまい、他者への配慮、思いやり、公共的な活動、連携・協力)
 ③まち・地域文化に対する肯定的な認識・評価(お祭り・イベント、伝統・文化、生涯学習・文化活動)
等を聞くことになるので、これらを体現する客観指標をさらに開発してもらうと、地方自治の現場で、もっと使えるようになるのではないか。期待したい。
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