松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地方公務員法と私的領域

2024-04-27 | 地方公務員法

1.地方公務員法は、基本的には、公務という職務を全うするための法律であり、公務に携わる際の心得や行動を規定する法律である。ただし、地方公務員法は、身分上の義務や命令事項があるから、業務外の私的事項についても規制や関与が及ぶ。

 理論的には、公務と私的活動を区別できても、行動するのは公務員という地位を持つ人であることから、たとえそれが私的世界での行動だとしても、公務に対して、影響を与えることになる。私生活での不祥事も、公務員全体の信頼を損ない、国民全体の利益を損なうことにもつながる場合もある。したがって、公務員は、常に公共の意識と高い倫理観や品位を保ち、国民の範となるような行動が求められることになる。その範囲で、地方公務員法は、公務員の私的な活動をも規律することになる。

2.地方公務員法の規定から
(1)全体の奉仕者 
 すべて職員は、全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない(30条)。
 公務員は、全体の奉仕者という仕事の性質から、国民の信頼を失うことがないように行動しなければならない。また住民に対して誠実、公正であることが求められる。
 地方公務員制度に定める職員に適用される基準は、全体の奉仕者としての地方公務員が、その地位と責任を全うするための規定であり、公務に携わる者の心得といえる。常に公共の意識と高い倫理観や品位を求められることから、私的な活動にも影響を与える。

(2)職務命令に従う義務(32条)
 職務命令の種類には、①職務上の命令…職務の遂行に直接関係する命令(超勤命令)、②身分上の命令…職員の地位一般に関する命令(病気療養の命令)がある。身分上の命令は生活行動の制限に及ぶ(病気療養の命令や名札の着用)

(3)信用失墜行為(33条)
 公務員は、住民の信託を受けている。その信頼を裏切ってはいけない。職の信用を傷つけ、職全体の不名誉となる行為の禁止される。
 職の信用を傷つける行為は、職務に関連して行った非行等であるが、職全体の不名誉には、職務に直接関係しない行為や時間外の行為も含まれる。
 ・ハラスメント行為
 ・交通事故、飲酒運転などの道路交通法違反
 ・窃盗、万引き
 ・わいせつ行為

(4)秘密を守る義務(34条)
 秘密を守る義務は退職した職員にも適用される(34条①)

(5)政治的行為の制限(36条)
 政治的行為の制限は行政の公正な運営確保と職員の利益保護が目的であり、勤務時間内外を問わず守るべき義務である

(6)営利企業等への従事制限(38条)
 職員は任命権者の許可を得なければ、①営利企業の役員を兼ね、②営利企業を営み、③報酬を得て事業事務に従事することができない(38条)。この規制は私的事項に関与する最たるものである。

(7)職務専念義務(35条)
 職員は、勤務時間は職務上の注意力のすべてを職責遂行のために用い、地方公共団体の職務にのみ従事しなければならない(35条)。
 直接には、勤務時間中のことであるが、職務専念義務の考え方が、私的活動にも影響を及ぼす。

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