松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆氏名公表・政策法務の観点から③どんな論点があるか

2020-01-08 | 氏名公表
 氏名公表には、多くの論点がある。先の「しがない地方公務員のメモ帳」では、次のような論点をあげている。

 1. 公表の法的性質 行政処分かどうか、
 2. 公表の機能 「制裁的公表」と「情報提供」の二分説が一般的であるが、私は三分説を示した。
 3. 制裁的公表と法的根拠 
 4. 情報提供と法的根拠
 5. 手続的保障
 「制裁的公表」は、行政処分ではないが、その不利益性に着目するならば、行政手続法にいう行政指導不服従に対する不利益取扱いに該当するとも考えられるため手続的保障が必要である。
 6. 取消訴訟
 7. 国家賠償請求訴訟・損害賠償請求
 公表が違法であれば、情報提供を目的としたものであっても国家賠償請求訴訟や民事上の損害賠償請求訴訟が可能であると考えられるし、現に認められている。
 8. 民事訴訟(名誉回復)
 公表が違法であれば、名誉回復を求める民事訴訟により謝罪広告を求められることも考えられる。

 行政法の専門家から見ると、6の取消訴訟が、おもしろい論点だろう。しかし、政策法務からいえば、5の手続的保障が、最も大きな論点になる。それは、「公表制度が今日では一般的な制度と呼べるほど広く規定されてきた点、誤った公表は莫大な損害をもたらしうる点に着目すると、今後は、告知、聴聞、理由提示といった事前手続整備のほか、公表事実が問違っていた場合の事後訂正(及びその公表)義務などの手続をルール化すべきであろう」(大橋洋一「行政法:現代行政過程論-第2版-」)という理由からである。

 つまり、政策目的を達成するために、制裁的な氏名公表は有効な手段になりうるが、これを導入する自治体が、足をすくわれることなく、かつ使い勝手の良い手続的整備を用意するのが、私の役割ということになるだろう。

 参考例が、大阪市がヘイト条例を適用して、インターネットのまとめサイトの管理者の氏名公表を行っており、これを勉強することが大事だろう。

 現時点では、ざっと読んだ程度なので、評価ができるだけの水準にはないが、直感的には、やや加重な手続きのような感じがして、使い勝手が悪いように感じた。むろん、最初のケースでもあるので、慎重を期したということからしれないし、きちんと勉強すれば、逆に十分でなく、もう少し手続きを付加すべきとの意見になるかもしれない。

 繰り返すと、汎用的に使える手続きを制度設計することが、政策法務論からは、最も重要な目的になると思う。このテーマは、現時点では、抽象的な議論にとどまっているので、おもしろそう。
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