松下啓一 自治・政策・まちづくり

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○定住促進の資源としての空き家(竹田市)

2016-05-03 | 空き家問題

 

 定住促進の資源として、空き家を活用している自治体に竹田市がある。

1.竹田市とは
 竹田市は、大分県の南西部に位置し、周辺を九重連山,阿蘇外輪山などに囲まれている。岡城跡、武家屋敷、瀧廉太郎記念館などの史跡や文化財がある。大自然とともに、豊かな歴史的遺産や芸術資源も多数有している町である。人口は、 人口23,186人(平成28年3月1日現在)ということであるが、「平成27年国勢調査の集計結果概数が出されました。竹田市の総人口は2万2,342人で前回調査と比較し、455世帯、2,081人の減少となっています。この5年間で、年平均約400人減少した」としている。ちなみに正式には、たけたしと発音するようだ。ずっと「たけだ」だと思っていた。

 竹田市は、定住促進では、大きな成果を上げている。「空き家バンク登録者数は904人となっております。実際に移住してこられた方は、平成22年度以降105世帯204名、地域おこし協力隊31世帯、44人を含めますと136世帯248名となりました」(市長の施政方針演説)とのことである。

2.基本理念は、「農村回帰宣言」で、日本の農村の受け皿としての位置づけを明確にして都会で暮らす若者や子育て世代の新しい夢のステージとして、また都会でリタイアした団塊の世代が終の棲家とする移住・定住を促進し、地域のコミュニティの再生にもつながる戦略である。

3.手厚い手順が特色である。
Step1.まずは竹田市について知ってください。竹田市公式HP、竹田市観光情報、竹田市観光ツーリズム協会などたくさんの情報を提供している。また、東京・赤坂にある竹田市東京オフィスでは、田舎暮らし相談会を定期的に開催し、東京や大阪で行われる「ふるさと回帰フェア」(例年9~10月)でも情報提供や相談会を実施している。 

Step2.竹田市の移住支援について知ってください。竹田市は空き家バンク情報を提供している。また移住相談窓口と移住者の交流スペースを兼ねた新しい拠点である城下町交流館「集」との連携によって、より綿密な移住サポートをしている。また、歴史・文化資源活用型起業支援や起業家育成支援などにより、竹田市での起業をサポートしている。 

Step3.不明点はご相談ください。移住についての不明点はお気軽にご相談ください。市役所担当者、または城下町交流館「集」の担当者が丁寧にやさしくお応えいたします。

Step4.是非一度、竹田にお越しください。ご希望の空き家があり、事前に内見のご予約を入れていただければ、空き家をご案内します。また移住を目的とする方への短期滞在費助成制度や田舎暮らしを体験できる宿泊施設(農家民泊)もあるので、ぜひご活用ください。お時間があれば、おすすめの観光スポットなどもご案内しています。
 お試し暮らし短期滞在費助成事業では、(1)竹田市内で住居を探す活動、(2)竹田市内で仕事を探す活動、(3)竹田市への移住や就業を前提として、市内で実施されている体験活動に参加する活動、(4)竹田市で就農するために農業視察及び体験を行う活動、(5)移住活動の一環として、竹田市の文化や歴史、風土、気候を知るために宿泊する活動について、助成対象者が助成対象活動のために市内に宿泊した場合の助成額は、一人当たり基本宿泊費(1泊2食)の2分の1以内とし、2泊分を限度とする。ただし、1泊当たりの助成額は、一人3,000円が上限。

 Step5.お住まいの決定。移住の意思が固まり物件が決まったら大家さんとの交渉後、契約します。住居の決定です。 

Step6.引越後、手続きを終え、移住完了です。引越後、転入届などの手続きを終え、竹田市への移住完了です。竹田市での生活がスタートします。 

Step7.移住後のサポート。竹田市では地域事情に明るく信望のある方々を集落支援員として配置している。移住先でのご相談や困ったときに頼れるサポーターである。また、城下町交流館「集」は移住者同士の交流スペースでもある。移住者同士の情報交換の場としても活用されている。

4.マンパワーでは
(1)集落支援員・・・
農村回帰支援事業に対応する組織。空き家をはじめとする地域の情報収集、移住の相談など、地域情報に詳しい方々をネットワークした集落支援員による相談対応など、地域と行政が一体となった移住支援サービスを提供。
(2)
農村回帰サポーター・・・移住・定住促進についてお手伝いをしていただける方を募集。サポーターは、①竹田市内在住者、②竹田市出身者の方や竹田市の自然、文化、歴史をこよなく愛する市外在住者で、竹田市のPRや情報収集ができるようボランティアで協力。

5.組織・ハードでは
(1)竹田市農村回帰支援センター」の設立・・・
竹田市への移住や定住の相談、田舎暮らし体験、空き家の調査・提供などの受付窓口の一元化、移住支援サービスの充実など農村回帰の受け皿
(2)田舎暮らし体験の施設整備・・・
農村回帰支援センターが行う「田舎暮らし体験事業」で、都会からの移住を検討している住民に一定期間の田舎暮らしを体験してもらう宿泊施設として、野外研修施設「そうぞうの丘」のバンガローを安価で提供し農村回帰の足がかりを作る。
(3)
市営住宅の整備と雇用確保対策・・・公営住宅法に基づく市営住宅以外に、起業者や誘致企業等の従業者などへ移住定住を促進することを目的とした市営住宅を整備していく。
(4)
移住相談窓口と移住者の交流スペースを兼ねた新しい拠点である城下町交流館「集」・・・竹藝家・紙漉職人・染色家・木工芸家などアーティストの移住も相次いでいる。この“流れ”を加速させるべく、農村回帰の新しい拠点が平成255月末、城下町にオープン。城下町の空き店舗を改修し、1階部分は「移住相談の窓口」と「移住者の交流のスペース」になる。これにより、土・日・祝日の相談対応が可能になった。2階は竹田に移住したアーティストなどの作品展示やギャラリーとして利用していく。

6.農村回帰応援施策=補助事業をまとめると、
(1)空き家関連
・竹田市空き家活用奨励金・・・市の空き家バンクに登録されている家を売却した人、または貸した人に対して奨励金を支払う。奨励金は、売買または賃貸借契約が成立した時に10万円を支給。
竹田市空き家改修事業補助金・・・市の空き家バンクに登録されている空き家を購入し、改修する場合に必要な費用の一部を助成。補助金は、最大で100万円まで支払う。対象は竹田市へ移住する方、又は移住して一年未満の方。
(2)空き店舗関連
竹田市空き店舗対策事業補助金・・・空き店舗を利用して新規に事業を行う人及び店舗を売却、または貸し出す人双方に支援金を支払う。空き店舗を売却または貸し出す人に対して、契約が成立した時に10万円を支給。空き店舗を購入又は借りて事業を行う人に対して、事業開始から3年間、事業支援として年額10万円を支給。
(3)起業関連
竹田市起業支援事業補助金・・・空き家又は空き店舗を購入、または賃借し、起業しようとする人に起業に必要な経費の一部を助成。補助金は、最大で100万円まで支払う。対象は竹田市へ移住する方、又は移住して一年未満の方
(4)短期滞在関連
竹田市お試し暮らし短期滞在費助成金・・・竹田市で住宅を探す、仕事を探す、暮らしを体験するなどの活動にかかる滞在費の一部を助成。助成金は、1人当たり最大6000円支払う。

 職を持てる人・持っている人をターゲットの重点にしている。来てもらうと雇用が生まれるし、家族で来てもらうと子どもも増える。竹田市の資源である伝統・文化・芸術を活かして、例えば竹工芸とか、紙すき、陶芸などの伝統的な分野をターゲットに、空き家、空き店舗を活用して起業することをサポートするという仕掛けである。

 こうした取り組みを支えているのは、やはり人だと思う。市長さんにはお会いしたことはないが、HPを見ていると、そのリーダーシップが伝わってくる。担当者や関係者の人たちも頑張っているようだ。魅力的なまちづくりが行われている。

 竹田市を訪ねたのは、もう30年近く以前のことである。横浜市の環境保全にいたころだろうか。サウンドスケープの調査で、竹田に出かけた。岡城の近くの、町が見える宿に泊まったが、朝もやに霞む町がきれいだったことを覚えている。市役所の方に(年配の方と若い女性だった)、町を案内していただき、食事を(公費で)ごちそうになった。そんな暢気な時代だった。以来、竹田市は、気になる町として、ずっと心に残っている。地震の被害はどうなのだろうか。今度、連れ合いと出かけてみよう。


 



 

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