松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆行政委員とボランティア(投稿から)

2011-12-19 | 1.研究活動
 いつも参考にしている自治体法制執務雑感に投稿した。 

 選挙管理委員会などの非常勤の行政委員に、勤務日数に関わらず定額の月給を支払うことの是非が争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(横田尤孝裁判長)は月額制は適法として、支出差し止めを命じた一、二審判決を破棄、住民側請求を退けた。「行政委員は専門性が求められ、形式的な登庁日数だけでは勤務実態を評価できない」と指摘した。一審大津地裁は「月額制は地方自治法の趣旨に反する」とし、二審大阪高裁も「月額制は著しく妥当性を欠く」としていた。

 さて、行政委員の報酬の月額性ですが、実体面からみると、最高裁の判断のほうが妥当のように思います。私も行政の委員をいくつか頼まれますが、そうした委員でも、会議に参加したその日だけというものではないからです。むしろ事前の調査のほうが大変です。選挙管理委員会の委員なら、なおさらでしょう。
 裁判では、この月給制の問題は、地方自治法の解釈が争われますが、本当の論点は、その先にあるように思います。
 おそらく、真に論ずべきは、こうした委員の仕事は、報酬の対象という位置づけなのかというところが、本当の論点であって、オンブズマンの人たちが言いたいところではないでしょうか。
 古代アテネでは、公務を担うのが市民の責務で、それが民主主義の支える前提とされてきました。素朴に言えば、市民だって、地域のさまざまなところで、ボランティアで公共のために活動しているのだから、選挙管理委員会のような、まさに自分たちの代表を選ぶという民主主義の基本を支える組織については、市民の責務として、ボランティアであるべきだという議論だと思います(議員のボランティア化のその延長線の議論ですね)。
 先に行けばいくほど財政の厳しさを増すなかで、大増税でもしなければこれまでの仕組みは維持できなくなるなかで、自治が生き残る方向は、自分たちでできることは自分たちでやっていくという自治の根源に遡っていくことだと思います。ここでも、昭和22年につくられた地方自治法は、時代に取り残されつつあります。
 選挙管理委員をやるような人には、お金の問題は大したことではないでしょう。むしろ登庁したその日だけの仕事と位置づけられるほうが、ずっと頭にきますね。

 要するに、法務(司法の場)で議論すると、月給か日給か、もらい過ぎではないかという、他人の懐具合を議論するという、卑しい話になってしまう。より本質的な議論が必要だということである。
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