松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙㊼公開政策討論会を見に行く(新城市)

2017-10-13 | 1.研究活動

 新城市の公開政策討論会に出かけてみた。

 教授会を早退して、新城市に向かった。今回の会場は、本長篠にある開発センター。豊橋から、飯田線で約1時間の距離がある。新城には、何度も来ているので、慣れてはいるつもりであるが、今回のような地元密着なテーマでは、およそ、よそ者感満載なので、「あんた誰」と言う目で見られるのではないかと、覚悟して、会場に行ったところ、見知っている人が何人もいて、案ずるより産むがやすしである。会場は、満杯になった。

 公開政策討論会の内容は、とても面白かった。今回の運営は、候補者のそれぞれが進行役となって、議論を進めるので、中立性に拘泥することなく、議論を進めることができる。その分、相手の主張の弱さが、浮き彫り仕組みだから、聞いているほうにとっては、わかりやすい。その論議を通して、改めて、そういうことなのかと、理解できることがいくつもあった。やはり、自治は、現場で直面し、考え、実践している人たちは、強い。

 政策の優劣については、感じることもあったが、ここでは参加者のそれぞれの評価に委ねることにしたい。実際、終わった後で、何人かと話をしたが、感じるところは違うのだという、当たり前のことを改めて、感じた。ここでは、公開政策討論会の制度化に当たって、気が付いた点をメモしておこう。

1.この制度は、基本的には現職に不利な制度ということである。現職の場合は、これまでの業績が俎上にあげられる。誰がやっても100点満点は取れないから、得点の低いところを突かれて、なぜできなかったのかと厳しく追及されることになる。他方、新人の挑戦者の方は、これまでの業績がない分、守備に回ることがない。

ここが、公開政策討論会をやろうと提案すると、現職側が逃げ回り、結局、合意ができずに、公開政策討論会ができない理由である(できたとしても、差しさわりのない、予定調和的な討論会になってしまう)。それを乗り越えるには、そのたびに合意する方式ではなく、恒常的な制度化が必要になる。

2.会場ルールがあって、ヤジや拍手をしてはならないなどが決まっている。実際、2時間の間、そうしたルール違反が一切ないということである。なぜなのだろう。


①根っこには、奥三河・新城の人たちの生真面目さがあると思う。それもあるが、やはり、自治基本条例をつくり、市民まちづくり集会や地域自治区における住民自治の実践が、こうした行動につながっているのだと思う。ということは、公開政策討論会という制度をつくり、これを全国ルールにしようとしても、どこでも出きるというわけではないということかもしれない。地道な自治の実践の上にこそ、新しい制度や仕組みが花開くのだろう。

②事務局内での信頼や連帯感、事務局への信頼が、会場に波及していると思う。この公開政策討論会は、各陣営から推薦された市民が、知恵を出し、仕組みを作った。普通に考えると、選挙なので、自陣営の利益を優先した発言に終始しがちと思うが、実際は、和気藹々で、できる限りいいものをつくろうという雰囲気で進んだという。

 一般的に言えるのは、公共的な役割を頼まれると、日本人は、私的利害をわきにおいて、みんなのためになることを考えるという良き性向がある。ここから学ぶのは、市民、みんなのための仕事をしようというモチベーションをきちんと示すのが、汎用化のための成功要因の一つだと思う。

③そのうえで、メンバーのなかに、実際に、こうした方向性についてリーダーシップを取った人がいたということだろう。この辺りは、選挙が終わった後で、詳しく聞いてみたいと思う。司会進行や最初の説明資料作りは、田村太一さんがやったが、安定感のある進行で、たしかに信頼性が高まっていく。

3.候補者が司会進行をするというのは、いい仕組みだと思う。従来の青年会議所がやる方式では、コーディネーターが、中立性を維持しつつ、突っ込んだ議論をするのは、そもそも難しい。それができる人は、ほとんどいないだろう。つまり、コーデネーターの人材面から、制度が成り立たない。ところが、新城方式では、司会に徹すればよいので、ハードルはだいぶ低くなる。どういう経緯で決まったのか、選挙が終わったら、詳しく聞いてみよう。

4.決定過程の非公開であるが、制度も仕組みもなかったことから、特別の意図があってのことではないようである。ただ、そのいきさつや経過を知らない人から見ると、何か、都合の悪いことでもあるのではないかと勘繰られるので、制度化の際には、きちんとルールを決める必要があるだろう。

5.改めて感じたのは市長になる人は大変だということである。どの主張にも100点はないから、突っ込みどころはいくつもある。それに耐えて、そこから学んで、市長となっていく。学ぶ姿勢が大事だろう。

 公開政策討論会がなければ、市民は、市長候補者のそうした苦労、大変さに気が付かない。公開政策討論会は、市長候補者を自分に置き換える良い機会である。政治の当事者になるということは、こうした当事者感を持てる機会を積み重ねていくことが大事なのだろう。

  帰り、本長篠から電車で帰るつもりであったが、市役所のMさんが、送ってくれるという。ありがたいことで、お言葉に甘えることにした。しかも、豊橋まで、送ってくれた。

 予定より、一時間早くついたので、楽勝と思って、ホテルにつくと、予約がないという。1週間間違えて、予約をしていたらしい。空き室はあるかと聞くと、豊橋のホテルは、どこも満室でさっきのお客さんは、浜松のホテルを紹介したとのこと。この時間の新幹線は、もう静岡まで。豊橋の駅で、始発電車を待つのかと覚悟をした。

 若者ならともかく、ただ私の年代だと、ホームレスと思われて、連行されるかも、しれない。

 慌てて、ネットで調べて、ホテル電話。結局、いいホテルがすぐに見つかった。もし、Mさんが、豊橋まで送ってくれなかったら、夜中の11時に、呆然とすることになったと思う。二重の意味で感謝することになった。

 

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