最近の我が家の話題は、高齢者の交通事故、京都のアニメ会社の放火、そして韓国の問題である。
正直者の見本のような連れ合いと、人生いろいろの私とは、意見が合わないことも多いが、とりわけ、力が支配し、警察も裁判所もない、喧嘩のような国際政治をめぐる問題は、いつも意見が合わない。しかし、今回の韓国をめぐる問題は、珍しく意見があっている。
条約ですでに決めたことをないことにする、韓国のふるまいは、正直、付き合いきれないという、多くの市民の思いは、よく理解できる。ホワイト国の除外で、こんなに狼狽する韓国を見て、胸のつかえが降りたという、市民の気持ちも、解らないわけではない。
市民は、それでもいいが、政治は、もっと冷徹に、先のことを考えて、計算づくで進めなければいけないが、政府は、「落としどころ」を考えて行動しているのだろうかというのが、二人の疑問である。こんな大事な時期に、食べるところで8%か10%になってしまう軽減税率を導入し、さらにはポイント還元などと、ヤマダ電機のようなことを考えている政府は、本当に大丈夫なのかというのが、二人が共通の意見でもある。
国際政治学でいえば、日本にとって、韓国は緩衝地帯である。日本の盾になってもらうように、仕向け、誘導するのが、日本の国際政治戦略となる。
これは、もし韓国がいなかったらどうなるかを考えるとすぐわかる。もし韓国がいないと、日本は、中国や北朝鮮、ロシアと、日本海から東シナ海の長い海岸線を日本は自分だけで守らなければならない。今は韓国がいるので、日本は、尖閣諸島など重点的な警備もできるが、韓国なしでは、この広い領域をとても、現状の海上保安庁や自衛隊ではとうてい守ることができない。
自衛隊を増強すればいいという議論もあるが、これは机上の議論である。簡単な話、船はお金を出せば増やせるが、その船に乗る若者が、少子化と人手不足でいないからである。実際、自衛隊に行くとすぐわかるが、太っちょのおじさんばかりである。
数年前までは、就職難のなか、公務員ということで、自衛隊に入る若者がたくさんいたが、今では若者の就職口はいくらでもある。市役所だって、人が来ないと焦っている時代に、自衛隊に入る若者は、レアな存在である。
また、いったん就職しても、もし、戦争の危険がせまったら、退職者が続々と出るだろう。「お父さん、子どもがまだ小さいのだから、危ない仕事はやめて」と奥さんから説得され、母親は、息子に対して、「危険な仕事はやめて」と泣いて迫るだろう。
だから、日本にとっては、韓国を盾に日本を守るという戦略が、一番効率的で、現実的なので、ここを起点に、押したり引いたりの戦略になるであろう。
他方、大国に挟まれた韓国は、どんな戦略が一番いいのか。大国の間に挟まれているという弱点を逆手にとって、どっちにもいい顔をして、自分を高く売りつけるのが一番いい戦略になる。
後進国のときならば、日本やアメリカに従わざるを得ないが、今日では、世界有数の経済発展を遂げた先進国である。国民一人当たりのGDPは、日本が24位で、韓国は25位である。もう少しで日本に追いつく。こうしたなかで、自信をつけた韓国は、独自戦略を歩み始めたということだろう。
国際政治では、両天秤は卑怯だなどといっても、何にもならない。少ない被害で、たくさんの利得を得る方法を選択し、そのかじ取りをするのが、リーダーの役割である。両天秤に掛けるのは、普通の戦略である。
だから、韓国は、すくなくとも、これまでのように日本の言う通りには、今後は、しないということである。だからと言って、中国側につくこともしない。旗幟を鮮明にしたら、自分を高く売ることができなくなる。日本・アメリカvs中国を両天秤に掛けながら、果実を引き出すというメリットを活かせなくなる。
私たちのような素人でも、日韓関係は、これまでとは違う新しい関係に入ったことは、容易に理解できる。その過渡期のために、お互いの呼吸があわず、やや混乱しているが、選択の幅は、さほど広くないので、日本の戦略と韓国の戦略の一致点は、あると思う。
この辺りは、日本官僚(おそらく韓国の官僚も)は冷徹に計算しているだろうが、それを政治がうまく使いこなせるかというのが、一番のポイントではないだろうか(今回の3品目措置は、あくまでも安全保障上の問題であるので、韓国が引き返せるような道筋はつけられなかったのか)。
果たして、国際交渉にたけた官僚が指揮を執っているのだろうか。政治もその知見をうまく聴いているのだろうか(経済産業省は、大丈夫だろうか。韓国の使者に、失礼な対応をして、国民の留飲は下げたが、これではまるで子供の喧嘩である。国際政治は、にこやかに談笑しながら、見えないところで足元を蹴るような大人の喧嘩の世界なのに)。
歩きながら食べると8%で、中で食べると10%みたいなことをやっているのを見ると、本当に大丈夫なのだろうか、心配だよねというのが、今朝の遅い朝食時の二人の合意点だった。