カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

フィレ・ミニヨンのクリームソース

2011年11月15日 | Food

アメリカでは、一般的にステーキはアウトドア料理です。

腕自慢の男性が、試行錯誤でたどり着いた自慢の焼き加減で焼いてくれたステーキを、

夏にはガーデンのテーブルで、冬にはダイニングルームで頂きます。

そんな日の女達の仕事は、付け合わせやサラダを用意することぐらい。

それにしても男達は、なぜ火を見るとあのように生き生きとするのでしょうか?

それはまるで、ショッピングに出掛けた女性のよう!

 

日本ではいかがでしょう?

色々な理由から、牛肉は敬遠される傾向に有ると聞いておりますが・・・

これからの季節、お客様を招いたり、親しい方と特別なディナーを計画される際、

もしも”たまにはステーキ”と思われる事が有りましたら、

是非思い出して頂きたいレシピをご紹介致します。

炭火など無くても、人数分のお肉を準備するのは予算オーバーでも、

小さなお子様から、お年寄りまで美味しく召し上がって頂ける、

フライパンで焼くフィレミニヨンのクリームソースです。

 

日本はどこで暮らしておられても、新鮮な食材が手に入る素晴らしい国です。

国土面積が狭いだけに、輸送面でも産地から台所までの距離が短いですね。

そんな日本の食事情に基づいた食材の処理は、極上の食材には適していても、

特売品が更に値下げされた、夕方のスーパーで購入したような食材には、

適さないこともある気が致します。

これからご紹介するのは、輸送に時間のかかるアメリカの牛肉処理方法の一つですので、

それが絶対正しいとは申し上げられませんが、

特売のお肉でも美味しく召し上がって頂ける可能性があると思いますので、

敢えてご紹介させて下さい。

 

フィレミニヨンです。別の部位がお好きならそちらをご用意ください。

牛肉は新鮮であれば美味しいという訳では有りません。

実際アメリカでは、Aged beefと申しまして、少し時間が経っている牛肉の方が高額です。

ただこの保存方法は、一般家庭では真空パックの装置が無いと難しいです。

ですので今回は、前の日に買ったものを翌日の夜焼く、という設定。


前日の下ごしらえ

お買い物から戻られましたら、直ちにステーキ用のお肉を処理してしまいます。

余分な脂肪を取り除く必要があれば取り除き、筋切りをして、しっかり塩こしょうします。

今日はこれでおしまい。ラップできっちり包んで冷蔵庫に保管しておきます。

この行程は、肉の中まで味を入れ、余分な水分を脱水する為のプロセスです。

私はブログの中で頻繁に脱水という言葉を使いますが、食材の持つ水分は、

旨味であると同時に料理の味を落とす危険もありますので、的確に処理します。

 

当日

お肉は、この季節でしたら焼く3時間前には冷蔵庫から出して、中まで室温の状態にします。

これで、火の通りが均一になります。

薄く油を引いたフライパンを、煙が出る程熱して肉を入れ、

写真の様な焼き色が付くまで、絶対にいじりません

お肉を持ち上げたり致しますと、たちまちフライパンの温度が下がります。

両面に焼き色が付いたら、蓋をして中火でお好みの焼き加減まで焼いて下さい。

この焼き加減ですが、ここが男達のこだわりが発揮される部分です。

片面3分、返して2分などと、それぞれ オレ様流 を持っていますが、

私は肉の表面をフライ返しなどで押した際の弾力で焼け具合を判断致します。

ご自分の腕を指で押してみて下さい。この弾力がいわゆるレアの状態です。

これが堅くなればなるほど火が通った状態になって行く訳です。

若干の慣れは必要ですが、一度マスターしてしまえば、

肉の大きさや厚さに関係なく、完璧な焼き加減に仕上げることが出来ます。

あっ!片隅の小さなステーキは味付け無しで王様の分です。

焼き上がりましたら、アルミホイルに包んで5分程放置。

この時、余熱で更に火が通って行きますので、焼き加減はそれを考慮に入れて下さい。

そしてこの5分の間に、フライパンで焼かれてドライになった表面に水分が戻って参ります。

例えレア好きの方でも、表面はドライで中はびしょびしょなのは好まれないことでしょう。

ホイルで包んで、ステーキ全体の温度や水分量を均一にし、旨味を全体に行き渡らせるのです。

焼きたてを直ぐに切ることで、肉のジューシーさは損なわれます。

焼肉では有りませんので、焼きたてアツアツにこだわる必要は無いかと思います。

常にソースとともに頂くフランス料理も、舌を火傷する程熱いものでは有りません。

食材の美味しさが味わえる適温というのが、やはり有ると思います。


その間にソースを作ります。

材料は、ニンニクの薄切り、豆鼓のみじん切り。

そして生クリーム。

お肉を焼いたフライパンを、洗わずに使います。

一旦火から外して冷ましたフライパンに、オリーブオイルを少量引き、

ニンニクの薄切りを入れます。

この時お肉から充分な脂が出ていれば、オリーブオイルは要りません。

フライパンが静かなのを確認して、弱火にかけて低温からじっくり香りを出します。

ニンニクがきつね色になり始めましたら、刻んだ豆鼓を加えて炒めます。

お肉を包んでおいたホイルを開くと、このように肉汁が出ていますので、

それもフライパンに加えます。この後お肉は包み直しておいて下さい。

ここに生クリームを注ぎ入れ、しばらく煮ます。

水分が少ないので、火が強いと直ぐに蒸発してしまいますので、弱火です。

徐々に豆鼓の味が生クリームに溶け出し、この様な色になります。

ここで火を少し強めて、若干とろみが付くまで煮詰めます。

その間に、お肉をスライスして、お皿に並べておきます。

厚さはマグロのお刺身程度がよろしいです。

この日の付け合わせは、マッシュポテトと生食用のホウレン草です。

マッシュポテトは是非添えて下さい。ソースを絡めて頂きますと絶品です。

ホウレン草に味付けは不要です。ソースがその役割を果たしてくれます。

煮詰まったソースをかけて、出来上がりました

このステーキには、白米がよく合います。

炊きたてにゆかりをパラパラと掛けて、

いっただっきま~す。

 

一人に一枚ずつステーキのお肉を用意しなくても、

マッシュポテトをたっぷり添えて、大きなお皿でドーンとお出しすれば、

とても豪華な一品となります。

 

最後になりましたが、このクリームソースは私のオリジナルレシピでは有りません。

5年以上前に、空港の本屋さんで立ち読みしたレシピ本に載っていました。

本のタイトルは忘れましたが、料理研究家、河村みち子さんの本だったと記憶しております。

ずっと作り続けて行かれる良いレシピとの出会いは一生の宝ですね。

すっかり私の定番となったこのソースを、ご紹介出来たことを嬉しく思います。

料理研究家にとってレシピは作品。私にとっての陶芸作品と同じです。

感謝と尊敬の気持ちを込めて、お名前を明記させて頂きます。

 

では

 




◯ ◯ ◯しか無い時のタイ風サラダ

2011年11月14日 | Food

予定外の来客が入った場合や、どうしても足りない食材が有れば、

近くのマーケットに出掛けることは勿論有りますが、

私の食品のお買い物は、基本的には週一度となっております。

お勤めをしている訳でも、子供がいる訳でもないので、

買い物など毎日でも行かれる暇人ですが、

これは私が食材を完璧に使い切ることに執念を燃やしているのが理由です。

次々と食材を買い足して行くうちに、収集の着かない混沌とした冷蔵庫になって行き、

それは私自身の心が雑然と見苦しいものになって行くことの象徴だと心得ております。

 

前もって一週間分の献立を立てて、必要な食材を買いそろえるプラン型ではなく、

その時に私を呼んでいる食材をバランスを見ながら買い集める、ノープラン型です。

無計画に買った食材を頭に入れておいて、

その日の天候、健康、気分によって、献立を考えます。

買い物直後は献立もよりどりみどり。ですが次のお買い物直前は頭を使わなければ、

とんちんかんな食卓になってしまいます。

 

そのようないきさつから、冷蔵庫を覗きますと、何とも貧相。

キャベツだけ、白菜だけ、大根だけ、キュウリだけ・・・・なんて事もございます。

そんな◯◯◯だけしかない時に作るタイ風サラダをご紹介。

どんな野菜でも美味しく、苦肉の策とは思わせず、食卓にアクセントを添えてくれる一品です。

この日の私はキュウリクィーン キュウリばかりが冷蔵庫に残っておりました。

使用する調味料は、

おろしニンニク、ライムの絞り汁、刻んだ赤唐辛子、砂糖、ナンプラー、桜えび。

タイ料理好きの方でしたら、ここでピンと来ることと思います。

タイの代表的なサラダ、ソムタムやヤムテンクワーを手に入り易い調味料で作ります。

 

あっつそうだ!ナンプラーLOVEの皆様に、

私がベトナム人の知人から教えて頂いた秘策をお授け致しましょう!

ナンプラーはバルサミコ同様、年代物ほど美味しゅうございます。

ナンプラーを未開封のまま瓶を立てた状態で、

直射日光の当らない場所に常温で保管しておきますと、

次第に塩分が結晶し、ザラメのように瓶の底に溜まって参ります。

この上澄みの部分がじつに素晴らしい

塩分ではなく旨味だけが抽出された、例えるなら年代物のワインの様な上質さです。

これには最低2~3年掛かりますが、お試し頂く価値大有りです。

写真のナンプラーは5年もの。我が家の家宝でございます。

今回はキュウリでしたので、キュウリを叩いて味の馴染みを良くして使いました。

キャベツや白菜なら、包丁を使わず手でちぎってお使い頂く方が断然美味です。

食べ易い大きさにしたお野菜に全ての調味料を加えて、もみ込むように馴染ませます。

よく馴染みましたら、お皿などで平に蓋をした上から軽く重しを乗せます。

ちなみにこのブルーの瓶はお砂糖の入れ物。その程度の重さで充分です。

お漬け物では有りませんので、15分程度置けば完成。

ソムタムなどは、本来大きな木のボールにお野菜と調味料を入れまして、

木の棒でトントンと叩くように混ぜて味を馴染ませて作ります。

盛りつけて、白ごまを振りかけて出来上がり。

もしもピーナツがございましたら、細かく刻んで白ごまの代わりに振りかけますと、

尚更タイの味に近付けます。

こんな風に、小皿にお行儀よく並べてお出ししますと、

何か特別なお料理の様に感じられます。

 

食材を使い切る。これは料理の基本中の基本でございますが、

ただ余り物として使うのではなく、最後まで食材に工夫と愛情を注いで調理することが、

命有るものを食べて生きる私の使命だと思っております。

 

では



燃え残った手紙

2011年11月12日 | Ceramics

 

メールと手紙。

誰かが相手に用件や気持ちを伝える為に書く。

受け取った側が、それを何かの理由で消す必要がある場合、

メールなら削除、消去。手紙なら破棄になるのかな。

それからもう一つ、手紙の場合燃やすという方法が有る。

破棄することと燃やすことは、結果的に同じように文書を消し去ることでも、

その行為の持つ意味や、時間の経過が違う。

 

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『燃え残った手紙

 

この手紙は燃やそう。

いい加減前に進みたいのに、この手紙がいつも邪魔をする。

ゆったりと穏やかな文字が刻まれた便せんの隅に火を点けて、暖炉の中に投げ込む。


燃やしたいのは文字の書かれた紙ではない。

書いたあの人の思いと、受け取った私の思い。

思い出の中の二人の存在自体が煙になって消えてしまえばいいのに!

手紙が焦げ臭い匂いを放ちながら炎を上げ始めるのをじっと眺める。

旅先から投函された手紙は、エーゲ海の夕暮れ色をしている。

私に心を伝える為にあの人が選んだ言葉が、一字一字消えて行く。

・・・と、

夕べ燃え残った薪が、コトリと音を立てる。

突然我に返った私は、慌てふためいて炎をたたき消す。

ちょっと待ってよ!なにも燃やさなくても良いじゃないの!

自分で火を点けておいて、誰に向かって言っているというのか。

時間が手紙と思い出をセピア色にに変えてくれるまで、

見えないところに仕舞っておけば良いんだから。

燃えて無くなってしまった言葉を、焦げて縮れた茶色が縁取る。

一番大切で、今は一番見たくない言葉が消えてなくなっているのに気付く。

私はいつもそうだ。

感情的になって、一番大切な物を失くし続けて来たんじゃないの。

知ってるよ、思い出は絶対に消えない。

苦い思い出ほど強く残る。。。

強い衝動から静かな後悔へ。ここまでほんの数分。

時に人の心は、僅かな時間の中で大きく変化する。

時間が大切な友達であることを、いつも過ぎてしまってから思い出す。

ふと目をやると、燃え残った手紙は結構美しい。

醜く乱れて傷ついた思い出が、やがて美しく見えて来るのと同じだ。

 

それにしても・・・・・

忘れてしまいたい言葉ほど

いつまでも心に焼き付いて消えないのはどうしてだろう?


窓を大きく開けると、カリフォルニアの深紅の夕焼けが広がっている。

私はもう別の場所で別の毎日を生きている。

便せんの夕焼け色は、遠い遠い彼方。

 

いい歳をして、子供じみた自分に向けたため息と入れ替わりに、

晩秋の冷たい空気が流れ込んだ。

 

by OQ

 

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短編小説を書くように、作品を作ることも有ります。

あっ!ストーリーは、もちろんフィクションです。

 

 Have a beautiful weekend everybody



野菜炒めで作るスープ

2011年11月11日 | Food

スープはとても有り難い一品でございます。

寒い季節に身体が芯から温まりますし、火を通すことでお野菜の嵩もグーンと減って、

驚くほど沢山のお野菜を頂くことが出来、

水溶性のビタミンが溶け出したスープまで飲み干すのですから、ステキ

 

本日は野菜の旨味を存分に感じて頂けるスープをご紹介。

こちらは野菜炒めを作るところからスタートです。

どんなお野菜でも構いませんので、冷蔵庫の中のありったけのお野菜を使って、

お好みの味付けで野菜炒めをお作りください。

バラ肉などお使い頂いて構いませんが、基本、野菜だけで充分美味しく出来上がります。

ただ一つ、普通の野菜炒めと違うのは、味を濃~く付けて頂く様お願い致します。

もう、野菜炒めとしては味が濃過ぎる位、大盤振る舞いです。

もしも、お弁当のおかずや、お酒の肴に野菜炒めをご所望なら、

味を普通につけて必要量を取り分けた後、調味料を足して頂けば結構です。

野菜炒めを作っている間に、やかんにお湯を沸かしておいて下さい。

出来上がった野菜炒めに、熱湯をどぼどぼと注ぎます。

こちらは熱湯を注いだところ。

私はゆきひら鍋を料理の友として愛用しておりますが、

こちらの鍋ですと炒め物も出来てしまいますので、お湯を注ぐだけ。

そこに乾燥したままの春雨をはさみなどで食べ易い長さにカットしてそのまま入れます。

春雨が柔らかくなるまで2~3分。これで出来上がりです。

野菜炒めが濃い味に仕上がっていれば、調味料を足す必要は無いはずですが、

もしも薄過ぎるようであれば、調整して下さい。

 

今日は水餃子が食べたい気分でしたので、冷凍してあったものを茹でました。

このように、別茹でした水餃子を器に入れまして、

(お急ぎの場合、スープにいきなり餃子を入れてしまう荒技も有りますが、

餃子の分量が多いと、スープが小麦粉臭くなることが有ります。

別茹では面倒ですが、サラッと美味しくし上がります。)

餃子の上からスープをたっぷりと盛りつけ、青ネギを山のように乗せます。

このスープ、不思議なんですけれども、

野菜を炒めてお湯を注いで味付けをする手順ものと比べて格段に美味。

最初に野菜にしっかり味をつけることで、野菜が美味しいのかな?と思います。

本日はこちらの3品でお味をカスタマイズ。

中でも是非お試し頂きたいのが、向かって右側の中華黒酢

日本の米酢と比べて甘みやコクがあり、酸味の少ない酢です。

これは、加熱してしまうと意味が有りませんので、テーブル上でどうぞ。

味が引き締まります。

*右奥に写っているレモンはスープ用ではなく、バーテンダーの紹興酒の為のもの。

具沢山のスープは酒の肴にも結構イケます。

 

同じ材料、同じ味付けのお料理でも、

いつもと手順を変えるだけで、新たな味の発見が有ったり致します。

お料理は工夫とチャレンジ、試行錯誤の繰り返しでございますね。

 

Enjoy !!




生ハム&メロン

2011年11月10日 | Ceramics

ここのところ、ペーパーシリーズの制作に夢中な私ですが、

平行して取り組んでいるものがテキスタイル。

布の様な焼き物を焼きたいな。

土というのは高温で焼き上げてしまえば永遠に形を残す強靭な素材ですが、

水気を含んでいるときは紙や布の様にしなやかで、自由にその形を変えてくれます。

私は陶芸をなさらない皆様が、あまり見る機会のないそんな土のしなやかさを、

焼き上がって尚感じて頂ける作品を作りたいと思っています。

インドネシア発祥の染色技術、バティックのような素朴な風合いの長皿です。

作陶中に少し余った土で、手彫りのスタンプを幾つも焼くのですが、

それを使って、立体的な地模様を付けて、ろうけつ染めの様な夕焼け色に薬掛けをします。

これは”エーゲ海の青という、焼成時に独特な動きをする魅力的な釉薬です。


メロンなお皿


同じようにスタンプで地模様を付けて、こんなお皿を焼いてみたりもします。

僅かな凹凸に釉薬が反応して、ガラス質の強弱や色の濃淡を描き出します。

 

で、生ハムメロン。

こんな風にちょっとした前菜を並べるのに、この形は重宝します。

何はともあれマンハッタン。相変わらずマティーニ好きなバーテンダーです。

私、メロンのお皿を焼いた時、

『もう生ハムにメロンは要らないわ。メロンのお皿に生ハムを載せれば生ハムメロンだし。

と思ったのですが、”ギャグでしょっ!” と敢え無く却下。

・・・・・というわけで、こちらは生ハムメロンメロン。

 

では