アメリカでは、一般的にステーキはアウトドア料理です。
腕自慢の男性が、試行錯誤でたどり着いた自慢の焼き加減で焼いてくれたステーキを、
夏にはガーデンのテーブルで、冬にはダイニングルームで頂きます。
そんな日の女達の仕事は、付け合わせやサラダを用意することぐらい。
それにしても男達は、なぜ火を見るとあのように生き生きとするのでしょうか?
それはまるで、ショッピングに出掛けた女性のよう!
日本ではいかがでしょう?
色々な理由から、牛肉は敬遠される傾向に有ると聞いておりますが・・・
これからの季節、お客様を招いたり、親しい方と特別なディナーを計画される際、
もしも”たまにはステーキ”と思われる事が有りましたら、
是非思い出して頂きたいレシピをご紹介致します。
炭火など無くても、人数分のお肉を準備するのは予算オーバーでも、
小さなお子様から、お年寄りまで美味しく召し上がって頂ける、
フライパンで焼くフィレミニヨンのクリームソースです。
日本はどこで暮らしておられても、新鮮な食材が手に入る素晴らしい国です。
国土面積が狭いだけに、輸送面でも産地から台所までの距離が短いですね。
そんな日本の食事情に基づいた食材の処理は、極上の食材には適していても、
特売品が更に値下げされた、夕方のスーパーで購入したような食材には、
適さないこともある気が致します。
これからご紹介するのは、輸送に時間のかかるアメリカの牛肉処理方法の一つですので、
それが絶対正しいとは申し上げられませんが、
特売のお肉でも美味しく召し上がって頂ける可能性があると思いますので、
敢えてご紹介させて下さい。
フィレミニヨンです。別の部位がお好きならそちらをご用意ください。
牛肉は新鮮であれば美味しいという訳では有りません。
実際アメリカでは、Aged beefと申しまして、少し時間が経っている牛肉の方が高額です。
ただこの保存方法は、一般家庭では真空パックの装置が無いと難しいです。
ですので今回は、前の日に買ったものを翌日の夜焼く、という設定。
<前日の下ごしらえ>
お買い物から戻られましたら、直ちにステーキ用のお肉を処理してしまいます。
余分な脂肪を取り除く必要があれば取り除き、筋切りをして、しっかり塩こしょうします。
今日はこれでおしまい。ラップできっちり包んで冷蔵庫に保管しておきます。
この行程は、肉の中まで味を入れ、余分な水分を脱水する為のプロセスです。
私はブログの中で頻繁に脱水という言葉を使いますが、食材の持つ水分は、
旨味であると同時に料理の味を落とす危険もありますので、的確に処理します。
<当日>
お肉は、この季節でしたら焼く3時間前には冷蔵庫から出して、中まで室温の状態にします。
これで、火の通りが均一になります。
薄く油を引いたフライパンを、煙が出る程熱して肉を入れ、
写真の様な焼き色が付くまで、絶対にいじりません。
お肉を持ち上げたり致しますと、たちまちフライパンの温度が下がります。
両面に焼き色が付いたら、蓋をして中火でお好みの焼き加減まで焼いて下さい。
この焼き加減ですが、ここが男達のこだわりが発揮される部分です。
片面3分、返して2分などと、それぞれ オレ様流 を持っていますが、
私は肉の表面をフライ返しなどで押した際の弾力で焼け具合を判断致します。
ご自分の腕を指で押してみて下さい。この弾力がいわゆるレアの状態です。
これが堅くなればなるほど火が通った状態になって行く訳です。
若干の慣れは必要ですが、一度マスターしてしまえば、
肉の大きさや厚さに関係なく、完璧な焼き加減に仕上げることが出来ます。
あっ!片隅の小さなステーキは味付け無しで王様の分です。
焼き上がりましたら、アルミホイルに包んで5分程放置。
この時、余熱で更に火が通って行きますので、焼き加減はそれを考慮に入れて下さい。
そしてこの5分の間に、フライパンで焼かれてドライになった表面に水分が戻って参ります。
例えレア好きの方でも、表面はドライで中はびしょびしょなのは好まれないことでしょう。
ホイルで包んで、ステーキ全体の温度や水分量を均一にし、旨味を全体に行き渡らせるのです。
焼きたてを直ぐに切ることで、肉のジューシーさは損なわれます。
焼肉では有りませんので、焼きたてアツアツにこだわる必要は無いかと思います。
常にソースとともに頂くフランス料理も、舌を火傷する程熱いものでは有りません。
食材の美味しさが味わえる適温というのが、やはり有ると思います。
その間にソースを作ります。
材料は、ニンニクの薄切り、豆鼓のみじん切り。
そして生クリーム。
お肉を焼いたフライパンを、洗わずに使います。
一旦火から外して冷ましたフライパンに、オリーブオイルを少量引き、
ニンニクの薄切りを入れます。
この時お肉から充分な脂が出ていれば、オリーブオイルは要りません。
フライパンが静かなのを確認して、弱火にかけて低温からじっくり香りを出します。
ニンニクがきつね色になり始めましたら、刻んだ豆鼓を加えて炒めます。
お肉を包んでおいたホイルを開くと、このように肉汁が出ていますので、
それもフライパンに加えます。この後お肉は包み直しておいて下さい。
ここに生クリームを注ぎ入れ、しばらく煮ます。
水分が少ないので、火が強いと直ぐに蒸発してしまいますので、弱火です。
徐々に豆鼓の味が生クリームに溶け出し、この様な色になります。
ここで火を少し強めて、若干とろみが付くまで煮詰めます。
その間に、お肉をスライスして、お皿に並べておきます。
厚さはマグロのお刺身程度がよろしいです。
この日の付け合わせは、マッシュポテトと生食用のホウレン草です。
マッシュポテトは是非添えて下さい。ソースを絡めて頂きますと絶品です。
ホウレン草に味付けは不要です。ソースがその役割を果たしてくれます。
煮詰まったソースをかけて、出来上がりました
このステーキには、白米がよく合います。
炊きたてにゆかりをパラパラと掛けて、
いっただっきま~す。
一人に一枚ずつステーキのお肉を用意しなくても、
マッシュポテトをたっぷり添えて、大きなお皿でドーンとお出しすれば、
とても豪華な一品となります。
最後になりましたが、このクリームソースは私のオリジナルレシピでは有りません。
5年以上前に、空港の本屋さんで立ち読みしたレシピ本に載っていました。
本のタイトルは忘れましたが、料理研究家、河村みち子さんの本だったと記憶しております。
ずっと作り続けて行かれる良いレシピとの出会いは一生の宝ですね。
すっかり私の定番となったこのソースを、ご紹介出来たことを嬉しく思います。
料理研究家にとってレシピは作品。私にとっての陶芸作品と同じです。
感謝と尊敬の気持ちを込めて、お名前を明記させて頂きます。
では