ダダダダダ――と母と娘は急いで階段を下りる。小頭は恐怖で足元がおぼついてないが、なんとか母親が体を支えておりてる。
「急いで! 早く外――ひっ!?」
母親は玄関を目指してた。てか、階段を下りたらもうすぐに玄関だ。だからこそ外に出て助けを呼ぼうと思ったんだろう。それに家の中よりも外の方が人の目がある。住宅街といっても、まだ日がある時間帯だ。外には車だってとおってるし、暑そうな中営業してるサラリーマンとかだっているだろう。
きっと誰ががいる……てか母親はついさっきまで隣人の奥さんとも話してた。最悪そっちに駆け込む手もあると思ってた。だから目指すは外……まずは外。でも……なぜか奴が、強姦犯が扉の前にいたんだ。それを見て母親は声を詰まらせる。
「きゃあああああああああ!!」
小頭もその姿を見て、そんな声を上げる。母親はそんな小頭を支えるようにして家の奥へ、リビングの方へと向かう。小頭は小頭は脚が震えてまともに歩くことも難しくなってるようだ。それも仕方ないだろう。なにせ襲われかけたんだ。いや、その恐怖はまだ終わってない。
外に出たら日光がちょっとは小頭に安心をくれたかもしれない。けど……蒸し暑くて、結構暗い家の中は今の小頭には安心をくれなかった。母親がいなかったらきっともう動けてなかっただろう。
「裏口から出るわよ」
そうささやいて、なんとか逃げる算段をする母親。小頭はそれを聞いてるのかわからない状態だが、母親は諦める事はない。なにせ娘がピンチなのだ。いや、この状況なら自身だって危ないだろう。まずは母親をどうにかして、娘を弄るとも考えられる。なにせ相手は大人の男性だ。一人対二人だから小頭がまともなら二人でうまくやればどうにか……ワンチャンあったかもしれないが、それも今の小頭には出来るわけなかった。最悪母親は「私が盾になってでも娘を逃がす」とか覚悟をしてそうな顔をしてる。
けど実際それだって今の小頭の状態では難しい。リビングにはいって、繋がってるキッチンへと向かう。その奥に裏口がある。道路には面してないが、向かいの家とは一メートルくらいの距離である。助けを求めることが出来る。でも……
「なっ!?」
母親は驚愕する。だってそこには既に男がいたからだ。恐怖と意味が分からない現象に知らずに母親の歯もカチカチカチと震えて鳴ってた。
「おかあさん……」
するとそんなか細い小頭の声が耳に届く。それが聞こえた瞬間に、母親は厳踵を返す。ぐっとこらえて、母親は親だという事を思い出したんだ。心細い我が子がいる。だから自身も恐怖で震えそうだが、この子を守るためなら恐怖よりも親としての気持ちが彼女の脚を動かしてる。
そして二人は風呂場にきてた。もうどうしようもなかった。ただあの男を観たくなかった。だからこそ、袋小路のこの場所に来た。でも安心なんてできなかった。だって……なぜかどこにでも現れるような……そんな気がしたからだ。二人はお湯がないバスタブに二人で縮こまって身を寄せ合ってた。最悪な事にスマホは落としてた。そしてそこに摺りガラス越しに人の影が見えた。
二人は喉元からデカかった悲鳴をなんとか飲み込んだ。バレないようにするためだ。けど、結局はバレてた。ガシャンと扉に手がかりガタガタと揺れる。幸いなことに脱衣場と風呂場の間の扉には鍵があった。だからそれを閉めることで、侵入を阻むことが出来てる。
でもそれも一瞬の安心。なぜなら、男の腕がなぜか扉を透過して突き刺さってきたからだ。
「きゃああああああああ!?」
「ああああああぁぁぁぁああああ!!」
二人のそんな叫びが風呂場に木霊してた。けど扉を潜り抜けたのはその最初に突っ込んだ腕一本だけ。
ガタガタ――ガタガタ――
何やら扉がそんなふうにガタガタなりだした。まるで男事態も焦ってるような……でも二人はもうそれをみてない。なぜなら、恐怖が限界を突破したのか、二人して気絶してたからだ。