「ふふ、散々だね足軽。反論しないの?」
「うるさい。それに……まあ事実だし……」
「そっかそっか」
そんな風に言ってくる幾代。すると幾代が「うーん」と指を唇に当ててなんかニヤッとしてる。そのポーズがなんか色っぽく野々野足軽には見える。
「小頭ちゃんもそんな事言ってるけど、でもお兄ちゃんと一緒にいるんだ? 小頭ちゃんくらいの歳なら、お兄ちゃんと一緒に居たくないんじゃない普通? イケメンでも無いのならなおさら」
そんな幾代の言葉に足軽は納得できるが、同時にダメージも受ける。実際さっきから足軽を否定しまくってる小頭である。それを考えると、幾代の考えは間違ってないだろう。
普通はそうなんじゃない? と思う。これだけ言われるのになんでついてきてるんだ? と足軽だって思う。
「いやなら来るな」
と思うだろう。でも小頭はここ最近、いうなればあの襲われそうになった日からは随分と小頭は足軽にくっついてる。口ではボロクソに言ってるが、その行動は真逆だった。そんな事情は幾代は知らない。だから実際、その発言と行動が伴ってないから幾代的には小頭はそんなことを言ってるけど、お兄ちゃんから離れられない可愛らしい子……みたいに映ってるみたいだ。
だからこそを突いてからかってきてる。
「そ……それは……」
小頭も言葉と行動が間逆なのはわかってる。けど、あんなことがあったから、一人になるのは怖いんだろう。今は家族以外と離れたくない……みたいな感じになってる。
「あんまりからかうなよ」
そうちょっと真剣にいう足軽。色々と酷いことを言われたが、結局兄としては妹に頼られるのは嫌な気はしない。だからやっぱり甘くなる野々野足軽だ。そしてそんな真剣に言われた幾代は「ごめんなさい」と素直にいってくれた。ちょっとからかい過ぎたと思ったんだろう。
「あっ、ほら! もうすぐだよ!」
そんなことをいって前を向いて走る幾代。ちょっと前から水が落ちるような音が聞こえてた。だから想像はしてたけど、幾代が連れてきたところには滝があった。周囲は木々で囲まれてるけど、ぽっかりとそこだけ空いててまるで秘密の場所だ。
更に……
「あっ! たぬき!!」
はしゃいだ小頭の声。そうどうやらここは野生動物の飲み場でもあるみたいだ。たぬきの親子が水を飲んでた。そんなたぬきの親子は足軽達の姿を見ても別に気にしてない。
そんなたぬきの親子を小頭はスマホで写真を撮ってる。