「え? それって……わわ、わたたたたた――」
なんか足軽と小頭が言い合ってた所に一人の女の子がやってきた。しかもその子は驚いたことになんとスク水だった。しかも今どきの学校のなんの色気もない短パン風のスク水ではない。もっと古い時代のハイレグ感があるスク水である。紺色の生地に、野暮ったい感じのデザイン。それは決しておしゃれではないが、でも大人になりきれてない体を隠すには十分な、絶妙なラインを作り出してる至高のスクール水着だった。
しかもその子はかなり……そう、野々野足軽基準で言えばかなりかわいかった。スポーツをしてるのか引き締まった体に、元気が宿ってそうな大きな瞳。髪型はポニーテールで健康的に焼けた肌は水を弾いてキラキラと太陽光を反射させてる。
「なにやってんだあああ足が――!? 返してよ!」
何やら一瞬勢いが衰えたけど、すぐにさっきの勢いで手をこっちに向ける。
「返せ?」
?を浮かべる足軽。一体この少女は何を言ってるんだろうと思った。なにせ初対面だ。まあけどこんなかわいい子のスク水姿を間近で見られるなんて眼福眼福と野々野足軽は心で思ってた。
「それじゃない? お兄ちゃんが後生大事に持ってるそれ」
「ああ、このパンツか」
野々野足軽はパンツの両端に人差し指を通してピーンとそのパンツをよく見えるように張った。するとその瞬間、謎の少女はいった。
「ちょっとやめてよ!? なんで広げた訳!?」
「いや、確かめやすいよう?」
「私の他にパンツを流すアホがいるわけないでしょ!?」
「その理論でいうと、君がアホなのが確定するけど……」
「パンツを川に攫われる奴がアホじゃないって?」
「いや、アホだな」
確定した。この子はアホみたいだ。てかなんでこの子は自分の事をこんなにアホと断言するのか? 流石にちょっとくらい否定しないの? とか内心野々野足軽は思ってる。それに小頭だって……
「ねえ、この人ちょっとやばくない?」
そんな風な事を耳の傍で言ってくる。空気が震えてこそばゆい感覚が野々野足軽にはあった。けどそういう小頭の言葉もわかる。いきなりラパンツを流されてスク水で登場して、アホ宣言をする女……字面にするとかなりやばい女だとわかる。
「二人はなに? 恋人?」
「はああああああ!?」
あまりにも反応速く小頭が叫んだ。そのせいで近かった足軽の耳にはその音量がダイレクトアタックしてきた。でもそんな事を言われたら小頭は止まってなんてられない。一刻も早くそのアホみたいな憶測を払拭しないとと焦ってた。
「なななな、なに言ってるのよ! こいつ! と私が? はああああああああ!? ないないないないないない。天地がひっくり返っても今から槍が降ってきてもないから! どうしてそうなるわけ? 観てわかんない? つり合いとれてなくない? お似合いとか言いたい訳!?」
そんな風な言葉を一気に捲し立ててる小頭。でもどうやらその必死さが目の前の女の子には言い訳にしか聞こえてないと、小頭は気づいてない。てか一発で否定できるワードがあるのに、小頭はその存在を失念してるようだった。
「俺たち兄妹だよ」
「あっ、なるほどね」
それだけで目の前の彼女は納得した。一人捲し立ててた小頭はなんか足軽をぽかぽかと殴り始める始末である。