メタリファーが別の存在として誕生する? その光景を私達は目撃しようとしてる。ユアの卵のヒビは広がっていっているのが見える。でもあれはこれまでとは全く違う生命の誕生である。
実際何が起きるかなんて製作者の彼でさえ分かってないのではないだろうか? だってとてもワクワクしてる。キラキラとしてた目はまるで少年のようだ。死してなお願った願望が今叶おうとしてるのなら、それもしょうがないかもしれない。
ペキペキ……ペキペキ……
そんな音が聞こえてくる。でも中身が見えることはない。実際の所ユアの卵はそれなりに大きい。なにせ数十メートルのメタリファーが卵になったのだ。それでもG-01の頭位の大きさに縮んでるからかなり小さくなったと思う。
ペキペキ――という音が続く。実際ペキペキした殻は落ちる訳じゃなく丸い球体の外側の液体なのか、それともスライム的なものなのかわからない部分に浮かんでる。でもその内分解されてるのか消えていく。だからゴミとして溜まることはない。でもおかしい……
「なんかずっと球体が割れてるだけじゃない?」
私は外には発さずにそうつぶやいた。きっと私だけじゃなく勇者たちだって同じように思ってるだろ。ミレナパウスさんはまだ興奮してるようだけど、流石の彼も「あれ?」という感じになってるよ。
何かが生まれる……そう思ってたわけだけど全然生まれてこないからね。これは流石に天才の彼も想定外だったんだろう。
『一体何が……』
と呟いて彼はブツブツと何かを呟いてる。きっとどうしてこうなったのか、それを考えてるんだろう。自分の中で思考をしてるみたい。けど一つ疑問がある。あれは映像とかなんかじゃないの? それか彼を再現したAIなのだろうか? 今更だけどこれはきっとただの映像では絶対にない。
『何かが繰り返されてるように見えます』
私はそういってみる。よく観察してみると、実は先におちた殻? 本体から分離しちゃってるから殻で良いよね? それは分解されてるのか? の様に見えるが、解釈によっては『元に戻ってる』――とも思える。つまりは今メタリファーに起こってる事、ユアの卵に起こってることはバグってるように思えるんだ。
本当はユアの卵もその先に進もうとしてるようにみえる。けど何が原因なのかはわからないが、その先に進むことができなくなってるんじゃないか? 同じことをずっと繰り返してるようにみえる。奇しくもそれはメタリファーが持ってる力、時空間を司るその権能が悪さをしてるように見える。
時空間を司るその権能は凄いものだ。凄すぎるといっていい。勿論凄い力にはそれだけの技能が必要だろう。メタリファーは時空間そのものみたいだったから、そこら辺は息をするように出来たのかもしれない。
でも今ユアの卵で生まれ変わるとなるとその権能はどうなるのだろうか? そこら辺がバグってる原因なんじゃ? でもそんな私が思いつくような事を天才である彼が想定してないとは思えないけど……