「びっくりした。だってあんな姿だったなんて。びっくりした。私が触れたとき、この子達の思いが……歴史がはっきりと感じ取れたから。びっくりした、この子達はね……生きることを望んでるわけじゃないってことに……」
静かにゆっくりと、夜のとばりに染みわたるように……そんな風におばあちゃんは言う。生きることを望んてるわけじゃない? じゃあなんでわざわざこんな屈強になってるの? と疑問に思う野々野足軽だ。ただゆっくりとした死を待つのなら、おばあちゃんがいってたスライムのような形態でただあればよかったんじゃないだろうか? そしたら別に誰かに観られたとしてもただ平べったくしてるのであれば、水たまりにでも思われるだけでスルーされるだろう。
「違うの……違うのよ足軽」
足軽がゆっくりとした死について考えてるとさらにおばあちゃんは続けて言う。しかもなんか辛そうである。美人が夜の暗がりの中で辛そうな表情をしてると、なんか浮世離れ感がでてくる。それに今のおばあちゃんの格好はただ足軽が出した大きな白い布を羽織った状態。色々と森の奥深くではおかしな格好なのだ。だからなんだか現実味がなく見えてくるというか、端的に言うとその白い布を羽織ってるだけなのも相まって幽霊、みたいに見えたりね。
それに暗がりに溶け込んでるサルたちは大体その獰猛な目からの光がぎらぎらと主張してるから余計に怖いというか? まるで女幽霊が従える怪物が背後にいるかのようである。
「この子達は自分たちでは消えるなんてできないの。この子達の力は、どんどんと強まってるのよ」
「強まってる?」
そんな大きな力は感じないが? と思う野々野足軽だ。けどここで思い出す。力の質の違いというやつだ。風の子の時もあった力の質の違い。それによって感じれなかったりするんだ。なるべく偏見とか偏重とかせずに力を感じたいと野々野足軽だって思ってる。そうしないと危険だからだ。全くと言っていいほどに何も感じない相手が目の前にいたとしても、もしかしたらその存在は足軽とは全く別ベクトルの力だから感じないだけ……というのが起こりえるからだ。
最近のは普通に力を感じることが出来てた。沢山の覚醒者が出現して、それは余すことなくきっと足軽は感じ取ること出来てる。だからこそ、その質の違いって奴が抜け落ちてたかもしれない。一応学習した違う力の質は既に感じ取れるようになってるが、質の違う力というのは根本的な所から違うから、事前にそれを感じ取れる手段なんてのはほぼないのが困る。ただ広く遠くまでアンテナを広げるしか現状はやりようはないのだ。それで少しでも何かを感じることが出来たなら、運がよかった……程度だ。
「そいつらは呪物なんだよね? つまりはそいつらに怨念とかそんなのが集まってきてしまってるって事?」
「そう、かもしれない。私にはよくわからないわ。でも、この子達は終らせたいの。だからこそ、その力を発散できる体を望んだ。私は願ったわ、この子達の願いをかなえてくださいって……そしたら、この子達はこの姿になったの」
なる……ほど? 野々野足軽はおばあちゃんの発言を必死に理解しようと頑張ってる。
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