暇な弁護士の暇つぶし日記

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相続解説

2015-01-29 18:13:35 | 法律
遺言書の作成
1.遺言とは
  遺言とは,人の最終の意思表示について,その死後に効力を生じさせる制度を言います。
2.遺言事項
  遺言の内容は自由である。ただし,法律的に意味を持つのは,法律に定められた事項に関する遺言のみである。
2.遺言を残す意味
 ⑴ 相続人の中に相続させたくない者がいる。
   子どもや兄弟の中に自分の財産を相続させたくない者がいる場合など。
⑵ 相続人の中に特に多くの財産を相続させたい者がいる。
   妻又は夫に多くの財産を残したい場合など。
 ⑶ 相続人以外の者に財産をあげたい。
   子どもではなく兄弟やお世話になった人に財産を譲りたいなど。
 ⑷ 財産を寄付したい。
   相続人がいない場合や,将来相続人となる者が高齢で自分が死ぬ頃には相続人はいないことが予想される場合など。
 ⑸ 誰にどの財産をあげるかを決めておきたい。
   配偶者に今の土地・建物をあげたい。何もしなければ,法定相続分に従い,相続されることになる。
 ⑹ 贈与との違い
贈与だと,生前の生活費との調整が必要であるが,遺言であれば,死亡時に残っている財産が移転するから,生前に生活費の心配をする必要がない。
 ⑺ 税金対策
   財産の処分は贈与でもできるが,相続税は贈与税も安いため,遺言により財産を移転させる方が税金は安くすむ。
3.遺言書の種類
  遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言があります。
  年間8万件程度の遺言制度の利用があり,そのうち1万件強が自筆証書遺言で,7万件程度が公正証書遺言となっています。
  なお,遺言書を作成する際には,法定相続分とは異なる定めをすることができますが,遺留分については理解しておく必要があります。



4.自筆証書遺言
 ⑴ 自筆証書遺言とは
   遺言者が,自分で遺言内容を自書して作成する遺言書です。
 ⑵ 自筆証書遺言の良い点・悪い点
  ア 自筆証書遺言の良い点
   ・自分1人で作成することができる。
   ・遺言の存在及び内容を秘密にすることができる。
   ・費用がかからない。
  イ 自筆証書遺言の悪い点
   ・方式不備,内容不備により,無効になったり,遺言者の想定したとおりの効果を生じさせることができないおそれがある。
    →作成した遺言を弁護士に確認してもらうことで,このリスクは回避できます。
   ・遺言書が発見されない可能性や,発見されても破棄・隠匿される危険がある。
    →銀行等の貸金庫に預けるなどの手段によりこの危険を一定程度回避できます。
   ・代筆ができない。
   ・遺言書の保管者が検認の手続をとらなければならない。
 ⑺ 自筆証書遺言の作成にあたって
   自筆証書遺言には,破棄・隠匿や偽造・変造のおそれがあり,方式不備により無効となるおそれがある上,遺言者が死亡した際に遺言書の保管者は検認という手続きを取らなければならないという手間もかかるため,遺言書を作成する場合には,自筆証書遺言ではなく,後述する公正証書遺言を作成するべきです。
   それでも,自筆証書遺言を作成したい場合は,自分の希望に沿った結果が生ずるようにするために,遺言書をどのような内容にすればよいかなどについて,弁護士に確認すべきです。
 ⑵ 自筆証書遺言作成の流れ
  ア 法律相談
    どのような内容の遺言を作成したいかをお聞きします。相続人や財産などの事情も聞かせていただきます。
    具体的には,以下の事項について,予め考えておくと良いと思います。
   ①遺言者の有する財産は何があるか。
   ②将来相続人となる者は誰か。
 ③誰にどの財産を相続させるか(割合でも可。相続人以外に対しては遺贈)。
   ④誰を遺言執行者として指定するか。
    遺言執行者は,遺言者死亡後に遺言の内容を実現する者であり,遺言者が信頼できる人を予め探しておく必要があります。
    遺言作成に立ち会う証人,相続人,受遺者も遺言執行者として指定することができます。
   ⑤誰を祭祀主催者として指定するか。
    祭祀主催者は,祭祀財産を引き継ぐ者を言います。
    祭祀財産とは,系譜(家系図など),祭具(位牌,仏壇,仏具など),墳墓(墓石,墓碑など)を言います。
  イ 委任契約の締結
    弁護士との間で遺言作成の委任契約書を作成し,委任契約を締結することになります。
  ウ 調査
    遺言書作成の前提として,相続人や財産の状況について調査します。
    具体的には,戸籍謄本などの書類を用意していただくことになります。
  エ 遺言書案の作成
    上記で調査した内容及び依頼者からお聞きした希望を踏まえて,遺言書案を作成します。
  オ 自筆証書遺言の作成
    自筆証書遺言は全文を自書する必要があるので,ご本人に遺言書を書いていただきます。
    なお,遺言書はご本人に保管していただくことになります。
 ⑵ 遺言書に書くべきこと(遺言の内容)
   一般的には,誰にどのような財産を相続させるか(相続人以外に財産を与える場合は遺贈),遺言執行者の指定,祭祀主催者の指定について書くことが多いです。
   遺言では,相続人の法定相続分とは異なる定めをすることができますが,遺留分を侵害する部分については実現されない可能性があり,遺留分については理解しておく必要があります。
   なお,遺言によってできることには制限があり,以下の事項については,遺言によって定めることができます。
   ・子の認知
   ・未成年後見人・後見監督人の指定
   ・法定相続人の廃除・廃除の取消し
   ・相続分の指定・指定の委託
   ・特別受益の持ち戻しの免除
   ・遺産分割方法の指定・指定の委託
・遺産分割の禁止
・遺産分割における共同相続人間の担保責任に関する別段の定め
・遺贈
・遺言者の指定・指定の委託
・遺留分減殺方法の指定
・生命保険金の受取人の指定
 ⑵ 自筆証書遺言の方式
   民法で定められた一定の方式を満たさない遺言は無効となります。
   遺言者の死亡後に遺言書が発見された場合,遺言書を書いたとされる本人はすでになくなっているため,その遺言が本人の意思で書かれたものかを本人に確認することはできません。もっとも,遺言書が本人の自筆で書かれていれば,遺言に書かれた筆跡から本人が書いたものであるか否か判断することができます。そこで,遺言書は本人の筆跡がわかるように自書で書くこととされ,これを満たさない場合には,遺言は無効とされています。具体的には,以下の方式を満たさない自筆証書遺言は無効となります。
  ア 遺言書全文の自書
    自筆証書遺言の場合は,遺言者が,遺言書の全文を自書する必要があります。
    これは,筆跡から本人が作成したものであることを確認するためです。
    ですので,筆跡がわからないパソコンなどで作成したものは自書とは言えません。
    また,字がうまい人に書いてもらうのも自書にあたりません。
  イ 日付の自書
    自筆証書遺言には日付の記載も必要です。
    これは,遺言書が複数存在する場合に,その優先関係を判断するためです。
    吉日では,特定として不十分なので,具体的な日付を書く必要があります。
    時間まで書く必要はありません。
  ウ 氏名の自書
  エ 押印
    認め印,指印でもよいですが,実印が望ましいです。
 ⑶ 方式違反以外の遺言の無効原因
 ア 遺言能力を欠く場合
   遺言者が,遺言作成時点で,遺言内容及びその法的効果を理解できるだけの能力を有していなければ,遺言は無効となります。
  イ 共同遺言の禁止
    同一の遺言証書で2人以上の者が遺言をすることは禁止されています。これに違反すると,遺言は無効になります。
  ウ 後見人を利する被後見人の遺言
  エ 錯誤
  オ 公序良俗違反
 ⑷ 遺言の取消原因
  ア 詐欺又は強迫
    遺言が,詐欺又は強迫によって書かされたものである場合には,相続人が遺言を取り消すことができます。
    遺言に関する紛争では,遺言は無理矢理書かされたものだと主張されることが多いですが,詐欺又は強迫があったことを立証することは困難であることが多いです。
    詐欺又は強迫により遺言を書かせた者が,相続人又は受遺者であった場合,相続欠格に当たり,その者は,相続人又は受遺者としての資格を失います。
  ウ 負担付遺贈の場合
 ⑷ 自筆証書遺言の加除訂正
   遺言書を書き損じてしまった場合などの訂正方法にも決まりがあります。
   遺言書に加除・訂正を行うには,遺言者がその場所を指示し,これを変更した旨を附記して,特にこれに署名し,変更場所に印を押さなければ効力がありません。
いずれにしろ書き間違えた場合には,別の紙に最初から書き直すべきです。
⑸ 遺言の撤回
  遺言者は遺言を自由に撤回することができます。遺言の撤回方法は以下のようなものがあります。
 ア 遺言書の破棄
   自筆証書遺言の場合は,遺言書を破棄すれば遺言を撤回することができます。
 イ 遺言を撤回する旨の遺言の作成
    遺言を撤回するには,遺言の方式に従って,遺言をする必要があります。
    前の遺言を撤回するという内容の遺言を,方式を守って作成すれば,前の遺言を撤回することができます。
  ウ 前の遺言と異なる内容の遺言の作成
    前の遺言と抵触する内容の遺言を作成すると,抵触する限度で前の遺言が撤回されます。
 ⑹ 遺言を撤回したとみなされる行為
   遺言作成後,遺言の内容と抵触する財産処分行為を行うと,遺言を撤回したものとみなされます。
  

5.公正証書遺言
 ⑴ 公正証書遺言とは
   遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口授し,それに基づいて,公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめて作成する遺言です。
   公正証書遺言を作成するには,公証役場に行って,公証人に遺言書を作成してもらう必要があります。
 ⑵ 公正証書遺言の良い点・悪い点
  ア 公正証書遺言の良い点
   ・公証人が作成するため,方式不備,内容不備により無効となる危険が小さい。
   ・原本が公証人役場で保存されるため,偽造,変造,滅失のおそれがない。
   ・検認の手続きが必要ない。
・遺言検索システムを利用することができる。
  イ 公正証書遺言の悪い点
   ・公証役場へ行き,公証人と打合せをする必要があるため,手間がかかる。
   ・公証人に作成してもらうため,費用がかかる。
   ・証人が必要である。
   ・証人から秘密が漏れる危険性がある。
 ⑶ 公正証書遺言作成の流れ
  ア 法律相談
    どのような内容の遺言を作成したいかをお聞きします。相続人や財産などの事情も聞かせていただきます。
    具体的には,以下の事項について,予め考えておいてください。
   ①遺言者の有する財産は何があるか。
   ②将来相続人となる者は誰か。
 ③誰にどの財産を相続させるか(割合でも可。相続人以外に対しては遺贈)。
   ④誰を遺言執行者として指定するか。
    遺言執行者は,遺言者死亡後に遺言の内容を実現する者であり,遺言者が信頼できる人を予め探しておく必要があります。
    遺言作成に立ち会う証人,相続人,受遺者も遺言執行者として指定することができます。
   ⑤誰を祭祀主催者として指定するか。
    祭祀主催者は,祭祀財産を引き継ぐ者を言います。
    祭祀財産とは,系譜(家系図など),祭具(位牌,仏壇,仏具など),墳墓(墓石,墓碑など)を言います。
   ⑥証人になってもらえそうな人を2名用意しておく。
    公正証書遺言の作成には,2名の証人の立ち会いが必要ですので,予め証人になってくれそうな人を検討しておく必要があります。ただし,ⓐ未成年者,ⓑ推定相続人,受遺者,ⓒⓑの配偶者及び直系血族,ⓓ公証人の配偶者,4親等内の親族,書記及び使用人は,証人となることはできません。
  イ 委任契約の締結
    弁護士との間で遺言作成の委任契約書を作成し,委任契約を締結することになります。
  ウ 調査
    遺言書作成の前提として,相続人や財産の状況について調査します。
    具体的には,戸籍謄本で推定相続人を確認したり,不動産を遺贈したり,特定の相続人に相続させたりする場合には,登記事項証明書,固定資産評価証明書を用意していただくことになります。
  エ 遺言書案の作成
    依頼者からお聞きした内容をもとに遺言書案を作成します。
  オ 公証役場への連絡
    公証人に遺言書の作成を依頼し,遺言書案を提出します。
  カ 必要書類の収集・提出
    以下のような書類を収集する必要があります。
    ①遺言者本人の印鑑登録証明書
    ②戸籍謄本(相続させる遺言の場合。遺言者と推定相続人の続柄がわかるもの)
    ③受遺者の住民票(遺贈がある場合。本籍記載のあるもの)
    ④登記事項証明書,固定資産評価証明書(不動産がある場合)
    ⑤通帳(預貯金がある場合)
  キ 公証人による遺言書案の作成
    公証人が,遺言書案を作成するので,内容を検討します。
  ク 公正証書遺言の作成
    公正証書遺言は,公証役場で公証人によって作成されます。
    遺言者は実印を,証人は認印を持参する必要があります。
    証人は,運転免許書等の身分証明書の提示が求められます。
    公証役場において,公証人が遺言書を読み上げ,問題がなければ,公証人,遺言者本人,証人が署名,押印して公正証書遺言が作成されます。
 ⑷ 遺言の撤回
  遺言者は遺言を自由に撤回することができます。遺言の撤回方法は以下のようなものがあります。
 ア 遺言を撤回する旨の遺言の作成
    遺言を撤回するには,遺言の方式に従って,遺言をする必要があります。
    前の遺言を撤回するという内容の遺言を,方式を守って作成すれば,前の遺言を撤回することができます。
  イ 前の遺言と異なる内容の遺言の作成
    前の遺言と抵触する内容の遺言を作成すると,抵触する限度で前の遺言が撤回されます。
 ⑹ 遺言を撤回したとみなされる行為
   遺言作成後,遺言の内容と抵触する財産処分行為を行うと,遺言を撤回したものとみなされることがあります。



6.秘密証書遺言
 ⑴ 秘密証書遺言とは
   秘密証書遺言とは,遺言者が遺言を作成して封じ,その状態で公証人に公証される方式の遺言を言います。
 ⑵ 秘密証書遺言の良い点・悪い点
  ア 秘密証書遺言の良い点
   ・1人で作成することができる。
   ・代筆を頼むこともできる。
   ・遺言の内容を秘密にできる。
   ・偽造・変造の危険がない。
   ・遺言検索システムを利用することができる(但し,保管場所は不明)。
  イ 秘密証書遺言の悪い点
   ・方式不備,内容不備により遺言が無効となる可能性がある。
   ・作成に手間と費用がかかる。
   ・原本が公証人役場に保管されないので,遺言書の紛失,隠匿のおそれがある。
 ⑶ 秘密証書遺言作成の流れ
 ア 法律相談
    どのような内容の遺言を作成したいかをお聞きします。相続人や財産などの事情も聞かせていただきます。
    具体的には,以下の事項について,予め考えておくと良いと思います。
   ①遺言者の有する財産は何があるか。
   ②将来相続人となる者は誰か。
 ③誰にどの財産を相続させるか(割合でも可。相続人以外に対しては遺贈)。
   ④誰を遺言執行者として指定するか。
    遺言執行者は,遺言者死亡後に遺言の内容を実現する者であり,遺言者が信頼できる人を予め探しておく必要があります。
    遺言作成に立ち会う証人,相続人,受遺者も遺言執行者として指定することができます。
   ⑤誰を祭祀主催者として指定するか。
    祭祀主催者は,祭祀財産を引き継ぐ者を言います。
    祭祀財産とは,系譜(家系図など),祭具(位牌,仏壇,仏具など),墳墓(墓石,墓碑など)を言います。
  イ 委任契約の締結
    弁護士との間で遺言作成の委任契約書を作成し,委任契約を締結することになります。
  ウ 調査
    遺言書作成の前提として,相続人や財産の状況について調査します。
    具体的には,戸籍謄本などの書類を用意していただくことになります。
  エ 遺言書案の作成
    上記で調査した内容及び依頼者からお聞きした希望を踏まえて,遺言書案を作成します。

相続
1.相続とは
  相続とは,一般的には,死者の財産をその子孫が引き継ぐことと理解されていますが,正確には,自然人の法律上の地位を,その者の死後に,別の者に包括的に承継させることを言います。
  法律用語では,死者を被相続人といい,死者の承継人を相続人と言います。
2.相続の流れ
 ⑴ 被相続人の死亡
⑵ 死亡届の提出(死亡から7日以内)
⑶ 遺言書の有無の確認
  遺言書が公正証書遺言でなければ,家庭裁判所で検認手続をとる必要があります。
⑷ 相続人の調査・確定
  被相続人の,出生から死亡までの戸籍謄本を調査することで,相続人を確定することができます。
⑸ 相続財産・債務の調査
  預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく,借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。ですので,債務も含めて,被相続人の財産を調査する必要があります。具体的には,現金,預貯金,不動産,株式,社債,貸金債権,借金,ローン,保証債務などについて,調査する必要があります。この調査の結果をもとに,相続放棄をするか否かを検討します。
⑹ 相続放棄・限定承認(被相続人の死亡を知った時から3か月以内)
  相続財産の調査に時間を要する特段の事情がある場合などには,家庭裁判所に申し出ることで,3か月の期間を伸張できる場合があります。
⑺ 準確定申告(被相続人の死亡を知った時から4か月以内)
 ア 所得税の準確定申告
 イ 相続財産・債務の調査
 ウ 相続財産の評価
 エ 相続財産目録の作成
⑻ 遺産分割協議
 ア 相続人全員の実印・印鑑証明書が必要
 イ 納税の方法,延納・物納の検討
⑼ 相続税の申告・納付(被相続人の死亡を知った時から10か月以内)
 ア 被相続人の死亡時の住所地の税務署に申告・納税
 イ 遺産の名義変更手続
 オ 不動産の相続登記
⑽ 相続財産の名義変更手続など
3.具体的な対応
⑴ 遺言書がある場合
  ア 遺産分割協議を行うことについて相続人全員の同意がある場合
    遺産分割協議を行います。
イ 「相続させる」旨の遺言である場合
  「相続させる」旨の遺言とは,
ウ 相続分を指定する遺言である場合
エ 遺産分割方法を指定する遺言である場合
オ 遺言の有効性を争う場合
⑵ 遺言書がない場合
   遺産分割協議を行います。
4.遺産分割の流れ
 ⑴ 遺産分割とは
   遺産分割とは,相続共有を解消し個々の相続財産を各相続人に分配してその単独所有とすることを言います。
 ⑵ 遺産分割協議の流れ
  ア 相続人の範囲の確定
  イ 遺産の範囲の確定
  ウ 遺産の評価
  エ 具体的相続分の決定
   ㋐法定相続分
   ㋑特別受益
   ㋒寄与分
  オ 遺産分割方法の決定
  カ 遺産分割協議の成立
 ⑶ 審判分割
5.遺言無効確認請求
6.遺留分減殺請求
7.遺産分割協議
 ⑴ 遺産分割とは
   相続人が複数いる場合,相続財産は相続人の共有になります。
   遺産分割とは,相続共有を解消し個々の相続財産を各相続人に分配してその単独所有とすることを言います。
 ⑵ 遺産分割の時期
   遺産分割をする時期に制限はなく,いつでもできます。
   いつでもよい。相続人の請求・申出等による。
 ⑶ 遺産分割の対象となる財産
  ア 原則
    遺産分割時の相続財産である。
    相続財産には以下のものが含まれる。
 ⑷ 祭祀承継
   墓地など



3.相続人
  相続人となる者は法律によって定められており,法律によって相続人として定められている者を推定相続人(法定相続人)と言います。
  具体的には,以下の者が推定相続人となります。
 ⑴ 配偶者
   配偶者は常に相続人となります。
   なお,相続人となるためには法律婚をする必要があり,内縁の配偶者には相続は認められません(内縁の配偶者については,特別縁故者制度参照)。
 ⑵ 子
   実子だけでなく,養子も相続人となります。また,被相続人の死亡時に胎児であっても,後に生きて生まれてくれば,相続人となります。
   なお,特別養子は実親を相続することができません。
 ⑶ 親
   被相続人に子がいない場合には,被相続人の親が相続人となります。
 ⑷ 兄弟姉妹
   被相続人に子がなく,両親もいない場合には,被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
4.代襲相続
⑴ 代襲相続とは
  代襲相続とは,被相続人の死亡前に,相続人となるべき子や兄弟姉妹が死亡などして相続権を失った場合に,その者に代わってその者の子が相続することを言います。
 ⑵ 代襲原因
   被相続人の死亡前に,相続人となるべき者が,死亡,相続欠格,廃除いずれかにより,相続権を失った場合に,代襲相続が生じます。
 ⑶ 代襲相続人
  ア 孫
    被相続人の子が相続権を失った場合は,被相続人の孫が代襲相続人となります。
  イ 甥・姪
    被相続人の兄弟姉妹が相続権を失った場合は,被相続人の甥・姪が代襲相続人となります。
  ウ 代襲相続人の相続分
    代襲相続人は,もともと相続人が得るはずだった相続分を取得します。
    代襲相続人が複数いる場合は,それらの者の相続分は平等になります。
 ⑷ 再代襲
   被相続人の死亡前に,被相続人の子及び被相続人の孫が相続権を失った場合には,被相続人の曾孫が代襲相続人となります。これを再代襲と言います。
   被相続人の曾孫には代襲相続が認められますが,被相続人の甥・姪の子には代襲相続は認められません。
5.相続分
 ⑴ 相続分とは
   法律によって定められた,相続人の相続割合を法定相続分と言います。
 ⑵ 配偶者と子が相続人になる場合
  ア 原則
    配偶者…1/2
    子…1/2
  イ 子が複数いる場合
   ㋐ 非嫡出子がいない場合(嫡出子,非嫡出子の意義はこちら)
     子の相続分は均等となる。
   ㋑ 非嫡出子がいる場合
    ・被相続人が平成25年9月3日以前に死亡した場合
     非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の1/2となる。
    ・被相続人が平成25年9月4日以降に死亡した場合
     嫡出子,非嫡出子にかかわらず,子の相続分は均等となる。
 ⑶ 配偶者と親が相続人になる場合
   配偶者…2/3
   親…1/3
 ⑷ 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合
   配偶者…3/4
   兄弟姉妹…1/4
   なお,父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹は,父母双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2となる。
6.具体的相続分の算定(法定相続分の修正)
 ⑴ 特別受益
  ア 特別受益とは
    相続人が複数いる場合に,生前に被相続人から多額の贈与を受けている相続人がいる場合があります。このような場合に,贈与を受けた相続人が他の相続人と同じ相続分があるとするのは不公平であると言えます。
    そこで,共同相続人の中に,特別な受益を受けた者がいる場合は,特別受益を相続財産に加算して具体的相続分を計算します。 これを特別受益の持ち戻しと言います。
  イ 特別受益の種類
   ㋐遺贈
    贈与と異なり,遺贈はその目的にはかかわりなく特別受益に当たります。
    相続人に対するものに限られます。
   ㋑婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての生前贈与
    贈与については,目的について一応の制限があります。
    婚姻のための贈与には,持参金や支度金が当たります。
    生計の資本としての贈与とは,生計の基礎として役立つ一切の贈与を含み,扶養義務の範囲を超えるような高額の贈与はこれに当たります。具体的には,独立資金や営業資金があります。学費,債務の肩代わり,保険金,死亡退職金については,生計の資本としての贈与に当たる場合があります。
    なお,いずれも相続人に対するものに限られます。
  ウ 特別受益の評価
    相続開始時の価額を基準とします。贈与などを受けた当時の価額ではありません。
エ 持ち戻しの免除
    特別受益がある場合でも,被相続人が特別受益の持ち戻しを免除することができます。
    これは遺言によってすることもできます。
 ⑵ 寄与分
  ア 寄与分とは
    相続人が複数いる場合に,相続人の中に,被相続人の財産形成について貢献した相続人がいる場合には,財産形成に貢献した相続人に対して寄与分が与えられます。
    なお,被相続人の生前に寄与分を請求することはできません。
  イ 寄与者
    相続人に限られます。
    例えば,妻Aが,夫Bの父Cを介護したとしても,妻Aは義父Cの相続人ではないので,寄与分は認められません。
    妻Aの寄与を夫Bの寄与と同様なものと考えられないか
  ウ 寄与の態様
   ㋐被相続人の事業に対する労務の提供,財産上の給付
    被相続人が農業を営んでいる場合や自営で中小企業を経営している場合に,人を雇えば人件費がかかります。このとき,相続人が無償で家業に従事すれば人件費の支出を抑えることができ,財産の維持形成に貢献していると言えるので,寄与分が認められます。
   ㋑被相続人の療養看護
    被相続人が疾病により療養看護を必要とする状態で,ヘルパーなどを利用すると,費用がかかります。このとき,相続人が無償で療養看護を行うことで,ヘルパーなどの費用の支出を防げば,財産の維持形成に貢献したと言え,寄与分が認められます。
   ㋒その他
  エ 寄与の程度
    親族間には一定の扶助義務があるので,親族に対して看護等をしても通常はその義務の履行の範囲内として当然行わなければならないものと評価されます。そこで,寄与分が認められるためには,寄与が,扶助義務を負っていることにより通常期待されている範囲を超えた特別の寄与である必要があります。
  オ 寄与分の決定
    寄与分は相続人間の協議で決定されますが,話し合いがつかなければ,調停を申し立てることになります。調停が不成立となった場合は,家庭裁判所が審判で決定します。

7.具体的相続分の計算方法


8.相続放棄・限定承認
   相続する際は,不動産や預貯金といった被相続人のプラスの財産だけでなく,借金などマイナスの財産を含めてすべての財産を承継することになります。しかし,被相続人が莫大な負債を抱えていることもあり,常に被相続人の全ての財産を承継しなければならないとすると,相続人に酷な場合があります。
   そこで,法律上,相続を放棄することにより被相続人の財産を承継しないことや,プラス財産の限度で負債を負担する限定承認が認められています。
 ⑴ 相続放棄
  ア 相続放棄とは
    相続放棄とは,被相続人の権利義務を一切承継しない旨の意思表示を言います。
    相続放棄をすると,被相続人の債務を承継しなくて良い代わりに,被相続人の財産も相続できなくなります。
    相続放棄をした者は,はじめから相続人ではなかったものとして扱われます。
  イ どのような場合に相続放棄をするか
  ウ 相続放棄の手続
    相続放棄をするには,被相続人の死亡を知った時から3か月以内(熟慮期間)に,家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
    3ヶ月以内に相続放棄又は限定承認をしなかった場合は,単純承認したものとみなされ,プラスマイナス両方の財産を相続分に応じて相続することになります。
    相続放棄は,他の相続人と足並みを揃える必要はなく,単独でできます。
  エ 注意点
   ・相続放棄をする前に,相続財産の全部又は一部を処分した場合は,単純承認したものとみなされ,相続放棄はできなくなります。処分の典型例は売却することです。
   ・相続放棄後に,相続財産を隠匿したり,費消したり,悪意で財産目録に記載しないという行為をすると,単純承認したものとみなされます。
   ・一度相続放棄をすると,熟慮期間内であっても,撤回することはできません。
   ・相続放棄者の子は代襲相続できません。
 ⑵ 限定承認とは
  ア 限定承認とは
    限定承認とは,相続によって得た財産の限度でのみ,被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して行う承認を言います。
    限定承認をすると,プラス財産からマイナス財産を引いて,余りがあれば相続できることになります。
    もっとも,限定承認は,相続人全員で申し立てをしなければならない上,財産目録を作成しなければならないなど手続きが煩雑であるため,あまり利用されていません。
  イ 限定承認の手続
    限定承認をするには,被相続人の死亡を知った時から3か月以内に,家庭裁判所に限定承認の申述をする必要があります。
    3ヶ月以内に相続放棄又は限定承認をしなかった場合は,単純承認したものとみなされ,プラスマイナス両方の財産を相続分に応じて相続することになります。
    限定承認は,相続人全員で申し立てなければなりません。
    また,財産目録の作成も必要です。
  ウ 注意点
   ・限定承認をする前に,相続財産を処分した場合は,単純承認したものとみなされ,限定承認はできなくなります。
   ・限定承認後に,相続財産を隠匿したり,費消したり,悪意で財産目録に記載しないとうい行為をすると,単純承認したものとみなされます。
 ⑶ 単純承認
  ア 単純承認とは
    単純承認とは,被相続人の権利義務を無限に承継する承認を言います。
  イ 単純承認とみなされる場合
   ㋐相続放棄・限定承認前に相続財産を処分した場合。
   ㋑被相続人の死亡を知った時から3か月以内に相続放棄・限定承認をしなかった場合。
㋒相続放棄後・限定承認後に,相続財産の隠匿・費消,又は悪意で相続財産を目録に記載しなかった場合。

離婚解説

2015-01-28 18:04:40 | 法律
離婚
1.日本における離婚の現状
  日本における離婚の現状
   平成24年の離婚件数は23万5406件ありました。離婚件数は,ここ15年ほど,年間25万件前後(約23万~29万件)で推移しています。また,平成24年にされた離婚のうち,同居開始から5年未満での離婚が7万6128件あり,全体の約3分の1を占めています。なお,近年の離婚の傾向として,熟年離婚が増加していることから,経済力のない高齢離婚者の生活保障や高齢者の再婚に伴う相続が問題となっています。また,女性の経済的自立と家族間の多様化という社会事情の変化から,未成年の子どもがある家庭の離婚も増加し,平成24年には13万7334件があり,これは同年の離婚全体の約6割を占めており,子どもの保護の必要性も高まっています。
2.離婚までの流れ
 まずは,夫婦間で話し合って,離婚の合意に至ることを目指します(協議離婚)。夫婦間で話し合いが行き詰まった場合やそもそも夫婦間で話し合いができるような状態でないときは,家庭裁判所に調停を申し立て,家庭裁判所に間に入ってもらって交渉を続けることになります(調停離婚)。調停でも話し合いがつかなければ,離婚訴訟を提起することになります(裁判離婚)。
 なお,離婚にあたって解決すべき問題として,未成熟子に関することと財産に関することがあります。詳細は後述します。
3.離婚手続の種類
 協議離婚,調停離婚,審判離婚,裁判離婚,和解離婚,認諾離婚があります。
⑴ 協議離婚
  夫婦間の話し合いにより,離婚の合意をすることです。離婚届に署名押印し,役場に提出することで離婚が成立します。未成年の子がいる場合には,親権者を決める必要があります。
  協議離婚の場合は,財産分与や養育費などについても当事者間で話し合って決めることになります。親権者さえ決めれば離婚することができますが,養育費や財産分与その他の離婚条件について決めずに離婚すると,後から請求するのは困難で,後のトラブルのもとになりますので,離婚する時点で,離婚条件について話し合った上,公正証書など書面に残しておくことが有益です。
⑵ 調停離婚(調停がどういうものかは詳しく)
 ア 調停離婚とは
  当事者間の交渉が行き詰まった場合には,家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることになります。離婚調停申立ての7割は女性から申し立てられています。
  調停では,家庭裁判所の調停委員に間に入ってもらい,話し合いによる解決を目指すことになります。家庭裁判所に調停申立書を提出することによって調停を申し立てることができます。調停を申し立てると,家庭裁判所から調停期日を指定され,調停期日に家庭裁判所に行くことになります。調停では,基本的には相手方と直接話すことはありません。調停委員にこちらの要望を伝えると,調停委員がその要望を相手方に伝え,調停委員を介して相手方の反論・要望を聞くことになります。直接相手方と顔を合わせないので,冷静に自分の希望を伝えることができます。ただし,地方の小さな家庭裁判所では,相手方とたまたま出くわすこともありますし,調停では最後に次回期日を決めるのですが,そのときは両当事者立ち会いのもとで,次回期日を決めるので,相手方と顔を合わすことになります。なお,弁護士に依頼したとしても,調停期日には,原則として当事者本人が出席しなければなりません。
  話し合いがまとまり,調停が成立すると,調停調書が作成されるので,調停調書の謄本を添付して役場に離婚の届出を行います。
 イ 管轄
   離婚調停(夫婦関係調整調停)は,家庭裁判所に申し立てることになりますが,どこの家庭裁判所に申し立てれば良いかという,問題があります。
   離婚調停については,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立てを行います。それ以外の裁判所に申し立てをしても,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に事件が移送されます。
   夫婦間で合意すれば,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所以外の家庭裁判所であっても,調停を行うことができます。
 イ 調停にかかる費用
  ㋐裁判所に支払う費用
㋑弁護士費用
 なお,調停は,勝ち負けの世界である訴訟とは異なり,あくまで話し合いで合意を目指す場です。ですので,調停においては,専門的な知識を有する調停委員が,アドバイスをしながら法的に妥当な結論で話をまとめようとしてくれるため,自分でやることも可能であり,弁護士を付けないことも多いです。
⑶ 審判離婚
  調停が不成立となった場合,家庭裁判所が相当と認めるときは,職権で調停に代わる審判を行います。審判から2週間以内に異議申立てを行うと審判の効力が失われます。
審判離婚はほとんど利用されていません。なぜなら,調停で話し合いがつけば調停離婚となり審判離婚には至らないことから,審判離婚に至るのは争いがあって調停がまとまらないときですが,このような場合に審判をしても争っている側に異議申立てをされ,審判の効力が失われるのは目に見えているため,審判をしても意味がないことが多いからです。
⑷ 裁判離婚
 ア 裁判離婚とは
   裁判離婚とは,離婚訴訟を提起して判決により離婚することを言います。
   相手方が離婚に応じない場合には,最終的には離婚訴訟を提起して裁判離婚を目指すことになります。
   もっとも,いきなり離婚訴訟を起こすことはできず,まず調停を申し立てることが要求されており,調停が不成立になって初めて離婚訴訟を提起することができます。
   また,裁判離婚は,不貞行為など一定の事由がなければ認められません。
 イ 調停前置主義
   離婚訴訟を提起するには,まず,調停を申し立てなければなりません。
   これは,離婚という身分関係については,基本的に当事者間の話し合いで解決すべきと考えられているからです。
 ウ 裁判離婚が認められる場合(離婚原因)
    裁判離婚は以下のいずれかの事由(離婚原因)がある場合のみ認められます。
    ①配偶者に不貞な行為があったとき。
     不貞な行為とは,一方配偶者が,自由な意思に基づいて,配偶者以外の者と性関係を結ぶことを言います。不貞行為が認められれば,離婚することができますが,不貞行為を立証することは困難な場合が多いです。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 悪意の遺棄とは,正当な理由なくして,継続して,夫婦の同居協力扶助義務に違反することを言います。
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき。
 強度の精神病とは,夫婦の協力義務を果たし得ない程度の精神障害を言います。統合失調症や躁鬱病,痴呆症などの場合に問題となります。回復の見込みがないときとは,相当期間の治療をしても治癒の見込みが立たない場合をいいます。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 婚姻が客観的に見て,破綻しており,継続しがたい場合に離婚が認められます。
 暴行・虐待,重大な侮辱,配偶者の犯罪行為,配偶者の親族との不和,難病,著しい浪費・ギャンブル,性格・価値観の不一致,性生活の以上・不一致などの場合問題となります。
  ウ 有責配偶者からの離婚請求
    上記のような離婚原因がある場合でも,不貞行為をした側など離婚原因を作った側から離婚請求をした場合でも離婚が認められるかという問題があります。
    不貞行為など離婚原因を作った配偶者を,有責配偶者と言います。有責配偶者が自ら離婚の原因を作っておきながら離婚を請求することは,相手方配偶者に酷なので,原則として認められていません。もっとも,夫婦生活が破綻している場合に,婚姻関係を継続させることは適当とは言えません。
そこで,判例は,
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び,
②その間に未成熟の子が存在しない場合には,
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り,
有責配偶者からの離婚請求は許されない
として,一定の条件を満たす場合にのみ有責配偶者からの離婚請求を認めています。
  エ 裁判離婚にかかる費用
  ㋐裁判所に支払う費用
㋑弁護士費用
 なお,裁判は,調停で調停委員が話をまとめようとしてくれるのとは異なり,勝ち負けの世界ですので,裁判に至った場合は弁護士を付けて行うことをおすすめします。
  オ 管轄
   離婚訴訟は,家庭裁判所に申し立てることになりますが,どこの家庭裁判所に申し立てれば良いかという,問題があります。
   離婚訴訟については,夫婦いずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に対して申し立てを行います。それ以外の裁判所に申し立てをしても,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に事件が移送されます。
   夫婦間で合意すれば,夫婦いずれかの住所地を管轄する家庭裁判所以外の家庭裁判所であっても,調停を行うことができます。
 ⑸ 和解離婚
   離婚訴訟中に離婚の合意が成立した場合を和解離婚と言います。
⑹ 認諾離婚
  離婚訴訟中に被告が原告の主張を全面的に受け入れる場合を認諾離婚と言います。ほとんど利用されていません。
 ⑺ 割合(2012年政府統計)
   協議離婚→87.1%
   調停離婚→10%
   審判離婚→0.03%強(82件)
   和解離婚→1.6%
   認諾離婚→0.01%以下(15件)
   裁判離婚→1.2%程度

4.離婚にあたって決めるべきこと(離婚条件)=未成熟子+財産
  離婚に当たって決めるべきことは,①財産分与や慰謝料など,財産に関すること,及び②未成年の子がいる場合には,子の親権や養育費など子に関すること,の2つに分けられます。
 一 未成熟子に関すること
⑴ 親権
 ア 親権とは
   親権とは,未成年の子どもを監護教育し,その財産を維持管理するために父母に認められた権利及び義務を言い,身上監護権と財産管理権から成ります。
   夫婦の間に未成熟子がいる場合は,夫婦の一方を親権者と定めなければ離婚することができません。
 イ 親権者の決定方法
   協議離婚,調停離婚の場合は,夫婦間の話し合いで親権について決めることになります。裁判離婚の場合は,裁判所が親権について決めることになります。
 ウ 親権者を定める基準
   裁判離婚の場合に,裁判所が,親権者を定める際は,父母のどちらを親権者とすることが子の利益にかなうかという基準で判断します。その際,子の意思や従前の監護状況などが考慮されます。専業主婦である家庭では,子と接している時間の多い母が親権者となることが多いようです。
 エ 離婚後の親権者の変更
   離婚時に親権者を定めた場合でも,親権者である親が親権者として不適当であることが事後的に判明した場合には,親権者を変更することができます。
   親権者となった親が,子を十分に養育しない場合には,親権者でない親が親権者変更の申立てをすることが考えられます。
⑵ 面会交流
 ア 面会交流とは
   面会交流とは,監護権を持たない親が未成熟の子どもと交流することを言います。監護権を持たない親というのは,親権を持たない親と,親権は持っているが,他に監護者がいるため子を監護していない親を言います。面会交流は,かつては,面接交渉権と呼ばれていました。
 イ 面会交流を認める基準
   面会交流を認めるか否かは,面会交流を認めることがこの利益にかなうか否かを基準として判断されます。その際,子どもの意思,年齢,精神状況や親の精神状況,親としての適格性が考慮されます。
 ウ 夫婦別居中の面会交流
   夫婦が離婚せず,別居している場合に,子と同居していない親が子と同居している親に対して子との面会交流を請求することができます。
   理由,手続
 エ 親以外の者による面会交流
   親以外の,祖父や兄弟姉妹には,基本的には面会交流が認められていません。
⑶ 養育費
 ア 養育費とは
   養育費とは,子どもを監護教育するために必要な費用を言います。親子間には扶養義務があるので,親は子に対して養育費を負担する義務を負います。夫婦が離婚をしても親子関係は存続するので,離婚により非親権者となっても,親である以上,子に対して扶養義務を負っています。ただし,親に収入がなく,実際問題として養育費を支払うことができないという場合にまで,養育費を支払う義務があるとは考えられておらず,扶養義務が生じるのは,①子が要扶養状態にあること,②親が扶養可能状態にあること(資力)という条件を満たす場合と考えられています。なお,養育費について,当事者間で話し合って決める場合は,後のトラブルを防ぐため,金額だけでなく,支払期間,支払期限,支払方法などの条件についても決めておくことが必要です。
 イ 養育費の支払期間
   養育費の支払期間は,原則として,子どもが20歳になるまでです。
   ただし,子が大学への進学を希望しており,両親の資力や学歴等からも大学への進学が相当と認められる場合には,大学の教育費を養育費として請求することができる場合があります。
なお,離婚時に子が20歳以上であれば,基本的に養育費の支払義務はありません。
 ウ 養育費の算定方法
   養育費の額は法律で定められている訳ではありません。
   養育費の額は,両親の年収,子の人数,年齢などを考慮して定められます。
   相手方の収入に比して高額な養育費の支払いで合意に至っても,支払いが継続できなくなってしまう可能性があるので,相手の収入等から払える額で合意すべきです。
 エ 養育費の相場
   養育費は上記のような事情から個々の事案に応じて算出されるものなので,相場というものはないと考えた方がいいでしょう。もっとも,養育費算定表から,いくら支払わなければならないか,反対に,いくら支払ってもらえるかのだいたいの目安を知ることができます。子が1人の場合は,月額2~6万円となることが多いです。
 オ 履行確保
   養育費を支払わせる旨の合意をしたとしても,実際に支払ってもらえなければ意味がありません。そこで,いかに養育費の支払いの履行を確保するかが重要となります。
 カ 過去の養育費の請求
 キ 離婚後の養育費の請求
 ク 養育費の額の事後的変更
   一旦養育費について合意をした場合でも,後に養育費を支払う側が,勤務先の経営悪化による減給や退職などにより収入が減少するといった経済的事情の変動が起こることがあります。
   このような場合は,養育費を算定するにあたって前提とした収入額に変動がある以上,養育費の額も変動すると考えるのが自然ですので,養育費の増額又は減額を請求することができます。
   養育費の増額又は減額については,相手方に請求するか又は家庭裁判所に申し立てることになります。
 ケ 養育費と再婚
  ㋐ 養育費を受け取る側が再婚した場合
    扶養義務が生じるのは,子に要扶養状態がある場合であり,再婚により経済的に豊かになり,子の要扶養状態が一定程度解消されたと判断できるような状態であれば,養育費の減額ということもありうると考えられます。
   とりわけ,再婚相手が子と養子縁組をした場合には,再婚相手と子の間に親子関係が生じ,再婚相手も子に対して扶養義務を負うことになるため,要扶養状態が一定程度解消したと認められやすくなると考えられます。
㋑ 養育費を支払う側が再婚した場合
⑷ 婚姻費用
 ア 婚姻費用とは
 イ 婚姻費用の算定方法
 ウ 婚姻費用の相場
二 財産に関すること
⑸ 財産分与
  ア 財産分与の現状
    平成24年度には,調停・審判による離婚の総数が,2万7127件あり,そのうち約3割弱にあたる7638件で財産分与の取り決めがされました。
    財産分与の額は,平均で400万円程度であり,100万円未満が30%弱で,100万円~200万円が15%程度となっています。
  ケ 期間制限
    財産分与を請求できるのは,離婚から2年以内に限られます。
イ 財産分与の算定
  財産分与の額及び方法は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して決定されます。
    財産分与は3つの性質を含んだものです。まず,夫婦で共同して形成した財産の清算という性質があります(清算的要素)。次に離婚後の扶養という性質もあります(扶養的要素)。これは,妻が結婚にあたって仕事を辞めて専業主婦になっている場合には,妻が離婚後に再度仕事に就くのは事実上困難ですから,公平の観点から,妻が自立するまでの援助も考慮して財産分与の額が決定するという趣旨です。これらに加えて,慰謝料を財産分与に含めて計算することもあります(慰謝料的要素)。
  ウ 財産分与の決め方
    以下の手順で財産分与の具体的な額を決めていくことになります。
    ①財産分与の対象となる財産の特定
    ②対象財産の評価の確定
    ③夫婦の寄与度の確定
エ 対象財産
   婚姻中に夫婦が共同で形成した財産が対象財産となります。ですので,離婚時(離婚前に別居していれば別居時)に存在する財産が財産分与の対象となります。
   財産分与との関係で,別居時がいつかが問題となることがあります。
   夫婦の一方が,婚姻前から有する預貯金,贈与や相続によって取得した財産は,夫婦で共同して形成した財産とは言えないので,財産分与の対象にはなりません。
   また,財産分与は夫婦で形成したプラスの財産を分けるものなので,プラスの財産がなければ財産分与はされず,債務は財産分与の対象とはなりません。
   具体的には,以下の財産が財産分与の対象として考えられます。
   ㋐対象となるもの
    現金,預金,不動産(土地・建物),動産(家財道具,家具,車など),年金,退職金,生命保険金,有価証券,投資信託,ゴルフ会員権など
   ㋑対象とならないもの
    ・日常生活の範囲内で,それぞれが単独で使用するもの(衣類等)
    ・夫婦の一方が婚姻前から有する財産
    ・夫婦の一方が相続,贈与により取得した財産
オ 分配割合(財産形成への寄与度)
  財産分与は,夫婦が婚姻中に形成した財産を分配するという性質を持つので,財産形成への寄与度に応じて分配されることになります。
    夫婦の財産形成への寄与度は基本的に2分の1ずつと考えられているので,財産の分配割合は原則2分の1ずつとされています。
主婦の場合も2分の1の寄与度があると考えられています。
  カ 算定表
    だいたいの目安を知ることができます。
  カ 結婚後別居するまでの間に負担した財産の返還を求めることはできるか。
    例えば,相手方配偶者がギャンブルなどで浪費していた場合や夫婦の一方が生活費を多く負担していたことは財産分与で反映されるでしょうか。
    夫婦の一方が生活費等を多めに負担するなどして相手方配偶者を経済的に援助していたとしても,それは基本的には贈与とみなされ,返還を請求することはできません。
    もっとも,これらの事情は,財産分与の寄与度を決める際の1つの事情になると考えられます。なぜなら,本来は夫婦で分担し合うべき費用を一方が支出したのであれば,その分夫婦の財産が減少するのを防いだと考えられからです。
  キ 住宅ローンが残っている場合
  ク 財産分与と税
    原則として,贈与税はかからず,譲渡所得税がかかるので,財産分与する側になった際は,注意が必要です。
    分与財産が不動産である場合は,登記時の登録免許税,不動産取得税がかかります。
 ⑹ 慰謝料
  ア 慰謝料とは
    慰謝料とは,相手方の有責行為によって離婚に至った場合に,離婚そのものや離婚の原因となった行為(暴力,不貞行為など)によって被った精神的苦痛に対する損害賠償を言います。
  イ 慰謝料の算定方法
    治療費などのように現実に金銭の支出を伴うのと異なり,精神的損害を金銭的にどう評価するかという問題なので,慰謝料の算定は困難な場合が多いです。
  ウ 慰謝料の相場
    慰謝料の額は法律で定まっているわけではありません。慰謝料の額は平均200万円前後ですが,不貞行為の有無など個々の事案によって異なります。200万円~300万円となることが多いです。
  エ 慰謝料の請求方法
    離婚と同様に,話し合い→調停→訴訟という流れで請求していくことになります。離婚成立後に慰謝料請求できるかという問題もありますが,
  オ 不倫相手に対する慰謝料請求
    配偶者が不倫をしている場合に,他方配偶者は不倫相手に対して慰謝料請求をすることができます。
    ただし,婚姻関係破綻後の不貞行為については,基本的に損害賠償を請求できないので,しばしば婚姻関係の破綻の有無とその時期が問題になります。
⑺ 年金分割


半血兄弟間の扶養義務

2015-01-26 19:15:17 | 暮らしと法律
半血の兄弟とは,父又は母の一方のみを同じくする兄弟をいう。

たとえば,自分の実父が離婚して後妻と結婚し,実父と後妻との間に子どもができた場合,自分とその子どもは父親だけを同じくする半血の兄弟ということになる。

この半血の兄弟同士で仲が良ければ,特に問題はないが。

先妻の子が後妻の子と仲良くできるだろうか。

互いの存在すら知らされていないこともあるのではないだろうか。

普通に生活していて,ある日突然,後妻の子が現れて,兄弟だから扶養してと言われたら扶養しなければならないのだろうか。

民法877条1項は, 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

と規定している。

条文上は,半血の兄弟が除外されているわけではないから,半血の兄弟間であっても扶養義務を負うことになりそうである。

一般に扶養義務の有無は,一方の要扶養状態と他方の扶養能力を比較して判断される。

簡単に言えば,一方がどれだけ困っていて,他方がどれだけ余裕があるか,を比較するということだ。

しかし,半血の兄弟の場合に,これだけで判断して良いのか。

普通に生活していて,ある日突然,後妻の子が現れて,兄弟だから扶養してと言われ,相手がすごく貧乏で,自分がすごい裕福だったら,扶養しなければいけないのだろうか。

今まで会ったこともなく,存在すら知らなかった,半血の兄弟がひょっこり現れて,扶養しろと言われても扶養する義務があると考える人はいないだろう。

そうすると,一方の要扶養状態と他方の扶養能力を比較するだけでなく,従前の関係等も考慮して扶養義務の有無は決まるということになりそうだ。


vs本人訴訟

2015-01-25 15:31:02 | 日記
相手方が本人でこちらが弁護士が代理人として進めている事件がある。

相手方本人は熱心で書面の分量が長い。

wikipediaを引用していることもある。

wikipediaの記事の作成者って誰だ?

wikipediaを運営している業者なのか,実際に記事を編集している人なのか。