親父の仏壇に、お供えをした。
いわゆるお供え用としてお盆の時期などに売っているそれではなく、ごくありきたりのお菓子だけど。
関東生まれの関東育ち、でも色々あって半ば故郷を捨てたみたいなところがあった父は、生前、母の実家へ帰省したときは、近くの山に行って山菜を取ってきたり、珍しい植物を採集してきたりするのが好きだった。
死んだらここに埋めてくれや、って言っていた、小高い山の、眺望の良い一角に、墓地を購入した。
いわゆる墓地として区画整理されたそれではなく、伯父(母の兄)の所有するミカン園のすぐそばだった。
色々あって、その区画は伯父に返してしまっている。ちなみに墓それ自体もまだ建てていない。
半ば捨てたみたいになってはいても父にとって故郷は故郷なんだろう、言葉は一生関東弁のままだったし、例えば食べものの好みにしても、お雑煮は関東風が好みで、すき焼きも関東風、草加煎餅が好きで、関東風の味付けが好きで……
ときどきクサヤなんて焼いてくれたかな。
納豆も水戸産のが好きだったような記憶もある。
本当は草加煎餅にしようと思ったんだけど、お供えの容器に載せ切れない分を母が食することを考えると、歯が悪くて硬いものが噛めない母には向かない。
お菓子で煎餅以外では何が好きだったのかな、もう何せ23年も前のことだからなかなか思い出せないけど、近くのコープの菓子売り場で、懸命に思い出そうとする自分に、なんとなく時の流れを感じる。
人の記憶って、こんなものなのかな、って……。