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読書レビュー 「Team383」 中澤日菜子  

2022-08-27 05:18:23 | 書評 読書忘備録
「Team383」 中澤日菜子  259頁

平均年齢76.6歳のメンバーが繰り広げる痛快青春小説。
いや76歳だから青春 白秋 朱夏 玄冬の成語によれば痛快玄冬小説か。だが、玄冬とはいうものの「おらおら・・」や「死の島」ほどには老い寂れた雰囲気はない。

運転免許証返納や痴呆症や介護、といったネガティブな物語上のトラブルは発生するものの基本的には前向きで明日も頑張ろう、友達っていいな、家族って大事だな、という応援歌的な明るいメッセージ色に溢れている。

タイトルは5人の老人仲間の年齢を全て足したもの、これをチーム名として彼等(男子4人女子1人)はママチャリ8時間耐久レースに出場するのだ。
免許センターで運転免許返納に来た老人に網を張っているメンバー、これは。という人物として声をかけられ、一緒にママチャリレースに出よう、と主人公葉介、元タクシー運転手75歳が誘われる。
無理やり連れていかれた場所は小さな中華料理屋だった。
そこにはすでに派手な化粧と真っ赤なフレームの眼鏡のお婆ちゃん店主と、葉介と同じ手口で集められた3人の男性がいて
葉介が五人目の最後のメンバーなのだという。

個性豊かなメンバーに刺激され、チームに加わることになった葉介の日常は大きく変わり始める。
人生には3つの坂がある。数々の上り坂、下り坂を乗り越えて来た葉介に訪れた、人生最大のまさかという駄洒落のような転機。だが、これが実に楽しそうで羨ましくさえある。
何歳でも人は新しい世界を切り拓くことができる。
何歳でも人生は面白い!
これは作者の読者へのエールであると共に、自身への鼓舞でもあるのだろう。

ちなみに本書でのママチャリ8時間耐久レース。実際にも人気のイベントで各地で好評開催しているらしい。
そしてその最高峰が富士スピードウエイのレーシングコースでのレースなのだそうだ。
結構ガチでハードなレースを繰り広げているらしい。
人生あちこちに面白そうな目がころがっているものだ。。と感心してしまった。
どなたか一緒に僕と走ってみますか?