その４２９．小林氏永眠

編集スタジオ・グッドジョブの小林氏が亡くなった。
仕事場で気分が悪くなり、自宅近くの病院に搬送され
その翌日に息を引き取った。
なんとも仕事師らしい死にざまだ。

３０数年前、まだ私がフリーの監督だったころ
フリーの彼に編集してもらったのが最初の出会いだ。
それから数年後に、彼は「グッドジョブ」という
編集スタジオを立ち上げ、２５年あまり。
私はドキュメント系を得意といていたので
とにかく自分で編集することにこだわっていた。
当時は簡易編集機がなかったので撮影テープを
VHSに落として、私自らが仮編集をし、
本編集を小林氏に依頼していた。
本筋は私の編集をなぞるが、
スローモーションやストップモーション、
文字入れなどは、彼のセンスでつないでいく。
「スローモーションはきれいなズームのカットよりも
カメラが定まらずユラユラしたカットの方が効果がある」
というので側で見ていると、確かに「何だか、いいやん」。
ドラマ仕立てのVPでは、彼は本領を発揮し、
特にスプリット編集を多用した。
ドキュメント系の作品にもスプリット編集を使ってみると
つながりが良くなり、つなぎのための妙なナレーションを
入れることもなくなった。
そういう意味で、チャンと編集の事が分かった
編集マンと仕事をすることは、
監督にとって大切なことだと教えられた。

１０年ほど前から、パソコン編集ができるようになり、
私と小林氏の仕事は激減した。
しかし、１年に一度は当時のスタッフが集まり飲むようになった。
病気で入院し、杖をついてソフトドリンクを飲むこともあったが
昨年の飲み会では、杖もなくビールを飲んでいたので
「来年も」と別れた。本年に入り「飲みましょう」と連絡があり
そろそろと思っていた時に悲報が届いた。

９月２日告別式。
彼とのお別れは悲しいはずなのだが実感がわかない。
遺影が生きているようで、
葬儀会場なのに宴会場のような気がしてならない。
「うがいでもするか！？」（ビールを飲む時の合言葉）
と小林に声をかけそうになる。
ふと見ると懐かしい顔があちらこちらに。
数十年ぶりに再会したスタッフもいる。
やっぱり、葬式なんかやっている場合か？
小林、うがいしようぜ！
お葬式が終わり、小林の葬儀会場で
再会したスタッフと梅田で飲んだ。
生前から不思議と小林の周りには人がいる。
今日も彼のおかげで飲むことができた。
「小林・・・ありがとうな。また飲もうな」