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防衛省へ募る不信と不安

2017-08-06 | Weblog
シリーズ平成の本音―防衛省へ募る不信と不安
 政府は2012年より、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に100人規模の陸上自衛隊員を派遣しているが、政権が安定せず、治安状況の悪化と共に、派遣中断問題も検討対象となる。
 南スーダンは、2011年にスーダンが南北に分裂して独立したが、2013年12月に大統領派と副大統領派が対立し、その後両派の武力衝突が繰り返されており、事実上の‘内戦状態’とも言われている。その後2015年8月に両派間に和平合意がなされたが、2016年7月にジュバで両派間の大規模な戦闘が発生し、市民を含め数百人が死亡した。
 こうした状況を背景として、国会審議では民進党など野党から「PKO参加5原則」に照らし引き上げなどの検討が指摘されていた。自衛隊のPKO参加の前提条件として、(1)紛争当事者間での停戦合意、(2)日本の参加に現地政府や紛争当事者が同意、(3)中立の厳守、(4)以上のいずれかが満たされなければ撤収可能、及び(5)必要最小限の武器使用というPKO 5原則が定められている。
なお、武器の使用については、安全保障関連法(2015年9月)に基づく新任務として「駆けつけ警護」が付与され、これを盛り込んだ「実施計画」が閣議決定されている。‘駆けつけ警護’は、周辺で襲われた国連職員やNGO職員等の救援に向かう任務で、任務遂行のための武器使用が可能になる一方、生命の危険が高まる。
 国連平和維持活動に自衛隊を派遣する要件として最も重要な点は、表現の問題ではなく、紛争当事者間での停戦合意が維持されているか否かという実態であるだけに、南スーダンで武力衝突や戦闘行為があるか否かが大きな問題となる。
 ‘武力衝突’と‘戦闘’との間にはそれ程大きな差はない。前者は、状態を表現し、後者は行為を表現しているに過ぎず、どっちの表現が正しいかなどは不毛な議論だ。
 この問題で、技術的、法律的な問題は別として、将来の日本にとって深刻な点が2つある。
 一つは、防衛当局が国会を含め、情報や資料を隠し、また資料やデータを廃棄したなどと嘘をつくことではないだろうか。仮にも国会での答弁であるので、虚偽と分かれば処罰すべきであろう。現地部隊からの‘日々日報’は、情勢判断するための生の情報であると共に、今後派遣をされる場合の隊員にとって有用な情報となるので、短期に‘廃棄’すべき情報ではない。ましてや政府当局の公務上の情報は、いわゆる‘ヤバイ’情報でもない限り、3年間ほど、少なくても1年以上保管されているし、保管するのが義務であろう。当局が、勝手に短期に‘廃棄’するのは、ケースによっては証拠隠滅となる恐れがある。これは重大な問題であるので、厳重に調査し、適正な対処が必要だ。
 もう一つは、現場の部隊と本部との間で見解の差がある中で、防衛大臣が、国会や国民に誠実に事実を伝えないことだ。
 現場の部隊からは、‘戦闘’があった旨の報告があったのは明らかである。それを、防衛相は、国会での野党の質問に対し、‘戦闘’ではなく‘武力衝突’と答えた。更なる追及に対し、防衛相は、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」とし、‘法律上の戦闘ではない’とした。要するに、憲法上問題になる表現は避けるというだけで、言葉をすり替えているに過ぎない。
 スーダン等で政府軍と反政府勢力が、衝突し、武器を持って射ち合えば‘戦闘’である。現場は生きるか死ぬかの状態であるので、日本の憲法や法律の問題などでは考える余裕はなし、その必要もない。
 現場の部隊と大臣を含む本部との間の情勢認識が違う場合、PKO活動を遂行する上で致命的な結果をもたらすことにもなる。本部が現地情勢を楽観し、国会や国民にそのように報告し、任務を継続させれば、現地の部隊に致命的な被害を与える恐れがあるばかりでなく、政府の姿勢が内外から問われる恐れがある。第2次世界戦争中、戦争遂行の中枢であった‘大本営’は、太平洋各地での戦闘で手柄のみを宣伝し、不利な情勢は流さず、戦争を続けて停戦の機会を逃し、また被害を拡大させた過去がある。‘大本営発表’として知られているが、今回の事件もそれに一脈通じるものがある。
 シビリアン・コントロールの確保は重要ではあるが、現場の部隊(制服組)と防衛相を中心とする幹部(背広組)や首相等との間に情勢認識や情勢判断に差異が存在することは望ましくない。特に部隊が発する情勢認識を首相や大臣が握りつぶし、また政権に都合の良い方に歪めて発表等することは、国家、国民の針路を誤らせることにもなり兼ねない。
 3月10日、政府は、本年5月で南スーダンの国連平和維持活動(PKO)参加している陸上自衛隊員を撤退させることを発表した。しかし、防衛大臣は、それはあくまでも‘任務達成のため’であり、‘治安情勢悪化のためではない’とした。最初に虚偽を発表するとその後の対応についてつじつまを合わせる必要があるのだろうが、こんなことでは防衛大臣も防衛相も信用は出来ない。
 国連のディエン事務総長特別顧問は、2016年12月7日にも、対立が続く南スーダンについて、‘衝突は継続し、大虐殺が起きる恐れが常に存在する’旨警告する声明を改めて発表した。危険な状況は続いているとみられ、治安の悪化は明らかなようだ。
 北東アジア情勢は、緊迫と混迷の度を増している。中国の軍備増強と海洋進出は一段と進んでいる。また中東和平は進展せず、イスラム過激派による国際テロはアフガニスタンや中東地域、一部アフリカ諸国に拡大し、その過程でイラク、シリアにイスラム国(IS)が台頭していると共に、国際テロの危険性は世界に拡散し、膨れ上がる難民問題等が欧州にも影を落としている。このような状況で、本来であれば日本も海・空を中心として防衛力を増強しなくてはならないが、情報隠しや情報の歪曲などをする現在の防衛省では、国民の理解は得られそうにない。
因みに稲田防衛相は、安倍首相同様、東条英機などの戦争責任者も祀られている靖国神社を‘防衛大臣’として毎年参拝している。2016年12月には、首相に同行して太平洋戦争に突入する直接の契機となったハワイのパールハーバーをオバマ大統領(当時)と共に訪問し、戦争体験を克服し和解したことを内外に示したが、その帰国直後、稲田防衛相は靖国神社を訪問した。何を懺悔し何を誓ったのか。同相は、首相やほとんどの閣僚がメンバーとなっている神道政治連盟国会議員懇談会や日本会議など、神道や神社、天皇制を擁護する団体に属しているとされている。どのような宗教観、政治信条を持つかは各人の自由だが、政治家であれば、国民や有権者にそれを明らかにして活動し、また支持を集めるべきであろう。表舞台では建前やきれい事を言い、裏では特定の団体、グループを優遇するなど、不明朗且つ不誠実な活動を行っているとすれば、不気味ではある。(2017.3.14)
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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)

2017-08-06 | Weblog
マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)
 1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、
取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選(その1で掲載)
 2、既成の世論調査の問題点                  (その1で掲載)
 3.既成政治の否定とポピュリズム
 トランプ大統領は、就任式の演説において、アメリカ第一主義を強調し、米国民の安全と雇用確保を優先課題としたが、それよりも先に重要としたことがある。それは、ワシントンD.C.における既成政治の打破であり、‘権力を国民の手に返す’ことであった。従って、従来米国政治で当然、或いは常識と考えられ、そのように報道されていたことが、トランプ政権により否定され、新たな政策が出されても不思議はない。既成政治の枠組みの中で報道していたマスメデイアが慌てるのも無理はない。トランプ大統領は、選挙期間中にそれらの考え方を全米各地で訴え、多くのマスメデイアがいぶかしがる中で、中西部と南部を中心として米国市民に支持され当選した。選挙結果を受けて主張してきたことを実施に移そうとしているので、マスメデイアがそれをいぶかしがり、批判し続けることは、選挙結果を受け入れないと言っているに等しく、それは米国自身の統治システムや大統領選挙制度の否定とも受け止められよう。
 既成政治を否定し、対決する姿勢であるので、既成政治の本拠地ワシントン、特に野党民主党グループの間では相対的に不人気であろうし、また民主党支持を表明しているマスメデイアには不人気であろう。
 既成政治、その支持基盤である既成社会や利益グループを打破することは容易ではない。トランプ政権は、少なくても政権発足時にはオバマ政権始めこれまでの政権で取られて来た政策や諸措置をひとまず否定し、新たな政策や措置を打ち出すことになる。対決色が鮮明となるが、もとより承知の上であり、反対があることも想定の範囲内である。同政権としては、当初は対決色を鮮明にし、反応や効果を見ながら調整して行くと予想される。米国では、特にマッチョ系の間ではこのような‘ファイテイング・スピリット’は、その結果は別として最終的に評価されることが多い。
 他方、このような姿勢に反対することは、既成政治や既成社会、既得権益打破に反対し、これを擁護することになる。またロビイストや利益団体に支えられた職業政治家以外の、財界人その他の民間人は大統領にはなれないとの前例を作ることにもなり兼ねない。
 トランプ大統領は、既成政治を打破し、‘権力を国民の手に返す’としているが、これ自体は民主主義を促進する上で望ましいことであろう。これを既成政治側や既成社会は、‘ポピュリズム’として軽蔑する傾向があるが、‘ポピュリズム’は時の流れではないだろうか。
 他方、トランプ政権側も、既成マスメデイアは既成社会や既得権益グループの一部であり、国際世論を含め、世論の重要な部分を構成していることを忘れることなく、合わせ聞く耳を持つことが必要なのであろう。むしろ自らの考えや政策を浸透させたいのであれば、マスメデイアを活用することが効果的であろう。また娘イヴァンカ・ブランドの製品の販売を停止した高級デパートを不公平としてトランプ氏がツイッター等で批判したが、どっちもどっちではあるが、自身及び家族の事業活動から手を引き、大統領としての公務に就いた現在、自身及び家族の事業への公の場でのコメントを控えるべきなのであろう。

 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決
 第2次世界大戦後、1991年12月のソ連邦の崩壊まで続いた東西冷戦構造は解消したが、米、欧とロシアとの対抗関係は残り、また中国の目覚ましい台頭という構図に変化し、新たな対応と国際秩序が必要とされている。
 だが戦後の国際的課題であった中東紛争の根源であるパレスチナ、イルラエル問題は解決するどころか、イスラム過激派による国際テロの拡大、イラクの長期の不安定とイラク、シリアでのイスラム国の台頭、難民の急増、アフリカ諸国のガバナンス低下と部族紛争の継続など、戦後の諸課題は対処療法で先延ばしされるだけで解決の見通しもない。国連も活動分野を広げ、財政的にも人員的にも膨張しているが、対症療法的であり、解決には結びついていない。アフリカの‘国連開発の10年’も60年以上継続しているにも拘わらず90年代は‘暗黒の10年’と言われ、アフリカの安定的な開発には程遠い。また難民問題も多くの地域で難民キャンプが恒常化し、増加の一途であるなど、諸問題の解決目途も立っていない。特に潘基文前国連事務総長時代では、シリアでの和平仲介にも失敗し、シリア難民は増え、拠出を募るだけで問題解決にはなっていない。北朝鮮の核、ミサイル開発についても、非難はするものの、時間の経過とともに実質的に開発が進む結果となっており、記憶に残る成果は見られない。
 米国は、カーター大統領(民主党)が人権、人道や民主主義分野での介入方針を打ち出し、その後の政権も大なり小なり介入政策を継続し、いわば‘世界の警察’的役割を行って来ているが、上記の通り、国連を含め既成の政治、外交は対症療法的な対応に終始し、問題解決を先延ばしし、ほとんどの問題が未解決のまま残っている。
 トランプ大統領は、従来の既成政治の対応を否定し、新たな対応に乗り出そうとしている。いわば‘建前’から‘本音’の政治、外交への転換とも言える。長い間既成政治の中で支持され、維持されて来た概念や政策であり、それがある意味で既成社会の‘常識’となっているだけに、その転換には批判や抵抗があろうが、トランプ政権としては批判があることは十分に想定しているので、必要に応じ調整はしつつも脱既成政治を進めるものと見られる。人道、人権、平等という概念は、世界で広く受け入れられているが、どこの国でも無制限に適用されてはおらず、また各国の発展段階や政治体制によって適用されている程度が異なるのが現実であろう。これが普遍的に適用されるべしというのが誰しも望むところであるが、それは‘建前’であり、各国には国境があり、一律普遍的に適用できないというのが現実であり、‘本音’であろう。グローバリゼーションも、国境がある国家関係が前提であり、世界連邦のような単一世界が形成され、共通の価値が同じようなレベルで適用されているわけでもない。
 このような反既成政治、既成の‘常識’に対する既成政治側の批判は継続されようが、上記の通り、国際問題において解決されていない問題や逆に深刻化や恒常化して解決の目途が立っていない課題があることは明らかである。トランプ政権の反既成政治路線を批判する前に、これら諸課題が時間ばかり掛けて何故解決されていないのか、政策転換の余地はないかを点検、精査することが望まれる。
 これは国連についても同様で、これまでの諸活動を再検討すると共に、費用対効果を重視し、必要に応じ抜本的な改革を検討すべきではないだろうか。‘国連開発の10年’はじめ、これまでのような活動を継続していても、組織、職員は増大し、分担金、拠出金も増加の一途を辿るだけで、問題解決には繋がらない可能性がある。それでも物事が改善して行けばよいが、これまで通りの対応では、多くが問題の先送りに終わり、何も解決しない恐れがある。
(2017.2.12.)(All Rights Reserved.)
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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)

2017-08-06 | Weblog
マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)
 1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
 なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選
 英国は、EU(欧州連合)からの脱退か残留かを問う国民投票において、2016年6月23日、離脱支持が投票総数の約52%、1,740万票、残留が約48%、1,610万票で、EU離脱を選択した。投票率は約72%で、高い関心の中での選択と言えるが、同国の主要マスメデイアの世論調査や予想に反する結果となった。日本のマスメデイアも、いわゆるコメンテータや専門家等を含め、‘僅差ではあるが残留支持’が大方の見方であった。株式市場もそのようなマスメデイアの予想に基ついて楽観していたが、英国のEU離脱というショックウエーブが広がり株価やポンドは大幅に下落した。英国のEU離脱が日本のメデイアでは予想外の結果となり、市場は方向感覚を失い、欧州市場に追随した形だ。
 そして11月8日の米大統領選挙において、米国は主要マスメデイアの世論調査や予想に反し、共和党ドナルド・トランプ候補を次期大統領として選んだ。州ごとに選ばれた選挙人数は、トランプ氏が306人、民主党のクリントン前国務長官が232人をそれぞれ獲得し、トランプ候補が選挙人数では過半数を制した。投票率は、不人気同士の大統領選挙と言われていたが、54%台で、各候補の得票率はそれぞれ46%台、48%台であり、劣勢とされていた。トランプ氏が優勢との報道が流れると日本の株価は大幅に下落した。しかしトランプ次期大統領が、大統領補佐官はじめ大統領府の布陣に加え、財務長官や商務長官などの主要閣僚の人事を発表し始めると、米国の株価及びドルが大幅高となっており、‘トランプ・ショック’は‘トランプ効果’となった。そして1月20日の大統領就任後は、選挙戦中に約束した事項につき矢継ぎ早に大統領令が出されるたびにマスメデイアは一様に戸惑いを示した。選挙後のトランプ効果は後退し、トランプ不安が広がり、右往左往の状態となった。
 また2016年12月4日、イタリアで実施された憲法改正のための国民投票では、否決され、憲法改正を推進していたレンツィ首相が辞任した。目まぐるしく政権が変わるイタリアにおいて、政権を安定させるために上院の権限を大幅に縮小することを目的とした憲法改正への国民投票であったが、大衆の不満に率直な賛同を表明する人民主義政党(ポピュリズム)として行動する「五つ星運動」などに押され、予想に反する結果となった。
 世界の既成マスメデイアの世論調査は、何故予想に失敗したのか。
 2、既成の世論調査の問題点
 戦後欧米で採用されている世論調査は、多くの場合、無作為で一定数の回答者を選択し、回答があった数を基に賛否などの比率を出している。無作為で回答者を選択しているので、‘公平’、‘中立’とみなされているが、これまでの方法ではカバー出来ない層がある。
 1)まず回答率の問題がある。個々の調査により差はあるが、回答率はせいぜい60%前後で、概ね40%前後は無回答であるが、意見を持っていないということではない。賛否の比率等は回答者数で行われるが、4割前後ほどの無回答者の動向如何では、結論が大きく変わる可能性がある。
 調査は特定のメデイアが実施するが、各メデイアが既成政党を支持する等、一定の傾向を持っていることが多く、そのような偏向に好感を持っていない対象者は、調査に応じないであろう。一般的に有権者の約4割前後は無党派層、或いは無関心層であり、選挙やこのような世論調査を敬遠、拒否する傾向が強いが、意見を持っていないということではない。米国でも同様だ。他方調査メデイアに好意的な対象者を中心に回答することになり、調査メデイアの傾向がより強く反映されるのは当然のことであろう。事実、保守系メデイアが行う世論調査では、保守党支持が顕著に高くなる傾向があることは衆知のことだ。
 このような無党派層、無回答層を排除した統計は、世論の全体を反映せず、調査主体により偏向が出やすくなる。
 少なくても賛否の比率は、調査対象者(所在が分からなかった者を除く)をベースとして出すべきであろう。
 2)情報伝達メデイアの変化
 情報伝達の手段は、戦後マスメデイア化した新聞やテレビを媒体とするものから、デジタル媒体に移っている。既成の新聞やテレビは、巨大化、商業化すると共に、既成社会の一部となり、読者や視聴者に影響を与え、類似性の高い‘既成世論’とも言うべき世論やいわゆる‘常識’といわれる意見を形成している。従って、それがあたかも広く共有された‘常識’とみなされ、それと異なる意見を表明し難くしている。マスメデイアの調査に対し、そのマスメデイアが期待している意見に近い意見が述べられることが多いのもその一例であろう。またコメンテーターや専門家、有識者なども、マスメデイアが期待する意見に反しないコメント等をすることが多い。それに反することを言えば姿が消える。
 マスメデイアの更なる巨大化で、より多くの多様性を伝達すると思われたが、政治的には、特定政党を支持するか、支持政党の立場を代弁している場合が多いので、一定の方向性を持つと共に、類似性が高まることになり、それが繰り返し、繰り返し伝えられることにより、一定の世論や‘常識’が形成されて行く。そのメデイアによる調査では、結果が一定の方向性を持つことは不思議ではない。
 米国の、ニューヨークタイムズは民主党支持であり、ワシントンポストやウオールストリートジャーナルは共和党支持であるし、日本の主要都市新聞やテレビ局も同様である。
 このような中で、4割内外の無党派層や不回答層の意見は、選挙においても、マスメデイアによる世論調査などでも、ほとんど相手にされず、対象外とされて来たと言えよう。いわば場外世論だ。
 しかしデジタル情報手段の普及により、これらマスメデイアに依存することなく、ツイッター、フエイスブック、ユーチューブ、インスタグラム、ラインなどのWebやSNSメデイアを通じ意見やコメントの発信、拡散が可能になった。その拡散力は瞬間的で広範に及ぶ場合がある。トランプ氏は、大統領候補の時からこれを巧みに活用していたと言えよう。
 従来気にも止められなかった無党派層や不回答層をどのように世論に反映させるかが今後の課題だ。そのため世論調査等の方法や手段も工夫が必要になっている。
 2016年当初は、不動産王の泡沫候補とマスメデイアを通じ報道されていたトランプ候補があれよあれよと言う間に共和党の大統領候補となり、そして3回のテレビ討論などを経て、クリントン候補優勢と諸‘世論調査’が伝えていたが、大統領選挙ではトランプ候補が選挙人の過半数を制した。そして選挙人による最終投票においては、トランプ支持の選挙人の何人かはクリントン候補に寝返るなどと報道されていたが、これら報道は見事に外れた。読者や視聴者にその理由を説明する責任がありそうだ。
 3.既成政治の否定とポピュリズム    (その2に掲載)
 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決 (その2に掲載)
 
(2017.2.17.)(All Rights Reserved)
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国民酷使政策を強行する自・公連立政権!?

2017-08-06 | Weblog
シリーズ平成の本音―国民酷使政策を強行する自・公連立政権!?
 11月25日、自民・公明両党は、年金支給額の抑制などを目的とした年金制度改革法案を日本維新の会を除く野党が反対する中で衆議院で強行採決し、今国会中に成立を図る方針だ。
 同法案は、年金支給額を従来の物価スライド制から賃金スライド制に変更するもので、産前産後期間の国民年金保険料の免除などの手直しも行われるが、
賃金が低下すると年金支給額も削減し、年金支給額を将来抑制することが最大大の制度的変更点だ。
 現在、自・公政権は、2013年以来、インフレ率2%を目標とする金融財政政策を実施し、インフレによる景気浮揚を推進して来ているが、インフレ・ターゲットにより物価スライド制による年金支給額が増加する恐れがある。
 他方現政権の下で、円安が進み、輸出産業を中心とする復調により大企業の賃金は若干上昇したものの、中小、零細企業の賃金にはそれ程変化はない一方、消費増税と日常物価の上昇により、実質所得は縮小ないし停滞状況にある。
 従ってこの‘年金改革案’は、特に中小、零細企業就労者にとっては‘年金改悪法案’となる可能性が強い。もともと年金支給額の抑制を目的としているのでそうなることは明らかだ。
 このような国民全体の福祉に関係する制度変更については、与党のみが独りよがりで強行に採択すれば良いというものではなく、与野党でより多くの国民の意見を汲み上げて制度設計することが望まれる。そもそも年金制度は、戦後長期に政権を維持していた自民党の下で形成され、そして今日では制度不安、年金不安が生じているので、同党は制度設計上の責任と年金破たんの責任を有していると言えよう。今回年金支給のルールの変更は、いわば後出しジャンケンをしているに等しい。現実的には野党の支持層に多いと見られる中小、零細企業就労者への影響が大きいので、野党とも十分協議をし、真に国民的な年金制度として行く努力が望まれる。こんなことをしていても、国民の年金不安は解消されない。逆に年金への安心感が低下し、年代を問わず消費を委縮させるであろう。
 更に政府、与党は、高齢者の医療負担を引き上げる意向であり、年長者であっても高所得者については自己負担の引き上げは仕方がないのかもしれない。しかし現在、厚労省は、‘70歳以上の医療費の自己負担の月額上限について、住民税を払っている全ての者を対象に加え、自己負担を引き上げる方針と伝えられている。
厚労省は、既に‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’については、医療費負担を‘現役並みの3割’に引き上げている。しかし、この‘年収約370万円以上の現役世代並みの所得層’の370万円の年収には、年金所得が含まれており、就労で得た所得だけではないので‘現役世代並みの所得’とは言えない。国税庁の民間給与実態調査では、2013年度ベースで少し古いが、日本の平均給与収入は、男性511万円、女性272万円で、日本人全体では平均414万円であり、それよりもさらに低い370万円として‘現役世代並みの所得’としている上、年金所得を含めない所得では270万円内外の実質所得でしかない老齢者に‘現役並みみ’の‘3割’の負担をさせていることになる。老齢者に対し過酷な年収基準を付している。現自・公政権は、‘現役世代並み’と称する限界的な所得がある人に加え、年収約370万円未満でも住民税を支払っている約1200万人にも‘現役並みの3割’の自己負担を課そうとしている。老齢者からささやかな楽しみを奪い、過酷な負担を強いるものである。実質的には年金支給額の減額、天引きに等しい。これでは福祉政策ではなくて、国民酷使政策と言えないだろうか。
 自民・公明連立政権は、民主党政権時代に「社会保障と税制の一体改革」に同意し、また議員定数の実質的削減にも同意し、2011年12月の総選挙で勝利し政権の座に返り咲いた。しかしいずれについても進んでいないばかりか、消費増税を実施し国民に負担を求めた一方、社会保障については反福祉の福祉切り、国民酷使政策に向かっている。
 そもそも社会保障の改善のために消費増税を実施したとされているので、国民の負担が増加することは仕方ないが、年金他の社会保障サービスの向上、充実が図られるのであればという期待感が国民サイドにあった。しかしその期待は見事に裏切られている。自・公連立政権の下では、受益者へのサービスや給付額の改善は行わず、逆に個別に利用者、受給者の「負担増・給付縮小」を強いており、国民を騙しているに等しいのではないだろうか。
 年金が破たん状態になっており、また医療などの社会福祉支出が財政を圧迫し、今後更に財政が厳しくなることが予想されるのであれば、政府がまずやらなくてはならないことは、抜本的な経費節減、無駄の削減ではないだろうか。どの事業でも、業績が振るわず、赤字が増加し破たん状態になれば、まず人件費、管理費などのコスト削減を行うのが常識だ。
 国民に更なる負担を強い、年金やその他社会保障サービスの抑制をする前に、両院の議員定数の大幅削減や議員歳費・諸手当の引き下げ、政党補助金や政務調査費の廃止などを実施して、国民に誠意を示すべきであろう。また独立行政法人や特殊法人を含む公務員・準公務員の新規採用の段階的な削減など、定員の削減や給与の引き下げを実施すべきであろう。定員削減が出来ないのであれば、3~5年間で人件費を含む行政管理費の3割削減を実施することを真剣に検討して欲しいものだ。定員と給与のいずれを削減するかは各省庁に選択させればよい。人件費を除く管理費全般についても、公務員宿舎他国有財産の売却などにより、2020年度までに総額で4割程度を段階的に削減することをまず実施すべきではないのか。事業経費については削減できないところは維持するということで良いが、ニーズのある事業は、民間事業に転換することにより維持出来る。国民のニーズのある事業であれば、事業化を望む企業家は多いであろう。
 この点は地方公共団体においても検討、実施されるべきであろう。2040年までに、全国1,748の市区町村の約3割が消滅するとの予測もあり、多くの地方の人口減は深刻で現実味がある。中央にしても地方にしても、少子高齢化対策の上で財政の節減が不可欠な対策と言えよう。
 与党は衆参両院で多数を占めており、抜本的な経費節減、無駄の削減を断行できる立場にありながら、過去3年半、その面での実績は見られない。政府、与党や官僚がそれを行わないのであれば、国民としては10%への再増税に徹底的に反対すると共に、節約と節税を図るしかなさそうだ。(2016.12.10.)
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