世論調査か世論操作か
― 新テロ特措法案と政党支持率 -
10月13日、新テロ特措法案が衆議院を通過し、参議院での審議に移る。これでインド洋での海上自衛隊による米国艦船等に対する給油・給水に向けて片目が開いた形だ。だが、参議院は民主党を中心とする野党が多数を握っており、参議院で否決されれば、衆議院で3分の2の多数を握る自・公両党が再採決を強行するかなどが注目されている。
この国会の動きに対応し、保守系主要紙等が新テロ特措法案と政党支持率などにつき、それぞれ世論調査の結果を発表している。世論調査は、10、11の両日行なわれた模様で、その結果は、衆議院での特別委、本会議での採決に先立ち、13日までに公表された。新テロ特措法案については、数値において若干の差はあるが、ほぼ50%強が賛成との結果となっている。他方、反対も40%前後あり、反対も根強い。また政権支持では、福田政権の支持率が一定程度低下すると共に、政党支持では、自民党への支持率が低下している一方、民主党の支持率は上昇(一部紙では微減)している。大連立問題で混乱した民主党の小沢代表の続投に厳しい姿勢を示す保守系新聞もある。
数値水準などや保守系に好意的か否かなどの差はあるが、一見、傾向としては大体このようなことかと受け止められるであろう。しかし、どうも新テロ特措法案問題や大連立構想を巡る論調などからして、この各紙毎の世論調査は、国民のどの層の世論を反映しているか、世論「調査」か世論「操作」かなど疑問も残る。
政府関係筋は、新テロ特措法案への支持が60%程度になればと期待している。そうなれば、参議院で否決され、衆議院において3分の2の多数で再可決して押し切っても、世論の反発は少ないと読んでいるのであろう。それだけに世論支持の浮揚が鍵であったと見られる。
1、 日本経団連の政党政策評価の公表
日本経団連は、政党への献金の基準として、自民、民主両党に対する2007年政策評価を
公表した。正式公表は12日に行なわれ各紙が報道したが、一紙は11日、同紙が世論調査を実施している期間に報道している。
政策評価は、政策の「合致度」、「取り組み」、そして「実績」に分けてABCDで評価されているが、「実績」については政権に就いていない民主党には評価は行なっていない。項目は、税・財政政策や規制改革・経済法則、技術革新など、経済関係項目の他、外交安全保障、教育改革、道州制導入など政治、外交分野にまで及んでいる。
日本経団連は、現在、日本の代表的な企業1,343社を含む1,662社・団体が会員となっている。政策の「合致度」では、当然のことながら、長期に亘り政権与党の自民党についてはほとんどがAで、Bは社会保障改革、規制改革・経済法則と雇用政策の3分野となっている。他方、民主党との政策合致度は、ほとんどがB かCで、雇用政策についてはDとなっている。
問題の外交・安全保障では、 自民党については合致度A で、取り組み・実績ともBとしている。民主党については、合致度Cで、取り組みについてはDとしており、インド洋の給油反対などをその理由と解説されている。
もっとも、自民党の「実績」については、A は1つもなく、ほとんどがBに止まっており、社会保障改革と雇用政策に至ってはCであり、政策を実施出来る立場でありながら、政権政党としての実績は高くは評価されてはいない。
日本経団連は日本を代表する経済団体の1つであり、多くの国民や家庭が関係会社・団体の職場となっているだけに、世論に与える影響は少なくないであろう。ましてや、その政策評価が、世論調査中に公表されればなお更のことである。新テロ特措法案の採択も一つつの背景としてあった大連立構想を支持する論調を取りつつ、世論調査期間中にこのような政党への政策評価を公表すれば、一般論として世論誘導となる恐れがあり、世論調査のあり方や公表の仕方などにも配慮が必要のようだ。
そもそも日本経団連が組織として、国民に選ばれた自民、民主両党の政策評価を通信簿のごとくABCDなどで評価し、公表まですること自体に若干の違和感を感じる。日本を代表する経済団体と言っても、民間団体の一つでしかない。その統一した政党別の政策評価に基づき、会員企業・団体が「横並び」で政治献金するとすれば、全体主義的な色彩を帯びて来る。更に、評価項目に、国民生活全体に大きく関係する外交安全保障や経済協力、教育改革などの政治・外交項目が含まれており、これらについても政治献金で影響を行使していることになる。
民主主義においては、どの政党や信条などを支持するかは個々人の判断によることであり、企業・団体や経営者についても、いずれを支持するかは「自由だア~」ではないであろうか。経営者や従業員が政治、社会に関心を持ち、それぞれが自由な立場で発言し、議論することは望ましいことである。しかし、個人は組織を前にすると弱い立場にある。日本政治において、政権政党が企業献金に依存し、個人ベースの党員が広がりを見せていないのもこんなところに原因があるのかも知れない。
2、新テロ特措法の国民にとっての重要度は「どんだけエー」
訪日中の米国の外交問題評議会リチャード・ハース会長は、13日の日本記者クラブでの会見において、日本の給油活動が最終的に中止となった場合、「その影響は、アフガニスタンにおける対テロ戦争よりも、日米関係にとってより深刻だ」として、軍事的意味合いよりも日米間の政治的意味合いを強調したと伝えられている。
確かに、ブッシュ政権は、2008会計年度(07年10月~08年9月)のイラク、アフガニスタンでの軍事費として423億ドル(約4兆8千億円)を議会に追加提案しており、200億円強程度の日本の給油・給水活動は、自衛艦(補給艦と護衛艦)の出動費を加えても軍事的には極く小さな額でしかない。また、インド洋における米国艦船等による活動内容や「海上阻止活動」の効果などについても、説明は抽象的、一般的である。更に「抑止効果がある」とされているが、米国情報当局等は、アフガンの治安状況は未だ安定しておらず、脅威は国際的に拡散しているとしており、評価がまちまちである。
日米関係は、経済分野に加え、日本の安全保障にとっても重要であり、インド洋での補給活動は、日米関係上の政治的、象徴的な意味合いをも十分勘案の上検討されるべきであろう。
しかし、この問題は、日本国民にとってすべてに優先する事項であろうか。現在、日本国民にとって最大の将来不安は年金問題であり、また、消費税の引き上げの可能性や、諸物価の上昇と行財政の硬直化などへの不安である。参議院においては、民主党より、年金基金の流用禁止法案などの福祉関連法案も提出されており、これらの審議には応じず、新テロ特措法案を審議せよでは多くの国民は納得しないのではなかろうか。野党に新テロ特措法案などの協議を求めているが、他の件は協議に応じないというのでは理解は得れないであろう。
また、新テロ特措法案に関連し、民主党より、国連の枠組みをより明確にした法案が対案として提出されている。両案の審議や突合せなども必要になって来よう。一部の識者や与党議員が、「対案となる法案が提出されなければ、政権担当能力を疑われる」などとしているが、これも余りフェアーな議論ではない。政策を実施、執行する立場にあるのは与党であり、各種法案についても、そのほとんどについては行政各部が作成している。新テロ特措法案も外交・防衛当局が作成したものだ。与党も野党もそれぞれ国民に選ばれた代表であり、相互に国民の代表として尊重し合う度量と姿勢が欲しいものだ。
― 新テロ特措法案と政党支持率 -
10月13日、新テロ特措法案が衆議院を通過し、参議院での審議に移る。これでインド洋での海上自衛隊による米国艦船等に対する給油・給水に向けて片目が開いた形だ。だが、参議院は民主党を中心とする野党が多数を握っており、参議院で否決されれば、衆議院で3分の2の多数を握る自・公両党が再採決を強行するかなどが注目されている。
この国会の動きに対応し、保守系主要紙等が新テロ特措法案と政党支持率などにつき、それぞれ世論調査の結果を発表している。世論調査は、10、11の両日行なわれた模様で、その結果は、衆議院での特別委、本会議での採決に先立ち、13日までに公表された。新テロ特措法案については、数値において若干の差はあるが、ほぼ50%強が賛成との結果となっている。他方、反対も40%前後あり、反対も根強い。また政権支持では、福田政権の支持率が一定程度低下すると共に、政党支持では、自民党への支持率が低下している一方、民主党の支持率は上昇(一部紙では微減)している。大連立問題で混乱した民主党の小沢代表の続投に厳しい姿勢を示す保守系新聞もある。
数値水準などや保守系に好意的か否かなどの差はあるが、一見、傾向としては大体このようなことかと受け止められるであろう。しかし、どうも新テロ特措法案問題や大連立構想を巡る論調などからして、この各紙毎の世論調査は、国民のどの層の世論を反映しているか、世論「調査」か世論「操作」かなど疑問も残る。
政府関係筋は、新テロ特措法案への支持が60%程度になればと期待している。そうなれば、参議院で否決され、衆議院において3分の2の多数で再可決して押し切っても、世論の反発は少ないと読んでいるのであろう。それだけに世論支持の浮揚が鍵であったと見られる。
1、 日本経団連の政党政策評価の公表
日本経団連は、政党への献金の基準として、自民、民主両党に対する2007年政策評価を
公表した。正式公表は12日に行なわれ各紙が報道したが、一紙は11日、同紙が世論調査を実施している期間に報道している。
政策評価は、政策の「合致度」、「取り組み」、そして「実績」に分けてABCDで評価されているが、「実績」については政権に就いていない民主党には評価は行なっていない。項目は、税・財政政策や規制改革・経済法則、技術革新など、経済関係項目の他、外交安全保障、教育改革、道州制導入など政治、外交分野にまで及んでいる。
日本経団連は、現在、日本の代表的な企業1,343社を含む1,662社・団体が会員となっている。政策の「合致度」では、当然のことながら、長期に亘り政権与党の自民党についてはほとんどがAで、Bは社会保障改革、規制改革・経済法則と雇用政策の3分野となっている。他方、民主党との政策合致度は、ほとんどがB かCで、雇用政策についてはDとなっている。
問題の外交・安全保障では、 自民党については合致度A で、取り組み・実績ともBとしている。民主党については、合致度Cで、取り組みについてはDとしており、インド洋の給油反対などをその理由と解説されている。
もっとも、自民党の「実績」については、A は1つもなく、ほとんどがBに止まっており、社会保障改革と雇用政策に至ってはCであり、政策を実施出来る立場でありながら、政権政党としての実績は高くは評価されてはいない。
日本経団連は日本を代表する経済団体の1つであり、多くの国民や家庭が関係会社・団体の職場となっているだけに、世論に与える影響は少なくないであろう。ましてや、その政策評価が、世論調査中に公表されればなお更のことである。新テロ特措法案の採択も一つつの背景としてあった大連立構想を支持する論調を取りつつ、世論調査期間中にこのような政党への政策評価を公表すれば、一般論として世論誘導となる恐れがあり、世論調査のあり方や公表の仕方などにも配慮が必要のようだ。
そもそも日本経団連が組織として、国民に選ばれた自民、民主両党の政策評価を通信簿のごとくABCDなどで評価し、公表まですること自体に若干の違和感を感じる。日本を代表する経済団体と言っても、民間団体の一つでしかない。その統一した政党別の政策評価に基づき、会員企業・団体が「横並び」で政治献金するとすれば、全体主義的な色彩を帯びて来る。更に、評価項目に、国民生活全体に大きく関係する外交安全保障や経済協力、教育改革などの政治・外交項目が含まれており、これらについても政治献金で影響を行使していることになる。
民主主義においては、どの政党や信条などを支持するかは個々人の判断によることであり、企業・団体や経営者についても、いずれを支持するかは「自由だア~」ではないであろうか。経営者や従業員が政治、社会に関心を持ち、それぞれが自由な立場で発言し、議論することは望ましいことである。しかし、個人は組織を前にすると弱い立場にある。日本政治において、政権政党が企業献金に依存し、個人ベースの党員が広がりを見せていないのもこんなところに原因があるのかも知れない。
2、新テロ特措法の国民にとっての重要度は「どんだけエー」
訪日中の米国の外交問題評議会リチャード・ハース会長は、13日の日本記者クラブでの会見において、日本の給油活動が最終的に中止となった場合、「その影響は、アフガニスタンにおける対テロ戦争よりも、日米関係にとってより深刻だ」として、軍事的意味合いよりも日米間の政治的意味合いを強調したと伝えられている。
確かに、ブッシュ政権は、2008会計年度(07年10月~08年9月)のイラク、アフガニスタンでの軍事費として423億ドル(約4兆8千億円)を議会に追加提案しており、200億円強程度の日本の給油・給水活動は、自衛艦(補給艦と護衛艦)の出動費を加えても軍事的には極く小さな額でしかない。また、インド洋における米国艦船等による活動内容や「海上阻止活動」の効果などについても、説明は抽象的、一般的である。更に「抑止効果がある」とされているが、米国情報当局等は、アフガンの治安状況は未だ安定しておらず、脅威は国際的に拡散しているとしており、評価がまちまちである。
日米関係は、経済分野に加え、日本の安全保障にとっても重要であり、インド洋での補給活動は、日米関係上の政治的、象徴的な意味合いをも十分勘案の上検討されるべきであろう。
しかし、この問題は、日本国民にとってすべてに優先する事項であろうか。現在、日本国民にとって最大の将来不安は年金問題であり、また、消費税の引き上げの可能性や、諸物価の上昇と行財政の硬直化などへの不安である。参議院においては、民主党より、年金基金の流用禁止法案などの福祉関連法案も提出されており、これらの審議には応じず、新テロ特措法案を審議せよでは多くの国民は納得しないのではなかろうか。野党に新テロ特措法案などの協議を求めているが、他の件は協議に応じないというのでは理解は得れないであろう。
また、新テロ特措法案に関連し、民主党より、国連の枠組みをより明確にした法案が対案として提出されている。両案の審議や突合せなども必要になって来よう。一部の識者や与党議員が、「対案となる法案が提出されなければ、政権担当能力を疑われる」などとしているが、これも余りフェアーな議論ではない。政策を実施、執行する立場にあるのは与党であり、各種法案についても、そのほとんどについては行政各部が作成している。新テロ特措法案も外交・防衛当局が作成したものだ。与党も野党もそれぞれ国民に選ばれた代表であり、相互に国民の代表として尊重し合う度量と姿勢が欲しいものだ。
― 新テロ特措法案と政党支持率 -
10月13日、新テロ特措法案が衆議院を通過し、参議院での審議に移る。これでインド洋での海上自衛隊による米国艦船等に対する給油・給水に向けて片目が開いた形だ。だが、参議院は民主党を中心とする野党が多数を握っており、参議院で否決されれば、衆議院で3分の2の多数を握る自・公両党が再採決を強行するかなどが注目されている。
この国会の動きに対応し、保守系主要紙等が新テロ特措法案と政党支持率などにつき、それぞれ世論調査の結果を発表している。世論調査は、10、11の両日行なわれた模様で、その結果は、衆議院での特別委、本会議での採決に先立ち、13日までに公表された。新テロ特措法案については、数値において若干の差はあるが、ほぼ50%強が賛成との結果となっている。他方、反対も40%前後あり、反対も根強い。また政権支持では、福田政権の支持率が一定程度低下すると共に、政党支持では、自民党への支持率が低下している一方、民主党の支持率は上昇(一部紙では微減)している。大連立問題で混乱した民主党の小沢代表の続投に厳しい姿勢を示す保守系新聞もある。
数値水準などや保守系に好意的か否かなどの差はあるが、一見、傾向としては大体このようなことかと受け止められるであろう。しかし、どうも新テロ特措法案問題や大連立構想を巡る論調などからして、この各紙毎の世論調査は、国民のどの層の世論を反映しているか、世論「調査」か世論「操作」かなど疑問も残る。
政府関係筋は、新テロ特措法案への支持が60%程度になればと期待している。そうなれば、参議院で否決され、衆議院において3分の2の多数で再可決して押し切っても、世論の反発は少ないと読んでいるのであろう。それだけに世論支持の浮揚が鍵であったと見られる。
1、 日本経団連の政党政策評価の公表
日本経団連は、政党への献金の基準として、自民、民主両党に対する2007年政策評価を
公表した。正式公表は12日に行なわれ各紙が報道したが、一紙は11日、同紙が世論調査を実施している期間に報道している。
政策評価は、政策の「合致度」、「取り組み」、そして「実績」に分けてABCDで評価されているが、「実績」については政権に就いていない民主党には評価は行なっていない。項目は、税・財政政策や規制改革・経済法則、技術革新など、経済関係項目の他、外交安全保障、教育改革、道州制導入など政治、外交分野にまで及んでいる。
日本経団連は、現在、日本の代表的な企業1,343社を含む1,662社・団体が会員となっている。政策の「合致度」では、当然のことながら、長期に亘り政権与党の自民党についてはほとんどがAで、Bは社会保障改革、規制改革・経済法則と雇用政策の3分野となっている。他方、民主党との政策合致度は、ほとんどがB かCで、雇用政策についてはDとなっている。
問題の外交・安全保障では、 自民党については合致度A で、取り組み・実績ともBとしている。民主党については、合致度Cで、取り組みについてはDとしており、インド洋の給油反対などをその理由と解説されている。
もっとも、自民党の「実績」については、A は1つもなく、ほとんどがBに止まっており、社会保障改革と雇用政策に至ってはCであり、政策を実施出来る立場でありながら、政権政党としての実績は高くは評価されてはいない。
日本経団連は日本を代表する経済団体の1つであり、多くの国民や家庭が関係会社・団体の職場となっているだけに、世論に与える影響は少なくないであろう。ましてや、その政策評価が、世論調査中に公表されればなお更のことである。新テロ特措法案の採択も一つつの背景としてあった大連立構想を支持する論調を取りつつ、世論調査期間中にこのような政党への政策評価を公表すれば、一般論として世論誘導となる恐れがあり、世論調査のあり方や公表の仕方などにも配慮が必要のようだ。
そもそも日本経団連が組織として、国民に選ばれた自民、民主両党の政策評価を通信簿のごとくABCDなどで評価し、公表まですること自体に若干の違和感を感じる。日本を代表する経済団体と言っても、民間団体の一つでしかない。その統一した政党別の政策評価に基づき、会員企業・団体が「横並び」で政治献金するとすれば、全体主義的な色彩を帯びて来る。更に、評価項目に、国民生活全体に大きく関係する外交安全保障や経済協力、教育改革などの政治・外交項目が含まれており、これらについても政治献金で影響を行使していることになる。
民主主義においては、どの政党や信条などを支持するかは個々人の判断によることであり、企業・団体や経営者についても、いずれを支持するかは「自由だア~」ではないであろうか。経営者や従業員が政治、社会に関心を持ち、それぞれが自由な立場で発言し、議論することは望ましいことである。しかし、個人は組織を前にすると弱い立場にある。日本政治において、政権政党が企業献金に依存し、個人ベースの党員が広がりを見せていないのもこんなところに原因があるのかも知れない。
2、新テロ特措法の国民にとっての重要度は「どんだけエー」
訪日中の米国の外交問題評議会リチャード・ハース会長は、13日の日本記者クラブでの会見において、日本の給油活動が最終的に中止となった場合、「その影響は、アフガニスタンにおける対テロ戦争よりも、日米関係にとってより深刻だ」として、軍事的意味合いよりも日米間の政治的意味合いを強調したと伝えられている。
確かに、ブッシュ政権は、2008会計年度(07年10月~08年9月)のイラク、アフガニスタンでの軍事費として423億ドル(約4兆8千億円)を議会に追加提案しており、200億円強程度の日本の給油・給水活動は、自衛艦(補給艦と護衛艦)の出動費を加えても軍事的には極く小さな額でしかない。また、インド洋における米国艦船等による活動内容や「海上阻止活動」の効果などについても、説明は抽象的、一般的である。更に「抑止効果がある」とされているが、米国情報当局等は、アフガンの治安状況は未だ安定しておらず、脅威は国際的に拡散しているとしており、評価がまちまちである。
日米関係は、経済分野に加え、日本の安全保障にとっても重要であり、インド洋での補給活動は、日米関係上の政治的、象徴的な意味合いをも十分勘案の上検討されるべきであろう。
しかし、この問題は、日本国民にとってすべてに優先する事項であろうか。現在、日本国民にとって最大の将来不安は年金問題であり、また、消費税の引き上げの可能性や、諸物価の上昇と行財政の硬直化などへの不安である。参議院においては、民主党より、年金基金の流用禁止法案などの福祉関連法案も提出されており、これらの審議には応じず、新テロ特措法案を審議せよでは多くの国民は納得しないのではなかろうか。野党に新テロ特措法案などの協議を求めているが、他の件は協議に応じないというのでは理解は得れないであろう。
また、新テロ特措法案に関連し、民主党より、国連の枠組みをより明確にした法案が対案として提出されている。両案の審議や突合せなども必要になって来よう。一部の識者や与党議員が、「対案となる法案が提出されなければ、政権担当能力を疑われる」などとしているが、これも余りフェアーな議論ではない。政策を実施、執行する立場にあるのは与党であり、各種法案についても、そのほとんどについては行政各部が作成している。新テロ特措法案も外交・防衛当局が作成したものだ。与党も野党もそれぞれ国民に選ばれた代表であり、相互に国民の代表として尊重し合う度量と姿勢が欲しいものだ。
― 新テロ特措法案と政党支持率 -
10月13日、新テロ特措法案が衆議院を通過し、参議院での審議に移る。これでインド洋での海上自衛隊による米国艦船等に対する給油・給水に向けて片目が開いた形だ。だが、参議院は民主党を中心とする野党が多数を握っており、参議院で否決されれば、衆議院で3分の2の多数を握る自・公両党が再採決を強行するかなどが注目されている。
この国会の動きに対応し、保守系主要紙等が新テロ特措法案と政党支持率などにつき、それぞれ世論調査の結果を発表している。世論調査は、10、11の両日行なわれた模様で、その結果は、衆議院での特別委、本会議での採決に先立ち、13日までに公表された。新テロ特措法案については、数値において若干の差はあるが、ほぼ50%強が賛成との結果となっている。他方、反対も40%前後あり、反対も根強い。また政権支持では、福田政権の支持率が一定程度低下すると共に、政党支持では、自民党への支持率が低下している一方、民主党の支持率は上昇(一部紙では微減)している。大連立問題で混乱した民主党の小沢代表の続投に厳しい姿勢を示す保守系新聞もある。
数値水準などや保守系に好意的か否かなどの差はあるが、一見、傾向としては大体このようなことかと受け止められるであろう。しかし、どうも新テロ特措法案問題や大連立構想を巡る論調などからして、この各紙毎の世論調査は、国民のどの層の世論を反映しているか、世論「調査」か世論「操作」かなど疑問も残る。
政府関係筋は、新テロ特措法案への支持が60%程度になればと期待している。そうなれば、参議院で否決され、衆議院において3分の2の多数で再可決して押し切っても、世論の反発は少ないと読んでいるのであろう。それだけに世論支持の浮揚が鍵であったと見られる。
1、 日本経団連の政党政策評価の公表
日本経団連は、政党への献金の基準として、自民、民主両党に対する2007年政策評価を
公表した。正式公表は12日に行なわれ各紙が報道したが、一紙は11日、同紙が世論調査を実施している期間に報道している。
政策評価は、政策の「合致度」、「取り組み」、そして「実績」に分けてABCDで評価されているが、「実績」については政権に就いていない民主党には評価は行なっていない。項目は、税・財政政策や規制改革・経済法則、技術革新など、経済関係項目の他、外交安全保障、教育改革、道州制導入など政治、外交分野にまで及んでいる。
日本経団連は、現在、日本の代表的な企業1,343社を含む1,662社・団体が会員となっている。政策の「合致度」では、当然のことながら、長期に亘り政権与党の自民党についてはほとんどがAで、Bは社会保障改革、規制改革・経済法則と雇用政策の3分野となっている。他方、民主党との政策合致度は、ほとんどがB かCで、雇用政策についてはDとなっている。
問題の外交・安全保障では、 自民党については合致度A で、取り組み・実績ともBとしている。民主党については、合致度Cで、取り組みについてはDとしており、インド洋の給油反対などをその理由と解説されている。
もっとも、自民党の「実績」については、A は1つもなく、ほとんどがBに止まっており、社会保障改革と雇用政策に至ってはCであり、政策を実施出来る立場でありながら、政権政党としての実績は高くは評価されてはいない。
日本経団連は日本を代表する経済団体の1つであり、多くの国民や家庭が関係会社・団体の職場となっているだけに、世論に与える影響は少なくないであろう。ましてや、その政策評価が、世論調査中に公表されればなお更のことである。新テロ特措法案の採択も一つつの背景としてあった大連立構想を支持する論調を取りつつ、世論調査期間中にこのような政党への政策評価を公表すれば、一般論として世論誘導となる恐れがあり、世論調査のあり方や公表の仕方などにも配慮が必要のようだ。
そもそも日本経団連が組織として、国民に選ばれた自民、民主両党の政策評価を通信簿のごとくABCDなどで評価し、公表まですること自体に若干の違和感を感じる。日本を代表する経済団体と言っても、民間団体の一つでしかない。その統一した政党別の政策評価に基づき、会員企業・団体が「横並び」で政治献金するとすれば、全体主義的な色彩を帯びて来る。更に、評価項目に、国民生活全体に大きく関係する外交安全保障や経済協力、教育改革などの政治・外交項目が含まれており、これらについても政治献金で影響を行使していることになる。
民主主義においては、どの政党や信条などを支持するかは個々人の判断によることであり、企業・団体や経営者についても、いずれを支持するかは「自由だア~」ではないであろうか。経営者や従業員が政治、社会に関心を持ち、それぞれが自由な立場で発言し、議論することは望ましいことである。しかし、個人は組織を前にすると弱い立場にある。日本政治において、政権政党が企業献金に依存し、個人ベースの党員が広がりを見せていないのもこんなところに原因があるのかも知れない。
2、新テロ特措法の国民にとっての重要度は「どんだけエー」
訪日中の米国の外交問題評議会リチャード・ハース会長は、13日の日本記者クラブでの会見において、日本の給油活動が最終的に中止となった場合、「その影響は、アフガニスタンにおける対テロ戦争よりも、日米関係にとってより深刻だ」として、軍事的意味合いよりも日米間の政治的意味合いを強調したと伝えられている。
確かに、ブッシュ政権は、2008会計年度(07年10月~08年9月)のイラク、アフガニスタンでの軍事費として423億ドル(約4兆8千億円)を議会に追加提案しており、200億円強程度の日本の給油・給水活動は、自衛艦(補給艦と護衛艦)の出動費を加えても軍事的には極く小さな額でしかない。また、インド洋における米国艦船等による活動内容や「海上阻止活動」の効果などについても、説明は抽象的、一般的である。更に「抑止効果がある」とされているが、米国情報当局等は、アフガンの治安状況は未だ安定しておらず、脅威は国際的に拡散しているとしており、評価がまちまちである。
日米関係は、経済分野に加え、日本の安全保障にとっても重要であり、インド洋での補給活動は、日米関係上の政治的、象徴的な意味合いをも十分勘案の上検討されるべきであろう。
しかし、この問題は、日本国民にとってすべてに優先する事項であろうか。現在、日本国民にとって最大の将来不安は年金問題であり、また、消費税の引き上げの可能性や、諸物価の上昇と行財政の硬直化などへの不安である。参議院においては、民主党より、年金基金の流用禁止法案などの福祉関連法案も提出されており、これらの審議には応じず、新テロ特措法案を審議せよでは多くの国民は納得しないのではなかろうか。野党に新テロ特措法案などの協議を求めているが、他の件は協議に応じないというのでは理解は得れないであろう。
また、新テロ特措法案に関連し、民主党より、国連の枠組みをより明確にした法案が対案として提出されている。両案の審議や突合せなども必要になって来よう。一部の識者や与党議員が、「対案となる法案が提出されなければ、政権担当能力を疑われる」などとしているが、これも余りフェアーな議論ではない。政策を実施、執行する立場にあるのは与党であり、各種法案についても、そのほとんどについては行政各部が作成している。新テロ特措法案も外交・防衛当局が作成したものだ。与党も野党もそれぞれ国民に選ばれた代表であり、相互に国民の代表として尊重し合う度量と姿勢が欲しいものだ。