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世界の公的債務激増、世界経済への暗雲

2022-07-31 | Weblog
シリーズ本音トークー世界の公的債務激増、世界経済への暗雲
 世界通貨基金(IMF)の報告書によると、2020年の先進工業諸国(日米欧など27か国)の国民総生産(GDP)に対する政府の債務残高の比率が、前年よりも23.5ポイント上昇し、128.2%になるとしている。第2次世界大戦直後の1946年に記録した124.1%を上回る。
 同報告書によると、世界各国の武漢発コロナウイルス禍に対応する経済対策の総額は、少なくとも11兆ドル(約1,170兆円)に達する。財政出動(減税を含む)の対GDP比率では、米国が12.3%、次いで日本(11.3%)、ドイツ(9.4%)、豪州(8.8%)、ブラジル(6.5%)、英国(6.2%)の順となっている。
武漢型コロナウイルス禍は安全なワクチンや効果的な治療薬が実用化されるまでは継続すると見られ、米国初め多くの国が追加的経済対策を検討、実施する可能性が高いので、各国の公的債務残高は更に積み上がる可能性が高い。IMFは一方で未だ危機を脱したわけではなく財政措置は必要とし、感染拡大の収束が見通せるまでは景気下支え策が不可欠としているが、際限なく公的債務残高を増やすことは世界経済にとり危険であり、難しい舵取りが必要になっている。
 1、際限ない公的債務の積み上げは国民への負担への転嫁となり懸念大
 問題は、こうした政府支出が税収から賄われている限り問題はないが、国・
公債などによる政府の借金により捻出される場合が問題となる。
 日本の場合、公的債務総額は既に1,114兆円を超え、国民総生産の2.4年分を超える膨大な借金を抱えている。更に2020年度予算では、コロナ禍対策で2度の補正予算を組み、それだけで約25兆円規模の国債を発行し、本予算を含め何と約180兆円にも及ぶ戦後最大の国債を発行し、世界の借金大国の座を不動のものとしている。
 世論調査では、財界や自・公与党支持層を中心として、これまでの経済政策の継続を希望する向きが強いようだが、それは国民総生産の2年半分を超える政府の借金で賄われており、目先の支持は得られるだろうが、いずれ国民が税や高インフレなどにより負担を強いられるもことになる。国民はそれを十分認識する必要があろう。
 2010年1月にギリシャで従来よりの放漫財政が表面化し、債務残高も国内総生産の113%に達していることが明るみに出るなど、経済危機に陥り、EUから緊縮財政が求められた。結局、一番困るのは国民だ。武漢発のコロナの感染拡大後、既にレバノンやアルゼンチンが債務不履行に陥るなど、世界各国で財政危機に陥り始めている。財政の規律、財政の健全化に留意する必要がある。

 2、IMFが語っていない膨大な信用増発による世界インフレの危険
 更に、IMFの報告書に今回書かれていないことがある。それは中央銀行等による信用の増発だ。アベノミクスでは、中央銀行による「異次元の金融緩和」が行われ、下がり始めていた円安が更に円安となり、輸出やインバウンドの外国人観光客などで関連産業が潤い、株価も上昇し、一定の経済効果があったと言えよう。金融緩和は2008年のリーマンショック後、継続して取られてきた政策で、アベノミクスで金融が更に緩和され、7年8ヶ月に亘り一本調子で金融緩和が維持されてきた。金利もマイナス金利となったままだ。更に1月以来のコロナ禍対策の一環で金融緩和が一層強化され、もはやタガが外れ、無制限に膨大な信用供給が行われている。株価はコロナ禍以前の水準を取り戻し、一部の機関投資家や株屋、大株主などにだぶだぶと金が溜まっている。他方、実体経済は年率マイナス30%前後が予想され、財政支出と金融緩和の恩恵を受けている企業を除き、ほとんどの企業が大幅な赤字予想となっている。航空、観光、外食産業などは減収にあえいでいる。信用が増発されても金の行き場がないので株やゴールド、骨董などに流れるのも分からないではない。
そんなことが長続きする訳もないし、一部の機関投資家や株屋、大株主などにだぶだぶと金がため込まれているのも問題視されそうだ。またハイパーインフレの危険性もあり、銀行預金を含む金融資産は紙くず同然になる恐れがある。国債なども紙くず同然になろう。

 3、財政規律、金融規律の回復が不可欠
 本来であれば、安倍自・公連立政権の間に財政・金融規律を回復し、財政の健全化と金融の正常化が図られるべきであったのであろう。自・公連立政権は国会で圧倒的な多数を保ち、権力を維持してきたので、それが出来たはずだ。一般家庭でも、将来の困難に備え、貯蓄をし、節約をする。それを行っていた人はコロナ禍もなんとかしのげる。国家レベルでは全国民の生活のためであるので、財政・金融規律を回復し、財政の健全化と金融の正常化は不可欠であったのだろう。
 もっとも、国民が選んだ政権が行った政策とも言えるのだが、果たして国民に政策の意図や副作用の危険性、国民に戻ってくる負担などについて公正に伝えられていたか疑問である。
 最近のマスコミの報道や論評などはどうも政権への忖度が強く、企業利益優先で短絡的で無気力に響き、マスコミ力が低下しているように映る。知識人と言われる国・公立の教授等も所詮教職に従事する公務員であるので自然に政府寄りであり、また専門家やコメンテーターなども仕事優先で世論迎合型になるのも仕方が無いのかもしれない。情報番組にお笑い系のコメンテーターが多くなっているが、視聴率稼ぎでしかないのであろう。だが1局や2局であればまだしも、NHKを含むほとんど全局でお笑い系が登場しているので、笑えない。民間研究機関に至っては、ほとんど全てが企業利益優先で、公正な研究機関としての役割を果たしているとは思えない。従って、多くの国民は一定方向の情報や分析、政策の選択肢しか見聞きすることはない状態になっているのではないか。
 それぞれの報道機関が特定政権や政党を支持、擁護する形で報道することは企業体である以上仕方ないことであるが、論調を国民に押しつけるのではなく、対立する意見や選択肢を提示して、国民に選ばせる姿勢が欲しいものだ。それがマスコミ力というものであろう。マスコミ力の低下は、民主主義の発展を妨げる。(2020.9.10.)
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日銀の金融緩和策、底が抜けた危険な運営!(再掲)

2022-07-31 | Weblog
日銀の金融緩和策、底が抜けた危険な運営!(再掲)
<はじめに>日銀は、2013年1月からの「異次元の金融緩和」を実施しているが、安倍政権が管、岸田政権に変わっても終って、9年間に亘り大盤振る舞いの金融緩和を継続している。欧米各国は、コロナ禍により後退している経済社会活動の浮揚を図っており、消費が戻り始めている一方、人手不足等により供給不足により一部物資が値上がりしている上、石油価格が上昇しており、インフレ圧力が高まっているので、緩やかな金利引き上げを含む金融引き締めに転換している。
日本においても、石油価格の上昇や円安による輸入物資の値上がり、電気料金の引き上げ等により、家計所得が減少している中で1.1%の物価上昇を招いている。日銀は、この状況を「良い円安」、「良い物価上昇」などとしているが、膨大な信用を長期に供給しているにも拘わらず、家計所得は増加していない。日銀は産業優先であり、家計や消費者は重視していないのであろうが、9年間もの長期に亘り一本調子で金融緩和を継続し、所得が上昇しない中での2%のインフレターゲットは、更に家計を圧迫し、消費節約により家計を守るしかない状況を理解していないのであろうか。2%のインフレターゲットは、家計を圧迫するばかりであり、もはや賞味期限切れと言えよう。(2022.1.19.補足)

 日本銀行は、2020年6月16日、金融政策決定会合において、「大規模な金融緩和政策の維持」を決定した。日銀は、安倍自・公政権において、2013年1月以来大幅な金融緩和策を継続してきたが、新型コロナウイルス対応として3―5月に一層の緩和策を導入し、更に企業への資金繰り支援として総枠を75兆円から110兆円に大幅に引き上げた。
 資金供給の主要なものは、市中(銀行や信託投資会社等)からの「株価指数連動型上場投資信託(ETF)」の買い入れであるが、既に2013年から大規模な買い入れを実施し、市中に資金を放出してきており、それが株価や信託投資証券の価格を押し上げて来た。流動性過多、金余りの中で、資金供給の総枠110兆円に引き上げた。それがコロナ大不況の中で、意味の分からない株高に繋がっている。
 日銀は、金利もマイナス金利としており、大幅な量的緩和も7年間続け、実体経済の伴わない金余りの中での大幅緩和であり、金利面でも量的にも節度を失い、底が抜けた金融緩和政策といえよう。
 日本経済は、世界経済の大幅低迷の中で、大幅な後退が予想されており、その中で実体経済に裏打ちされない形で株価と信託証券などの価格が人為的につり上げられている形であり、危険な状態となっている。何かのきっかけで、大幅に下落する恐れがある。個人投資家としては非常に危険な状態にあることを認識する必要がありそうだ。
 日銀総裁は、「投資家のリスクテイクの動きが弱い」などとコメントしているようであるが、実物経済を理解していないか、その知識はあるが善意の投資家の損失など気にも掛けていない発言としか考えられない。まともな経済人であれば、大損が予想される中で投資はしない。(2020.6.18.、2022.1.19.冒頭補足)
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森友学園公文書改ざん問題、安倍政権下の不正認める!

2022-07-31 | Weblog
森友学園公文書改ざん問題、安倍政権下の不正認める!
安倍政権下において、森友学園建設に際し国有地の破格の安値払い下げに関する決裁文書の改ざんに関与させられ、それを苦として近畿財務局の職員(赤木俊夫)が自殺した(2018年3月)。これに対し配偶者(赤木雅子さん)が、政府と財務省の佐川理財局長(当時)1.1億円余りの賠償を求め民事裁判(2021年3月)を起した。赤木さん側は、改ざんの経緯をまとめて職場に残されていた「赤木ファイル」などを示しつつ、「上層部より改ざんを執ように強要され、極めて強い心理的負担があった」として、政府(財務省)側の責任を追及し、政府側はこれまでこれを否定して来た。
ところが2021年12月15日の大阪高等裁判所における当事者間の協議で、国側は「赤木職員(当時)が強く反発した財務省理財局からの決裁文書改ざん指示への対応や森友学園案件に係わる情報公開請求への対応などにより、様々な業務に忙殺され、精神面と肉体面に過剰な負荷が継続したことにより、精神疾患を発症し自殺した」としつつ、一転して賠賠償責任を認め、赤木夫人に賠償金を支払うことにしたため、裁判は終了することになった。
 これに対し原告側は真実の追究を逃れようとしているとの趣旨で反発しているが、国側より賠償金が支払われることになったことは評価される。
 これにより国側は、財務本省(理財局)より決裁文書の改ざん指示が行われたことを認めると共に、この経緯や改ざんされた内容などを記した「赤木ファイル」の内容を事実上認めたこととなる。
 民事裁判は今後、改ざん指示を出したと見られている財務省佐川理財局長(当時)への賠償請求などに移ることになるので、その判断は裁判所に委ねられることになろう。他方、このような深刻な公文書の改ざんを強いられることになったそもそもの原因である国有地の安値払い下げや、改ざんの事実を伏せようとしたことなどを巡り直接間接に影響力を行使したと見られる安倍元首相や麻生前財務相等の政治責任が問われることになろう。
 1、国有地の安値払い下げと公文書改ざんの原因を作った道義的・政治的責任
 国有地の森友学園への安値払い下げについて、所管する財務省理財局が関連文書や記録の改ざんに動いた発端は、2013年2月の衆院予算委での安倍首相(当時)夫妻の関与についての質問において、安倍首相が‘自身、及び同夫人が関与していたということであれば、それは議員を辞職する’との趣旨述べたことによる。そんなことになると、折角同首相のもとで圧倒的多数を制した自・公両党による連立政権を危うくすることになり、それを回避したいという忖度と保身から、当該国有地の値引き売却に関係する文書から、安倍首相夫妻と森友学園との関係を示す部分を全て削除し、改めて文書を作成させたものと見られている。これは行政当局側が首相を擁護しようとの忖度から生じたものであり、文書改ざんについて首相側に直接責任があるわけではない。
 しかし文書を改ざんした事実と今回国側が改ざん指示を認めたことは、「赤木ファイル」の内容を認め、安倍首相(当時)夫妻と森友学園との関係が国有地の安値払い下げに影響があったことを認めたことに他ならない。直接の指示や示唆があったか否かは別として、首相側近が事務当局に検討状況を照会等することは指摘されていたところであり、事務方がそのように受け止め、破格の値引きをしたということであろう。
 法律違反や不適正な直接の圧力があったとは思えないが、公文書或いは公的記録の改ざんという非常に重大な不適正な行為を誘発し、政治・行政の法令遵守(コンプライアンス)や基本的な倫理規範に重大な悪影響を与えると共に、人1人が命を絶ち、また行政の動揺と劣化を招いたことに対する政治的、道義的責任は非常に重いと言えよう。
 何故安倍首相(当時)は、以前より夫妻とも知っており、森友学園の教育方針を評価し、個人的な支援を行っていた関係を隠そうとしたのだろうか。もし森友学園を夫妻で知っており、その教育方針を理解し、側面的に支援していることを肯定する一方、国有地の格安払い下げには関与していない旨説明していれば、恐らくあのような問題に発展していなかったと思われる。森友学園は、明治時代の天皇君主制の下で基礎教育での指針となる「教育勅語」を実践しており、生徒は礼儀正しく、安倍夫妻はこのような学校の普及を望んでいたとされている。それは1つの考え方であり、政治をする以上国民に立場を明らかにすることが望ましい。民間組織にも明治時代の天皇制にノスタルジーを感じ、そのような「美しい国、日本」を守ることを目的とする日本会議があり、一部保守政治家グループがこれを支援していることは知られている。
 この公文書改ざん事件の後、厚生労働省による残業時間の不正記録や現在問題になっている国土交通省による建設業の受注動向などを示す統計のデータの不正記録等々が起こっており、また桜を見る会に係わる各種の記録が1年間も経たない内にコンピューターに残された記録を含め完全消去されたとされるなど、政治、行政の間で‘無かったことにする’行為が頻発しており、その遠因は森友学園関連の公文書、公的記録の改ざんにあると言っても過言ではなさそうだ。これでは真面目に、誠実に行政に携わっている公務員が気の毒すぎる。それ以上に問題は、国民が内閣や行政、政権与党の言うことを信じられず、政治、行政不信に陥り、将来不安が募るようになることだろう。そうなると政府は、逆に規制、罰則等を強化し、警察権力や軍隊を強化し、力で押さえようとする方向に走り、恐怖政治や力の政治に向かう恐れが強くなる。メデイアや言論界等はこのような事実を公正に報じ、国民に知らせる役割があるのだろうが、最近これらが劣化して来ているようにも見える。
 また本来であれば、その責任者が誰であるにせよ、公職はもとより、公の立場、ポストを辞し、きちんと政治責任をとるよう促すべきではないだろうか。
 2、公文書改ざん等を擁護した財務相、内閣官房副長官(当時)の責任
公文書改ざんが行われ、それを擁護し続けた当時の財務相や内閣官房副長官の立場で首相の意向実現に努力し、擁護し、その後党や内閣で要職を得ている政治家も、やはり本来であれば、それぞれ公的なポストを辞し、政治責任を明らかにすべきであろう。(2021.12.17.)

なお、この問題の経緯等に関するこれまでの評論を参考までに再掲する。
<森友学園公文書改ざん問題、新証拠で再審査か!(再掲)>
 国有土地を常識外の低価格で売却しようとしていた森友学園問題で、公文書の改ざんを実際に行い、自殺した近畿財務局の職員(当時国有財産管理官)の「手記」が同職員妻により公開され、生々しい手記の内容と共に週刊誌が報じた。
遺族側は、改ざんを指示したとされる佐川理財局長(当時)と国(財務省)に対し民事訴訟を起している。民事訴訟に際し、同手記の公開に踏み切ったと思われる。
公務員は公務中の活動につき退職後その責任を問われないとしている。他方政府(財務相側)は、改ざんを強いられ自殺した職員が残した記録と政府の考えとは一致しているとして、再調査はしないとしているが、それは財務省(佐川元理財局長)が近畿財務局を介して同職員に改ざんを執拗に強いたことを認めたに等しいので、国家(財務省)責任は免れそうにない。
1、「新証拠」となる改ざん指示を受け自殺した職員の「手記」
同手記によると、森友学園側への超低価格での国有地売却に安倍首相夫人の影響が国会で問題になり、首相がそれを強く否定したことから、超低価格での国有地売却の経緯を記した公文書(本部財務省理財局への超低価格での売却に繋がる報告、申請書類などと思われる)を改ざんすることになった模様であるが、その指示は「すべて、佐川理財局長(当時)の指示」と明記され、また直属の上司である「近畿財務局長に報告したと承知」とも記されていると報じられている。近畿財務局への具体的な指示は本部理財局よりなされたものであろうが、指示は、「資料は最小限にする」、「できるだけ資料は示さない」など詳細で、関連文書の改ざんは佐川理財局長(当時)の指示により組織的に行われたとみられる。
 ‘死人に口なし’とは言われるが、上層部より指示を受け、既に決済された公文書を改ざんした職員が残した「手記」であれば、この事案の「新たな証拠」と言える。
森友学園問題で、不当に安い価格での国有地売却により国に損を掛けた背任の疑いや公文書改ざん、関係文書・資料の保存期限内廃棄等が疑われたが、当時この事件を担当した大阪地検特捜部の女性特捜部長が佐川元理財局長を不起訴としたが、その後間もなく函館地検に転勤となり、昨年末に大阪地検の次席検事に栄転しているようだ。本件は、検察審査会での再審要請についても不起訴とされている。
 改ざんした職員が残した「手記」という新たな証拠が明るみに出た今日、捜査のやり直しが検討されなくてはならない。

 2、財務省の再調査は不可避か!
 この「手記」に関し問われ麻生財務相は、2018年6月に財務省の調査は公表されており、「手記と調査報告書の内容に大きな乖離があると考えていない」と述べ、再調査は今考えていない旨明らかにしている。安倍首相も再調査は必要ないとしている。
 しかし「手記と(財務省)調査報告書の内容に大きな乖離がない」とすると、財務大臣は佐川元理財局長の指示で公文書を改ざんし、多量の関係文書を廃棄させていたことを知っていたことになり、事態は深刻だ。いずれにしても「手記」
が、佐川元理財局長の指示であったこと、及び、関連公文書を改ざんし、本来の文書類が廃棄されていることが明らかになった以上、再調査は不可避のように思われる。

3、公文書の廃棄、改ざんの前例としてはならない森友学園事件
この森友学園事件で公文書の保存期限内廃棄、国会や検察はもとより、マスメデイアやコメンテーター等が改ざんを見過ごしてきたことが、その後の防衛日報の隠蔽、加計学園問題など、更には「桜を見る会」での招待者リストの廃棄、データの破壊等を招いているのではないだろうか。
それをどこかで止めないと、善意の公務員が不正を強いられ、不幸の連鎖が起こることになると共に、公平、公正であるべき正義は守られず、国家機構や民主主義体制自体が劣化する恐れがある。(2020.3.25.)
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自・公連立政権の7つの失政!? (再掲)

2022-07-31 | Weblog
シリーズ平成の本音―自・公連立政権の7つの失政!? (再掲)
 安倍首相の下での自・公連立政権は、2012年12月の総選挙で大勝し、5年弱になる。自・公両党で、衆議院で3分の2を上回る多数を占め、また参議院でも多数を占めているので、どのような施策でも実現出来る状況にありながら、この5年弱で3回目の衆院総選挙が実施されるという異常な事態になっている。
 自民、公明の両党は、この間の経済回復を中心とする‘実績’を強調しているが、輸出、観光産業など円安メリットで局部的な経済回復が見られるものの、国民の将来不安は増大し、消費は低迷するなど、国民が期待する改善、改革はほとんど行われておらず、7つの失政が行われている。
 1、モラル失政―政府・行政の内部統制崩壊
 森友学園問題、加計学園問題と防衛省日報問題では、首相や閣僚が事実を語らず、その上官邸の人事権を背景として、官僚幹部は嘘をつき、記憶を失い、公文書の隠ぺい、廃棄を行わざるを得ない状況になっている。この3つの問題で起きていることは、行政組織、公務員管理職等の基本的な倫理、内部統制の低下にかかわることであり、短期的な問題ではない。このままでは、行政各部が時の政権を擁護するために嘘をつき、関係資料やデータを隠し、廃棄することが容認されてしまう。口先でもっともらしことを語っても、嘘っぽく聞こえる。行政への信頼を著しく失わせ、モラル失政とも言うべきであり、その意味で戦後最低、最悪の政権と言えよう。
 首相は、国民の背後で、なぜ森友学園の復古的教育方針に当初好意的であったのか、なぜ加計学園の獣医学部を新設すべきなのかなどを説明し、国会を通じ国民の理解を求めるべきであった。そうすれば賛否はあろうが、国民の背後で何をしているのか分からないという不信感は生まれなかっただろうし、今日のような政府中枢部におけるモラルの失墜はなかったであろう。
 これは、安倍政権による憲法軽視の姿勢にも繋がる。安保法制についても、一部規定については多くの憲法学者も疑問を呈しており、‘強行採決’は避けるべきで、もっと良く国民の納得を得る努力をすべきであったのではなかろうか。
また臨時国会についても、憲法は‘いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は召集を決定しなくてはならない’(憲法第53条)と規定しており、これは内閣の義務であり、開催自体に内閣の裁量権はない。2016年11月にも要求があったが開催されなかった。今回も、審議もせず、冒頭解散となった。権限の乱用とも言える。
 衆院解散権についても、首相の‘専権事項’とされているようだが、議員は4年の任期で国民に選ばれているので、基本は4年間の任期をまっとうするのことが国民の信託に応えると言えるところであり、首相が恣意的に頻繁に解散し、議員の任期を縮めて良いものではない。こんなことをしているから、国政は停滞し、議員が育たないのであろう。マスコミやコメンテーターなど有識者が、首相の解散権に注文を付けないことは奇異であり、昨今指摘さているマスコミ力の低下、マスコミの商業化の結果とも言えるのではないだろうか。国民が、首相の解散権行使にノーを突きつけるのも国民の意思表示の一つとなろう。
 今回の総選挙で自・公連立政権側に票を与えることは、内閣が嘘をつき、それを擁護するため、官僚が嘘をつき、公的文書を隠し、廃棄することを容認することにも繋がることに、有権者は危機意識を持って臨む必要がありそうだ。

 2、安全保障・外交失政―前のめりの‘積極的’軍事優先姿勢
 安倍首相は、総選挙の理由として、北朝鮮の脅威を挙げ、‘圧力を強化して、北朝鮮に政策を変更させる’とし、その姿勢につき国民に信を問い、団結して当たるとしている。多くの国民にとっては、それなら何故国会を解散するのか意味が分からないところだが、国民に具体的に対応策を説明することなく何をしようとしているかが大いに疑問だ。
 そもそも‘圧力を強化して、北朝鮮に政策を変更させる’としており、9月に国連安保理は経済制裁の強化が採択されているが、首相が圧力強化を強く言えば言うほど北朝鮮は反発するだろう。朝鮮戦争は、現在休戦状態であるが、米・韓両国と北朝鮮は現在でも敵対関係にある。日本は、朝鮮戦争の当事者ではないので、日本国民の安全のためにも、それに首を突っ込む必要はない。しかし安倍政権の度重なる強硬発言と米国との軍事同盟強化から、北朝鮮は、日本列島全体をターゲットとし、‘核兵器で沈める’と言い始めている。日本全体が北朝鮮の核のターゲットとされたのは今回が初めてであり、日本の安全にとっては、最悪のシナリオだ。
 北朝鮮は、日本が何を言おうと、核、ミサイル開発、実戦配備の政策を変えることはないだろう。経済制裁の強化をしても、少なくても数年は開発は継続できるであろう。
 では、安倍首相及びそれを擁護する自民、公明両党は、圧力で北が政策を変えなかったらどうするというのか。自衛行為の一環として、自衛隊による北朝鮮の軍事施設等の攻撃をも可能にするのか。日本自体が核武装するというのか。
 安倍首相は、トランプ大統領と頻繁に連絡しているが、国民に事前に説明することなく、国民の背後で、米国の軍事力行使と自衛隊による米軍支援を容認している恐れもある。だから選挙で具体的には説明せず、いわば白紙委任を取ろうとしているとも考えられなくもない。脅威を煽り、頻繁に選挙を行って権力を強化するという、独裁政権構築の典型的な手法とも見られ、注意を要する。
 自・公両党を選挙で勝たせ、再び政権につかせることは非常に危険であろう。安倍政権は、選挙で勝ったことを前面に出し、ますます独裁化し、これまで以上に憲法を軽視し、権力を強化し、強硬手段を打ち出す可能性がある。国民は、目先の甘い水に再び騙されてはならないようだ。
 また安倍首相は、第2次世界大戦の時の内閣の責任や戦争遂行者が祀られている靖国神社参拝など、歴史認識の問題で中国、韓国とは関係を悪化させている。‘積極的平和外交’と謳って、日米同盟を基盤として軍事協力の広域化を図っているが、その流れの中で、安倍首相は、2015年1月、エジプト等の中東諸国を訪問中、最初の訪問国エジプトにおいて演説し、人材開発、インフラ整備などの名目で、「ISと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する身代金要求と殺害予告が行われ、その後2人の日本人は殺害された。その後も、ISグループによる日本人襲撃などが生じている。
 現在、自民、公明連立政権が進めている安全保障政策は、日本の安全と平和のためと声高に言われているが、一定の効果はあるものの一面的であり、逆に危険を呼び込み、国民の危険を増大させる結果となっている。日米関係の強化、拡大は今後とも日本外交の軸となろうが、軍事同盟化の強化、拡大を図るのであれば、核兵器大国米国の世界戦略と連携することより、危険も増大することを国民に十分説明の上進めることが望まれる。核兵器禁止条約に関する国連決議において、日本が棄権するなら兎も角、米国の核抑止に依存しているため‘反対’票を投じたことも疑問とする向きもある。
 日米関係の強化は望ましいが、リスクを最小限にしつつ、国民の生命と財産を守るためにどのような軍事、安全保障体制を築き、どのような国家関係を築いていくかは、国民の選択次第と言えよう。日米関係の強化、相互信頼の深化の上では、日本の野球選手などの米国での活躍が最大の功労者とも言える。

 3、社会保障失政―国民の負担増のみを求める国民酷使政策
 自民・公明連立政権は、民主党政権時代に「社会保障と税制の一体改革」に同意し、また議員定数の実質的削減にも同意し、2012年12月の総選挙で勝利し政権の座に返り咲いた。しかしいずれについても進んでいないばかりか、消費増税を実施し国民に負担を求めた一方、社会保障については反福祉の福祉切り、国民酷使政策に向かっている。
 そもそも多くの国民は、社会保障の改善、向上のためなどに消費税が増税するのであれば、国民の負担が増加するのも仕方ないと考えていた。しかしその期待は見事に裏切られている。自・公連立政権の下では、年金などの受益者へのサービスや給付額の改善は行わず、逆に個別に利用者、受給者の「負担増・給付減」を強いており、国民を騙しているに等しいのではないだろうか。
それが年代を問わず、国民の将来不安を高めており、全般的な消費抑制につながっている。

 4、行・財政改革先送り失政
 年金が破たん状態になっており、また医療などの社会福祉支出が財政を圧迫し、今後更に財政が厳しくなることが予想されるのであれば、政府がまずやらなくてはならないことは、抜本的な経費節減、無駄の削減ではないだろうか。どの事業、どの企業でも、業績が振るわず、赤字が増加し破たん状態になれば、まず人件費、管理費などのコスト削減を行うのが常識だ。
 国民に更なる負担を強い、年金やその他社会保障サービスの抑制をする前に、両院の議員定数の大幅削減や議員歳費・諸手当の引き下げ、政党補助金や政務調査費の廃止などを実施して、国民に誠意を示すべきであろう。また少子化を前提として、独立行政法人や特殊法人、地方自治体を含む公務員・準公務員の段階的な削減など、定員の削減や給与の実質的引き下げを実施すべきであろう。定員削減が出来ないのであれば、3~5年間で人件費を含む行政管理費の3割削減を実施することを真剣に検討して欲しいものだ。定員と給与のいずれを削減するかは各省庁に選択させればよい。人件費を除く管理費全般についても、公務員宿舎他国有財産の売却などにより、2020年度までに総額で4割程度を段階的に削減することをまず実施すべきではないのか。
 そもそも自民、公明連立政権は、言葉では国民に期待を持たせ、3分の2の多数を維持し、なんでも実現できる状況でありながら、国民に対する約束をほとんど守っていない。弁解の余地のない行・財政改革先送り失政だ。
 その上首相は、今回2018年10月に10%への消費税の再々増税を実施することを明らかにした。再々増税も、その使途如何では容認されよう。安倍政権は、2020年までの財政健全化を目標として示していたが、この方針をまたまた先送った上、再々増税分の使途を変更したいとした。膨大な国の借金の返済努力を止め、幼児教育の無償化など子育て支援に充てたい旨提案した。選挙を前にして約2兆円規模の大盤振る舞いだ。
 しかし騙されてはいけない。日本の公的借金は既に1,060兆円超、国民総生産の2年分以上になっており、そのため毎年多額の利子支払いを強いられている状態だ。安倍政権は、2020年までの財政健全化を目標として示していたが、この方針をまたまた先送った上、子育て支援などとして大盤振る舞いをして、国の借金や利子支払いを更に増やそうとしている。子育て支援を受けた世代は、将来更に高額の負担を国から強いられることを認識すべきであろう。

 5、規制温存失政と経済・金融部門での失政
 アベノミクスは、輸出、観光産業など、局部的には若干改善しており、一定の評価は出来るが、実態は、通貨の大量供給による円安誘導と米国経済の回復が主要因であり、規制改革や法人税の減税などは、口先ばかりで、意味のある大胆な施策ほとんど実施されていない。戦略特区制度も、規制がベースであり、それを更に地域的に屋上屋を加えているに過ぎない。その弊害は、加計学園問題に如実に表れており、‘えこひいき’の温床となる。規制は、一律に緩和、撤廃しなければ効果はなく、公平でもない。
更に金融政策では、2009年頃より金利が実質ゼロとなっている上、物価上昇と手数料を加えると既に9年間も実質マイナス金利になっており、一般国民、特に退職をした者や年金生活者にとっては、預金から利子が得られない状況が長期に続いている。更に、日銀はマイナス金利という経済の基本原理に反する政策をとっており、個人や金融機関、企業等から利子機会を奪っている。消費者にとっては、生活防衛の観点から消費を抑える以外にない。金融政策失政と言えるだろう。

 6、選挙制度改革先送りの失政
 一票の格差是正については、最高裁の度重なる‘憲法違反状態’との判決を受けて、最低限ではあるが微調整をしており、一定の評価はできる。しかし抜本的な改革は先延ばしにされている。有権者の権利の公平は何時図られるのか。
また参議院の廃止や議員定数の抜本的な削減による質の確保が不可欠のようだ。地方議会を含め、議員定数の3割削減などの対応により、議員制度のスリム化を実現する一方、それを財政健全化や新たな政策への財源とすべきであろう。
更に政党助成金は弊害が多い。そもそも有権者の4割前後は無党派層であり、政党助成金は存在理由に欠け、税金を使用することは不適切である上、党の変更、消滅のたびに、政党助成金の行き先が問題になっている。政務調査費・政務活動費や連絡費などについても、廃止を含め検討されるべきであろう。

 7、党利党略優先の失政―国家、国民の利益、安全セカンド
 今回の解散総選挙も、モリ・カケ問題で窮地にある中で、野党が乱立し弱体化している内に解散総選挙をし、野党つぶしをする思惑が背後にあると見られている。国家、国民の利益、安全は二の次になっている。
 これでは行政も、国民を向いて仕事はしない。
(2017.10.10.)
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「国葬」に法令上の根拠は無い

2022-07-31 | Weblog
シリーズ本音トークー「国葬」に法令上の根拠は無い
 <はじめに> 政府は、故安倍議員(元首相)の「国葬の儀」を内閣が決めるとしている。その法的根拠として内閣府設置法(第4条第3項第33号)を挙げ、「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌を除く)」と規定してあるとしている。これは単に内閣府は、内閣で決めた儀式の事務を致しますとしているだけで、内閣が国葬を決められるとは一切言っていない。内閣法制局は、あとは内閣で故安倍議員(元首相)の国葬の儀を行うことを決めて下さいと言っているようだ。しかし全額国民の税金を使う以上、「国葬」を内閣が決定して良いという法的根拠が必要だろう。(2022.7.20.追記)

 岸田首相は、故安倍晋三元首相の国葬を行うことを明らかにしたが、9月に武道館で行われるようだ。
 同元首相の死を悼みご冥福を祈ると共に、同夫人に心からのお悔やみを申し上げたい。しかし増上寺で葬儀は行われ1,000名内外の関係者も参列し、別途一般国民向けの献花台が設けられ多くの国民が献花し涙した。
 悼む気持ちに変わりは無いが、今更国葬と言われても、一体あの国民の涙は何だったのだろう。「国葬」となると全額政府予算で国民の税金が使われることとなるが、国葬について法令上の根拠はない。旧帝国憲法のもとで大正天皇により「国葬令」が出されたが、現行の新憲法となった後、1947年12月に失効し、それに代わる法令はない。
 法令上の根拠のない「国葬」を内閣だけで決定することは出来ないと見られ、また法令上の根拠無く税金を使ってよいのだろうか。少なくても国会の承認が必要と思われるのだが。国葬となるとコンセササス承認が望ましい。
 戦後、1967年に故吉田茂元首相に例外的に国葬が挙行された。吉田首相は1953年のサンフランシスコ平和条約などを実現し、戦後の米国を中心とする米国による占領統治が終わり、新憲法の下で独立国として国際社会に復帰した出発点となった。例外的な措置も理解できる。
 安倍元首相と業績を比較するわけではないが、同元首相は在任期間が最長とされるものの、その間の政策においてアベノミクスは成功とは言えず、家計所得も年金も減少し、金利はマイナスとなり公的債務が1,200兆円に膨れ上がり、そのレガシーは現在物価の高騰と円安として現れている。外交面では精力的に外国訪問され、日米関係は促進されたが、北朝鮮拉致問題、北方領土問題などは何ら前進せず、靖国参拝問題などで中国と韓国の関係悪化を招くなど、評価は分かれる。他方同元首相は、森友学園への国有地安値払い下げ問題で同元首相夫妻の名が記載されている公文書書き換えと書き換えを指示された担当公務員が自殺しており、民事訴訟では公文書書き換えが認定されている。また「桜を見る会」への多数の地元有権者の招待と前夜祭での参加費肩代わり問題などに関係し、各種の訴訟が提起されている。卓越した政治家だが、評価が分かれても仕方がないように見える。(2022.7.15.)
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マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版)

2022-07-26 | Weblog
マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版)
 <はじめに>2021年11月10日、新内閣発足に伴い、与党自民党と公明党がマイナンバー普及のため、総額2万円のポイントをそれぞれの段階で付与することで基本合意した。マイナンバーカード実施から6年近くになるが、登録率は未だに40%程度でしかない。
 その普及のため、2万円のポイント付与をこの時点で行うことは、この制度自体への国民の理解が進んでおらず、広範囲の個人情報の国家把握、相続税を含む徴税強化、情報流出と悪用、及び煩雑な操作・行政事務などが危惧されていることを如実に示している。行政当局は、その普及のため更に税金を使うのでは無く、税申告に関係する所得や個人財産を含む広範囲な個人情報を包含するマイナンバーは、制度設計上の誤りであり、国民に理解されていないことをただちに認め、適用範囲を社会福祉関係に限定し、国民の理解を得やすいよう、簡素化することが望ましい。このまま税金を使って奨励・普及することは2重の不効率であると共に、何時起こるかも分からない大災害の時の安否確認や救済・支援には中途半端にしか役だたないこととなるので、早急な対応が必要となっている。大災害は待ってはくれない。
 
 コロナ禍対策のため実施された一律10万円給付が、4月30日の第1次補正予算成立を受けて実施に移されたが、一律給付が最も早く配賦できるとの触れ込みにも拘わらず、日時を費やし、7月になってようやく見通しがついた。この配賦の遅れの原因の1つとしてマイナンバーの普及率の低さ(約16%)に加え、申請システム設計の複雑性などが指摘された。そのため総務省を中心として、銀行口座登録の義務化や個々人の医療関係情報の記載などによる適用分野の拡大などが検討されている。
  1、一律10万円給付の遅れはマイナンバー制自体の問題ではない
マイナンバーの普及率は、実施から4年半以上経過しているのに16%程度の低率に止まっている。従って、仮にマイナンバーの利用により迅速に給付できたとしても、全体の16%程度しかカバーできなかったはずである。残りの84%が問題だったということになるが、実際はマイナンバーも機能しなかったことが、マイナンバーに労力が集中され、それが煩雑で機能しなかったため、郵便等への対応が遅れた事による。マイナンバーが複雑で国民に受け入れられていないことが明るみに出たと言えよう。
 米国は、大統領選挙の年でも有り、日本に先立ち一律給付を実施したが、ソシアルセキュリテイ・ナンバーに基づき、「小切手」が直接各個人に送られている。ソシアルセキュリテイ・ナンバーは、米国民や米国で働く者が誰でも加入できるもので、これがないと将来的な年金と公的機関からの社会保障が得られないのでほとんどの人が所持している。
 恐らく、日本も郵送等により実施していたら、もう少し円滑であった可能性がある。行政が普及率の低いマイナンバーに固執したことが一律給付を阻害した形となった。行政が、マイナンバーの普及率が16%でしかないことへの認識不足とこれに固執するミスジャッジを認識することが必要だろう。

2、国民のためではないマイナンバー!
 政府(総務省)は、一律給付金の配賦のもたつきへの反省から、銀行口座記載の義務化や、医療診療関係情報の記載などの分野の拡大などを検討している。同時に普及促進のため、新加入者がキャッシュレス決済のカード等を登録するとポイント付与(マイナポイント)とテレビなどでの普及を行っている。
 政府の認識が大分ずれているのではないだろうか。実施後4年半以上経って普及率が停滞しているのは、国民側が、メリットを余り感じない一方、機微な個人情報の流出や国家管理の強化を恐れているからであろう。政府側がまずこの点を理解しない限り、改善、改革などと行ってみても、国民の財産把握を含めて国家管理し易くする所詮政府寄りのもので、システムが複雑化し、関係官庁には好都合であろうが、国民にとってはほとんどメリットとはならないものになってしまう恐れがある。関係官庁はまず、国民が不安、不要と感じている諸点をそぎ落とし、国民に不安がないようにすることが求められる。
 マイナンバーには既に、住所や本籍、家族構成、年金、健康保険や一部銀行口座・カード情報、所得、税金関連情報等が入っている。これだけでも外部に流失し、犯罪グループの手に入ったら、大きな被害を受ける可能性がある。マイナンバーは法律上加入「任意」としているが、税の申告に当たっては記入事項とされ、また銀行口座や証券投資の際には執拗にマイナンバーを執拗に照会してくるので、登録した人は納税申告関係や銀行口座、不動産を含む資産情報など、個人にとっては大変重要な情報が記録されることになる。
 現状でも、マイナンバーを日常的な支払いやポイント記録などに使用すると、流失や紛失の恐れが高くなるので、持ち歩くことは大変危険であろう。
 更に総務省は、決済サービスのためキャッシュレス使用を登録するとポイントが付くマイナポイントが9月1日より実施されている。そのためにテレビ広告やポイント付与のため、税金を使うということであり、筋が違う。国民がマイナンバーに利点を感じれば加入するだろう。総務省がポイント付与をしてまで普及を図っている事実こそが、国民がマイナンバーに利点を感じていない証拠である。いずれにしても納税関系では、マイナンバー保持者が亡くなると、銀行口座、証券、不動産等があっというまに凍結され、残された者は一円も自由にならず、銀行口座については少額の引き出しは可能になったが、諸費用捻出に苦労することにもなる。
 また医療・診療情報も入れることが検討されているが、医療・診療情報は非常にプライベートなもので、他人に見られるのは気が進まない。ましてや政治家や入社試験、管理職候補などについては、医療・診療情報が万一にでも外部に流出すると昇格・昇進等にとって致命傷になる恐れがある。

 3、現在のカードは官庁のためのユアーナンバーでしかない!
しかし現在のマイナンバーは、税金関係の役割が強く、投網のごとく税申告者を把握し、確実に徴税するために好都合になっている。5年に1度、国勢調査が実施されているが、国勢調査で記載された個人情報は国税庁、警察・公安には明らかにされず、徴税や犯罪調査には利用されないことになっている。国民の協力を得やすくするためだ。
現在のマイナンバーは、国税庁(税金)を含め全ての行政分野が対象で、対象で所得、年金・医療保険、銀行口座、証券、不動産などが全ての個人情報が記載される。国民には年金掛け金納付、健康保険料納付や納税義務があることは分かっているが、このように網羅的に資産状況が国家に把握され、義務の履行が管理、監視されることになると、国民の国家管理の色彩が強くなる。その上情報流失の危険性がある。少なくても国勢調査同様のものとし、国民の生命、安全を守ること中心とする個人の存在基盤と福祉分野に目的を絞り、抜本的に簡素化することが望ましい。
また情報管理のため各種の防護措置が講じられてはいるが、それは逆に操作を複雑にしている。1つ入力を間違えると前に進められなくなり、複数回誤入力すると凍結されてしまい、解除に時間と労力が掛り、悩まされることになる。結局は、利用者の手間や負担を増やし、行政側を楽にするシステムでしかない。その意味でも現在のマイナンバーは、行政のためのユアーナンバーでしかない。
関係官庁の担当官や専門家が集まり、官庁側に必要な個人情報を網羅し、その上に本人確認やその他のなりすまし排除のための防護措置を掛けるのだから、普通人には理解困難な緻密で複雑な制度設計、システムとなる。それでなくても各種申請書は複雑で、馴れている人でもなければ記載に手間取る。それがインターネットとなると、各種のチェック措置が加わるので、一般人には操作が複雑で難しくなる。書類によるアナログ世代にとってはなおさらのことだ。

4、国民を守るためのマイナンバー制度に限定すべし
 国民の年金・医療保険などの厚生福祉、緊急時の安全確認など、国民の基本的な権利と行政手続きの簡素化など、国民の福利に絞ったナンバーであれば、国民もこぞって加入し易くなろう。それを支えるのが国や地方自治体の業務であり、義務ともなる。またカバーする分野を絞ることにより、利用者側は普段持ち歩く必要も、情報流失の際も影響が限定され、犯罪グループへの露出度を少なく出来る。それでも米国のソシアルセキュリテイ・ナンバーよりも複雑だが、国民の福利にとって心強いものとなる。そのような改革が望まれる。

5、行政のIT化促進は行政の更なる肥大化、複雑化の恐れ
 IT化は、情報を多量に処理できるので、仕事をどんどん増やし、行政の肥大化を呼ぶ恐れが強く、万能ではない。
(1) IT化とともに、旧来事務の廃止、整理を行うことが不可欠であろう。
同時に、制度設計の簡素化、単純化に常に留意しなくてはならない。
 デジタル化は、一見効率的に見えるが、そのためには膨大な情報入力作業に加え、情報の迅速な更新が必要であり、必ずしも省力化には繋がらない。情報が常に更新されないと適正な情報把握も対応も難しい。国民年金については、ペーパーからデジタルに移行が図られた際に膨大な記録ミスやご記載があり、多くの年金が消えた事例や、年金情報の漏出や犯罪への利用なども見られている。
 行政当局は、情報の入力、更新を直接できないので、外部委託し、その業者は国内外の会社に再委託するなどが通例となっている。そのためには追加的な予算が必要となり、国民の負担となる。
(2)ITにより一律のサービスを確保出来るが、プログラムから少しでも外れるとエラーとなり、凍結してしまうなど、融通が利かず、非常に硬直的、事務的となる。
(3)保秘やデジタル攻撃に留意する必要がある。そのためにパスワード等を加えると、更にシステムが複雑になる。セキュリテイを強化すればするほど、煩雑となり、エラー、凍結なども多くなり、利用者の負担が大きくなる。
(4)公文書、公的文書類の保存・管理の問題が深刻だ。森友学園問題での公文書改ざんや自衛隊の日報問題、或いは「桜を見る会」などでは、コンピューターに蓄積された記録でさえ廃棄されたと報告された。そのようなことはほぼあり得ないが、問題が生じた時にすべての関連コンピューターを押さえ、調査できるようにするなど、文書管理が非常に難しくなるので注意が必要だろう。重要な文書は、アナログの紙で保存する必要もあろう。 

6 、ITの脆弱性
 更にIT化により電気と電波への依存が大きくなり、電気や電波という生活インフラがダウンするとITは動かなくなる。大規模災害が起こり、基礎的生活インフラが破壊されると、麻痺状態になることはこれまでも経験している。またシステム管理・維持と共に、サイバーテロ等への備えも必要となり、それに問題が生じるとITは作用しなくなる。どんなにセキュリテイを強化しても、それはいずれ誰かに破られる。これらのITの脆弱性を認識する必要がありそうだ。
 従ってITへの過度の依存は国民生活全般を麻痺させる可能性を高めることを十分認識する必要がある。
 マイナンバーカードの安全と普及のためには、機能を国民の本籍と住所に基づく福利厚生に限定し、機能を分散することが不可欠だ。
 (2020.9.1.&9.19.及び2022.2.15.加筆)
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企業の内部留保が過去最大でも賃金上がらず!!

2022-07-26 | Weblog
シリーズ本音トーク―企業の内部留保が過去最大でも賃金上がらず!!
 就労者の実質所得が低下し、実質家計所得が減少する中、企業が内部余剰をため込み続けている。
 財務省は、9月2日、2018年度の法人企業統計で、企業の内部留保(利益剰余金)が7年連続で過去最大を更新したと発表した。金融業、保険業を除く全産業ベースで、17年度比3.7%増、総剰余金463.1兆円を記録した。分野別では、製造業の内部留保が6.7%増となり、潤沢な資金を蓄えている。
 2011年3月の東日本大震災で、輸出をけん引していた製造業が打撃を受けた上、オバマ政権の下で対中国元でドル安誘導したことにつられて円高が進み、輸出が停滞した。行き過ぎた円高は、2012年10月頃より円安方向に動いていたが、2013年1月、安倍自・公連立政権が発足したのに伴い、「異次元」の金融緩和による円安により、輸出を中心とする製造業が回復した時期と一致する。しかもこの間、2014年4月に消費税が8%に増額され、消費者が消費抑制に向かっていた時期に、企業は内部余剰を積み上げていたことになる。
 1、日本の国民総所得にほぼ相当する企業の内部留保は過剰!
 企業の内部留保は、企業の総収益から原材料費、機材費や給与、役員報酬、配当、税金などを引いた利益剰余金であり、企業が自由に使える資金である。その企業内部留保だけで日本の国民総所得に近い水準を継続しているのはいかにも過剰だ。家計所得が低迷する中、企業の一人勝ちと言える。また政府も消費増税により税収が増えている。
 企業としても、事業を継続、発展させるために研究開発や新規投資を行う資金を留保して置くことは不可欠であろうし、為替変動や景気変動に備えて若干の積み立てをして置くことは必要であろう。しかし就労者の実質所得が低下し、実質家計所得が減少し、消費増税で国民負担が増加している中で、企業のみが内部余剰をため込み続け、一人勝ち状態であることは、経営者の保身、社会責任意識の欠如と言えないだろうか。

 2、企業経営者は企業の存続以外に株主及び従業員に応分の責任を負う
 企業経営者は企業或いは事業が継続できれば良いというものではない。資本面で株主、生産やサービス提供において従業員、更に提供した製品やサービスの面で消費者に対し責任がある。
 従って、消費者に良い製品やサービスを提供すると共に、株主、従業員・役員、及び企業の内部留保への利益配分を公正に行うべきであろう。現在、内部留保比率を下げつつ、給与・役員報酬と配当へ今まで以上に増額されることが期待される。
 特に従業員給与については、2008年9月の米国発のリーマンショックに伴う日本経済への打撃を凌ぐため、従業員を派遣社員等の非正規社員に切り替え、解雇しやすいと同時に正規社員以下に賃金を抑え安くしたことが、平均給与所得の低迷、利益余剰金の増加に繋がっていると見られる。
 日本は、世界第3位の経済大国でありながら、労働生産性は欧米諸国に比し、非常に低いことが知られている。それは、単位時間当たりの賃金・報酬が相対的に低いからに他ならない。利益をもっと賃金や役員報酬に配分し、人をもっと大切にすべきであろう。危機を凌いだら、その間苦労をした者を適正に処遇するのも企業の責任であろう。
 また日本の労働生産性が低いのは、例えば元号と西暦という2つの年号の使用が商取引や一般生活の分野にまで残っていることに象徴されるように、古い風習や規則・法令・通達など政府による中央統制経済的な制度・規則が多く残っていることにある。これらのほとんどが、一本化するなり廃止するなりすることができるものであるので、諸制度・規則の簡素化、廃止が不可欠と言える。5年に1度程度、定期的に諸制度の大掃除が必要だ。それがなければ労働生産性は改善しない。

 3、必要となっている企業の社会的貢献意識の回復
 1990年代半ばよりのバブル経済の崩壊、そして2008年9月のリーマンショック以来、企業の社会的貢献意識は後退し、利益剰余金が7年連続で過去最高を記録している今日でも後退したままである。
 企業の社会的貢献意識の改善が待たれる。それは経営陣の責任であろう。
(2019.9.12.)
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「国葬」に法令上の根拠は無い

2022-07-26 | Weblog
シリーズ本音トークー「国葬」に法令上の根拠は無い
 <はじめに> 政府は、故安倍議員(元首相)の「国葬の儀」を内閣が決めるとしている。その法的根拠として内閣府設置法(第4条第3項第33号)を挙げ、「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌を除く)」と規定してあるとしている。これは単に内閣府は、内閣で決めた儀式の事務を致しますとしているだけで、内閣が国葬を決められるとは一切言っていない。内閣法制局は、あとは内閣で故安倍議員(元首相)の国葬の儀を行うことを決めて下さいと言っているようだ。しかし全額国民の税金を使う以上、「国葬」を内閣が決定して良いという法的根拠が必要だろう。(2022.7.20.追記)

 岸田首相は、故安倍晋三元首相の国葬を行うことを明らかにしたが、9月に武道館で行われるようだ。
 同元首相の死を悼みご冥福を祈ると共に、同夫人に心からのお悔やみを申し上げたい。しかし増上寺で葬儀は行われ1,000名内外の関係者も参列し、別途一般国民向けの献花台が設けられ多くの国民が献花し涙した。
 悼む気持ちに変わりは無いが、今更国葬と言われても、一体あの国民の涙は何だったのだろう。「国葬」となると全額政府予算で国民の税金が使われることとなるが、国葬について法令上の根拠はない。旧帝国憲法のもとで大正天皇により「国葬令」が出されたが、現行の新憲法となった後、1947年12月に失効し、それに代わる法令はない。
 法令上の根拠のない「国葬」を内閣だけで決定することは出来ないと見られ、また法令上の根拠無く税金を使ってよいのだろうか。少なくても国会の承認が必要と思われるのだが。国葬となるとコンセササス承認が望ましい。
 戦後、1967年に故吉田茂元首相に例外的に国葬が挙行された。吉田首相は1953年のサンフランシスコ平和条約などを実現し、戦後の米国を中心とする米国による占領統治が終わり、新憲法の下で独立国として国際社会に復帰した出発点となった。例外的な措置も理解できる。
 安倍元首相と業績を比較するわけではないが、同元首相は在任期間が最長とされるものの、その間の政策においてアベノミクスは成功とは言えず、家計所得も年金も減少し、金利はマイナスとなり公的債務が1,200兆円に膨れ上がり、そのレガシーは現在物価の高騰と円安として現れている。外交面では精力的に外国訪問され、日米関係は促進されたが、北朝鮮拉致問題、北方領土問題などは何ら前進せず、靖国参拝問題などで中国と韓国の関係悪化を招くなど、評価は分かれる。他方同元首相は、森友学園への国有地安値払い下げ問題で同元首相夫妻の名が記載されている公文書書き換えと書き換えを指示された担当公務員が自殺しており、民事訴訟では公文書書き換えが認定されている。また「桜を見る会」への多数の地元有権者の招待と前夜祭での参加費肩代わり問題などに関係し、各種の訴訟が提起されている。卓越した政治家だが、評価が分かれても仕方がないように見える。(2022.7.15.)
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日銀の金融緩和策、底が抜けた危険な運営!(再掲)

2022-07-26 | Weblog
日銀の金融緩和策、底が抜けた危険な運営!(再掲)
<はじめに>日銀は、2013年1月からの「異次元の金融緩和」を実施しているが、安倍政権が管、岸田政権に変わっても終って、9年間に亘り大盤振る舞いの金融緩和を継続している。欧米各国は、コロナ禍により後退している経済社会活動の浮揚を図っており、消費が戻り始めている一方、人手不足等により供給不足により一部物資が値上がりしている上、石油価格が上昇しており、インフレ圧力が高まっているので、緩やかな金利引き上げを含む金融引き締めに転換している。
日本においても、石油価格の上昇や円安による輸入物資の値上がり、電気料金の引き上げ等により、家計所得が減少している中で1.1%の物価上昇を招いている。日銀は、この状況を「良い円安」、「良い物価上昇」などとしているが、膨大な信用を長期に供給しているにも拘わらず、家計所得は増加していない。日銀は産業優先であり、家計や消費者は重視していないのであろうが、9年間もの長期に亘り一本調子で金融緩和を継続し、所得が上昇しない中での2%のインフレターゲットは、更に家計を圧迫し、消費節約により家計を守るしかない状況を理解していないのであろうか。2%のインフレターゲットは、家計を圧迫するばかりであり、もはや賞味期限切れと言えよう。(2022.1.19.補足)

 日本銀行は、2020年6月16日、金融政策決定会合において、「大規模な金融緩和政策の維持」を決定した。日銀は、安倍自・公政権において、2013年1月以来大幅な金融緩和策を継続してきたが、新型コロナウイルス対応として3―5月に一層の緩和策を導入し、更に企業への資金繰り支援として総枠を75兆円から110兆円に大幅に引き上げた。
 資金供給の主要なものは、市中(銀行や信託投資会社等)からの「株価指数連動型上場投資信託(ETF)」の買い入れであるが、既に2013年から大規模な買い入れを実施し、市中に資金を放出してきており、それが株価や信託投資証券の価格を押し上げて来た。流動性過多、金余りの中で、資金供給の総枠110兆円に引き上げた。それがコロナ大不況の中で、意味の分からない株高に繋がっている。
 日銀は、金利もマイナス金利としており、大幅な量的緩和も7年間続け、実体経済の伴わない金余りの中での大幅緩和であり、金利面でも量的にも節度を失い、底が抜けた金融緩和政策といえよう。
 日本経済は、世界経済の大幅低迷の中で、大幅な後退が予想されており、その中で実体経済に裏打ちされない形で株価と信託証券などの価格が人為的につり上げられている形であり、危険な状態となっている。何かのきっかけで、大幅に下落する恐れがある。個人投資家としては非常に危険な状態にあることを認識する必要がありそうだ。
 日銀総裁は、「投資家のリスクテイクの動きが弱い」などとコメントしているようであるが、実物経済を理解していないか、その知識はあるが善意の投資家の損失など気にも掛けていない発言としか考えられない。まともな経済人であれば、大損が予想される中で投資はしない。(2020.6.18.、2022.1.19.冒頭補足)
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世界の公的債務激増、世界経済への暗雲

2022-07-26 | Weblog
シリーズ本音トークー世界の公的債務激増、世界経済への暗雲
 世界通貨基金(IMF)の報告書によると、2020年の先進工業諸国(日米欧など27か国)の国民総生産(GDP)に対する政府の債務残高の比率が、前年よりも23.5ポイント上昇し、128.2%になるとしている。第2次世界大戦直後の1946年に記録した124.1%を上回る。
 同報告書によると、世界各国の武漢発コロナウイルス禍に対応する経済対策の総額は、少なくとも11兆ドル(約1,170兆円)に達する。財政出動(減税を含む)の対GDP比率では、米国が12.3%、次いで日本(11.3%)、ドイツ(9.4%)、豪州(8.8%)、ブラジル(6.5%)、英国(6.2%)の順となっている。
武漢型コロナウイルス禍は安全なワクチンや効果的な治療薬が実用化されるまでは継続すると見られ、米国初め多くの国が追加的経済対策を検討、実施する可能性が高いので、各国の公的債務残高は更に積み上がる可能性が高い。IMFは一方で未だ危機を脱したわけではなく財政措置は必要とし、感染拡大の収束が見通せるまでは景気下支え策が不可欠としているが、際限なく公的債務残高を増やすことは世界経済にとり危険であり、難しい舵取りが必要になっている。
 1、際限ない公的債務の積み上げは国民への負担への転嫁となり懸念大
 問題は、こうした政府支出が税収から賄われている限り問題はないが、国・
公債などによる政府の借金により捻出される場合が問題となる。
 日本の場合、公的債務総額は既に1,114兆円を超え、国民総生産の2.4年分を超える膨大な借金を抱えている。更に2020年度予算では、コロナ禍対策で2度の補正予算を組み、それだけで約25兆円規模の国債を発行し、本予算を含め何と約180兆円にも及ぶ戦後最大の国債を発行し、世界の借金大国の座を不動のものとしている。
 世論調査では、財界や自・公与党支持層を中心として、これまでの経済政策の継続を希望する向きが強いようだが、それは国民総生産の2年半分を超える政府の借金で賄われており、目先の支持は得られるだろうが、いずれ国民が税や高インフレなどにより負担を強いられるもことになる。国民はそれを十分認識する必要があろう。
 2010年1月にギリシャで従来よりの放漫財政が表面化し、債務残高も国内総生産の113%に達していることが明るみに出るなど、経済危機に陥り、EUから緊縮財政が求められた。結局、一番困るのは国民だ。武漢発のコロナの感染拡大後、既にレバノンやアルゼンチンが債務不履行に陥るなど、世界各国で財政危機に陥り始めている。財政の規律、財政の健全化に留意する必要がある。

 2、IMFが語っていない膨大な信用増発による世界インフレの危険
 更に、IMFの報告書に今回書かれていないことがある。それは中央銀行等による信用の増発だ。アベノミクスでは、中央銀行による「異次元の金融緩和」が行われ、下がり始めていた円安が更に円安となり、輸出やインバウンドの外国人観光客などで関連産業が潤い、株価も上昇し、一定の経済効果があったと言えよう。金融緩和は2008年のリーマンショック後、継続して取られてきた政策で、アベノミクスで金融が更に緩和され、7年8ヶ月に亘り一本調子で金融緩和が維持されてきた。金利もマイナス金利となったままだ。更に1月以来のコロナ禍対策の一環で金融緩和が一層強化され、もはやタガが外れ、無制限に膨大な信用供給が行われている。株価はコロナ禍以前の水準を取り戻し、一部の機関投資家や株屋、大株主などにだぶだぶと金が溜まっている。他方、実体経済は年率マイナス30%前後が予想され、財政支出と金融緩和の恩恵を受けている企業を除き、ほとんどの企業が大幅な赤字予想となっている。航空、観光、外食産業などは減収にあえいでいる。信用が増発されても金の行き場がないので株やゴールド、骨董などに流れるのも分からないではない。
そんなことが長続きする訳もないし、一部の機関投資家や株屋、大株主などにだぶだぶと金がため込まれているのも問題視されそうだ。またハイパーインフレの危険性もあり、銀行預金を含む金融資産は紙くず同然になる恐れがある。国債なども紙くず同然になろう。

 3、財政規律、金融規律の回復が不可欠
 本来であれば、安倍自・公連立政権の間に財政・金融規律を回復し、財政の健全化と金融の正常化が図られるべきであったのであろう。自・公連立政権は国会で圧倒的な多数を保ち、権力を維持してきたので、それが出来たはずだ。一般家庭でも、将来の困難に備え、貯蓄をし、節約をする。それを行っていた人はコロナ禍もなんとかしのげる。国家レベルでは全国民の生活のためであるので、財政・金融規律を回復し、財政の健全化と金融の正常化は不可欠であったのだろう。
 もっとも、国民が選んだ政権が行った政策とも言えるのだが、果たして国民に政策の意図や副作用の危険性、国民に戻ってくる負担などについて公正に伝えられていたか疑問である。
 最近のマスコミの報道や論評などはどうも政権への忖度が強く、企業利益優先で短絡的で無気力に響き、マスコミ力が低下しているように映る。知識人と言われる国・公立の教授等も所詮教職に従事する公務員であるので自然に政府寄りであり、また専門家やコメンテーターなども仕事優先で世論迎合型になるのも仕方が無いのかもしれない。情報番組にお笑い系のコメンテーターが多くなっているが、視聴率稼ぎでしかないのであろう。だが1局や2局であればまだしも、NHKを含むほとんど全局でお笑い系が登場しているので、笑えない。民間研究機関に至っては、ほとんど全てが企業利益優先で、公正な研究機関としての役割を果たしているとは思えない。従って、多くの国民は一定方向の情報や分析、政策の選択肢しか見聞きすることはない状態になっているのではないか。
 それぞれの報道機関が特定政権や政党を支持、擁護する形で報道することは企業体である以上仕方ないことであるが、論調を国民に押しつけるのではなく、対立する意見や選択肢を提示して、国民に選ばせる姿勢が欲しいものだ。それがマスコミ力というものであろう。マスコミ力の低下は、民主主義の発展を妨げる。(2020.9.10.)
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