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シリーズ平成の本音―複雑なだけで貧弱な‘第3の矢’

2014-06-23 | Weblog
シリーズ平成の本音―複雑なだけで貧弱な‘第3の矢’
 安倍政権は、1月24日、‘第3の矢’成長戦略の重点施策を実施、促進するため「産業競争力強化に関する実行計画」を閣議決定し、30本以上の関連法案を出した。更に6月16日、‘第3の矢’を推進する追加的施策として新しい経済改革計画案を明らかにした。
これに対し、英国の6月19日付けフィナンシャル・タイムズ紙は、 “アベノミクスの第3の矢は、矢というよりは1000本の針?”と題し、詳細な記事を掲載した。
どのような解説、コメントよりも、ドンピシャな見出しであり、‘第3の矢’と称する経済再興策に与える言葉としては‘1000本の針’で言い尽くされている。‘1000本の針’を打ち出した経済官庁の努力は大変なものであったであろうが、針でしかない。
経済官庁の体質がなるべく自由であるべき経済活動を法律で2重にも3重にもがんじがらめにして不自由にしている。経済はなるべく自由にして、民間活力を引き出すことが大切であるのに、経済活動を法律で規制し、中央官庁による中央統制経済を強化しているに過ぎない。株式市場も昨年6月よりさみだれ式に発表されている‘第3の矢’成長戦略には消極的な反応しかしていない。これが内外の経済専門紙の評価のようだ。将来の日本経済に対するグランド・デザインもなく、ビジョンもなく、ただ各省庁が繰り出す針を束ねただけのものという評価なのであろう。
 「国家戦略特区」についても、分野ごとに規制を撤廃するのではなく、規制を維持する一方で、中央官庁が地域を指定し、その地域について一定の条件で規制を緩和するということであるので、地域ごとに新たな規制を導入しているに過ぎない。中央統制が更に複雑に強化される。‘1,000本の針’だ。
 また‘女性の社会進出の促進’についても、能力がある限り当然のことであるが、パイを男女でどう分けるかの話であるので、直接‘成長’につながる話ではない。また‘女性だから云々’ということが全面に出されると、逆差別などに繋がる恐れがあり、反発を買う恐れもある。更に‘配偶者手当が家庭の女性の社会進出を阻害している’との考え方は、家事を過小評価するものであろう。女性が子女の家庭教育や家庭内介護を担うことは大変意義が有り、社会的貢献ともなる。
 主要先進国の中でも高い法人所得税については、‘20%代を目指す’としているが、‘実現は明年度より数年掛けて進める’としており、結論先送りであり、現時点では何の経済効果もない。更に、一定水準以上の売上高、例えば3,000万円以上の売上のある事業者対し、事業税を課すことは極く低率であれば検討対象にすべきであろうが、法人所得税減税に見合う税を他から徴収するのであれば、マクロ的には課税対象を他に転嫁するだけであり、減税効果は帳消しになり景気対策などにはならない。
 第3の矢に目玉となる決め手がないので、‘カジノ開設’につき議員立法が出され、政府首脳がこれを‘成長戦略’として期待するとの発言をしているが、賭博で成長を促進出来るほど日本経済は衰えてはいないと期待したい。
 基本的に経済官庁の官僚は、中央統制経済、或いは中央管理経済への執着が強い。法律専攻の官僚が中枢を占めていることもそのような体質を維持、助長する要因となっていると言えよう。既得権を固定化するのが法律であるが、法律の数は規制の数に等しい。保守派議員も中央統制経済、或いは中央管理経済への執着が強いので、官僚に依存しているのであろう。従って、それを打破するためには政権交代が必要になるが、政権を得た政党がやみくもに進むのではなく、なるべく多くの官僚の理解を得つつ丁寧に進めることが必要なのであろう。
 今回もまた、株価は停滞しており、市場は第3の矢を好感していないようだ。
(2014.6.21.)(All Rights Reserved.)

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