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シリーズ肥大化した公共放送NHK、民営化か事業分割か

2010-12-30 | Weblog
シリーズ肥大化した公共放送NHK、民営化か事業分割か
 2010年もNHKの年中行事である「紅白歌合戦」が開催される。大晦日の定番行事として楽しみにしている人もいるだろうから、それはそれで良い。しかし関心の無い人も少なくないし、それを見る余裕の無い人も多い。ここ数年3万人を越える自殺者が出ており、来年3月の大学卒業予定者の就職内定率が57%台であるなど、未だに就職や金策で走り回っている多くの人がいる。「紅白歌合戦」の制作には約3億円の費用が掛かり、内ギャラは1,000万円程度と伝えられており、ほとんどがお祭り騒ぎの制作費として消えて行く。例えば「紅白歌合戦」を有料化して、その収益を社会支援に回す方が余程今日の社会的な必要性に沿うことになる。
 NHKは、1月13日、経営審議委員会で2010年度の事業計画を採択したが、政府(総務省)を通じ国会に提出され、3月中に国会で審議、承認された。
 10年度の事業計画では、民間放送の売上高に当たる事業支出は6,847億円となっている。収入は受信料などで6,786億円に達している。61億円の赤字となっているが、事業収入以外に、デジタル化などに備えた“建設費”として790億円の積立金があるので、この事実上の積立金を含めた総事業資金は7,576億円にも達している。2011年度の事業予算は、新年の1月に提出されるが、7千億円を越える規模となることは必至だ。
NHK放送事業は、高度成長期の1970年代以降テレビが飛躍的に普及したことから、受信料収入が6,500億円以上の水準に膨張し、受信料の引き下げでは無く、事業の拡大を続けて来た。「公共放送」として必要最低限の放送事業に限定し、受信料を大幅に値下げして視聴者の負担を軽減するとの選択肢もあった。
テレビ受信契約は、1968年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。少子化等の要因で1所帯の人数が減少する一方、1人世帯などが増える中で、1人当たりの受信料負担は増加していること、及び外国の衛星放送を含むテレビ番組も飛躍的に多様化していることなどを勘案すると、受信料と共に「公共放送」の事業自体のあり方についても検討してよい時期にある。国会での審議が注目されるが、放送やマスコミに対する制度には国会議員も自らへの影響を懸念して及び腰となる。しかし事業予算は視聴者である国民であり、家計所得が縮小する一方、情報メデイアが多様化する中で、「公共放送」NHKのあり方が問われている。
1、肥大化したNHK放送事業
放送事業に関することであるので、政見放送やニュース等の取り上げられ方などを気にすると、政府総務省としても国会としてもなかなか言い出し難いのも事実だろうが、そもそも「公共放送」に6,500億円を越える事業費が必要なのであろうか。
2009年3月の決算で、主要民放5社の総売上高(総事業費)は、最大のフジ・グループで5,600億円強、最小のテレビ東京で1,200億円弱、平均では3,200億円強であるので、NHKの総事業費が民放5社平均の2倍以上となっている。民放事業を圧迫しているとも言える。
未払い率が約20%の水準で推移しており、収入増に全力を尽くすとしているが、支払いを強いたり“義務化”して事業費を更に増やす必要があるとは思えなし、国民の望むところでもなさそうだ。2割程度の値下げでは不十分で、その水準で受信料支払いを“義務化”すれば、受信料支払い者は現在の契約件数が大幅に増加すると見られるので、実際の徴収額は飛躍的に増える可能性が強い。法律により国民の受信料支払いを“義務化”し、他方でNHK側の「報道の自由」を確保したいとの主張もどうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして初めて生ずるものであろう。
無論、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来たNHKの役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って視聴を希望する者に受信機を提供し、個別の契約とすることが最も合理的と言えないこともない。
しかし全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきではなかろうか。このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の3分の1以下の規模でも十分であろう。それでも年間2,000億円以上の事業規模であり、テレビ東京を上回る放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。
その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、民放形式で行うか、時間帯を地域放送などに売る形などで自由に展開することが望ましく、全体として、事業規模、事業内容の見直し、仕分けが行われても良い。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、それにより放送事業が活性化することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなると期待される。
 なお、地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割である。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やサイトを見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。
2、問題の多いBS放送
NHKは、「総合放送」として受信料を聴取していながら、BS放送について別途受信料を徴収している。その上BSだけで3チャンネルも保有しているが、その必要性は疑問だ。ハイビジョンの開発、促進についてはNHKが重要な役割を果たして来た。しかしTV放送がデジタル化されれば映像もより鮮明になると期待され、一般向けの番組にはハイビジョンのような高画質でなくても良さそうだ。ハイビジョンは、むしろ高度な科学技術や宇宙開発などの高度の研究開発や医療教育など、高画質が要求される分野でより有用と思われ、希望者との個別の契約で提供して行くことが望ましい。
 衛星放送については、現在外国の放送番組も個別の契約で広範に受信できるようになっている。NHKのBS放送も「総合放送」として統合するか、希望者との個別の契約で提供すべきであろう。受信料納付率が80%水準で低迷していることから、昨年来NHK側が集金活動を強化しているが、100%の納付が実現すると受信料収入は8,000億円を超える規模となり、それ程大規模な「公共放送」が必要か改めて問われなくてはならない。民間の国際衛星放送と契約している視聴者にとっては、「総合放送」料金の支払いは仕方ないとしても、NHKのBS放送はほとんど不要である。受信、視聴を希望しない者に何故支払いを求めるのだろうか。制度自体に基本的な無理が生じ始めている。
 また現在、全体の所得が低下している上、派遣などの不正規就労者が1,600万人を越えると共に、老齢者を含む独居人口が増加している中で受信料徴収を強化してまでも6,700億円を超える「公共放送」を維持し、徴収強化し更に拡大することが国家、国民の優先事項であろうか。受信料相当額を適当な形で税に組み込み、不足が深刻になっている保育・デイケアー施設や独居者向けの養護施設や進学支援に向けるなどすれば、今日的な課題に取り組むことも出来る。なお、目的税化は逆に予算を硬直化させ、無駄の原因を作ることになる可能性があるので好ましくない。受信料を3分の1以下に大幅に引き下げ、テレビ、ラジオなどの受像機購入時にNHK受信料を徴収するなど抜本的な解決が不可欠になっている。何を「公共放送」として残すかなど検討を要するが、このようにすれば受信料徴収に掛けていた多額の無駄も減少する。
 3、NHKによる株式会社日本国際放送の設立
 株式会社日本国際放送は、全面英語放送で世界に発信することを目的として、NHKが08年4月に5千万円出資して設立され、同年8月に1億5千万円追加出資され、2億円規模の企業となった。NHK広報局によると、民放、商社、IT関連などの民間企業(NHKの子会社を含む)に対し、約1億9千万円の割り当て増資を行い資金規模を拡大する予定としていた。NHKが筆頭株主の国際放送事業となる。
 海外向け情報発信事業の強化については、筆者が07年11月に関係民間企業の参加を得て「日本情報発信基地局」(仮称)を新設するよう提案していたものであり、このような国際放送事業が発足したことは歓迎される。しかし本来、NHKが他の国内事業を縮小してもっと早く国際放送を充実させて行くべきであったのであろう。
ところでNHKはこの企業に当面2億円の出資をしているが、それは視聴者の受信料から出資されているもので、実体論からすれば受信料支払い者が本来の出資者ということになるので、本来的には視聴者に対しても十分な説明責任が果たされると共に、本来であれば何らかの利益が還元されるべきなのであろう。その他にもNHKは多くの「子会社」を持っているようであるが、これらの「子会社」の事業について十分な説明責任が果たされているのかや、受信料支払い者に利益還元がなされているかについても疑問だ。他方、損失が出ている場合には事業の整理が検討されるべきであろう。これらの子会社には、NHKより多くの職員OBが送り込まれているが、構図とすれば公務員OBの「天下り」と同様である。
 また基本論として、国際放送を民間企業体で出来るのであれば、NHKのほとんどの事業は民間企業体でも出来ることを意味しており、NHK事業の民営化を含め抜本的な見直しが行われても良い時期にあるとも言える。一般個人、法人の株式保有率を例えば1人1%以下に制限しつつ広く全国から出資者を募れば、特定個人・法人の影響力を抑制し、公共性を維持しつつ、民営の放送事業体とすることは可能であろう。
2011年度のNHK事業計画は3月中に国会の承認を得る流れとなっているが、今日的な社会的な必要性に沿った「公共放送」に簡素化し、改革して行くため、放送事業を所掌する総務省を中心とする政府及び国会での真剣な検討が注目される。(12.2010)       (All Rights Reserved.)(不許無断転載)
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シリーズ肥大化した公共放送NHK、民営化か事業分割か

2010-12-30 | Weblog
シリーズ肥大化した公共放送NHK、民営化か事業分割か
 2010年もNHKの年中行事である「紅白歌合戦」が開催される。大晦日の定番行事として楽しみにしている人もいるだろうから、それはそれで良い。しかし関心の無い人も少なくないし、それを見る余裕の無い人も多い。ここ数年3万人を越える自殺者が出ており、来年3月の大学卒業予定者の就職内定率が57%台であるなど、未だに就職や金策で走り回っている多くの人がいる。「紅白歌合戦」の制作には約3億円の費用が掛かり、内ギャラは1,000万円程度と伝えられており、ほとんどがお祭り騒ぎの制作費として消えて行く。例えば「紅白歌合戦」を有料化して、その収益を社会支援に回す方が余程今日の社会的な必要性に沿うことになる。
 NHKは、1月13日、経営審議委員会で2010年度の事業計画を採択したが、政府(総務省)を通じ国会に提出され、3月中に国会で審議、承認された。
 10年度の事業計画では、民間放送の売上高に当たる事業支出は6,847億円となっている。収入は受信料などで6,786億円に達している。61億円の赤字となっているが、事業収入以外に、デジタル化などに備えた“建設費”として790億円の積立金があるので、この事実上の積立金を含めた総事業資金は7,576億円にも達している。2011年度の事業予算は、新年の1月に提出されるが、7千億円を越える規模となることは必至だ。
NHK放送事業は、高度成長期の1970年代以降テレビが飛躍的に普及したことから、受信料収入が6,500億円以上の水準に膨張し、受信料の引き下げでは無く、事業の拡大を続けて来た。「公共放送」として必要最低限の放送事業に限定し、受信料を大幅に値下げして視聴者の負担を軽減するとの選択肢もあった。
テレビ受信契約は、1968年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。少子化等の要因で1所帯の人数が減少する一方、1人世帯などが増える中で、1人当たりの受信料負担は増加していること、及び外国の衛星放送を含むテレビ番組も飛躍的に多様化していることなどを勘案すると、受信料と共に「公共放送」の事業自体のあり方についても検討してよい時期にある。国会での審議が注目されるが、放送やマスコミに対する制度には国会議員も自らへの影響を懸念して及び腰となる。しかし事業予算は視聴者である国民であり、家計所得が縮小する一方、情報メデイアが多様化する中で、「公共放送」NHKのあり方が問われている。
1、肥大化したNHK放送事業
放送事業に関することであるので、政見放送やニュース等の取り上げられ方などを気にすると、政府総務省としても国会としてもなかなか言い出し難いのも事実だろうが、そもそも「公共放送」に6,500億円を越える事業費が必要なのであろうか。
2009年3月の決算で、主要民放5社の総売上高(総事業費)は、最大のフジ・グループで5,600億円強、最小のテレビ東京で1,200億円弱、平均では3,200億円強であるので、NHKの総事業費が民放5社平均の2倍以上となっている。民放事業を圧迫しているとも言える。
未払い率が約20%の水準で推移しており、収入増に全力を尽くすとしているが、支払いを強いたり“義務化”して事業費を更に増やす必要があるとは思えなし、国民の望むところでもなさそうだ。2割程度の値下げでは不十分で、その水準で受信料支払いを“義務化”すれば、受信料支払い者は現在の契約件数が大幅に増加すると見られるので、実際の徴収額は飛躍的に増える可能性が強い。法律により国民の受信料支払いを“義務化”し、他方でNHK側の「報道の自由」を確保したいとの主張もどうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして初めて生ずるものであろう。
無論、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来たNHKの役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って視聴を希望する者に受信機を提供し、個別の契約とすることが最も合理的と言えないこともない。
しかし全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきではなかろうか。このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の3分の1以下の規模でも十分であろう。それでも年間2,000億円以上の事業規模であり、テレビ東京を上回る放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。
その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、民放形式で行うか、時間帯を地域放送などに売る形などで自由に展開することが望ましく、全体として、事業規模、事業内容の見直し、仕分けが行われても良い。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、それにより放送事業が活性化することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなると期待される。
 なお、地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割である。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やサイトを見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。
2、問題の多いBS放送
NHKは、「総合放送」として受信料を聴取していながら、BS放送について別途受信料を徴収している。その上BSだけで3チャンネルも保有しているが、その必要性は疑問だ。ハイビジョンの開発、促進についてはNHKが重要な役割を果たして来た。しかしTV放送がデジタル化されれば映像もより鮮明になると期待され、一般向けの番組にはハイビジョンのような高画質でなくても良さそうだ。ハイビジョンは、むしろ高度な科学技術や宇宙開発などの高度の研究開発や医療教育など、高画質が要求される分野でより有用と思われ、希望者との個別の契約で提供して行くことが望ましい。
 衛星放送については、現在外国の放送番組も個別の契約で広範に受信できるようになっている。NHKのBS放送も「総合放送」として統合するか、希望者との個別の契約で提供すべきであろう。受信料納付率が80%水準で低迷していることから、昨年来NHK側が集金活動を強化しているが、100%の納付が実現すると受信料収入は8,000億円を超える規模となり、それ程大規模な「公共放送」が必要か改めて問われなくてはならない。民間の国際衛星放送と契約している視聴者にとっては、「総合放送」料金の支払いは仕方ないとしても、NHKのBS放送はほとんど不要である。受信、視聴を希望しない者に何故支払いを求めるのだろうか。制度自体に基本的な無理が生じ始めている。
 また現在、全体の所得が低下している上、派遣などの不正規就労者が1,600万人を越えると共に、老齢者を含む独居人口が増加している中で受信料徴収を強化してまでも6,700億円を超える「公共放送」を維持し、徴収強化し更に拡大することが国家、国民の優先事項であろうか。受信料相当額を適当な形で税に組み込み、不足が深刻になっている保育・デイケアー施設や独居者向けの養護施設や進学支援に向けるなどすれば、今日的な課題に取り組むことも出来る。なお、目的税化は逆に予算を硬直化させ、無駄の原因を作ることになる可能性があるので好ましくない。受信料を3分の1以下に大幅に引き下げ、テレビ、ラジオなどの受像機購入時にNHK受信料を徴収するなど抜本的な解決が不可欠になっている。何を「公共放送」として残すかなど検討を要するが、このようにすれば受信料徴収に掛けていた多額の無駄も減少する。
 3、NHKによる株式会社日本国際放送の設立
 株式会社日本国際放送は、全面英語放送で世界に発信することを目的として、NHKが08年4月に5千万円出資して設立され、同年8月に1億5千万円追加出資され、2億円規模の企業となった。NHK広報局によると、民放、商社、IT関連などの民間企業(NHKの子会社を含む)に対し、約1億9千万円の割り当て増資を行い資金規模を拡大する予定としていた。NHKが筆頭株主の国際放送事業となる。
 海外向け情報発信事業の強化については、筆者が07年11月に関係民間企業の参加を得て「日本情報発信基地局」(仮称)を新設するよう提案していたものであり、このような国際放送事業が発足したことは歓迎される。しかし本来、NHKが他の国内事業を縮小してもっと早く国際放送を充実させて行くべきであったのであろう。
ところでNHKはこの企業に当面2億円の出資をしているが、それは視聴者の受信料から出資されているもので、実体論からすれば受信料支払い者が本来の出資者ということになるので、本来的には視聴者に対しても十分な説明責任が果たされると共に、本来であれば何らかの利益が還元されるべきなのであろう。その他にもNHKは多くの「子会社」を持っているようであるが、これらの「子会社」の事業について十分な説明責任が果たされているのかや、受信料支払い者に利益還元がなされているかについても疑問だ。他方、損失が出ている場合には事業の整理が検討されるべきであろう。これらの子会社には、NHKより多くの職員OBが送り込まれているが、構図とすれば公務員OBの「天下り」と同様である。
 また基本論として、国際放送を民間企業体で出来るのであれば、NHKのほとんどの事業は民間企業体でも出来ることを意味しており、NHK事業の民営化を含め抜本的な見直しが行われても良い時期にあるとも言える。一般個人、法人の株式保有率を例えば1人1%以下に制限しつつ広く全国から出資者を募れば、特定個人・法人の影響力を抑制し、公共性を維持しつつ、民営の放送事業体とすることは可能であろう。
2011年度のNHK事業計画は3月中に国会の承認を得る流れとなっているが、今日的な社会的な必要性に沿った「公共放送」に簡素化し、改革して行くため、放送事業を所掌する総務省を中心とする政府及び国会での真剣な検討が注目される。(12.2010)       (All Rights Reserved.)(不許無断転載)
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 2010年もNHKの年中行事である「紅白歌合戦」が開催される。大晦日の定番行事として楽しみにしている人もいるだろうから、それはそれで良い。しかし関心の無い人も少なくないし、それを見る余裕の無い人も多い。ここ数年3万人を越える自殺者が出ており、来年3月の大学卒業予定者の就職内定率が57%台であるなど、未だに就職や金策で走り回っている多くの人がいる。「紅白歌合戦」の制作には約3億円の費用が掛かり、内ギャラは1,000万円程度と伝えられており、ほとんどがお祭り騒ぎの制作費として消えて行く。例えば「紅白歌合戦」を有料化して、その収益を社会支援に回す方が余程今日の社会的な必要性に沿うことになる。
 NHKは、1月13日、経営審議委員会で2010年度の事業計画を採択したが、政府(総務省)を通じ国会に提出され、3月中に国会で審議、承認された。
 10年度の事業計画では、民間放送の売上高に当たる事業支出は6,847億円となっている。収入は受信料などで6,786億円に達している。61億円の赤字となっているが、事業収入以外に、デジタル化などに備えた“建設費”として790億円の積立金があるので、この事実上の積立金を含めた総事業資金は7,576億円にも達している。2011年度の事業予算は、新年の1月に提出されるが、7千億円を越える規模となることは必至だ。
NHK放送事業は、高度成長期の1970年代以降テレビが飛躍的に普及したことから、受信料収入が6,500億円以上の水準に膨張し、受信料の引き下げでは無く、事業の拡大を続けて来た。「公共放送」として必要最低限の放送事業に限定し、受信料を大幅に値下げして視聴者の負担を軽減するとの選択肢もあった。
テレビ受信契約は、1968年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。少子化等の要因で1所帯の人数が減少する一方、1人世帯などが増える中で、1人当たりの受信料負担は増加していること、及び外国の衛星放送を含むテレビ番組も飛躍的に多様化していることなどを勘案すると、受信料と共に「公共放送」の事業自体のあり方についても検討してよい時期にある。国会での審議が注目されるが、放送やマスコミに対する制度には国会議員も自らへの影響を懸念して及び腰となる。しかし事業予算は視聴者である国民であり、家計所得が縮小する一方、情報メデイアが多様化する中で、「公共放送」NHKのあり方が問われている。
1、肥大化したNHK放送事業
放送事業に関することであるので、政見放送やニュース等の取り上げられ方などを気にすると、政府総務省としても国会としてもなかなか言い出し難いのも事実だろうが、そもそも「公共放送」に6,500億円を越える事業費が必要なのであろうか。
2009年3月の決算で、主要民放5社の総売上高(総事業費)は、最大のフジ・グループで5,600億円強、最小のテレビ東京で1,200億円弱、平均では3,200億円強であるので、NHKの総事業費が民放5社平均の2倍以上となっている。民放事業を圧迫しているとも言える。
未払い率が約20%の水準で推移しており、収入増に全力を尽くすとしているが、支払いを強いたり“義務化”して事業費を更に増やす必要があるとは思えなし、国民の望むところでもなさそうだ。2割程度の値下げでは不十分で、その水準で受信料支払いを“義務化”すれば、受信料支払い者は現在の契約件数が大幅に増加すると見られるので、実際の徴収額は飛躍的に増える可能性が強い。法律により国民の受信料支払いを“義務化”し、他方でNHK側の「報道の自由」を確保したいとの主張もどうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして初めて生ずるものであろう。
無論、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来たNHKの役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って視聴を希望する者に受信機を提供し、個別の契約とすることが最も合理的と言えないこともない。
しかし全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきではなかろうか。このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の3分の1以下の規模でも十分であろう。それでも年間2,000億円以上の事業規模であり、テレビ東京を上回る放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。
その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、民放形式で行うか、時間帯を地域放送などに売る形などで自由に展開することが望ましく、全体として、事業規模、事業内容の見直し、仕分けが行われても良い。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、それにより放送事業が活性化することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなると期待される。
 なお、地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割である。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やサイトを見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。
2、問題の多いBS放送
NHKは、「総合放送」として受信料を聴取していながら、BS放送について別途受信料を徴収している。その上BSだけで3チャンネルも保有しているが、その必要性は疑問だ。ハイビジョンの開発、促進についてはNHKが重要な役割を果たして来た。しかしTV放送がデジタル化されれば映像もより鮮明になると期待され、一般向けの番組にはハイビジョンのような高画質でなくても良さそうだ。ハイビジョンは、むしろ高度な科学技術や宇宙開発などの高度の研究開発や医療教育など、高画質が要求される分野でより有用と思われ、希望者との個別の契約で提供して行くことが望ましい。
 衛星放送については、現在外国の放送番組も個別の契約で広範に受信できるようになっている。NHKのBS放送も「総合放送」として統合するか、希望者との個別の契約で提供すべきであろう。受信料納付率が80%水準で低迷していることから、昨年来NHK側が集金活動を強化しているが、100%の納付が実現すると受信料収入は8,000億円を超える規模となり、それ程大規模な「公共放送」が必要か改めて問われなくてはならない。民間の国際衛星放送と契約している視聴者にとっては、「総合放送」料金の支払いは仕方ないとしても、NHKのBS放送はほとんど不要である。受信、視聴を希望しない者に何故支払いを求めるのだろうか。制度自体に基本的な無理が生じ始めている。
 また現在、全体の所得が低下している上、派遣などの不正規就労者が1,600万人を越えると共に、老齢者を含む独居人口が増加している中で受信料徴収を強化してまでも6,700億円を超える「公共放送」を維持し、徴収強化し更に拡大することが国家、国民の優先事項であろうか。受信料相当額を適当な形で税に組み込み、不足が深刻になっている保育・デイケアー施設や独居者向けの養護施設や進学支援に向けるなどすれば、今日的な課題に取り組むことも出来る。なお、目的税化は逆に予算を硬直化させ、無駄の原因を作ることになる可能性があるので好ましくない。受信料を3分の1以下に大幅に引き下げ、テレビ、ラジオなどの受像機購入時にNHK受信料を徴収するなど抜本的な解決が不可欠になっている。何を「公共放送」として残すかなど検討を要するが、このようにすれば受信料徴収に掛けていた多額の無駄も減少する。
 3、NHKによる株式会社日本国際放送の設立
 株式会社日本国際放送は、全面英語放送で世界に発信することを目的として、NHKが08年4月に5千万円出資して設立され、同年8月に1億5千万円追加出資され、2億円規模の企業となった。NHK広報局によると、民放、商社、IT関連などの民間企業(NHKの子会社を含む)に対し、約1億9千万円の割り当て増資を行い資金規模を拡大する予定としていた。NHKが筆頭株主の国際放送事業となる。
 海外向け情報発信事業の強化については、筆者が07年11月に関係民間企業の参加を得て「日本情報発信基地局」(仮称)を新設するよう提案していたものであり、このような国際放送事業が発足したことは歓迎される。しかし本来、NHKが他の国内事業を縮小してもっと早く国際放送を充実させて行くべきであったのであろう。
ところでNHKはこの企業に当面2億円の出資をしているが、それは視聴者の受信料から出資されているもので、実体論からすれば受信料支払い者が本来の出資者ということになるので、本来的には視聴者に対しても十分な説明責任が果たされると共に、本来であれば何らかの利益が還元されるべきなのであろう。その他にもNHKは多くの「子会社」を持っているようであるが、これらの「子会社」の事業について十分な説明責任が果たされているのかや、受信料支払い者に利益還元がなされているかについても疑問だ。他方、損失が出ている場合には事業の整理が検討されるべきであろう。これらの子会社には、NHKより多くの職員OBが送り込まれているが、構図とすれば公務員OBの「天下り」と同様である。
 また基本論として、国際放送を民間企業体で出来るのであれば、NHKのほとんどの事業は民間企業体でも出来ることを意味しており、NHK事業の民営化を含め抜本的な見直しが行われても良い時期にあるとも言える。一般個人、法人の株式保有率を例えば1人1%以下に制限しつつ広く全国から出資者を募れば、特定個人・法人の影響力を抑制し、公共性を維持しつつ、民営の放送事業体とすることは可能であろう。
2011年度のNHK事業計画は3月中に国会の承認を得る流れとなっているが、今日的な社会的な必要性に沿った「公共放送」に簡素化し、改革して行くため、放送事業を所掌する総務省を中心とする政府及び国会での真剣な検討が注目される。(12.2010)       (All Rights Reserved.)(不許無断転載)
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シリーズ肥大化した公共放送NHK、民営化か事業分割か

2010-12-30 | Weblog
シリーズ肥大化した公共放送NHK、民営化か事業分割か
 2010年もNHKの年中行事である「紅白歌合戦」が開催される。大晦日の定番行事として楽しみにしている人もいるだろうから、それはそれで良い。しかし関心の無い人も少なくないし、それを見る余裕の無い人も多い。ここ数年3万人を越える自殺者が出ており、来年3月の大学卒業予定者の就職内定率が57%台であるなど、未だに就職や金策で走り回っている多くの人がいる。「紅白歌合戦」の制作には約3億円の費用が掛かり、内ギャラは1,000万円程度と伝えられており、ほとんどがお祭り騒ぎの制作費として消えて行く。例えば「紅白歌合戦」を有料化して、その収益を社会支援に回す方が余程今日の社会的な必要性に沿うことになる。
 NHKは、1月13日、経営審議委員会で2010年度の事業計画を採択したが、政府(総務省)を通じ国会に提出され、3月中に国会で審議、承認された。
 10年度の事業計画では、民間放送の売上高に当たる事業支出は6,847億円となっている。収入は受信料などで6,786億円に達している。61億円の赤字となっているが、事業収入以外に、デジタル化などに備えた“建設費”として790億円の積立金があるので、この事実上の積立金を含めた総事業資金は7,576億円にも達している。2011年度の事業予算は、新年の1月に提出されるが、7千億円を越える規模となることは必至だ。
NHK放送事業は、高度成長期の1970年代以降テレビが飛躍的に普及したことから、受信料収入が6,500億円以上の水準に膨張し、受信料の引き下げでは無く、事業の拡大を続けて来た。「公共放送」として必要最低限の放送事業に限定し、受信料を大幅に値下げして視聴者の負担を軽減するとの選択肢もあった。
テレビ受信契約は、1968年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。少子化等の要因で1所帯の人数が減少する一方、1人世帯などが増える中で、1人当たりの受信料負担は増加していること、及び外国の衛星放送を含むテレビ番組も飛躍的に多様化していることなどを勘案すると、受信料と共に「公共放送」の事業自体のあり方についても検討してよい時期にある。国会での審議が注目されるが、放送やマスコミに対する制度には国会議員も自らへの影響を懸念して及び腰となる。しかし事業予算は視聴者である国民であり、家計所得が縮小する一方、情報メデイアが多様化する中で、「公共放送」NHKのあり方が問われている。
1、肥大化したNHK放送事業
放送事業に関することであるので、政見放送やニュース等の取り上げられ方などを気にすると、政府総務省としても国会としてもなかなか言い出し難いのも事実だろうが、そもそも「公共放送」に6,500億円を越える事業費が必要なのであろうか。
2009年3月の決算で、主要民放5社の総売上高(総事業費)は、最大のフジ・グループで5,600億円強、最小のテレビ東京で1,200億円弱、平均では3,200億円強であるので、NHKの総事業費が民放5社平均の2倍以上となっている。民放事業を圧迫しているとも言える。
未払い率が約20%の水準で推移しており、収入増に全力を尽くすとしているが、支払いを強いたり“義務化”して事業費を更に増やす必要があるとは思えなし、国民の望むところでもなさそうだ。2割程度の値下げでは不十分で、その水準で受信料支払いを“義務化”すれば、受信料支払い者は現在の契約件数が大幅に増加すると見られるので、実際の徴収額は飛躍的に増える可能性が強い。法律により国民の受信料支払いを“義務化”し、他方でNHK側の「報道の自由」を確保したいとの主張もどうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして初めて生ずるものであろう。
無論、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来たNHKの役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って視聴を希望する者に受信機を提供し、個別の契約とすることが最も合理的と言えないこともない。
しかし全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきではなかろうか。このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の3分の1以下の規模でも十分であろう。それでも年間2,000億円以上の事業規模であり、テレビ東京を上回る放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。
その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、民放形式で行うか、時間帯を地域放送などに売る形などで自由に展開することが望ましく、全体として、事業規模、事業内容の見直し、仕分けが行われても良い。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、それにより放送事業が活性化することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなると期待される。
 なお、地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割である。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やサイトを見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。
2、問題の多いBS放送
NHKは、「総合放送」として受信料を聴取していながら、BS放送について別途受信料を徴収している。その上BSだけで3チャンネルも保有しているが、その必要性は疑問だ。ハイビジョンの開発、促進についてはNHKが重要な役割を果たして来た。しかしTV放送がデジタル化されれば映像もより鮮明になると期待され、一般向けの番組にはハイビジョンのような高画質でなくても良さそうだ。ハイビジョンは、むしろ高度な科学技術や宇宙開発などの高度の研究開発や医療教育など、高画質が要求される分野でより有用と思われ、希望者との個別の契約で提供して行くことが望ましい。
 衛星放送については、現在外国の放送番組も個別の契約で広範に受信できるようになっている。NHKのBS放送も「総合放送」として統合するか、希望者との個別の契約で提供すべきであろう。受信料納付率が80%水準で低迷していることから、昨年来NHK側が集金活動を強化しているが、100%の納付が実現すると受信料収入は8,000億円を超える規模となり、それ程大規模な「公共放送」が必要か改めて問われなくてはならない。民間の国際衛星放送と契約している視聴者にとっては、「総合放送」料金の支払いは仕方ないとしても、NHKのBS放送はほとんど不要である。受信、視聴を希望しない者に何故支払いを求めるのだろうか。制度自体に基本的な無理が生じ始めている。
 また現在、全体の所得が低下している上、派遣などの不正規就労者が1,600万人を越えると共に、老齢者を含む独居人口が増加している中で受信料徴収を強化してまでも6,700億円を超える「公共放送」を維持し、徴収強化し更に拡大することが国家、国民の優先事項であろうか。受信料相当額を適当な形で税に組み込み、不足が深刻になっている保育・デイケアー施設や独居者向けの養護施設や進学支援に向けるなどすれば、今日的な課題に取り組むことも出来る。なお、目的税化は逆に予算を硬直化させ、無駄の原因を作ることになる可能性があるので好ましくない。受信料を3分の1以下に大幅に引き下げ、テレビ、ラジオなどの受像機購入時にNHK受信料を徴収するなど抜本的な解決が不可欠になっている。何を「公共放送」として残すかなど検討を要するが、このようにすれば受信料徴収に掛けていた多額の無駄も減少する。
 3、NHKによる株式会社日本国際放送の設立
 株式会社日本国際放送は、全面英語放送で世界に発信することを目的として、NHKが08年4月に5千万円出資して設立され、同年8月に1億5千万円追加出資され、2億円規模の企業となった。NHK広報局によると、民放、商社、IT関連などの民間企業(NHKの子会社を含む)に対し、約1億9千万円の割り当て増資を行い資金規模を拡大する予定としていた。NHKが筆頭株主の国際放送事業となる。
 海外向け情報発信事業の強化については、筆者が07年11月に関係民間企業の参加を得て「日本情報発信基地局」(仮称)を新設するよう提案していたものであり、このような国際放送事業が発足したことは歓迎される。しかし本来、NHKが他の国内事業を縮小してもっと早く国際放送を充実させて行くべきであったのであろう。
ところでNHKはこの企業に当面2億円の出資をしているが、それは視聴者の受信料から出資されているもので、実体論からすれば受信料支払い者が本来の出資者ということになるので、本来的には視聴者に対しても十分な説明責任が果たされると共に、本来であれば何らかの利益が還元されるべきなのであろう。その他にもNHKは多くの「子会社」を持っているようであるが、これらの「子会社」の事業について十分な説明責任が果たされているのかや、受信料支払い者に利益還元がなされているかについても疑問だ。他方、損失が出ている場合には事業の整理が検討されるべきであろう。これらの子会社には、NHKより多くの職員OBが送り込まれているが、構図とすれば公務員OBの「天下り」と同様である。
 また基本論として、国際放送を民間企業体で出来るのであれば、NHKのほとんどの事業は民間企業体でも出来ることを意味しており、NHK事業の民営化を含め抜本的な見直しが行われても良い時期にあるとも言える。一般個人、法人の株式保有率を例えば1人1%以下に制限しつつ広く全国から出資者を募れば、特定個人・法人の影響力を抑制し、公共性を維持しつつ、民営の放送事業体とすることは可能であろう。
2011年度のNHK事業計画は3月中に国会の承認を得る流れとなっているが、今日的な社会的な必要性に沿った「公共放送」に簡素化し、改革して行くため、放送事業を所掌する総務省を中心とする政府及び国会での真剣な検討が注目される。(12.2010)       (All Rights Reserved.)(不許無断転載)
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2010-12-30 | Weblog
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 2010年もNHKの年中行事である「紅白歌合戦」が開催される。大晦日の定番行事として楽しみにしている人もいるだろうから、それはそれで良い。しかし関心の無い人も少なくないし、それを見る余裕の無い人も多い。ここ数年3万人を越える自殺者が出ており、来年3月の大学卒業予定者の就職内定率が57%台であるなど、未だに就職や金策で走り回っている多くの人がいる。「紅白歌合戦」の制作には約3億円の費用が掛かり、内ギャラは1,000万円程度と伝えられており、ほとんどがお祭り騒ぎの制作費として消えて行く。例えば「紅白歌合戦」を有料化して、その収益を社会支援に回す方が余程今日の社会的な必要性に沿うことになる。
 NHKは、1月13日、経営審議委員会で2010年度の事業計画を採択したが、政府(総務省)を通じ国会に提出され、3月中に国会で審議、承認された。
 10年度の事業計画では、民間放送の売上高に当たる事業支出は6,847億円となっている。収入は受信料などで6,786億円に達している。61億円の赤字となっているが、事業収入以外に、デジタル化などに備えた“建設費”として790億円の積立金があるので、この事実上の積立金を含めた総事業資金は7,576億円にも達している。2011年度の事業予算は、新年の1月に提出されるが、7千億円を越える規模となることは必至だ。
NHK放送事業は、高度成長期の1970年代以降テレビが飛躍的に普及したことから、受信料収入が6,500億円以上の水準に膨張し、受信料の引き下げでは無く、事業の拡大を続けて来た。「公共放送」として必要最低限の放送事業に限定し、受信料を大幅に値下げして視聴者の負担を軽減するとの選択肢もあった。
テレビ受信契約は、1968年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。少子化等の要因で1所帯の人数が減少する一方、1人世帯などが増える中で、1人当たりの受信料負担は増加していること、及び外国の衛星放送を含むテレビ番組も飛躍的に多様化していることなどを勘案すると、受信料と共に「公共放送」の事業自体のあり方についても検討してよい時期にある。国会での審議が注目されるが、放送やマスコミに対する制度には国会議員も自らへの影響を懸念して及び腰となる。しかし事業予算は視聴者である国民であり、家計所得が縮小する一方、情報メデイアが多様化する中で、「公共放送」NHKのあり方が問われている。
1、肥大化したNHK放送事業
放送事業に関することであるので、政見放送やニュース等の取り上げられ方などを気にすると、政府総務省としても国会としてもなかなか言い出し難いのも事実だろうが、そもそも「公共放送」に6,500億円を越える事業費が必要なのであろうか。
2009年3月の決算で、主要民放5社の総売上高(総事業費)は、最大のフジ・グループで5,600億円強、最小のテレビ東京で1,200億円弱、平均では3,200億円強であるので、NHKの総事業費が民放5社平均の2倍以上となっている。民放事業を圧迫しているとも言える。
未払い率が約20%の水準で推移しており、収入増に全力を尽くすとしているが、支払いを強いたり“義務化”して事業費を更に増やす必要があるとは思えなし、国民の望むところでもなさそうだ。2割程度の値下げでは不十分で、その水準で受信料支払いを“義務化”すれば、受信料支払い者は現在の契約件数が大幅に増加すると見られるので、実際の徴収額は飛躍的に増える可能性が強い。法律により国民の受信料支払いを“義務化”し、他方でNHK側の「報道の自由」を確保したいとの主張もどうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして初めて生ずるものであろう。
無論、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来たNHKの役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って視聴を希望する者に受信機を提供し、個別の契約とすることが最も合理的と言えないこともない。
しかし全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきではなかろうか。このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の3分の1以下の規模でも十分であろう。それでも年間2,000億円以上の事業規模であり、テレビ東京を上回る放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。
その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、民放形式で行うか、時間帯を地域放送などに売る形などで自由に展開することが望ましく、全体として、事業規模、事業内容の見直し、仕分けが行われても良い。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、それにより放送事業が活性化することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなると期待される。
 なお、地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割である。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やサイトを見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。
2、問題の多いBS放送
NHKは、「総合放送」として受信料を聴取していながら、BS放送について別途受信料を徴収している。その上BSだけで3チャンネルも保有しているが、その必要性は疑問だ。ハイビジョンの開発、促進についてはNHKが重要な役割を果たして来た。しかしTV放送がデジタル化されれば映像もより鮮明になると期待され、一般向けの番組にはハイビジョンのような高画質でなくても良さそうだ。ハイビジョンは、むしろ高度な科学技術や宇宙開発などの高度の研究開発や医療教育など、高画質が要求される分野でより有用と思われ、希望者との個別の契約で提供して行くことが望ましい。
 衛星放送については、現在外国の放送番組も個別の契約で広範に受信できるようになっている。NHKのBS放送も「総合放送」として統合するか、希望者との個別の契約で提供すべきであろう。受信料納付率が80%水準で低迷していることから、昨年来NHK側が集金活動を強化しているが、100%の納付が実現すると受信料収入は8,000億円を超える規模となり、それ程大規模な「公共放送」が必要か改めて問われなくてはならない。民間の国際衛星放送と契約している視聴者にとっては、「総合放送」料金の支払いは仕方ないとしても、NHKのBS放送はほとんど不要である。受信、視聴を希望しない者に何故支払いを求めるのだろうか。制度自体に基本的な無理が生じ始めている。
 また現在、全体の所得が低下している上、派遣などの不正規就労者が1,600万人を越えると共に、老齢者を含む独居人口が増加している中で受信料徴収を強化してまでも6,700億円を超える「公共放送」を維持し、徴収強化し更に拡大することが国家、国民の優先事項であろうか。受信料相当額を適当な形で税に組み込み、不足が深刻になっている保育・デイケアー施設や独居者向けの養護施設や進学支援に向けるなどすれば、今日的な課題に取り組むことも出来る。なお、目的税化は逆に予算を硬直化させ、無駄の原因を作ることになる可能性があるので好ましくない。受信料を3分の1以下に大幅に引き下げ、テレビ、ラジオなどの受像機購入時にNHK受信料を徴収するなど抜本的な解決が不可欠になっている。何を「公共放送」として残すかなど検討を要するが、このようにすれば受信料徴収に掛けていた多額の無駄も減少する。
 3、NHKによる株式会社日本国際放送の設立
 株式会社日本国際放送は、全面英語放送で世界に発信することを目的として、NHKが08年4月に5千万円出資して設立され、同年8月に1億5千万円追加出資され、2億円規模の企業となった。NHK広報局によると、民放、商社、IT関連などの民間企業(NHKの子会社を含む)に対し、約1億9千万円の割り当て増資を行い資金規模を拡大する予定としていた。NHKが筆頭株主の国際放送事業となる。
 海外向け情報発信事業の強化については、筆者が07年11月に関係民間企業の参加を得て「日本情報発信基地局」(仮称)を新設するよう提案していたものであり、このような国際放送事業が発足したことは歓迎される。しかし本来、NHKが他の国内事業を縮小してもっと早く国際放送を充実させて行くべきであったのであろう。
ところでNHKはこの企業に当面2億円の出資をしているが、それは視聴者の受信料から出資されているもので、実体論からすれば受信料支払い者が本来の出資者ということになるので、本来的には視聴者に対しても十分な説明責任が果たされると共に、本来であれば何らかの利益が還元されるべきなのであろう。その他にもNHKは多くの「子会社」を持っているようであるが、これらの「子会社」の事業について十分な説明責任が果たされているのかや、受信料支払い者に利益還元がなされているかについても疑問だ。他方、損失が出ている場合には事業の整理が検討されるべきであろう。これらの子会社には、NHKより多くの職員OBが送り込まれているが、構図とすれば公務員OBの「天下り」と同様である。
 また基本論として、国際放送を民間企業体で出来るのであれば、NHKのほとんどの事業は民間企業体でも出来ることを意味しており、NHK事業の民営化を含め抜本的な見直しが行われても良い時期にあるとも言える。一般個人、法人の株式保有率を例えば1人1%以下に制限しつつ広く全国から出資者を募れば、特定個人・法人の影響力を抑制し、公共性を維持しつつ、民営の放送事業体とすることは可能であろう。
2011年度のNHK事業計画は3月中に国会の承認を得る流れとなっているが、今日的な社会的な必要性に沿った「公共放送」に簡素化し、改革して行くため、放送事業を所掌する総務省を中心とする政府及び国会での真剣な検討が注目される。(12.2010)       (All Rights Reserved.)(不許無断転載)
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 2010年もNHKの年中行事である「紅白歌合戦」が開催される。大晦日の定番行事として楽しみにしている人もいるだろうから、それはそれで良い。しかし関心の無い人も少なくないし、それを見る余裕の無い人も多い。ここ数年3万人を越える自殺者が出ており、来年3月の大学卒業予定者の就職内定率が57%台であるなど、未だに就職や金策で走り回っている多くの人がいる。「紅白歌合戦」の制作には約3億円の費用が掛かり、内ギャラは1,000万円程度と伝えられており、ほとんどがお祭り騒ぎの制作費として消えて行く。例えば「紅白歌合戦」を有料化して、その収益を社会支援に回す方が余程今日の社会的な必要性に沿うことになる。
 NHKは、1月13日、経営審議委員会で2010年度の事業計画を採択したが、政府(総務省)を通じ国会に提出され、3月中に国会で審議、承認された。
 10年度の事業計画では、民間放送の売上高に当たる事業支出は6,847億円となっている。収入は受信料などで6,786億円に達している。61億円の赤字となっているが、事業収入以外に、デジタル化などに備えた“建設費”として790億円の積立金があるので、この事実上の積立金を含めた総事業資金は7,576億円にも達している。2011年度の事業予算は、新年の1月に提出されるが、7千億円を越える規模となることは必至だ。
NHK放送事業は、高度成長期の1970年代以降テレビが飛躍的に普及したことから、受信料収入が6,500億円以上の水準に膨張し、受信料の引き下げでは無く、事業の拡大を続けて来た。「公共放送」として必要最低限の放送事業に限定し、受信料を大幅に値下げして視聴者の負担を軽減するとの選択肢もあった。
テレビ受信契約は、1968年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。少子化等の要因で1所帯の人数が減少する一方、1人世帯などが増える中で、1人当たりの受信料負担は増加していること、及び外国の衛星放送を含むテレビ番組も飛躍的に多様化していることなどを勘案すると、受信料と共に「公共放送」の事業自体のあり方についても検討してよい時期にある。国会での審議が注目されるが、放送やマスコミに対する制度には国会議員も自らへの影響を懸念して及び腰となる。しかし事業予算は視聴者である国民であり、家計所得が縮小する一方、情報メデイアが多様化する中で、「公共放送」NHKのあり方が問われている。
1、肥大化したNHK放送事業
放送事業に関することであるので、政見放送やニュース等の取り上げられ方などを気にすると、政府総務省としても国会としてもなかなか言い出し難いのも事実だろうが、そもそも「公共放送」に6,500億円を越える事業費が必要なのであろうか。
2009年3月の決算で、主要民放5社の総売上高(総事業費)は、最大のフジ・グループで5,600億円強、最小のテレビ東京で1,200億円弱、平均では3,200億円強であるので、NHKの総事業費が民放5社平均の2倍以上となっている。民放事業を圧迫しているとも言える。
未払い率が約20%の水準で推移しており、収入増に全力を尽くすとしているが、支払いを強いたり“義務化”して事業費を更に増やす必要があるとは思えなし、国民の望むところでもなさそうだ。2割程度の値下げでは不十分で、その水準で受信料支払いを“義務化”すれば、受信料支払い者は現在の契約件数が大幅に増加すると見られるので、実際の徴収額は飛躍的に増える可能性が強い。法律により国民の受信料支払いを“義務化”し、他方でNHK側の「報道の自由」を確保したいとの主張もどうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして初めて生ずるものであろう。
無論、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来たNHKの役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って視聴を希望する者に受信機を提供し、個別の契約とすることが最も合理的と言えないこともない。
しかし全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきではなかろうか。このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の3分の1以下の規模でも十分であろう。それでも年間2,000億円以上の事業規模であり、テレビ東京を上回る放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。
その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、民放形式で行うか、時間帯を地域放送などに売る形などで自由に展開することが望ましく、全体として、事業規模、事業内容の見直し、仕分けが行われても良い。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、それにより放送事業が活性化することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなると期待される。
 なお、地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割である。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やサイトを見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。
2、問題の多いBS放送
NHKは、「総合放送」として受信料を聴取していながら、BS放送について別途受信料を徴収している。その上BSだけで3チャンネルも保有しているが、その必要性は疑問だ。ハイビジョンの開発、促進についてはNHKが重要な役割を果たして来た。しかしTV放送がデジタル化されれば映像もより鮮明になると期待され、一般向けの番組にはハイビジョンのような高画質でなくても良さそうだ。ハイビジョンは、むしろ高度な科学技術や宇宙開発などの高度の研究開発や医療教育など、高画質が要求される分野でより有用と思われ、希望者との個別の契約で提供して行くことが望ましい。
 衛星放送については、現在外国の放送番組も個別の契約で広範に受信できるようになっている。NHKのBS放送も「総合放送」として統合するか、希望者との個別の契約で提供すべきであろう。受信料納付率が80%水準で低迷していることから、昨年来NHK側が集金活動を強化しているが、100%の納付が実現すると受信料収入は8,000億円を超える規模となり、それ程大規模な「公共放送」が必要か改めて問われなくてはならない。民間の国際衛星放送と契約している視聴者にとっては、「総合放送」料金の支払いは仕方ないとしても、NHKのBS放送はほとんど不要である。受信、視聴を希望しない者に何故支払いを求めるのだろうか。制度自体に基本的な無理が生じ始めている。
 また現在、全体の所得が低下している上、派遣などの不正規就労者が1,600万人を越えると共に、老齢者を含む独居人口が増加している中で受信料徴収を強化してまでも6,700億円を超える「公共放送」を維持し、徴収強化し更に拡大することが国家、国民の優先事項であろうか。受信料相当額を適当な形で税に組み込み、不足が深刻になっている保育・デイケアー施設や独居者向けの養護施設や進学支援に向けるなどすれば、今日的な課題に取り組むことも出来る。なお、目的税化は逆に予算を硬直化させ、無駄の原因を作ることになる可能性があるので好ましくない。受信料を3分の1以下に大幅に引き下げ、テレビ、ラジオなどの受像機購入時にNHK受信料を徴収するなど抜本的な解決が不可欠になっている。何を「公共放送」として残すかなど検討を要するが、このようにすれば受信料徴収に掛けていた多額の無駄も減少する。
 3、NHKによる株式会社日本国際放送の設立
 株式会社日本国際放送は、全面英語放送で世界に発信することを目的として、NHKが08年4月に5千万円出資して設立され、同年8月に1億5千万円追加出資され、2億円規模の企業となった。NHK広報局によると、民放、商社、IT関連などの民間企業(NHKの子会社を含む)に対し、約1億9千万円の割り当て増資を行い資金規模を拡大する予定としていた。NHKが筆頭株主の国際放送事業となる。
 海外向け情報発信事業の強化については、筆者が07年11月に関係民間企業の参加を得て「日本情報発信基地局」(仮称)を新設するよう提案していたものであり、このような国際放送事業が発足したことは歓迎される。しかし本来、NHKが他の国内事業を縮小してもっと早く国際放送を充実させて行くべきであったのであろう。
ところでNHKはこの企業に当面2億円の出資をしているが、それは視聴者の受信料から出資されているもので、実体論からすれば受信料支払い者が本来の出資者ということになるので、本来的には視聴者に対しても十分な説明責任が果たされると共に、本来であれば何らかの利益が還元されるべきなのであろう。その他にもNHKは多くの「子会社」を持っているようであるが、これらの「子会社」の事業について十分な説明責任が果たされているのかや、受信料支払い者に利益還元がなされているかについても疑問だ。他方、損失が出ている場合には事業の整理が検討されるべきであろう。これらの子会社には、NHKより多くの職員OBが送り込まれているが、構図とすれば公務員OBの「天下り」と同様である。
 また基本論として、国際放送を民間企業体で出来るのであれば、NHKのほとんどの事業は民間企業体でも出来ることを意味しており、NHK事業の民営化を含め抜本的な見直しが行われても良い時期にあるとも言える。一般個人、法人の株式保有率を例えば1人1%以下に制限しつつ広く全国から出資者を募れば、特定個人・法人の影響力を抑制し、公共性を維持しつつ、民営の放送事業体とすることは可能であろう。
2011年度のNHK事業計画は3月中に国会の承認を得る流れとなっているが、今日的な社会的な必要性に沿った「公共放送」に簡素化し、改革して行くため、放送事業を所掌する総務省を中心とする政府及び国会での真剣な検討が注目される。(12.2010)       (All Rights Reserved.)(不許無断転載)
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シリーズ平成の乱 民主党セカンド・ベストの悲劇

2010-12-25 | Weblog
シリーズ平成の乱 民主党セカンド・ベストの悲劇
 9月14日の民主党大会で菅直人代表が小沢一郎元代表を破り党代表に再選され、首相に就任した。
6月に沖縄普天間飛行場の県内移設問題の取り扱いと社民党の連立離脱、そして「政治とカネ」の問題で責任を取って、鳩山首相が小沢幹事長(当時)と共に辞職し、菅政権に引き継がれた。しかし菅首相は、厚生大臣として薬害エイズ問題で関心を引いたことはあるが、政権運営の経験はなく、7月の参院選では、消費税増税発言とマニフェストの修正、脱マニフェスト方針などで大敗した。本来であれば、鳩山首相の次は党内一の実力者である小沢一郎議員が首班となっても良かったところであるが、鳩山首相の辞任と合わせて幹事長職を辞したため、いわばセカンド・ベスト(次善の選択)として菅直人議員を首班とせざるを得なかった民主党の悲劇と言えよう。
小沢一郎元代表は、09年8月の総選挙において民主党が大勝し、本格的な政権交代をもたらした最大の功績者であり、またマニフェストを含む政策面でも対外関係においても自らの考えでリーダーシップを取れる政治家である。同議員は、一部保守系マスコミに作られたイメージは別として、政治理念や内外の政策においても、また卓越した政治経験と決断力においても、目下与野党を通じて日本をリードして行ける最有力の政治家と言って良いであろう。タイム誌の表紙にも顔写真が載るなど、国際的にも知られている数少ない日本の政治家の1人である。
 09年8月の衆院総選挙を受けて政権交代を実現し成立した鳩山首相自体も、同年春に小沢議員事務所の政治資金の記載問題で元秘書が逮捕されたことから、同議員の違反容疑はなかったが責任を取って民主党総裁を辞任したため、鳩山由紀夫議員が同党総裁になった。鳩山総裁自体も、セカンド・ベストの選択であったと言える。そして鳩山総裁は同年8月の総選挙でマニフェストを掲げて大勝したが、選挙対策を担った小沢議員他の努力が無ければあれだけの大差での勝利はなかったであろう。
 民主党は09年9月に政権を取ることに成功はしたが、リーダーはそれぞれ有力な議員ではあるものの、2代続けてセカンド・ベストを当てざるを得なかったことから悲劇を招いている。それは同党にとっての悲劇であるだけでなく、政権交代を支持した有権者にとって、従って日本全体にとっても悲劇である。「国民との契約」を謳ったマニフェストが菅政権になって実質的に後退して来ている。小泉政権が退陣し、民意を問わぬまま安倍、福田、麻生政権へと政権移譲(党内たらい回し)され、改革路線から復古路線へ逆戻りし、崩壊した経過に良く似ている。政権としての軸が薄れ、何を政策目標とするかが分らなくなっている。情勢の変化に伴う弾力性と若干の修正は望ましいし、野党側等からマニフェストで示された施策への批判はあろうが、それが有権者の選択であった以上、少なくても4年間の実績で判断されるべきなのであろう。それを変更するのであれば民意が問われることが望ましいが、参院選では支持は得られなかったと言えよう。
 「政治とカネ」の問題が野党や党内の一部グループから指摘されている。しかしこの問題は重要ではあるが、過剰に強調され政争の具や既成の体制維持に利用されてはいないだろうか。清廉な政治を維持することは極めて大切であり、そのために不正な資金をチェックすることが大切である。検察当局は、昨年春と本年1月に小沢議員事務所で資金管理に携わっていた現職議員を含む3人の元秘書をそれぞれ逮捕し、関連事務所や家宅を広範囲に捜査したが、嫌疑不十分で議員の起訴はいずれも行えなかった。嫌疑が十分でなく、違反の事実が立証できない場合はもとよりであるが、“疑わしきは罰せず”が原則であろう。それが守られなければ冤罪を助長する恐れがある上、官僚組織の一部である検察当局により自由な政治活動を萎縮させ、或いは抑制する恐れさえある。特に現在行政制度の改革を巡り官僚側の抵抗が明らかであり、検察当局を官僚組織の砦とするようなことは厳に避けなくてはならない。それは民主主義の根幹に係わる事であり、より深刻だ。いずれにしても「政治とカネ」の問題はニュースとしては興味があるが、国民の現在の最大の優先事項ではない。国民の最大の関心は、年金の安定と将来不安の払拭、景気と雇用、強いリーダシップなどであろう。強いリーダシップがなければ政治的安定も望めないし、国際社会で存在感も示せない。野党を中心として保守系メデイアが「政治とカネ」問題を大きく報道して来ているが、何時まで引きずれば良いのであろうか。政治の場での優先順位が違うのではないだろうか。国民が政権交代を是としたことを前提として、そろそろ国家、国民の優先事項、政策に焦点を当るべき時期ではないか。
検察審議会が起訴相当との結論を出した。同審議会は昭和23年の法律に基づき設置されているもので、米国の大陪審を除きほとんどの先進工業国では廃止されている。その上証拠などは検察側が提示しており、新たな証拠がないまま、検察や一部マスコミにより流された報道や噂で判断されているに等しい。新しい証拠がある場合を除き、一部マスコミの世論操作、情報操作で結論が左右される恐れが強い。小沢議員については、既に党総裁を辞任し、更に幹事長を辞任しており、一定の政治的な責任は取られている。更に、昨年春の同議員事務所の捜査には、証拠を改ざん・偽装した検事が当時携わっており、「見立て捜査」の信頼性と適当性が強く問われるところである。この検察の決してあってはならない不祥事で検事総長が近く辞任すると伝えられている。検察の捜査姿勢や「見立て捜査」の不適切さなどへの責任を取った形だ。小沢議員事務所への執拗な捜査と根拠の無い「見立て」情報で世論を操作し、それに乗った一部保守系マスコミにより作り上げられた世論を背景とした検察審議会の結論自体も問われなくてはならない。
特に政治資金規正法違反容疑のように議員活動に関係する事案は、反対勢力に政治的に利用される恐れが強い一方、国会でも取り上げることが出来るので、野党等がいつまでも与党の攻撃材料にし、二重にも三重にも審議することは過剰であると共に、政治活動を抑制し、萎縮させる恐れがあるので、議員の政治活動に関する事案を検察審議会の対象から外すなど同審議会自体のあり方や要否を検討する必要もあろう。単に“何となく怪しい”というだけで罪人を作り、或いは社会から排除していくネガテイヴ・スパイラルは望ましくない。最近の一部保守系マスコミやそれに流され易い世論も、誰か著名人を糾弾し、社会から引きずり下ろす、魔女狩り的傾向が強くなっており、一般庶民としてはいわば特権階級が引き摺り下ろされるので面白おかしく観ているが、マスコミの大きな役割の一つは、有能な政治家始め、有能な人を育て、鼓舞することでもある。それが国家、国民の利益となる。
いずれにしても検察審議会が起訴相当との結論を出している以上、強制起訴されることは現行法律上仕方がないが、速やかに裁判所での審理を開始し、2、3ヶ月以内で早急に結論を出すべきであろう。この問題をこれ以上引きずることは望ましくない。
現在民主党内で小沢議員の政倫審への出席を巡り、菅・岡田執行部と同議員の間で対立している。民主党現執行部は、きれいな政治が同党の基本的な姿勢であるとして「政治とカネ」の問題を重視しているが、同党はこの問題の幕引きの時期を見誤った。2月に検察当局が同議員に対し嫌疑不十分、不起訴とした時点で本件の幕引きにシフトすべきであったのであろう。しかし生方議員のように、自ら政治資金の不適正管理をしていながら、個人的な人気取りのために小沢批判を繰り返している。誰かを批判していることが仕事であった野党時代の意識を抜け切れていない野党ボケとも言える。政倫審に出たところで同議員は、不正なことは一切していないとしている上、強制起訴を前にしてほとんど何も応えられないのは当然であるので、野党側は不十分、疑惑は深まったなどとして攻勢を強めるであろう。狙いは小沢排除であり、同議員を排除すれば、民主党は政権運営に不慣れな集団でしかなくなるので、野党及び一部の保守系マスコミ等は同議員を排除するまで攻勢を緩めないことは目に見えている。
しかし野党自民党も、そのような敵失だけで次の総選挙で単独過半数を得ることはまずなさそうに見える。現在の年金不信に基づく将来不安、経済不振と雇用不安、その中での行政の肥大化と官僚貴族の温存、議員優遇と一票の格差問題などの選挙制度改革の停滞、また外交問題でも普天間問題、北方領土問題、東シナ海油田開発問題など、現在の日本の閉塞状態を温存し、実質的な改革を先送ってきたのは野党の自民、公明の両党であろう。その中で、自民党も一部有力議員が離党をし、新党を作っている。総選挙となれば、保守票の喰い合いとなろう。また野党側にも現在の厳しい内外情勢において政権を託せるような政治家は見えて来ない。(12.10.)  (All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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 9月14日の民主党大会で菅直人代表が小沢一郎元代表を破り党代表に再選され、首相に就任した。
6月に沖縄普天間飛行場の県内移設問題の取り扱いと社民党の連立離脱、そして「政治とカネ」の問題で責任を取って、鳩山首相が小沢幹事長(当時)と共に辞職し、菅政権に引き継がれた。しかし菅首相は、厚生大臣として薬害エイズ問題で関心を引いたことはあるが、政権運営の経験はなく、7月の参院選では、消費税増税発言とマニフェストの修正、脱マニフェスト方針などで大敗した。本来であれば、鳩山首相の次は党内一の実力者である小沢一郎議員が首班となっても良かったところであるが、鳩山首相の辞任と合わせて幹事長職を辞したため、いわばセカンド・ベスト(次善の選択)として菅直人議員を首班とせざるを得なかった民主党の悲劇と言えよう。
小沢一郎元代表は、09年8月の総選挙において民主党が大勝し、本格的な政権交代をもたらした最大の功績者であり、またマニフェストを含む政策面でも対外関係においても自らの考えでリーダーシップを取れる政治家である。同議員は、一部保守系マスコミに作られたイメージは別として、政治理念や内外の政策においても、また卓越した政治経験と決断力においても、目下与野党を通じて日本をリードして行ける最有力の政治家と言って良いであろう。タイム誌の表紙にも顔写真が載るなど、国際的にも知られている数少ない日本の政治家の1人である。
 09年8月の衆院総選挙を受けて政権交代を実現し成立した鳩山首相自体も、同年春に小沢議員事務所の政治資金の記載問題で元秘書が逮捕されたことから、同議員の違反容疑はなかったが責任を取って民主党総裁を辞任したため、鳩山由紀夫議員が同党総裁になった。鳩山総裁自体も、セカンド・ベストの選択であったと言える。そして鳩山総裁は同年8月の総選挙でマニフェストを掲げて大勝したが、選挙対策を担った小沢議員他の努力が無ければあれだけの大差での勝利はなかったであろう。
 民主党は09年9月に政権を取ることに成功はしたが、リーダーはそれぞれ有力な議員ではあるものの、2代続けてセカンド・ベストを当てざるを得なかったことから悲劇を招いている。それは同党にとっての悲劇であるだけでなく、政権交代を支持した有権者にとって、従って日本全体にとっても悲劇である。「国民との契約」を謳ったマニフェストが菅政権になって実質的に後退して来ている。小泉政権が退陣し、民意を問わぬまま安倍、福田、麻生政権へと政権移譲(党内たらい回し)され、改革路線から復古路線へ逆戻りし、崩壊した経過に良く似ている。政権としての軸が薄れ、何を政策目標とするかが分らなくなっている。情勢の変化に伴う弾力性と若干の修正は望ましいし、野党側等からマニフェストで示された施策への批判はあろうが、それが有権者の選択であった以上、少なくても4年間の実績で判断されるべきなのであろう。それを変更するのであれば民意が問われることが望ましいが、参院選では支持は得られなかったと言えよう。
 「政治とカネ」の問題が野党や党内の一部グループから指摘されている。しかしこの問題は重要ではあるが、過剰に強調され政争の具や既成の体制維持に利用されてはいないだろうか。清廉な政治を維持することは極めて大切であり、そのために不正な資金をチェックすることが大切である。検察当局は、昨年春と本年1月に小沢議員事務所で資金管理に携わっていた現職議員を含む3人の元秘書をそれぞれ逮捕し、関連事務所や家宅を広範囲に捜査したが、嫌疑不十分で議員の起訴はいずれも行えなかった。嫌疑が十分でなく、違反の事実が立証できない場合はもとよりであるが、“疑わしきは罰せず”が原則であろう。それが守られなければ冤罪を助長する恐れがある上、官僚組織の一部である検察当局により自由な政治活動を萎縮させ、或いは抑制する恐れさえある。特に現在行政制度の改革を巡り官僚側の抵抗が明らかであり、検察当局を官僚組織の砦とするようなことは厳に避けなくてはならない。それは民主主義の根幹に係わる事であり、より深刻だ。いずれにしても「政治とカネ」の問題はニュースとしては興味があるが、国民の現在の最大の優先事項ではない。国民の最大の関心は、年金の安定と将来不安の払拭、景気と雇用、強いリーダシップなどであろう。強いリーダシップがなければ政治的安定も望めないし、国際社会で存在感も示せない。野党を中心として保守系メデイアが「政治とカネ」問題を大きく報道して来ているが、何時まで引きずれば良いのであろうか。政治の場での優先順位が違うのではないだろうか。国民が政権交代を是としたことを前提として、そろそろ国家、国民の優先事項、政策に焦点を当るべき時期ではないか。
検察審議会が起訴相当との結論を出した。同審議会は昭和23年の法律に基づき設置されているもので、米国の大陪審を除きほとんどの先進工業国では廃止されている。その上証拠などは検察側が提示しており、新たな証拠がないまま、検察や一部マスコミにより流された報道や噂で判断されているに等しい。新しい証拠がある場合を除き、一部マスコミの世論操作、情報操作で結論が左右される恐れが強い。小沢議員については、既に党総裁を辞任し、更に幹事長を辞任しており、一定の政治的な責任は取られている。更に、昨年春の同議員事務所の捜査には、証拠を改ざん・偽装した検事が当時携わっており、「見立て捜査」の信頼性と適当性が強く問われるところである。この検察の決してあってはならない不祥事で検事総長が近く辞任すると伝えられている。検察の捜査姿勢や「見立て捜査」の不適切さなどへの責任を取った形だ。小沢議員事務所への執拗な捜査と根拠の無い「見立て」情報で世論を操作し、それに乗った一部保守系マスコミにより作り上げられた世論を背景とした検察審議会の結論自体も問われなくてはならない。
特に政治資金規正法違反容疑のように議員活動に関係する事案は、反対勢力に政治的に利用される恐れが強い一方、国会でも取り上げることが出来るので、野党等がいつまでも与党の攻撃材料にし、二重にも三重にも審議することは過剰であると共に、政治活動を抑制し、萎縮させる恐れがあるので、議員の政治活動に関する事案を検察審議会の対象から外すなど同審議会自体のあり方や要否を検討する必要もあろう。単に“何となく怪しい”というだけで罪人を作り、或いは社会から排除していくネガテイヴ・スパイラルは望ましくない。最近の一部保守系マスコミやそれに流され易い世論も、誰か著名人を糾弾し、社会から引きずり下ろす、魔女狩り的傾向が強くなっており、一般庶民としてはいわば特権階級が引き摺り下ろされるので面白おかしく観ているが、マスコミの大きな役割の一つは、有能な政治家始め、有能な人を育て、鼓舞することでもある。それが国家、国民の利益となる。
いずれにしても検察審議会が起訴相当との結論を出している以上、強制起訴されることは現行法律上仕方がないが、速やかに裁判所での審理を開始し、2、3ヶ月以内で早急に結論を出すべきであろう。この問題をこれ以上引きずることは望ましくない。
現在民主党内で小沢議員の政倫審への出席を巡り、菅・岡田執行部と同議員の間で対立している。民主党現執行部は、きれいな政治が同党の基本的な姿勢であるとして「政治とカネ」の問題を重視しているが、同党はこの問題の幕引きの時期を見誤った。2月に検察当局が同議員に対し嫌疑不十分、不起訴とした時点で本件の幕引きにシフトすべきであったのであろう。しかし生方議員のように、自ら政治資金の不適正管理をしていながら、個人的な人気取りのために小沢批判を繰り返している。誰かを批判していることが仕事であった野党時代の意識を抜け切れていない野党ボケとも言える。政倫審に出たところで同議員は、不正なことは一切していないとしている上、強制起訴を前にしてほとんど何も応えられないのは当然であるので、野党側は不十分、疑惑は深まったなどとして攻勢を強めるであろう。狙いは小沢排除であり、同議員を排除すれば、民主党は政権運営に不慣れな集団でしかなくなるので、野党及び一部の保守系マスコミ等は同議員を排除するまで攻勢を緩めないことは目に見えている。
しかし野党自民党も、そのような敵失だけで次の総選挙で単独過半数を得ることはまずなさそうに見える。現在の年金不信に基づく将来不安、経済不振と雇用不安、その中での行政の肥大化と官僚貴族の温存、議員優遇と一票の格差問題などの選挙制度改革の停滞、また外交問題でも普天間問題、北方領土問題、東シナ海油田開発問題など、現在の日本の閉塞状態を温存し、実質的な改革を先送ってきたのは野党の自民、公明の両党であろう。その中で、自民党も一部有力議員が離党をし、新党を作っている。総選挙となれば、保守票の喰い合いとなろう。また野党側にも現在の厳しい内外情勢において政権を託せるような政治家は見えて来ない。(12.10.)  (All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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 9月14日の民主党大会で菅直人代表が小沢一郎元代表を破り党代表に再選され、首相に就任した。
6月に沖縄普天間飛行場の県内移設問題の取り扱いと社民党の連立離脱、そして「政治とカネ」の問題で責任を取って、鳩山首相が小沢幹事長(当時)と共に辞職し、菅政権に引き継がれた。しかし菅首相は、厚生大臣として薬害エイズ問題で関心を引いたことはあるが、政権運営の経験はなく、7月の参院選では、消費税増税発言とマニフェストの修正、脱マニフェスト方針などで大敗した。本来であれば、鳩山首相の次は党内一の実力者である小沢一郎議員が首班となっても良かったところであるが、鳩山首相の辞任と合わせて幹事長職を辞したため、いわばセカンド・ベスト(次善の選択)として菅直人議員を首班とせざるを得なかった民主党の悲劇と言えよう。
小沢一郎元代表は、09年8月の総選挙において民主党が大勝し、本格的な政権交代をもたらした最大の功績者であり、またマニフェストを含む政策面でも対外関係においても自らの考えでリーダーシップを取れる政治家である。同議員は、一部保守系マスコミに作られたイメージは別として、政治理念や内外の政策においても、また卓越した政治経験と決断力においても、目下与野党を通じて日本をリードして行ける最有力の政治家と言って良いであろう。タイム誌の表紙にも顔写真が載るなど、国際的にも知られている数少ない日本の政治家の1人である。
 09年8月の衆院総選挙を受けて政権交代を実現し成立した鳩山首相自体も、同年春に小沢議員事務所の政治資金の記載問題で元秘書が逮捕されたことから、同議員の違反容疑はなかったが責任を取って民主党総裁を辞任したため、鳩山由紀夫議員が同党総裁になった。鳩山総裁自体も、セカンド・ベストの選択であったと言える。そして鳩山総裁は同年8月の総選挙でマニフェストを掲げて大勝したが、選挙対策を担った小沢議員他の努力が無ければあれだけの大差での勝利はなかったであろう。
 民主党は09年9月に政権を取ることに成功はしたが、リーダーはそれぞれ有力な議員ではあるものの、2代続けてセカンド・ベストを当てざるを得なかったことから悲劇を招いている。それは同党にとっての悲劇であるだけでなく、政権交代を支持した有権者にとって、従って日本全体にとっても悲劇である。「国民との契約」を謳ったマニフェストが菅政権になって実質的に後退して来ている。小泉政権が退陣し、民意を問わぬまま安倍、福田、麻生政権へと政権移譲(党内たらい回し)され、改革路線から復古路線へ逆戻りし、崩壊した経過に良く似ている。政権としての軸が薄れ、何を政策目標とするかが分らなくなっている。情勢の変化に伴う弾力性と若干の修正は望ましいし、野党側等からマニフェストで示された施策への批判はあろうが、それが有権者の選択であった以上、少なくても4年間の実績で判断されるべきなのであろう。それを変更するのであれば民意が問われることが望ましいが、参院選では支持は得られなかったと言えよう。
 「政治とカネ」の問題が野党や党内の一部グループから指摘されている。しかしこの問題は重要ではあるが、過剰に強調され政争の具や既成の体制維持に利用されてはいないだろうか。清廉な政治を維持することは極めて大切であり、そのために不正な資金をチェックすることが大切である。検察当局は、昨年春と本年1月に小沢議員事務所で資金管理に携わっていた現職議員を含む3人の元秘書をそれぞれ逮捕し、関連事務所や家宅を広範囲に捜査したが、嫌疑不十分で議員の起訴はいずれも行えなかった。嫌疑が十分でなく、違反の事実が立証できない場合はもとよりであるが、“疑わしきは罰せず”が原則であろう。それが守られなければ冤罪を助長する恐れがある上、官僚組織の一部である検察当局により自由な政治活動を萎縮させ、或いは抑制する恐れさえある。特に現在行政制度の改革を巡り官僚側の抵抗が明らかであり、検察当局を官僚組織の砦とするようなことは厳に避けなくてはならない。それは民主主義の根幹に係わる事であり、より深刻だ。いずれにしても「政治とカネ」の問題はニュースとしては興味があるが、国民の現在の最大の優先事項ではない。国民の最大の関心は、年金の安定と将来不安の払拭、景気と雇用、強いリーダシップなどであろう。強いリーダシップがなければ政治的安定も望めないし、国際社会で存在感も示せない。野党を中心として保守系メデイアが「政治とカネ」問題を大きく報道して来ているが、何時まで引きずれば良いのであろうか。政治の場での優先順位が違うのではないだろうか。国民が政権交代を是としたことを前提として、そろそろ国家、国民の優先事項、政策に焦点を当るべき時期ではないか。
検察審議会が起訴相当との結論を出した。同審議会は昭和23年の法律に基づき設置されているもので、米国の大陪審を除きほとんどの先進工業国では廃止されている。その上証拠などは検察側が提示しており、新たな証拠がないまま、検察や一部マスコミにより流された報道や噂で判断されているに等しい。新しい証拠がある場合を除き、一部マスコミの世論操作、情報操作で結論が左右される恐れが強い。小沢議員については、既に党総裁を辞任し、更に幹事長を辞任しており、一定の政治的な責任は取られている。更に、昨年春の同議員事務所の捜査には、証拠を改ざん・偽装した検事が当時携わっており、「見立て捜査」の信頼性と適当性が強く問われるところである。この検察の決してあってはならない不祥事で検事総長が近く辞任すると伝えられている。検察の捜査姿勢や「見立て捜査」の不適切さなどへの責任を取った形だ。小沢議員事務所への執拗な捜査と根拠の無い「見立て」情報で世論を操作し、それに乗った一部保守系マスコミにより作り上げられた世論を背景とした検察審議会の結論自体も問われなくてはならない。
特に政治資金規正法違反容疑のように議員活動に関係する事案は、反対勢力に政治的に利用される恐れが強い一方、国会でも取り上げることが出来るので、野党等がいつまでも与党の攻撃材料にし、二重にも三重にも審議することは過剰であると共に、政治活動を抑制し、萎縮させる恐れがあるので、議員の政治活動に関する事案を検察審議会の対象から外すなど同審議会自体のあり方や要否を検討する必要もあろう。単に“何となく怪しい”というだけで罪人を作り、或いは社会から排除していくネガテイヴ・スパイラルは望ましくない。最近の一部保守系マスコミやそれに流され易い世論も、誰か著名人を糾弾し、社会から引きずり下ろす、魔女狩り的傾向が強くなっており、一般庶民としてはいわば特権階級が引き摺り下ろされるので面白おかしく観ているが、マスコミの大きな役割の一つは、有能な政治家始め、有能な人を育て、鼓舞することでもある。それが国家、国民の利益となる。
いずれにしても検察審議会が起訴相当との結論を出している以上、強制起訴されることは現行法律上仕方がないが、速やかに裁判所での審理を開始し、2、3ヶ月以内で早急に結論を出すべきであろう。この問題をこれ以上引きずることは望ましくない。
現在民主党内で小沢議員の政倫審への出席を巡り、菅・岡田執行部と同議員の間で対立している。民主党現執行部は、きれいな政治が同党の基本的な姿勢であるとして「政治とカネ」の問題を重視しているが、同党はこの問題の幕引きの時期を見誤った。2月に検察当局が同議員に対し嫌疑不十分、不起訴とした時点で本件の幕引きにシフトすべきであったのであろう。しかし生方議員のように、自ら政治資金の不適正管理をしていながら、個人的な人気取りのために小沢批判を繰り返している。誰かを批判していることが仕事であった野党時代の意識を抜け切れていない野党ボケとも言える。政倫審に出たところで同議員は、不正なことは一切していないとしている上、強制起訴を前にしてほとんど何も応えられないのは当然であるので、野党側は不十分、疑惑は深まったなどとして攻勢を強めるであろう。狙いは小沢排除であり、同議員を排除すれば、民主党は政権運営に不慣れな集団でしかなくなるので、野党及び一部の保守系マスコミ等は同議員を排除するまで攻勢を緩めないことは目に見えている。
しかし野党自民党も、そのような敵失だけで次の総選挙で単独過半数を得ることはまずなさそうに見える。現在の年金不信に基づく将来不安、経済不振と雇用不安、その中での行政の肥大化と官僚貴族の温存、議員優遇と一票の格差問題などの選挙制度改革の停滞、また外交問題でも普天間問題、北方領土問題、東シナ海油田開発問題など、現在の日本の閉塞状態を温存し、実質的な改革を先送ってきたのは野党の自民、公明の両党であろう。その中で、自民党も一部有力議員が離党をし、新党を作っている。総選挙となれば、保守票の喰い合いとなろう。また野党側にも現在の厳しい内外情勢において政権を託せるような政治家は見えて来ない。(12.10.)  (All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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 9月14日の民主党大会で菅直人代表が小沢一郎元代表を破り党代表に再選され、首相に就任した。
6月に沖縄普天間飛行場の県内移設問題の取り扱いと社民党の連立離脱、そして「政治とカネ」の問題で責任を取って、鳩山首相が小沢幹事長(当時)と共に辞職し、菅政権に引き継がれた。しかし菅首相は、厚生大臣として薬害エイズ問題で関心を引いたことはあるが、政権運営の経験はなく、7月の参院選では、消費税増税発言とマニフェストの修正、脱マニフェスト方針などで大敗した。本来であれば、鳩山首相の次は党内一の実力者である小沢一郎議員が首班となっても良かったところであるが、鳩山首相の辞任と合わせて幹事長職を辞したため、いわばセカンド・ベスト(次善の選択)として菅直人議員を首班とせざるを得なかった民主党の悲劇と言えよう。
小沢一郎元代表は、09年8月の総選挙において民主党が大勝し、本格的な政権交代をもたらした最大の功績者であり、またマニフェストを含む政策面でも対外関係においても自らの考えでリーダーシップを取れる政治家である。同議員は、一部保守系マスコミに作られたイメージは別として、政治理念や内外の政策においても、また卓越した政治経験と決断力においても、目下与野党を通じて日本をリードして行ける最有力の政治家と言って良いであろう。タイム誌の表紙にも顔写真が載るなど、国際的にも知られている数少ない日本の政治家の1人である。
 09年8月の衆院総選挙を受けて政権交代を実現し成立した鳩山首相自体も、同年春に小沢議員事務所の政治資金の記載問題で元秘書が逮捕されたことから、同議員の違反容疑はなかったが責任を取って民主党総裁を辞任したため、鳩山由紀夫議員が同党総裁になった。鳩山総裁自体も、セカンド・ベストの選択であったと言える。そして鳩山総裁は同年8月の総選挙でマニフェストを掲げて大勝したが、選挙対策を担った小沢議員他の努力が無ければあれだけの大差での勝利はなかったであろう。
 民主党は09年9月に政権を取ることに成功はしたが、リーダーはそれぞれ有力な議員ではあるものの、2代続けてセカンド・ベストを当てざるを得なかったことから悲劇を招いている。それは同党にとっての悲劇であるだけでなく、政権交代を支持した有権者にとって、従って日本全体にとっても悲劇である。「国民との契約」を謳ったマニフェストが菅政権になって実質的に後退して来ている。小泉政権が退陣し、民意を問わぬまま安倍、福田、麻生政権へと政権移譲(党内たらい回し)され、改革路線から復古路線へ逆戻りし、崩壊した経過に良く似ている。政権としての軸が薄れ、何を政策目標とするかが分らなくなっている。情勢の変化に伴う弾力性と若干の修正は望ましいし、野党側等からマニフェストで示された施策への批判はあろうが、それが有権者の選択であった以上、少なくても4年間の実績で判断されるべきなのであろう。それを変更するのであれば民意が問われることが望ましいが、参院選では支持は得られなかったと言えよう。
 「政治とカネ」の問題が野党や党内の一部グループから指摘されている。しかしこの問題は重要ではあるが、過剰に強調され政争の具や既成の体制維持に利用されてはいないだろうか。清廉な政治を維持することは極めて大切であり、そのために不正な資金をチェックすることが大切である。検察当局は、昨年春と本年1月に小沢議員事務所で資金管理に携わっていた現職議員を含む3人の元秘書をそれぞれ逮捕し、関連事務所や家宅を広範囲に捜査したが、嫌疑不十分で議員の起訴はいずれも行えなかった。嫌疑が十分でなく、違反の事実が立証できない場合はもとよりであるが、“疑わしきは罰せず”が原則であろう。それが守られなければ冤罪を助長する恐れがある上、官僚組織の一部である検察当局により自由な政治活動を萎縮させ、或いは抑制する恐れさえある。特に現在行政制度の改革を巡り官僚側の抵抗が明らかであり、検察当局を官僚組織の砦とするようなことは厳に避けなくてはならない。それは民主主義の根幹に係わる事であり、より深刻だ。いずれにしても「政治とカネ」の問題はニュースとしては興味があるが、国民の現在の最大の優先事項ではない。国民の最大の関心は、年金の安定と将来不安の払拭、景気と雇用、強いリーダシップなどであろう。強いリーダシップがなければ政治的安定も望めないし、国際社会で存在感も示せない。野党を中心として保守系メデイアが「政治とカネ」問題を大きく報道して来ているが、何時まで引きずれば良いのであろうか。政治の場での優先順位が違うのではないだろうか。国民が政権交代を是としたことを前提として、そろそろ国家、国民の優先事項、政策に焦点を当るべき時期ではないか。
検察審議会が起訴相当との結論を出した。同審議会は昭和23年の法律に基づき設置されているもので、米国の大陪審を除きほとんどの先進工業国では廃止されている。その上証拠などは検察側が提示しており、新たな証拠がないまま、検察や一部マスコミにより流された報道や噂で判断されているに等しい。新しい証拠がある場合を除き、一部マスコミの世論操作、情報操作で結論が左右される恐れが強い。小沢議員については、既に党総裁を辞任し、更に幹事長を辞任しており、一定の政治的な責任は取られている。更に、昨年春の同議員事務所の捜査には、証拠を改ざん・偽装した検事が当時携わっており、「見立て捜査」の信頼性と適当性が強く問われるところである。この検察の決してあってはならない不祥事で検事総長が近く辞任すると伝えられている。検察の捜査姿勢や「見立て捜査」の不適切さなどへの責任を取った形だ。小沢議員事務所への執拗な捜査と根拠の無い「見立て」情報で世論を操作し、それに乗った一部保守系マスコミにより作り上げられた世論を背景とした検察審議会の結論自体も問われなくてはならない。
特に政治資金規正法違反容疑のように議員活動に関係する事案は、反対勢力に政治的に利用される恐れが強い一方、国会でも取り上げることが出来るので、野党等がいつまでも与党の攻撃材料にし、二重にも三重にも審議することは過剰であると共に、政治活動を抑制し、萎縮させる恐れがあるので、議員の政治活動に関する事案を検察審議会の対象から外すなど同審議会自体のあり方や要否を検討する必要もあろう。単に“何となく怪しい”というだけで罪人を作り、或いは社会から排除していくネガテイヴ・スパイラルは望ましくない。最近の一部保守系マスコミやそれに流され易い世論も、誰か著名人を糾弾し、社会から引きずり下ろす、魔女狩り的傾向が強くなっており、一般庶民としてはいわば特権階級が引き摺り下ろされるので面白おかしく観ているが、マスコミの大きな役割の一つは、有能な政治家始め、有能な人を育て、鼓舞することでもある。それが国家、国民の利益となる。
いずれにしても検察審議会が起訴相当との結論を出している以上、強制起訴されることは現行法律上仕方がないが、速やかに裁判所での審理を開始し、2、3ヶ月以内で早急に結論を出すべきであろう。この問題をこれ以上引きずることは望ましくない。
現在民主党内で小沢議員の政倫審への出席を巡り、菅・岡田執行部と同議員の間で対立している。民主党現執行部は、きれいな政治が同党の基本的な姿勢であるとして「政治とカネ」の問題を重視しているが、同党はこの問題の幕引きの時期を見誤った。2月に検察当局が同議員に対し嫌疑不十分、不起訴とした時点で本件の幕引きにシフトすべきであったのであろう。しかし生方議員のように、自ら政治資金の不適正管理をしていながら、個人的な人気取りのために小沢批判を繰り返している。誰かを批判していることが仕事であった野党時代の意識を抜け切れていない野党ボケとも言える。政倫審に出たところで同議員は、不正なことは一切していないとしている上、強制起訴を前にしてほとんど何も応えられないのは当然であるので、野党側は不十分、疑惑は深まったなどとして攻勢を強めるであろう。狙いは小沢排除であり、同議員を排除すれば、民主党は政権運営に不慣れな集団でしかなくなるので、野党及び一部の保守系マスコミ等は同議員を排除するまで攻勢を緩めないことは目に見えている。
しかし野党自民党も、そのような敵失だけで次の総選挙で単独過半数を得ることはまずなさそうに見える。現在の年金不信に基づく将来不安、経済不振と雇用不安、その中での行政の肥大化と官僚貴族の温存、議員優遇と一票の格差問題などの選挙制度改革の停滞、また外交問題でも普天間問題、北方領土問題、東シナ海油田開発問題など、現在の日本の閉塞状態を温存し、実質的な改革を先送ってきたのは野党の自民、公明の両党であろう。その中で、自民党も一部有力議員が離党をし、新党を作っている。総選挙となれば、保守票の喰い合いとなろう。また野党側にも現在の厳しい内外情勢において政権を託せるような政治家は見えて来ない。(12.10.)  (All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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