セリカ魂

「初代セリカに乗りたい!」
ゆっくり旧車ライフの備忘録

映画「パラサイト」(ネタバレ気味)※追記あり

2020年01月15日 02時01分10秒 | つぶやき

気になってた「パラサイト」を観て来た。
「グエムル」のポン・ジュノ監督の作品。韓国映画として初めてカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞してその面白さは世界で折り紙付き。
韓国社会の底辺で生きるキム一家が富裕層のパク一家に取り入って文字通りパラサイト(寄生)するけれど、予期せぬ出来事が続発してジェットコースター的な展開から怒涛のラストへ一直線。


ちょっとネタバレ気味なのでこれから観るつもりの人はご注意下さい。
息子ギウが代理の家庭教師としてダヘに気に入られるシーン、予想外の駆け引きを演じてポテンシャルの高さに驚いた。妹ギジョンも高いスキルで才能の片鱗を見せる。これらのエピソード、いかに有能でも超学歴社会の韓国では底辺に甘んじているしかない理不尽さを暗示。

家族は一丸となり隠れた才能を存分に発揮。パク一家に気に入られて侵入して行く辺りが実に痛快。ところで初対面の時のギジョンとダソン、兄ギウとダヘの様な展開は無かったのかな?まぁ、あっても児童へのセクハラだから描けないか。

キム一家を象徴する「半地下」と水没は新海監督の「天気の子」を連想させた。その点に於いては日本だとどちらかというとお洒落なイメージで描かれていたのと対照的。韓国の半地下は一般的な下水管よりも低いのでトイレが床より高く設置されててキム家の環境の異様さを象徴していた。この辺りは上手い演出だと感心。

核心的なネタについては家政婦が前の家主の時から勤めてると聞いて「ぁやしぃ」となり、パク社長が運転手ギテクにこぼした「ある短所」でスグに閃いた。「これはきっとアレだな。するとこの後こうなってこうなる?」と予想出来たし、実際その後の展開は予想通りになった。その点でこの作品は「カメ止め」の様な予想の斜め上を行く快作とまでは言えないと思う。

ラストのハッピーエンドがギウの妄想であるとはっきり描いたのも残念。この辺りはギレルモ監督みたいな現実と妄想の境目をぼかす手法が良かったように思います。「グエムル」でもラストは「どっち?」と期待させる終わり方ではなかった。もっとも、結果を誤魔化さずに冷酷なまでの「現実」を見せて終わるのがこの監督の性癖なのかも知れない。

前半の怒涛の展開に比べて身体的な問題によるほころびが出てからは中だるみ気味。この辺りから笑いの要素が無くなりシビアに描かれるので観てて辛かった。怒りが沸点に達した理由は身近な問題だったとして神経質な事柄に焦点を当てた着眼点がとても秀逸。

この映画は同様に格差社会を描いた「ジョーカー」と同じジャンルと言える。ただジョーカーが観た者たちの共感を呼んで世界的な社会問題になったのに対し、こちらはただただ憐れに感じるのみ。あちらはダークナイトの前日譚で物語はまだ続くのに対し、こちらはこの作品だけで完結しているという違いのせいかな。

でもまぁパク家の奥さん(チョ・ヨジョン)と娘(チョン・ジソ)は可愛かった(^^)/

 

2月11日追記

いやぁ、予想通りというか予想外というかどっち?アカデミー獲りましたね!しかも四冠。白すぎるアカデミーの余波で強めの揺り返しが起きて追い風となったのは否めないけど、十分受賞にふさわしい作品なのでやはり妥当なのかも。

昨今の日韓関係からすれば絶対先を越されたくない国に獲られて本音ベースでは「悔しい」のだけどね。とまれこの先しばらくはアジア映画に世界の注目が集まるのは間違いないので日本にとってもチャンス到来。ってことでキタノ監督やコレエダ監督を信奉するのはもうやめましょう。

邦画が世界を狙うにはどうすべきか?パラサイトでも証明されたように笑いとシリアスをバランスよく取り入れ、潜在的なメッセージはスパイス程度に留めておくのが肝心。とにかく邦画には「笑い」がない。適度に笑いがあってこそシリアスな場面はより引き立つのにね。

唯一そんな脚本が書けるのはクドカンだけかな。しかも彼の場合は時系列を飛び回って伏線を張って最後に回収して大団円に雪崩れ込むという飛び道具まである。でもクドカンが監督までやったんじゃダメだろうなぁ。監督には湯浅政明監督とかどうだろう?アニメの監督だけど彼の構成力は特筆もの。アニメ監督が実写を撮ることもアンノ監督の成功例があるから容易に実現しそうだし。とまれパラサイトショックは邦画が本気で世界に目を向ける良いきっかけになると信じたいなぁ。



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