彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (4)

2023-08-12 00:38:05 | 二、三の事情

あくる日、

トモちゃんは、

右眼に眼帯をしてました。



酔っ払って、転んだのか、

上司としても、心配できいた。



トモちゃんは、「言えません、」と、拒んだけれど、

ずっ〜と、見守ってきた、上司のわたくしに、

話せないことって、あるのかい、と

ズルいけど、ことの顛末の事情を聞きだした。


やっぱり、

トモちゃんは、桁が、違う。

「十字架を、背負って、

 生きて行くことは、

 出来ません。」って、

キリスト教を持ち出した。



信心なんて、たぶん、これっぽっちもないくせに。

(深い信仰があったなら、謝ります。ゴメンね。)



初めて、聞いたが、

トモちゃんは、彼の暴力を、愛だと、思ってたらしい。

それは、ホントに、愛だったの、トモちゃん。



その彼氏に、

正直に、昨日の一件をすべて話して、

いま、眼帯をしている状況に到り着いたんだそうです。

なにも、話さなければ、

判りもしなかっただろうに、信心のなせるわざなのか

テキトーに、会社を休めば、いいと思うんだが、

たぶん、それも、トモちゃんにとっては、

「十字架を、背負って、

 生きて行くことは、

 出来ません。」

と、答えるんだろう。



そもそも、

なんで、眼帯の原因(もと)となる様な

コトをしてしまったの?、と、たずねると、

「あんなになっているのに、可哀想で」と、

トモちゃんは、人類愛のひと、なのだ。

ホントは、

深い、深い、深い、

慈悲深い信仰にもとづいているのかも。




さよなら、トモちゃん、

いい思い出をありがとう。

元気でね。



しかし、

ここで、話が、終わらないのが、

わたくしなどの、理解を超えて行く、

トモちゃんなのです。

 

 

トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

 

初出 17/08/12 04:49 再掲載 一部改訂

 


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (3)

2023-08-11 07:19:16 | 二、三の事情

とうとうと、

そんなトモちゃんとも、

突然のお別れの時です。



ハードなこの業界で、

トモちゃんは、カラダを壊してしまいました。

 

ホントのところ、

わたくしには、トモちゃんのカラダが、

壊れてしまった理由は、

仕事なのか、何なのかは、うかがい知れません。

 

忘年会とともに、

トモちゃんの送別会となりました。

 

1階が、カウンターバーで、

地下が、プールバーになっている、

当時、よくある、イベントバーです。

 

会社の皆んなは、地下のプールバーで、

ビリアードをしながら、

わいわいがやがや、飲んでました。

わたくしと、同僚、先輩と、トモちゃん、

この4人で、1階のカウンターバーで、

思い出ばなしを、つまみに、

笑いながら飲んでいました。

 

皆んな、かなり、酔っ払っていました。

 

トモちゃんの隣の同僚が、

いたずらごころで、ズボンのチャックをさげ、

My Son、(マイ サン)、息子を、

どっこいしょ、っと、(これで、いいかい!?)

社会の窓から、社会へと、可愛い子には旅をさせろと、

立派に旅立たせました。

 


トモちゃんは、

わたし達の常識では、はかれません。

 

ふくんで、そして、上下運動に、

 

地下から上がって来て、それを目撃した女子社員が、

あわてて、地下の社長に言いつけ、呼びに行きました。

それで、この件に関しては、

一件落着に、み、え、た。

その社長を呼びに行った、

気のきかねぇ、いや、嘘です、

気のきいた女子社員が、

トモちゃんの彼氏に、

夜分遅くだけれども、と連絡をして、

酩酊しているトモちゃんの状況を説明して、

タクシーで帰らせました。

 

 


トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

初出 17/08/11 09:25 再掲載 一部改訂


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (2)

2023-08-11 03:06:09 | 二、三の事情

とある撮影の仕事で、

 

わたくしたちが、

地方ロケーションの仕事から、

撮影を終えて東京に戻る前日のことです。

 

東京の会社で留守番をしているトモちゃんに連絡し、

東京に戻る飛行機の便名とその到着時間を伝えて、

羽田から、撮影機材を都内の機材会社に、

返却するための機材車の手配をするように、

指示を出しました。


トモちゃんには、ちゃんと、メモを取らせ、

そのメモの内容を

復唱する様に繰り返させ、

念を押しました。



それで、あくる日、羽田に着くと、

トモちゃんは、

ひじを、くの字に曲げて

ハンドバックをさげていました。



「おつかれさまですぅ」ハスキーな声で、

トモちゃんが、笑顔で迎えてくれます。

お〜ぉ、お〜、お疲れ、

で、機材車は?

「ハイっ?」

ハイっ!?、じゃね〜よ、機材車は?

「ハイっ?」

トモちゃんは、とっても笑顔です。

いい加減にしろ、よぉ、!!

機材車は、どこなんだ、よぉ、!!

「呼んでません(笑)」

ぶちッ、ぶち、ぶち、ぶち、ぶちッ、

お前が、ひとり、迎えに来て、なんに、なるんだよぉ!

トモちゃんは、あふれんばかりの笑顔で、

「わたしが、迎えにくると、

 皆さんが、喜ぶと思ってぇ

さすが、トモちゃん、は、逸材です。

眉が太く、斉藤由貴に似て、とっても可愛いと、

自信たっぷり、なんでしょう。



昨日のメモは、

どうしたんだぁ!?

喰っちまったのかぁ!?



記憶は、溶けちまったのかぁ!?

われわれの常識の次元を超えています。



おかげで、ワゴンタクシーで、

機材は、無事、都内の機材会社に返却されました。



トモちゃんは、

まるで桁が違うんです。

 

 

 

トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

 

初出 17/08/10 17:21 再掲載 一部改訂


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (1)

2023-08-10 03:06:46 | 二、三の事情

わたくしがいた

映像制作会社の

出来事です。

 

わたくしは、

モモンガを撮影した映像制作会社が倒産してしまい、

その会社が倒産する前に

別の映像制作会社にさきに移った先輩の声掛けで、

その新しい映像制作会社に、

無試験で中途採用として潜り込みました。



その会社の入社試験は大変難しく、

新人として入社するのは大変狭き門でした。

その業界では名をはせたディレクターの方々が役員で、

その面接を、クリア、クリア、クリアして、

入社した20代前半の、初々しい女性の新人が、

わたくしの部下となりました。



彼女の名前は、トモちゃん、

声は、ちょっとハスキーで、

眉がちょっと太く、斉藤由貴に似ていました。



会社の仕事は、

突然の残業が多く、夜が深くなり、

終電後のタクシー帰りも増え、

わたくしなどは、

友だちと約束したコンサートに行けず、

わざわざ、わたくしの為に、

チケットを取ってくれた、その友だちに、

「もう、お前の為に、二度とチケットは取らないし、

 誘わない」と、

約束を断り叱責されることは、

一度や、二度では、なかったんです。

そのため、

いままでの友だちが、離れていくような状況でした。



そんなある日、トモちゃんに会って2〜3ヶ月後だ。

新人部下のトモちゃんが、

わたくしに、相談があるといいます。



当然、わたくし同様に

プライベートの自由な時間の相談か、と思いました。

プライベートは、プライベートですが、

さすが、業界の名をはせた、お歴々の面接官を、

クリアしたトモちゃんの相談は、次元が、違いました。

彼女は「いま、住んでるアパートの壁が薄いンですぅ」

いう。

あれ、仕事と自分のプライベートの時間とか、

そういう、たぐいの、話じゃないの???

腰が抜けました、トモちゃん、あなたは、スゴイ。

「彼と、声を出した、

 思いっきりのエッチが、出来ないんですぅ」


あのね、しかるべきホテルに行くとかね、

お金を貯めて、壁の厚い、

隣を気にしなくてすむ様なね、

アパートに、引っ越すとかね、

方法は、あると思うよって、

そんな答えが、わたくしの回答の限界でした。



ヘンな信頼をされ、見込まれたモンです、

上司として、試された、ひと幕でした。

 

 



トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます。

 

 

初出 17/08/09 05:13 再掲載 一部改訂


落語の神様

2023-08-09 03:12:54 | 落語

ひとりの神様がいた。

神様の数え方の単位は、柱(はしら)ですから、

正確には、ひと柱の神様がいらっしゃった、

という事になるので御座いましょうか。



この国には、

八百万神(やおよろずのかみ)という具合に、

いろいろ沢山の神様がいらっしゃる、訳で御座います。

その中でも、

わたしが、お話したいのは、

落語の神様、のことで御座います。

その神様は、

外見は、白髪を背後(うしろ)に流され、

細身で、眼鏡をかけておられ、

よくタバコを吸われるので御座います。



ある日、ある用事で、とある会館を、訪れました。

その会館の、ホールロビーの掲示板に

いま、売れ始め、

チケットが入手困難な落語家さんが、

そこの会館で、

落語会を演られるチラシが貼られておりました。



最近、追っかけはじめておりましたので、

落語の会を主催する、その会館の窓口に伺い、

チケットが、まだ、残っているかどうかを、

お訊ねますと、

もう、完売です。と、

窓口の女性から、きっぱりとした返事が、

返って来ました。

残念に思い、引き返そうとした、わたしの後ろ姿に、

ちょっと、

お待ちください。

まだ、チケットは、ございますので、

是非、お越しください。

という、有難い、ご丁寧な、お言葉が、

かけられたのでした。



これが、落語の神様との、

有難い出逢いだったので御座います。



この出逢いをきっかけにして、

わたしは、この神様のお力に、

随分と、お世話になるように、なったので御座います。



当時、前日か、当日にならないと、

自分のスケジュールも、はっきりとしないような、

仕事に従事していたので、

先の予定が立たない状況で御座いました。



そこで、

前日、いや、当日に、神様にお願いを致しまして、

貴重なお座席を、おわけ頂いておりました。

 

もちろん、

チケット代は、お支払いさせて頂いておりました。

とは、言っても、

お支払いをさせて頂いたチケット代とは、

当のチケット代と同等の金額ですので、

お布施の役割を果たしていたのかどうかは、

定かではありません。



こんな、我儘な、他所(そと)から見たら、

身勝手な神頼みにも、

ニコニコ笑って、お応えして頂いていたのが、

この落語の神様だったの御座います。



さらに、

この落語の神様の、素敵な計らい、天恵は、

有難い落語を観させて頂いた後に、

やって来たので御座います。



打上げへの参加の切符を、

毎回、有難くもお与え頂く恩恵で御座います。

もう、盆と正月が、合わさってやって来たような、

そんな陳腐な表現では、収まらないので御座います。

この落語の神様の、

打上げに参加させて頂く切符の気風の良さ、

なんて、駄洒落では、済まないので御座います。

 

お懐の深さであり、大いなるお慈悲で御座います。

 

打上げに参加させて頂いたことで、

わたしの落語への、落語家さんへの、

造詣が深まった事は、

勿論、間違いがないと、

言っても過言ではないで御座いましょう。



落語の神様に、

いくら、感謝をしても、感謝しきれないものが、

御座いますのは、当然の事で御座います。



しかし、

わたしの生活の変化により、

落語会や、寄席から、足が遠のき、

もっぱら、寝床の落語のCDが、

日々の慰安と成りまして、

未だ、落語の神様への、この御恩に、

なにも、報いたり、恩返しが、出来て御座いません。



義理を欠いている人、とか、

後ろ指を差されても、石つぶてを投げられても、

何も言い訳が、出来なく、

唯々、落語の神様への、懺悔をしなくてはならない、

ところで御座います。



しかし、

「借りた恩は、

 早く返すモンじゃない」

という、立川談志さんの言葉を信じる、

わたしは、詭弁や、言い訳ではなく、

これからですが、

ゆっくりと、少しずつでは、ありますが、

お返しさせて頂こうと思っているので御座います。

 

どのように、

お返しをさせて頂くのが良いのかも、

深慮しなくてはなりません。

それがわたしのような者の考える事で御座いますので、

独りよがりで、あるかもしれませんが、

きっと、落語の神様には、

赦して頂けると信じております。


落語の神様、

どうか、それまで、

お達者で、ご長命で、いらっしゃって、くださいませ。



神様に、

お達者で、ご長命で、とお願い致しますのも、

落語っぽい物言いだと、思っている訳で御座います。

 

 

初出 17/09/11 05:56 再掲載 一部改訂