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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

日本国憲法起草のベアテ・シロタ・ゴードンさん死去の報に寄せて 両性の平等に関する自民維新のお粗末政策 

2013年01月04日 | 日本国憲法の先進性

1945年のクリスマス―日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 [単行本]

ベアテ・シロタ ゴードン Beate Sirota Gordon 平岡 磨紀子

 

 

 日本国憲法の最高理念は「個人の尊厳」(人はみなそれぞれ個性があるからこそ素晴らしく、尊重されなければならないという、良い意味での個人主義) なのですが、個人の尊厳という言葉は、次の条文にしか出てこないことをご存知でしょうか。

第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。


 第2次世界大戦後に連合国軍総司令部(GHQ)の一員として日本国憲法の草案作成に携わり、この24条などの条文を盛り込んだベアテ・シロタ・ゴードンさんが2012年12月30日ニューヨークの自宅で89歳で死去されました。

 彼女は1923年にオーストリアで生まれ、著名ピアニストだった父のレオ・シロタさんが東京音楽学校の教授に就任したことをきっかけに29年に来日され、幼少期を日本で過ごし、日米開戦前に、大学進学のため日本を離れて米国にわたりましたが、終戦後にGHQ職員として採用され、再び来日され、憲法の草案作成指令を受けて人権小委員会に所属されました。

 そして彼女らが起案した内容が日本国憲法14条(法の下の平等)、24条(婚姻における両性の平等)につながったという方でした。戦後も何度も来日され、日本の女性の権利の確立のために力を尽くされました。

 ちなみに、この24条は自民党のトンデモ憲法改正草案では全面削除されてしまっています。安倍自民党は野田聖子氏や高市早苗氏が党の幹部になったことで話題になっていますが、女性の皆さんは、自民党が両性の平等規定を憲法から削除しようとしていることをお許しになるのでしょうか。

(2012年の自民党改正草案では、これまでの条項をほぼそのまま2項、3項にして、1項として「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」という条項が加えられており、戦前の家制度への回帰と言われています)

総選挙の争点7 安倍自民党の「憲法改正」案なら基本的人権の保障は大日本帝国憲法に逆戻りする

(ドキュメンタリー映画「ベアテの贈り物」より)



 さて、ペアテさんは2000年5月2日に国会の憲法調査会で意見陳述し、

「日本国憲法は世界に誇るモデルだから50年以上も改正されなかった。他の国にその精神を広げてほしい」

と訴え、こう証言しています。

 私は、戦争の前に十年間日本に住んでいましたから、女性が全然権利を持っていないことをよく知っていました。だから、私は憲法の中に女性のいろんな権利を含めたかったのです。配偶者の選択から妊婦が国から補助される権利まで全部入れたかったんです。そして、それを具体的に詳しく強く憲法に含めたかったんです。例えば、最初の私の草案には次のことを書きました。

「家庭は、人類社会の基礎であり、その伝統は、善きにつけ悪しきにつけ国全体に浸透する。それ故、婚姻と家庭とは、両性が法律的にも社会的にも平等であることは当然であるとの考えに基礎を置き、親の強制ではなく相互の合意に基づき、かつ男性の支配ではなく両性の協力に基づくべきことをここに定める。これらの原理に反する法律は廃止され、それに代わって、配偶者の選択、財産権、相続、本居の選択、離婚並びに婚姻及び家庭に関するその他の事項を、個人の尊厳と両性の本質的平等の見地に立って定める法律が制定さるべきである。」

 ほかの条項には私は次のことを書きました。
「妊婦と乳児の保育に当たっている母親は 既婚 未婚を問わず 国から守られる。彼女たちが必要とする公的援助が受けられるものとする。嫡出でない子供は、法的に差別を受けず、法的に認められた子供同様に、身体的、知的、社会的に、成長することにおいて機会を与えられる。
 そしてまた、私は次の言葉を書きました。
「養子にする場合には、夫と妻、両者の合意なしに、家族にすることはできない。養子になった子供によって、家族の他のメンバーが、不利な立場になるような偏愛が起こってはならない。長男の単独相続権は廃止する 。」
 そのほかにも私は子供の教育の平等についても条項を書きました。
 すなわち 「公立、私立を問わず、国の児童には、眼科の治療を無料で受けさせなければならない。また、適正な休養と娯楽を与え、成長に適合した運動の機会を与えなければならない」


 国の基本法たる憲法の条文としては長すぎる気がしますが、いまだに、女性の上級管理職の割合は数パーセントで、女性の賃金は男性の6割未満、世界経済フォーラムがまとめた「The Global Gender Gap Report 2011」によると、男女平等度合いを示す指数で135カ国中98位で、欧米の先進国だけでなく中国(61位)にも負けている日本の現状からすると、これくらいこってりとした両性の平等規定にしておいた方が良かったのかもしれません。

 この草案なら文句なく非嫡出子の相続分差別に関する違憲判決もとっくに最高裁で出ていたでしょうし、選択的夫婦別姓制も判決で義務付けられてしまっているでしょう。

 ところで、自民の改憲案だけではなく、日本維新の会の両性の平等に対する理解がお粗末だと評判なのをご存知でしょうか。

 2012年9月9日に大阪維新の会が現職国会議員らを招いて政策を語り合った公開討論会も、参加した約30人は、橋下氏、松井一郎大阪府知事ら維新幹部、維新に合流を決めた7人の国会議員、現職知事を含む首長経験者、有識者など全員男性だったため、有識者の1人として参加した政策研究大学院大学の北岡伸一教授は、 議論の途中、

「この会合の1つの欠点は女性がいないことだ」

と指摘したそうです。

 北岡教授は「低迷する日本を復活するために避けて通れないのは人口減少をどうするか」と指摘し、維新が国政政策の基本的な考え方をまとめた綱領「維新八策」などに対し

「女性が力を発揮しながら子供を育てるという観点が入っていない」

と注文を付けました。

 しかし、この大阪維新の会に、かつて『文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは「ババア」』『女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です』と語った石原氏らが加わったのですから、日本維新の会が両性の平等への理解を深めるわけがありません。

人の気持ちがわからない石原慎太郎氏に今の日本は任せられない


 日本維新の会の2012年の総選挙での公約には女性の社会進出への記載は全くなく、わずかに政策実例集に

保育の成長産業化(例)
・保育バウチャー制度の導入
・新規参入規制の撤廃、規制緩和
・ワークライフバランス

とあるのみでした(子育て支援NPO代表が斬る、衆院選子育てマニフェスト比較参照)。これらはどれも、女性の権利を保障するというよりも、業者への利権を与えるというものでしかありません。

 さて、そんな維新の会の選挙戦では「橋下ベイビーズ」と呼ばれた女性候補者たちが話題になったそうです。

 公認候補のなかには、元グラドルの佐々木理江氏(30才・東京21区)や、スノーボードの元日本チャンピオンで、2011年の「国民的“美魔女”コンテスト」でファイナリストとなった海老澤由紀氏(38才・茨城1区)などの女性候補の名もあり、野田民主党政権の藤村修官房長官(当時)への対抗馬に、美容会社社員・上西小百合氏(29)を擁立し、新人ながら見事に藤村氏を蹴落としました。

 この神戸女学院大学時代に天神まつりなどのキャンペーンガールを数々務めたという上西氏は、「美人刺客」と呼ばれたのですが、選挙中にはあまりに拙劣な選挙演説も話題になり、また当選後、早くも3日後に選挙運動員が逮捕されたことでさらに話題になりました。

前科前歴者がずらっと当選し、総選挙後1週間足らずで4陣営6人が毎日逮捕される日本維新の会

(強制捜査の対象となった上西陣営)



 ところで、ベアテさんたちアメリカの、それも若者が日本国憲法の草案を作ったと聞くと、押し付け憲法論もむべなるかなというような、複雑な気持ちになられる方がいらっしゃるかもしれません。

 しかし、日本は第二次大戦に敗れ、ポツダム宣言を受諾し、無条件降伏しました。そのポツダム宣言では

「日本国政府は日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし。言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は、確立せらるべし。」(第10項)

とされていましたから、日本国は民主主義の障壁除去、自由・人権の尊重の確立をなすべき法的義務を負っていました。

 ところが、連合軍が何度日本政府に新憲法案を作るように促しても、立憲主義を全く理解していなかった日本政府は、両性の平等を含む基本的人権を保障するような現代立憲主義憲法を全くつくることができなかったのです。

 そのため、やむなくGHQが草案を作ることになったのであり、このような経緯で制定された日本国憲法制定は、大日本帝国が受諾したポツダム宣言上の義務の履行だったのです。そして、日本の議会も国民もこの新憲法を満腔の賛意を持って大歓迎したのです。

 そもそも、近代立憲主義憲法と言うものは、その国の単独の努力で作れるものではなく、人類の多年にわたる努力の成果です。フランス人権宣言やアメリカ独立宣言、またワイマール憲法の影響をどの国の憲法も受けているものです。

 戦争直後の日本にやってきたアメリカの若者たちは、過去数百年の人類の歴史を学び、自国の憲法以上の最も進歩した理想の憲法を我が国にもたらしてくれたと言えるでしょう。日本国憲法は、時間と空間を超えた人類の合作なのです。そんな日本国憲法が押し付け憲法とは言えないというのは憲法学会の通説です。

 以来、70年近くが経ちました。

 しかし、グラドルだの美魔女だのを候補に立てながら両性の平等や少子化対策の一つも公約に上げられない日本維新の会の体たらくや、そもそも改憲案から両性の平等の条文を削除ないし訂正してしまおうという自民党のありさまを見ると、いまだ、日本人はベアテさんたちが起草した日本国憲法に追いついていないとの感を改めて強くするのです。

 早く日本国憲法に我々も追いついて、それから、ベアテさんたちにも誇れる「自主憲法」が創れる実力を身に着けたいものです。

 

今は、ベアテさんたちに顔向けができないような、恥ずかしい気持ちです。

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毎日新聞 2013年01月01日 14時18分(最終更新 01月01日 23時16分)

ベアテ・シロタ・ゴードンさん=名古屋市で2007年2月、竹内幹撮影
ベアテ・シロタ・ゴードンさん=名古屋市で2007年2月、竹内幹撮影

 【ニューヨーク草野和彦】第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)民政局員として日本国憲法の男女平等などの条項を起草した米国人女性、ベアテ・シロタ・ゴードンさんが昨年12月30日、膵臓(すいぞう)がんのため、ニューヨーク市内の自宅で死亡した。89歳だった。親族が毎日新聞に明らかにした。

 ゴードンさんは生前、「日本の憲法は米国の憲法より素晴らしい。決して『押しつけ』ではない」と主張し、9条(戦争放棄)を含む改憲の動きに反対していた。親族は、故人への供花をする代わりに、作家の大江健三郎さんらが設立した「9条の会」への寄付などを呼びかけている。

 1923年、ウィーン生まれ。有名ピアニストだった父が東京音楽学校(現東京芸大)に招かれたことに伴い、一家で来日。5~15歳まで東京で暮らした。米国の大学に進学後に太平洋戦争が開戦。ニューヨークで米タイム誌に勤務していたころ、日本に残った両親の無事を知ってGHQの民間人要員に応募、45年に再来日した。

 25人の民政局員の中では最年少の22歳だった。憲法起草委員会では人権部門を担当。10年間の日本生活で、貧しい家の少女の身売りなどを見知っていたことから、女性の地位向上を提案。14条(法の下の平等)や24条(両性の平等)に反映された。

 米国に戻った後もしばしば講演などで来日。00年5月2日には国会の憲法調査会で意見陳述し、「日本国憲法は世界に誇るモデルだから50年以上も改正されなかった。他の国にその精神を広げてほしい」と訴えた。

 また、ニューヨークの日米交流団体「ジャパン・ソサエティー」などに勤務し、狂言の野村万蔵さん、版画家の棟方志功さん、茶道の千宗室さんらを米国で紹介。文化の橋渡し役としても活躍した。


 

 

写真

 【ニューヨーク=共同】第二次大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)民政局のスタッフとして日本国憲法の起草作業に携わり、男女平等に関する条項を書き上げた米国人女性ベアテ・シロタ・ゴードンさんが昨年十二月三十日、膵臓(すいぞう)がんのためニューヨークの自宅で死去した。八十九歳だった。娘のニコルさんが三十一日、共同通信に明らかにした。追悼式は後日行われる。 

 ニコルさんは「母は生前、憲法の平和、男女同権の条項を守る必要性を訴えていた。改正に総じて反対だったが、この二つ(の変更や削除)を特に懸念していた」と語った。供物で弔意を示したい場合は、代わりに護憲団体「九条の会」に寄付してほしいという。

 一九二三年、国際的ピアニスト、レオ・シロタ氏の娘としてウィーンに生まれた。作曲家の山田耕筰氏から東京音楽学校(現東京芸大)教授に招かれたシロタ氏に伴って二九年に来日、約十年間を日本で過ごした。

 三九年、両親を日本に残し米カリフォルニア州の名門ミルズ大に留学。米国籍を取得した。卒業後、米誌タイムの助手として働き、終戦後の四五年末にGHQ付の通訳・翻訳官として再来日した。

 四六年二月、民政局長ホイットニー准将の下、二十二歳の若さで憲法起草作業に従事。二四条(両性の平等)など人権に関する条項を書き上げる一方、案文をめぐる日本政府との折衝で通訳を務めた。

 四七年に離日。GHQの通訳だった男性と結婚し、ニコルさんらをもうけた。育児の傍らニューヨークのジャパン・ソサエティーなどに勤務、日米交流を進めた。

 晩年は度々来日、憲法起草での役割を積極的に語った。日本の憲法は「歴史の英知」として戦争放棄をうたった九条を擁護。故市川房枝氏ら日本の女性リーダーとも広く交流した。  (写真は共同)


 

女性の視点が足りない? 男だらけの橋下維新
維新の研究

2012/9/20 7:00 日本経済新聞

 「結婚して安心して子育てできる日本にしたいんです」

 9月15日、大阪・難波の駅前で、山口県の女性(29)が地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)の街宣車の上でマイクを握り、 声を張り上げた。女性は維新が次期衆院選候補者を養成するために開いた「維新政治塾」の塾生だ。考え方や話し方が優れているとの理由で、政治塾が講義の一 環として初めて開いた街頭演説会のメンバーに選ばれた。

■演説会の女性比率は高いが…

 
維新政治塾の街頭演説会では、20代後半の女性塾生が目立った(15日、大阪市中央区)
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維新政治塾の街頭演説会では、20代後半の女性塾生が目立った(15日、大阪市中央区)

 同日演説した14人のうち5人は女性だった。政治塾生の女性比率は1割前後とみられ、演説会の女性比率は高いことが分かる。メンバー選びに 関わった維新議員は「外に出してもおかしくない人を選んだら結果的にこうなった」と説明する。優秀な女性が多いことは、維新にとってアピール材料になる。

 だが、実は橋下氏周辺や維新議員には女性が少ない。橋下代表、松井一郎幹事長以下、大阪維新の幹部は男性ばかり。新党「日本維新の会」に合 流する現職国会議員も7人全員が男性だ。大阪維新の会に所属する地方議員(大阪府議、大阪市議、堺市議)103人のうち女性は9人(8.7%)。もともと 議員になる女性は多くはないが、同じ3議会で比べても公明党(13.5%)や自民党(13.5%)より少ない。

 大阪市政でも、市長や幹部職員に政策の助言などをするブレーンを多数任用しているが、特別顧問は元経済企画庁長官の堺屋太一氏ら18人全員が男性。特別参与は45人のうち女性は1人だけだ。

 
維新の第1回公開討論会の出席者は全員男性だった(9日、大阪市中央区)
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維新の第1回公開討論会の出席者は全員男性だった(9日、大阪市中央区)

 9月9日に維新が現職国会議員らを招いて政策を語り合った公開討論会も、参加した約30人は、橋下氏、松井一郎大阪府知事ら維新幹部、維新 に合流を決めた7人の国会議員、現職知事を含む首長経験者、有識者など全員男性だった。有識者の1人として参加した政策研究大学院大学の北岡伸一教授は、 議論の途中、突然指摘した。「この会合の1つの欠点は女性がいないことだ」

 北岡教授は「低迷する日本を復活するために避けて通れないのは人口減少をどうするか」と指摘。維新が国政政策の基本的な考え方をまとめた綱領「維新八策」などに対し「女性が力を発揮しながら子供を育てるという観点が入っていない」と注文を付けた。

 世界経済フォーラムがまとめた「The Global Gender Gap Report 2011」によると、男女平等度合いを示す指 数で日本は135カ国中98位。欧米の先進国だけでなく、シンガポール(57位)や中国(61位)にも水をあけられている。橋下氏は常に世界の国々や大都 市との競争を意識しているが、国政を担うならば男女ともに能力を発揮しながら日本経済を成長させるという課題を避けて通ることはできない。

■維新八策にも生かせず

 維新八策では100項目以上ある基本方針や理念のうち、女性が働きやすい環境づくりにかかわるものは「外国人人材、女性労働力の活用」 「ワークライフバランスの実現」と記載してある程度。若者の経済基盤を安定させて子供を産みやすくし、人口減少防止につながる施策を見ても「若年層を含む 現役世代を活性化させる社会保障」「正規雇用、非正規雇用の格差是正」との項目があるが、女性の視点を生かしたというほどの内容ではない。

 維新に所属する女性議員の1人によると、「維新八策づくりを所属議員で議論したときは、少子化対策などをもっと盛り込んだ方がよいという意見があった」。しかし、維新八策は大きなテーマを示す位置づけのため、詳しい記載はしなかったという。

 一方、維新ではない会派の女性市議は「橋下さんは新しそうに見えて古い。男女共同参画をまったく理解していない」と手厳しい。「(男女とも に子育てする時代なのに)保育政策の話になるといつも『お母さんが……』という言い方をしていて、性別の役割に縛られている」と指摘する。「普段新しいふ りをしているだけに、古くさいことを言われると、新しさが装いにしか見えない」という。

 この市議は、維新が急ピッチで進める国政進出の手法にも懸念を示す。「女性の視点が重要だと頭で理解するだけでなく、自分自身の経験として 分かっていないと、地に足が着いた発言はできない。公募で集めるという維新の衆院選候補者たちは、こうした役割を果たせるのだろうか」

 

 2005年の「小泉チルドレン」、2009年の「小沢ガールズ」と、選挙で“風”が吹くたびに大量当選する新人議員。今回の衆議院議員選挙でがぜん注目を浴びているのは、日本維新の会から出馬する「橋下ベイビーズ」の面々だ。

  例えば、橋下市長のお膝元・大阪7区--民主党の藤村修官房長官(63才)への対抗馬に、維新の会は新人の美容会社社員・上西小百合氏(29才)を擁立し た。神戸女学院大学時代に天神まつりなどのキャンペーンガールを数々務めた彼女は、“美人刺客”として話題を呼んでいる。

 「維新であれば必ずや日本を変えることができる!」

 上西氏は初の街頭演説で威勢よく叫び、維新はこの区を躍進の象徴と位置づけているようだ。

 上西氏を含め、日本維新の会は11月26日までに142人の候補者を発表。他にはどんな候補者がいるのか。在阪ジャーナリスト・吉富有治さんの話。

 「候補者の顔ぶれは、ほとんどが維新政治塾出身です。橋下氏が塾長を務める維新政治塾は、今年初めに開講。選挙で勝てる“タマ”を全国からの応募で集め、育成してきました。塾生は、地方議員や元官僚、医師など、立派な経歴をもつ人も多いですね」

 候補者を選ぶうえでは、主に“2つの基準”を満たしているかどうかがチェックされるという。

 「ひとつは、維新の政策を理解しているかどうか。さらに、お金があるかないかが重要。他の政党では、党公認候補には選挙費用が配られるのですが、お金がない維新はその逆。候補者は自腹で供託金を含む400万円を用意することになります」(吉富さん)

 公認候補のなかには、元グラドルの佐々木理江氏(30才・東京21区)や、スノーボードの元日本チャンピオンで、昨年の「国民的“美魔女”コンテスト」でファイナリストとなった海老澤由紀氏(38才・茨城1区)などの女性候補の名も。

 佐々木氏は出馬を表明すると同時に、「1才サバを読んでいた」ことをスポーツ紙などで告白。「美しすぎる候補」などの見出しが並んだ。

 海老澤氏は公式ホームページをつくり、早速、<フレッシュな新人によって、断固改革を進める覚悟>とアピール。

 しかし、外見やフレッシュさを前面に押し出すのはいいが、「問題は中身」とジャーナリストの横田由美子さんは指摘する。

  「若さや外見の美しさを否定はしませんが、報道を見る限り、彼女たちがどういう意思をもって立候補したのかがまるっきり伝わってきません。上西さんは演説 でも言葉によく詰まっていました。橋下さんが『愛嬌で許してください』とフォローしていましたが、『それで国政が務まるの?』というレベルです。

 もちろん女性議員はもっと増えるべきですが、『若くてキレイな女性候補なら勝てる』という党の方針があまりにも透けて見える。維新の候補は、“小沢ガールズ”のときよりもあからさまで、逆に女性をバカにしているのではないかとさえ思えます」

 維新の会の公認候補発表はこの後も続くと見られる。明確な意思のない話題先行の議員は、国政で実績を上げることなく消えていくことも多い。候補者が本当に国政の場にふさわしいかどうか、しっかり見極めたいものだ。

 ※女性セブン2012年12月13日号

 
 

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17 コメント

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ベアテ・シロタ・ゴードンさん、ありがとう。さようなら。 (交通人)
2013-01-04 10:42:00
> ちなみに、この24条は自民党のトンデモ憲法改正草案では全面削除されてしまっています。

確かに空欄になってましたが、これは削除ということですか?
空欄は「変更せずそのまま」という意味だと理解してましたが…

全面削除は、間違いないのでしょうか?


> 女性の賃金は男性の6割未満

対策としては、、、
・出産後の職場復帰
・育児をしながら働ける環境づくり
・同一労働同一賃金
政府の具体的対策が急務ですね。

そのほかの原因としては、、、
「結婚したら家に居てほしい」と思う男性が多い
「結婚したら専業主婦になりたい」と思う女性が多い
意識改革を行っていくコトも重要ですね。

宮武家では、いかがですか?
まぁ、先生は弁護士ですので、奥様が働く必要は無さそうですけど。


> 早く日本国憲法に我々も追いついて、それから、ベアテさんたちにも誇れる「自主憲法」が創れる実力を身に着けたいものです。

宮武氏が考える「誇れる自主憲法」を聞いてみたいですね。
お忙しいとは思いますが、ぜひ記事化してください。
返信する
ご指摘ありがとうございました (ray)
2013-01-04 12:46:49
一部記事を訂正しておきました。
返信する
Unknown (ネのつくウ)
2013-01-04 15:15:32
二十歳そこそこの若者の青春の悶々をアメリカの分も含めて国情も鑑みずぶつけられたものをただ受け入れるしかなかった敗戦国の無惨さには今更ながら寒気がしてきます。

政府には早く対米従属主義からの転換を図れるようになって貰いたいものです。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-04 15:42:42
http://dametv.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-a801.html
このブログとそこに集まって来る女性たち
女性たち自らが勝ち取った権利を積極的に消し去ろうとしています

この人たちにその事の大切さを説いてみて下さい
すごい、噛み付き方しますから
返信する
ハンドルネーム (ray)
2013-01-04 16:06:14
今年から、みなさまお一人おひとつずつ、固定ハンドルネームをつけていただくことを昨年以上に強くお願いしております。

当ブログ左上部の注意書きをお読みになって、是非、素敵なハンドルネームをつけてくださいませ。
返信する
Unknown (kei)
2013-01-05 14:36:11
アメリカに押し付けられたなどと言っているのは、終戦直後を知らない世代が殆どであり、国民の殆どは、主権在民・男女同権・戦争放棄を謳ったこの憲法を喜んだのです。

男女同権には程遠い現状ではありますが、だからと言って現状に憲法を合わせてしまえとは思いません。
元々憲法からはかけ離れたところからスタートしたのですから、これからも近づいて行く努力をすべきです。
返信する
憲法は理想的なものであるべき! (fukafuka)
2013-01-05 15:32:57
シロタ・ゴードンさんの功績の大きさに今更ながら、頭が下がります。そうです、日本の憲法は世界中のそして、人類の理想の憲法なのでしょう。理想憲法が何故悪いのでしょうか、それだけ素晴らしい憲法だからこそ、これだけ長い間、平和が保たれているのでは無いでしょうか。アメリカから押し付けられたと言われていますが、このような客観的な憲法は民主主義の本質を理解しきれていない日本人にはとても作れないでしょう。男女平等はその最たるものだと思います。私たちは、平和憲法をこれからも大切に守って行く義務がある!!!!
返信する
ネのつくウさん (mimosa)
2013-01-05 22:29:22
>二十歳そこそこの若者の青春の悶々をアメリカの分も含めて国情も鑑みずぶつけられたものをただ受け入れるしかなかった
>敗戦国の無惨さには今更ながら寒気がしてきます。

→この文,繋がりがちょっとわかりにくかったです。
で,「ぶつけられたもの」を「ぶつけたもの」に変え,それイコール憲法草案と解釈しつつ拝読しました。(以上ことわりがき)

 あなたのメッセージ,ray先生の記事のなかの,彼女について書かれた部分を読まれてから書かれたのかなあ?と単純に疑問に思いました。
記事をよく読むと,彼女,そのへんにいるただの若い人じゃないですよね…
あなたは,そのへんはあまり読まれずに「20才そこそこの,若者の青春の悶々」などというフレームに,著者と日本国憲法をはめ込まれたのですか?それは,それらが未熟である,というイメージを強調する為に,半ば意図的に?
 ベネディクトの「菊と刀」の件でも感心するのですが,人選においても合衆国は相手(ここでは日本)を尊重するためになのか,相手をよく知る人を見つけてから策を立てるというか…。個人の尊重までは行かないかもしれないけど,相手をよくみて理解しようとする=(敵であっても)相手を尊重していて,ある意味すごいんじゃないかなと私は思います。
日本なんて「上意下達重視」というか,上の命令には絶対服従を求めるような人ばっかりが上に立って民を支配しようとするけど苦笑,合衆国は違うんだなあと。
 草案を考えた時の彼女の年齢が若いのには,私ももちろんびっくりしましたが,でも彼女の年齢が若いからといって,それだけで(彼女の草案による)日本国憲法に疑問符をつけるのは,どうなんでしょう??
私は,それよりも
○そんな若い人が,(アメリカでは)「民主主義なんたるか」の本質がわかっていた点,
○そんな若い女性が,『理想的な憲法』の下地になるものを考えることができた点
のすごさの方に,感動しました(偉大すぎて…)。
 そして,あの当時アメリカでは22才の若い女性でもわかっていた,例えば『男女同権』が,日本では(あれから何十年もたった今でも)よく理解されていないように思えるので,悲しいなあと思います。むしろ,そちらの方が,そういう日本の現状の方が,無惨と言えるんじゃないですか?

keiさん,fukafukaさんに賛成です。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-06 13:06:34
>みて理解しようとする=(敵であっても)相手を尊重していて
本当はこれは日本だけが特別出来ない事だと思います
本当は基本中の基本なのですよ
コミュニケーションとは、相手の意思を聞きとって、自分の意思を伝える事
この日本人の出来ない行為は意思疎通の基本なのです
相手の言ってる事を聞き取る事
理解しようとする事

日本人が理解する意思が無いのは、自分の行動を効率的にするためです
相手の気持ちをいちいち聞いていたら、手間がかかってしょうがないからです
日本人にとっては
だからそれらの作業を簡略化して、省略できるようにする
相手の気持ちを聞いてあげる必要の無い相手とは、相手が逆らってはいけない相手です
必然的に、絶対服従できる相手にしか物を求めないようになります
日本の意思疎通は服従できる相手に自分の意向を押し付ける事
それだけです
それが全ての関係図で当てはまっています
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-06 13:11:17
『男女同権』と言うと日本人は基本男女を物理的に同じ扱いにすればいいと思うだけですね
その他のものに当てはめても通じる事が平等の本質です
では大人と子供で分けるのなら良いのか
そうなってしまいます
何かいった時、そのいったものを形式的にそろえさえすれば良いと思うのが日本人の本質です
返信する

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