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防衛費の異常な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明【案】
2018年12月20日(予定)法律研究者・実務家有志一同
世界的にも最悪の水準の債務を抱える中、米国の財政赤字削減のために巨額の兵器購入を続け、他方では生活保護を引き下げ教育への公的支出を怠る日本政府の政策は、憲法と国際人権法に違反し、是正されるべきである。以下その理由を述べる。
1 莫大な防衛費増加と予算の使い込み
現在、安倍政権の下で防衛費は顕著に増加し続け(2013年度から6年連続増加)、2016年度予算からは、本予算単独でも5兆円を突破している。加えて、防衛省は、本来は自然災害や不況対策などに使われる補正予算を、本予算だけでは賄いきれない高額な米国製兵器購入の抜け道に使い、2014年度以降は毎年2,000億円前後の補正予算を計上して、戦闘機や輸送機オスプレイ、ミサイルなどを、米側の提示する法外な価格で購入している。
しかも、これには後年度負担つまり次年度以降へのつけ回しの「ローン」で買っているものが含まれ、国産兵器購入の分も合わせると、国が抱えている兵器ローンの残高は2018年度予算で約5兆800億円と、防衛予算そのものに匹敵する額に膨れ上がっている(2019年度は5兆3,000億円)。
米国へのローン支払いが嵩む結果、防衛省が国内の防衛企業に対する装備品代金の支払いの延期を要請するという異例の事態まで起きている(「兵器ローン残高5兆円突破」「兵器予算 補正で穴埋め 兵器購入『第二の財布』」「膨らむ予算『裏技』駆使」「防衛省 支払い延期要請 防衛業界 戸惑い、反発」東京新聞2018年10月29日、11月1日、24日、29日記事参照)。
毎会計年度の予算は国会の議決を経なければならないとしている財政民主主義の大原則(憲法86条)を空洞化する事態である。
防衛省の試算によれば、米国から購入し又は購入を予定している5種の兵器(戦闘機「F35」42機、オスプレイ17機、イージス・アショア2基など)だけで、廃棄までの20~30年間の維持整備費は2兆7,000億円を超える(「米製兵器維持費2兆7000億円」東京新聞11月2日)。
さらに、これに輪をかけるように、政府は、「F35」を米国から最大で100機追加取得する方向で検討しており、取得額は1機100億円超で計1兆円以上になる見込みである(2018年11月27日日本経済新聞)。
2 米国のための高額兵器購入による財政逼迫
このような防衛費の異常な膨張について、根源的な問題の一つは、米国からの高額の兵器購入が、トランプ政権の要請も受け、米国の対日貿易赤字を解消する一助として行われていることである。
歳入のうち国債依存度が約35%を占め、国と地方の抱える長期債務残高が2018年度末で1,107兆円(対GDP比196%)に達するという、「主要先進国の中で最悪の水準」(財務省「日本の財政関係資料」2018年3月)の財政状況にある日本にとって、他国の赤字解消のために、さらなる借金を重ねてまで兵器購入に巨額の予算を費やすことは、国政の基盤をなす財政の運営として常軌を逸したものと言わざるを得ない。
また、導入されている兵器の中には、最新鋭ステルス戦闘機「F35」のような攻撃型兵器が多数含まれている。戦闘機が離着陸できるよう海上自衛隊の護衛艦「いずも」を事実上「空母化」する方針も示されている。これらは専守防衛の原則を逸脱する恐れが強い。
政府は北朝鮮情勢や中国の軍備増強を防衛力増強の理由として挙げるが、朝鮮半島ではむしろ緊張緩和の動きが活発化しているし、近隣国を仮想敵国として際限なく軍拡に走ることも、武力による威嚇を禁じ紛争の平和的解決を旨とする現代の国際法の大原則に合致せず、それ自体が近隣国の警戒感を高める、かえって危険な政策というべきである。
3 福祉切り捨ての現状
このように防衛費が破格の扱いで膨張する一方、政府は、生活保護費や年金の受給額を相次いで引き下げている。
生活保護については、2013年の大幅引き下げに続き、今年10月からは新たに、食費など生活費にあてる生活扶助を最大で5%、3年間かけて引き下げ、計160億円削減することになっており、これにより生活保護世帯の約7割の生活扶助費が減額となる。
しかし、この削減は、決定される保護費が最低限の生活保障の基準を満たすのかどうかについて厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会の報告書が提起した疑問を反映させることもなく、子どものいる世帯や貧困に苦しむひとり親世帯を含め、受給当事者の意見を聴取することもなしに決定されたものであった。
また、そもそも、国家財政を全体としてみた場合、これによる160億円の削減は、青天井に増加している防衛費の増加、とりわけ米国からの野放図な兵器購入を抑えれば、全く必要がなかったものである。
日本の国家財政は、米国の兵器産業における雇用の創出と維持のために用いられるべきものではない。国民の生存権よりも同盟国からの兵器購入を優先するような財政運営は根本的に間違っている。
12月20日に記者会見の予定!『防衛費の異常な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明』【案】その2
声明文全体が長すぎて字数が多すぎ、このgooブログの仕様では一つに収まりきらないので、二つに分けます。
このように多岐にわたる問題提起なので、国際法のみならず、教育法、福祉法、平和学、憲法学、財政学の各分野の研究者・実務家が続々と呼びかけ人や賛同者に名を連ねてくださりつつあります。
声明文ができる前からこれほど関心が集まっているのも異例の事であり、いかに安倍政権のやっているむちゃくちゃな金の使い方に危機感を持っている専門家が多いか、ということの表れだと思います。
毎日一日一回でいいので、上下ともクリックしてくださると大変助かります!
無学な思い上がりの上に企図された防衛装備品の配備計画が
ここ数年着々と実現している。
護衛艦いずもの空母化や、グアムと米本土を防衛する為のイージス・アショア導入
これらはその氷山の一角に過ぎない。
・ 『北朝鮮・中国はどれだけ怖いか』
田岡俊次 朝日新書:2007/03/30 第一刷発行
・ 『亡国の集団的自衛権』
柳澤協二 集英社新書:2015/02/22 第一刷発行
上掲の新書は古い情報だが、有権者・納税者が時事問題を整理するに示唆に富む。
どのような経緯で米国から無理筋の押売りに政府が応じていたか、
あるいは”未来の視点から”、今、これら過去の情報に触れる事で、
無為に過ごしてきた時間の重さに思い至る事があるかもしれない。
軍事記者の論説や
軍事研究の点から平和問題を取り上げることを嫌う自称リベラルは珍しくない。
だが、防衛装備品の意義や戦略的機能を理解せず、
「予算の面からのみ」税金の費用対効果を論じても、自称軍事ヲタク()どもや
あるいは自称無党派の”中国脅威論”、その謬説について合理的な反駁を行う事もまた難しい。
もしご存じでなければ、立ち読みなりでどこかで手に取って貰いたい。