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1988年に司法試験に同時に合格し、司法研修所で親友になった同じ年の森川文人弁護士。
出会ってから35年目なんですが相変わらず時々食事に行ったり、コロナが落ち着いていた去年の秋には世田谷区に私の自宅に食事を食べに来たり、未だに親友のままです。
政治的には彼はラディカル、私はリベラルということで、2015年から2016年にかけて
という連載もしました。
そんな二人の間で最近論争になったのが、中国問題。
私が、
「北京オリンピックは観る気がしない。コロナ禍だし、東京オリパラで問題の深刻さを知ったばかりだし、中国開催だし」
とつぶやいたら、彼がその「中国」というフレーズに噛みついてきたんですね(笑)。
私の正直な気持ちを率直に書くと、北京オリンピックの開会式で最後の聖火ランナーの一人がウィグル族の方だったとニュースで読んで、
「ウイグル絶望収容所」に2年で100万人を強制収容。ウイグル「自治」区への中国の弾圧が酷すぎる!
に書いたように、新疆自治区でウィグル族の人の人権を踏みにじっている中国共産党が、その蛮行を覆い隠すために北京オリンピックを露骨に利用しているのが嫌で嫌でしょうがなかったということになります。
中国がウィグルでやっていることは徹底した情報隠蔽がなされているので詳細がわからないこともあって、私は中国本土でグーグル検索ができなかったり、ツイッターが禁止されていたり、ネットを遮断するなど情報操作していることを森川に指摘し、さらには
「香港で中国共産党のやっている事なんて安倍政権の人権侵害の100倍酷い。それを批判できないダブルスタンダードでいて、どうして日本国内の人権侵害を追及できるんだ」
と詰め寄りました。
そんなに習近平国家主席に来日して欲しいのか?安倍政権だけが、市民を抑圧する「香港国家安全法」に反対する欧米の共同声明参加を拒否!
中国当局がノーベル平和賞の報道を全削除。ロシアとフィリピンで政府を批判してきたジャーナリストがノーベル賞を受賞したことを国民に知らせたくない、報道の自由がない中国。
これに対して、森川が
「中国の民衆と中国政府は分けて批判すべきだ」
だとか、
「君の内なるナショナリズムに注意しないといけない」
みたいな、いつものフレーズをLINEで書いてくるのでキレて(笑)、
「お前は香港などで中国共産党がやっている弾圧は批判しないのか。そんなことだから中国盲従派と言われるんだ!」
などとこれまで言ったことがないことまで言ってしまい、彼から何十年前のことを言ってるんだ、偏見だと叱られたわけです(笑)。
これらのやり取りをした後、森川も頭の整理がついたとのことで2022年2月2日に、末尾の時事通信の2月1日付け記事を添付したうえでSNSに書いた文章がこちらになりますので、彼の快諾を得て転載します。
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日本共産党の志位委員長が北京オリンピックへの外交ボイコットを求めたが、衆院選での反共攻撃を気にして中国共産党との違いを鮮明にしたいという意図なら良くない。政治と外交の究極の目的は戦争を避けること。
第二次大戦後、休みなく他国に戦争を仕掛けて何百万人も殺し続けてきたアメリカ合衆国に、自由と民主主義の旗手を気取る資格はない。
【まさに右も左もない】中国のウィグル・チベットなどでの少数民族弾圧に反対するなら、当然、今回の入管法改悪には反対すべき。難民を本国に強制送還して死なせてしまうなら、日本に人権を語る資格はなくなる。
周庭さんら保釈!菅官房長官「香港情勢について引き続き重大な懸念を有しております」。日本共産党の志位委員長「なぜ抗議の一つも言えないのか。日本政府は、自由と民主主義を標榜するなら、抗議を表明すべきだ」
戦争ほど人々の命と健康を奪い、人権を侵害するものはありません。
だから市民の人権を守りたければなおさら、戦争を起こさないことを何より最優先にしなければなりません。
たとえば、亡くなった石原慎太郎氏や極右の面々が、北朝鮮に拉致された被害者を救うために自衛隊の特殊部隊を北朝鮮に送り込むべきだなどとよく主張していますが、そんなことをしても拉致被害者は絶対救出できないだけではなく、第二次朝鮮戦争になってしまい、何十万何百万人という内外の人が死に、何百万何千万という難民が出て、東アジアは最悪の人権状況になってしまいます。
さりとて、私は中国政府による深刻な人権侵害を座視すべきではないとも思っていて、反共精神からではなく人権擁護の立場から言うべきことは毅然として中国政府に言うべきだと考えています。
しかし、中国との戦争回避のための政治・外交と、「人権外交」の調和は非常に難しいと正直思い、悩んでもいます。
それにしても、上の画像の中でも特に、自衛隊員たちが元特殊部隊出身者から私的に訓練を受けているという話は、初めて聞く話でショックでした。
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衆議院側から見た国会議事堂=2017年1月、東京都千代田区
決議はチベットや「南モンゴル」(内モンゴル自治区)、香港も挙げ、「信教の自由への侵害や強制収監をはじめとする深刻な人権状況」があると指摘。こうした動きを「国際社会に対する脅威」と位置付けている。
2021.1.23 18:43 共同通信
陸上自衛隊特殊部隊のトップだったOBが毎年、現役自衛官、予備自衛官を募り、三重県で私的に戦闘訓練を指導していたことが23日、関係者の証言などで分かった。訓練は昨年12月にも開催。現地取材で実際の訓練は確認できなかったが、参加者が迷彩の戦闘服を着用しOBが主催する施設と付近の山中の間を移動していた。自衛隊で隊内からの秘密情報漏えいを監視する情報保全隊も事実を把握し、調査している。自衛官が外部から戦闘行動の訓練を受けるのが明らかになるのは初めて。
森川弁護士に教えてもらった記事1
日米軍事協力の深化、背景に中国の脅威
通常は独自に行う軍事訓練を共同で実施
日米共同訓練で使用された自衛隊の対艦ミサイル
PHOTO: ALASTAIR GALE/THE WALL STREET JOURNAL【八戸】それは、通常であれば日米がそれぞれ独自で行うような軍事訓練だった。昨年12月のある朝、米国の兵士と日本の自衛隊員らはカモフラージュを施したテントに一緒に入り、一方の国の航空機と、もう一方の国のミサイル発射装置を使って、不特定の国の艦船を想定した攻撃訓練を行っていた。その国とは、中国であったかもしれない。
日本北方の海岸沿いの森の中では、計20人以上の米海兵隊員と自衛隊員が前屈みになり、地図とノートパソコンをのぞき込んでいた。その時突然、海兵隊の厳重に管理されたウェブページ上に、「交戦準備態勢に入れ」とのメッセージが表示された。
これらは、地対艦ミサイルによる海上の標的の破壊を想定した米海兵隊と日本の自衛隊による初の合同軍事訓練だった。この演習では、日米双方のミサイル、航空機、艦船、レーダーを運用するため、両国の士官らが肩を並べて指揮に当たった。
日米共同訓練に使用された可動式の米海兵隊レーダーステーション
PHOTO: ALASTAIR GALE/THE WALL STREET JOURNAL海兵隊側のミサイル攻撃の連携作業を担当したベン・リーディング少佐は「インド太平洋に関しては、広大な区域での行動を想定している」とし、「同盟諸国と協力し、できる限り多くの戦力を互いに持ち寄り、戦わなければならない」と語った。
地域紛争への懸念、特に台湾奪取を目指す中国が実際に行動に移すのではないかとの懸念が、日米間の軍事連携深化の原動力になっている。
もっと広い範囲で見ると、アジア太平洋地域の米国の同盟国や友好国は、中国の行動抑止のため以前よりも大きな役割を果たしている。オーストラリアは、長距離ミサイルを含むハイテク防衛計画に1800億ドル(約20兆7500億円)以上を投じ、米国の技術を採用する原子力潜水艦の建造計画を進めるなど、国防能力を高めている。また台湾はミサイルや艦船などへの向こう5年間の軍事支出拡大を計画している。
10年ほど前から中国は、日本が支配する東シナ海の島々の領有権を主張しており、これが日本側の懸念を引き起こしてきた。日本は2018年に、海兵隊をモデルとする水陸機動団を創設した。
今回の実地訓練とは別に最近行われたコンピューター上の軍事演習に参加したカイル・エリソン准将などの米軍当局者は、日本の部隊が迅速に展開して、敵に応じる能力に向上が見られたと述べる。
日米共同訓練で使用された自衛隊のレーダー
PHOTO: ALASTAIR GALE/THE WALL STREET JOURNALエリソン准将は、「われわれの抑止能力には、それを1対1ではなく、1対2、1対3、あるいは1対4にすることが含まれる」と述べた。同准将は、西太平洋で米国を巻き込んだ衝突が起きた場合に前線に配備される公算が大きい部隊の副司令官を務める。太平洋の島をめぐる衝突に備えることは現在、海兵隊の主な焦点となっている。
台湾をめぐる衝突が起きても、日本には平和憲法によって課される制限があるため、日本が自国の領域外で戦う可能性は低い。しかし、日本の指導者たちは、台湾で衝突が起きれば、それが付近の日本の島々に飛び火することを想定しており、米国と連携してそれに備える必要があると述べている。
日本の南西諸島に配備されている対艦ミサイル部隊は、米国を追い払うために西太平洋に艦船を送り込もうとする中国の試みに対抗するのに役立つ可能性がある。
政策研究大学院大学の道下徳成副学長は、台湾海峡で戦争が起きた場合、日米共同作戦にとって最も重要な目的の一つは、中国軍が南西諸島を横切る前に軍の動きを止めることだと述べる。
中国の外務省および国防省にコメントを要請したが、返答はなかった。
米当局者によると、同盟国との連携強化は2022年初めに公表予定の米国の新国防戦略の指針となっているアイデアの一つだ。ロイド・オースティン国防長官は今月、岸信夫防衛大臣と会談する予定だ。
日米共同訓練で使用された自衛隊の対艦ミサイル
PHOTO: ALASTAIR GALE/THE WALL STREET JOURNAL米国とアジアの主要同盟国との間では近年、在留米軍の経費をめぐる緊張が生じていたが、現時点では緊張は解消されているように見える。日本政府は最近、約5万人に上る在日米軍駐留経費の年間負担額を引き上げることに同意した。日本は2022年度から5年間で年平均18億5000万ドル(約2100億円)を支払う。今年度比で4.6%増だ。韓国も昨年、米軍の駐留経費の負担額を引き上げることで合意した。
「レゾリュート・ドラゴン」として知られる日米共同訓練は最近、約2650人の米海兵隊員と1400人の自衛隊員が日本国内の9カ所の訓練地域に展開して行われた。演習のための合同司令部では訓練の様子をモニターしたり命令を出したりするため、米国と日本の参加者が並んで席に着いていた。
艦船攻撃訓練で日本側は三菱パジェロのベース車両に搭載したレーダーを使って目標を確認。米海軍のP-8哨戒機は、この目標が敵であることを確認するため、対象海域を飛行した。日本側部隊は、合同司令部からの目標に関する情報を受けたあと、ミサイルランチャー搭載の2台のトラック車両を木の陰から出し、ミサイル発射筒の角度を上げ、発射までのカウントダウンを行った。ただし、今回の訓練には実射は含まれていなかった。
元米海兵隊大佐で日本側とのリエゾンオフィサー(連絡将校)を務めたこともあるグラント・ニューシャム氏は、中国艦船を共通目標に想定した海兵隊と自衛隊の合同訓練は連携の面で目覚ましい進展を示すものだと指摘。だが日米は断続的な合同訓練ではなく、恒常的な作戦上の関係を築くために合同司令部を設置すべきだと語った。
ニューシャム氏はまた、自衛隊の水陸機動団の隊員が周辺地域で展開する際には海兵隊部隊の一部となるべきだとの見方を示した。
最近のコンピューター上の軍事訓練で浮き彫りになった課題は双方の一体化をさらに深化させることだ。日本側幹部はある会議の際、米側が使用した難解な用語の説明を何度も求めていた。
当時、水陸機動団の団長を務めていた平田隆則・陸将補(12月22日付で退官)は、日米の間でコミュニケーションは問題ではなかったと述べた。
平田氏は、米海兵隊の新たな戦略に沿う形で南西諸島にミサイル発射台や軍事拠点を展開しているとした上で、「われわれは様々な分野でもっと連携を強化すべきだ」と述べた。
森川弁護士に教えてもらった記事2
第135号 2022.02.03発行 by 岡田 充
戦争シナリオを放置していいのか 日米が台湾有事で共同作戦計画
台湾有事を念頭に、日米共同「戦争シナリオ」が出来つつある。(写真 グアムで島嶼防衛のため米軍と共に合同演習する自衛隊=2012年10月13日)日米両政府は1月7日の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(「2プラス2」)で、台湾有事の初期段階に米海兵隊が自衛隊とともに南西諸島を「機動基地」として使い、中国艦船の航行を阻止する「共同作戦計画」推進にゴーサインを出し、日米首脳会談(同21日)もこれを追認した。菅義偉前首相とバイデン大統領が、昨年4月の日米首脳会談で「台湾有事」に向けて日米安保を「地域の安定装置」から「対中同盟」に性格変更してからわずか1年足らず。憲法違反の疑いが濃厚な共同作戦計画という「戦争シナリオ」が、野党の反対や議論もなく独り歩きする日本の現状は、戦争に近づく危険に満ちている。
対中タカ派の素顔
「共同作戦計画」といっても、あまり聞き覚えはないと思う。それもそのはず、「2プラス2」を受け、「沖縄タイムス」「琉球新報」の沖縄2紙を除けば、全国紙の大半は「日米連携、踏み込んだ形」「日米、同盟強化で中国牽制」(「朝日」1月8日朝刊)などと書くだけで、共同作戦計画の詳細には触れていないからだ。
しかし「計画」を放置すれば、戦争放棄をうたった憲法に沿う「専守防衛」政策が、根底から揺らぐ恐れがある。「スルー」するわけにはいかない。1月7日の「2プラス2」からの展開を振り返り、何が問題なのか精査したい。
岸田の外交姿勢については、昨年11月の第2次内閣発足以来、安倍晋三元首相ら自民党右派が集中攻撃を浴びせてきた。まず、安倍の反対を押し切って、外相に林芳正氏を据えたこと。バイデン政権が開いた「民主主義サミット」注1 や北京5輪への「外交的ボイコット」への対応は、のらりくらりとし安倍との「溝」がささやかれた。
しかし年が改まり「2プラス2」が開催されると、「対中同盟」に変質した日米同盟で中国を軍事抑止しようとする安倍・菅路線を継承・加速する姿勢を鮮明にした。首脳会談では、「核廃絶」に関する日米共同声明を敢えて発表し「ハト派色」を見せようとした。しかしそんなイメージ作戦の陰から対中タカ派の「素顔」がくっきりと表れたのである。
半分は中国問題論議
バイデンとの首脳会談は、岸田が訪米による実現を強く希望していた。しかしバイデンが、コロナ対策予算をめぐって民主党上院議員の造反に遭い、7%ものインフレ高進など内政処理に忙殺されて実現せず、結局オンライン会談になった。まず会談内容を振り返る。
1時間20分の会談の新たな合意点は①「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米豪印(クアッド)首脳会合を今年(2022年)春までに開きバイデンも出席、②経済安全保障について緊密な連携を確認、閣僚レベルの日米経済政策協議委員会(経済版「2プラス2」)を設立―の2点だった。
首相側近によると、会談の半分は中国政策に費やされた。そこで、対中政策で何が合意されたのかをまとめる。外務省の発表によると、両首脳は①東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対、②台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す、③香港情勢や新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有―で一致した。
軍事力と同盟の強化が柱
この3点は、2021年4月の菅、バイデン首脳会談の合意内容を「上書き」したもので、新味はない。政権が変わっても外交政策は継承するのが、国家間の基本的取り決めである以上、岸田が日米同盟と対中政策で安倍路線を「継承」するのは当然と言える。継承しなければ大ニュースになる。
問題は「継承」だけでなく、それをどう発展させたかであろう。そこで、安倍路線をどう「加速」したかをみよう。
「2プラス2」(写真=外務省HP)終了後に発表された日米共同発表は
① 日米「2+2」の共同発表を支持。日米同盟の抑止力・対処力の一層強化で一致。岸田首相から、新たに国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を策定し、日本の防衛力を抜本的に強化する決意を表明し、バイデン氏も支持
② 日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用を含む、揺るぎない対日防衛コミットメント及び拡大抑止について力強い発言
これらの方針もまた、第1次内閣以来、岸田が繰り返し強調してきた軍事力強化による中国抑止政策であり、意外性は全くない。
計画内容に口ごもる外務・防衛相
このうち「『2プラス2』の共同発表の支持」という表現こそ、日米の制服が策定してきた「共同作戦計画」のゴーサインを意味する。共同発表は、計画には直接触れず、代わって「同盟の役割・任務・能力の進化及び緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎」注2 という表現を使っている。日米専門家は「共同計画作業」の具体案が共同作戦計画だとみる。
林外相と岸信夫防衛相は終了後の記者会見で、「共同計画作業」が何を指すのかとの質問に対し「相手がある事なので」「答えられない」と口ごもり、明らかにしなかった。
計画策定のスタートは、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を52年ぶりに文書に盛り込んだ昨年3月の日米「2プラス2」と、菅・バイデン首脳会談まで遡る。岸防衛相はオースチン米国防相との協議で「(台湾)有事で日米の緊密連携」を確認し、「台湾支援の米軍に自衛隊がどう協力するか検討する」と約束した。これを機に、制服レベルで計画策定が始まるのである。
基地自由使用と後方支援が必須
日米関係に詳しい米国際政治学者、マイク・モチズキ・ジョージ・ワシントン大準教授は昨年5月、著者も参加した「台湾有事」に関するオンライン国際会議(非公開)で、台湾有事に際し、米軍が自衛隊にどのような役割を演じるよう期待しているかを明らかにした。
彼は、「米国は中国との戦争を望んではいないが、戦争準備が必要という認識で議会は一致している」と米議会の現状を報告。彼を含むワシントンの国際政治と軍事専門家が行った「机上演習」(ウォーゲーム)の結果、台湾有事では、①米軍による在日米軍の自由アクセス②自衛隊の後方支援―がなければ「米軍は中国軍に勝てない」との結論が出たとした。そして、この2条件を盛り込んだ対日要求シナリオの一つとして、「南西諸島での中国艦船の通過阻止とミサイル配備」を挙げたのである。
彼が挙げた対日要求シナリオ注3 は次の6点だった。
(1) 在日米軍基地への自由なアクセスと自由使用
(2) 日本領土内での積極的後方支援(物資・燃料補給、日本の民間施設へのアクセス)
(3) 在日米軍基地の強化。兵器の迅速な修理と機動能力向上を通じ「米国の接近阻止戦略・戦術」の支援
(4) 南西諸島での中国艦船の通過阻止とミサイル配備、台湾島嶼部の防衛と情報収集・警戒監視・偵察活動など、自衛隊の防衛力強化
(5) 米軍事戦略・戦術を直接的に支援する自衛隊の活動(対潜戦、軍用機支援、機雷掃海、台湾付近での水陸両用揚陸の支援)
(6) 日本版の「台湾関係法」の制定と台湾防衛に対する米国支援の明示的関与。
「米軍基地の自由使用」は事前協議?
こうしてみると(1)から(3)までは、比較的「控えめな」要求のように見える。(6)の「日本版台湾関係法」は、安倍ら自民党右派議員が国会提出を目指している。ただ「台湾有事」に伴う要求というより、平時に成立させるべきシナリオだと思う。
「自由アクセス」の法的根拠はどこにあるのか。1960年に改訂された日米安保条約第6条の「事前協議」がその根拠。米軍の軍用機や艦船が「戦闘行動」に直接参加するため在日米軍基地を使う場合、日本の「事前同意」が必要と規定する。具体的には①基地使用②核兵器の配備③1個師団(海軍では1機動部隊)の日本への「配置」「配備」―。ここで重要な点は、事前協議の「発議権」は米国にあり日本にはない。平等ではないのだ。
沖縄や横須賀の米軍基地への「核持ち込み」疑惑は、何度も指摘されてきたが、米国が事前協議を発議したという話を聞いたことがない。「自由アクセス」は1960年以来ずっと事前協議なしに「認められてきた」のであり、「台湾有事」でも協議などしないはずだ。
南西諸島40島が軍事拠点
一方、共同通信は2021年12月23日配信の記事注4 で「共同作戦計画」(写真=計画を報じる沖縄タイムス紙)原案の内容をスクープした、概要を紹介すると、
① 中国軍と台湾軍の間で戦闘が発生し、放置すれば日本の平和と安全に影響が出る「重要影響事態」と、日本政府が認定した場合
② 台湾有事の初動段階で、米海兵隊は自衛隊の支援を受けながら鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置く
③ 軍事拠点候補は、陸自ミサイル部隊がある奄美大島、宮古島や配備予定の石垣島を含む約40の有人島
④ 対艦攻撃ができる海兵隊の高機動ロケット砲システム「ハイマース」を拠点に配置。自衛隊に輸送や弾薬の提供、燃料補給など後方支援を担わせ、空母が展開できるよう中国艦艇の排除に当たる。事実上の海上封鎖になる。
モチズキのシナリオ④と重なることが分かると思う。日米間ではこのシナリオを検証するための演習が、何回か行われていることも付け加えておく。共同作戦計画は「原案」とされ、今後さらに細部の詰めや修正を経るとみられるが、基本的方向に変化はないだろう。
また沖縄を犠牲にするのか
シナリオ通りに作戦が展開されれば、これら移動拠点が中国側のミサイル攻撃のターゲットになり、住民が戦闘に巻き込まれるのは避けられない。計画は純然たる「戦争シナリオ」なのだ。そして本土防衛のための戦争がまた、沖縄を含む南西諸島を舞台に展開される恐れがあるのは明白だ。
1月末、ミサイル配備が予定されている石垣島の平和団体「普通に暮らしたいズ」の求めで、「台湾海峡危機」についてオンラインで話す機会があり、①台湾有事は、日本の軍事力強化とミサイル配備を加速するための、作られた脅威②「戦争シナリオ」が発動されれば、石垣島を含め中国側の攻撃の標的になる恐れがある③中国の最重要課題は体制維持にあり、体制を揺るがす恐れのある台湾侵攻の可能性は極めて低いーの3点を説明した。
説明を聞いたあるメンバーは「恐ろしい事実!でも、安心したような、腹が立つような不思議な感覚」と、率直な感想を伝えてくれた。
「戦争シナリオ」は外交敗北
制服組が「最悪のシナリオを想定して作戦を練るのは当然」という見方がある。一理あるにせよ、戦闘状態を前提にした戦争シナリオの「起動」は、「外交敗北」を意味する。戦争に発展する前に、対話と相互理解を重ね、戦争を回避するのが外交の役割だからである。
中国は台湾統一を「歴史的任務」に設定しているが、統一を急いでいない。少子高齢化の加速で成長に陰りが見える現在、プライオリティは「体制維持」にあり、台湾武力統一はそれを危険にさらす恐れがある。日米が台湾有事を煽る狙いを繰り返せば、①台湾問題で「脇役」だった日本を米軍と一体化させ「主役」にする②南西諸島のミサイル要塞化を加速し、米軍の中距離ミサイル配備の地ならし③中国が容認できない一線を意味する「レッドライン」を引き出す―にある。
ことしは日中国交正常化50年の節目だ。
「聞く耳を持つ」を信条にする岸田氏は、「ハト派」らしい温厚な印象を周りに与える。しかし日米首脳会談と「2プラス2」の結論を見ると、台湾有事を最優先課題に、日米同盟を中国包囲装置にした安倍路線に「前のめり」の姿勢を鮮明にした。
台頭する中国を叩くため米国が仕掛けた米中戦略対立は、バイデンが「民主vs専制」と位置付けたことによって、決着がつかない迷路に入っている。フランスを代表する歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏注5 は、バイデン政権は豪州への原子力潜水艦契約や北京冬季五輪の外交ボイコットを通し「中国との経済的な対立を軍事や外交の領域まで広げている。現在の世界に不確実性を作り出しているのは中国ではなく、米国のほうだ」とみる。
その上で、米中対立構造から「世界が再構成されること自体が脅威」として「新たな冷戦という幻想に巻き込まれてはいけない」と主張する。岸田は米国の「優等生」として、米中対立構造から「世界を再構成」する迷路に差し掛かっている。
(了)
注1 岡田充「分断と対立煽る冷戦思考の舞台 「帝国の落日」際立たせた民主サミット」(海峡両岸論第133号2021.12.16)
(http://www.21ccs.jp/ryougan_okada/ryougan_135.html)
注2 「2プラス2」日米共同発表(2022年1月7日 外務省HP)
(https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/2022/0107a_usa-j.html)
注3 岡田充「中国軍艦の航行阻止、台湾島しょ部の防衛「自衛隊が支援」。米国際政治学者の衝撃シナリオ」(「ビジネスインサイダー」 2021年6月9日)
(https://www.businessinsider.jp/post-236369)
注4 共同通信「 南西諸島に攻撃拠点 米軍、台湾有事で展開 住民巻き添えの可能性 日米共同作戦の計画原案」(「沖縄タイムス」2021年12月24日)
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/884619)
注5 「中国は超大国になれない」 エマニュエル・トッド氏(「日経」2022年1月23日)
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14D8L0U2A110C2000000/)
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もうオリンピックなんか止めたらいいんじゃないでしょうか。
前回や今回に限らず、もうずっと前から、オリンピックは政治の道具以外の何物でも無いでしょう。
オリンピックの政治利用を大々的に始めたのはナチスドイツだというのがほぼ定説化していると思いますが、その点で言えば世界中の大国がナチスの手法を大事に大事に守っていると言えると思っています。
それに、もうスポーツ界に税金を突っ込むのは止めるべきです。
スポーツは大きなエンターテインメントを供給してはくれますが、少なくとも日本においては、所謂体育会系とパワーハラスメントは切っても切れない関係にあります。
体育会系がいなくなれば、パワーハラスメントの7割以上が消滅するのではないかと思います。異常で暴力的な絶対的上下関係、嫌がらせやいじめの横行、飲み会の強制など、体育会系文化はほとんど人権侵害の見本市です。
パワーハラスメントは深刻な人権侵害であり、この元凶である体育会系に税金を注ぎ込むことは、人権侵害を奨励する行為にすらなるのではないでしょうか。中国の人権侵害問題を論じるのも勿論大切ですが、自国の身近な人権問題に対策を取ることも大切。
一度体育会系文化を根絶するためにも、人権後進国日本は30年ぐらいオリンピックをボイコットし続けるのがよろしいかと思います。