【8月15日 AFP】ウクライナは14日、大規模な越境攻撃を続けるロシア西部クルスク(Kursk)州に緩衝地帯を設置すると発表した。また、「人道回廊」も設け、民間人についてはウクライナとロシア双方への避難を認めるという。

 ウクライナは今月6日、クルスク州に奇襲攻撃を仕掛け、数十の集落を制圧。国境の両側で十数万人が避難する事態になっている。ウクライナ当局は、クルスクへの越境攻撃は侵攻するロシア軍に対する自衛行動だと主張している。

 ウクライナのイーホル・クリメンコ(Igor Klymenko)内相はウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領ら高官との会議の後、「クルスク州に緩衝地帯を設けることは、ウクライナの国境コミュニティーを敵からの日々の砲撃から守るための一歩だ」と述べた。

 イリーナ・ベレシチュク(Iryna Vereshchuk)副首相も会議後、「わが軍は、民間人が避難するための人道回廊をロシア側とウクライナ側の両方に設ける計画だ」と述べた。また、クルスク州で国際機関が関与するものを含む人道支援活動も計画しているとも述べた。(c)AFP

 

 

ウクライナ、露西部・クルスク州に「緩衝地帯」 人道回廊設置も計画

燃える車の横を通るウクライナ軍の戦車=ウクライナ北東部スムイ地区で2024年8月14日、AP

 ロシア西部クルスク州に越境攻撃を展開するウクライナ軍は13日夜、同州やその周辺の飛行場などを狙い、無人機などによる攻撃を実施した。ウクライナ側からロシア領内への空襲としては、2022年2月にロシアの侵攻が始まって以来、最大規模だという。

 ロイター通信によると、ロシア国防省は14日、露西部のクルスク、ボロネジ、ベルゴロド、ニジニノブゴロドの4州に襲来したウクライナの無人機117機やミサイルを撃墜したと発表した。

 ウクライナ当局も、各地域にある飛行場の燃料庫や武器庫を狙い、攻撃したことを認めた。ロシア軍の攻撃能力を奪うのが目的とみられる。

 ウクライナ政府高官は14日、クルスク州に「緩衝地帯」を設ける考えを示した。ウクライナ側への攻撃を防ぎ、国境地帯の住民を守る狙いがある。

 また、ウクライナとロシア双方の市民が避難できる「人道回廊」の設置も計画しているという。人道支援物資を提供し、赤十字国際委員会(ICRC)や国連機関の活動も認める。

 ウクライナ軍は6日に国境を越えて以来、ロシア領内を約30キロ進んでいるとされる。ウクライナのゼレンスキー大統領は14日も「複数の地域で1~2キロ前進した」と発表した。ただ、ロシア軍も態勢を整える中、進軍速度は鈍りつつある。【ブリュッセル岡大介】

 

 

ウクライナ軍がスジャ制圧、ロシアが侵攻するポクロウシク戦線では料理人も戦闘に参加

 ウクライナ軍がロシア西部クルスク州で続ける越境攻撃で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日、同州国境の町スジャについて「露軍からの解放が完了した」と述べ、完全制圧したと発表した。

 ウクライナ軍はスジャ周辺を露軍が入れない「緩衝地帯」とすることで、ウクライナ国内へのスジャ経由の攻撃を防ぎたい考えだ。イーホル・クリメンコ内相は14日、越境攻撃について「日常的な敵の砲撃から我々の国境を守るための一歩だ」とSNSで強調した。

 オレクサンドル・シルスキー総司令官は15日、ウクライナ軍がこれまでに82集落、1150平方キロ・メートルを制圧し、スジャに軍政事務所を開設したと明らかにした。支配地域の治安維持や住民への支援物資配布などを行う。ウクライナ政府によると、露軍が住民を支援せずに撤退したため、食料や飲料水、医薬品などが不足しているという。

 一方、ロシアはウクライナ東部の侵攻を優先しているようだ。英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」によると、ウクライナが輸送拠点とする東部ドネツク州ポクロウシク当局は15日、露軍が東方約10キロ・メートル地点まで迫っているとして、直ちに避難するよう住民に勧告した。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ポクロウシク方面ではウクライナ軍の兵士が不足し、軍の整備士や料理人が 塹壕ざんごう に入って戦闘に加わっている。部隊の交代も長期間行われていないという。越境攻撃に戦力を割いたため、予備兵力が足りなくなったとみられる。