パネルというものがどういう風にサギに使えるか。
まずは、前座ということで毎度おなじみのフジサンケイグループ、今回はフジテレビにご登場願います。
憲法記念日 産経新聞が自分の世論調査で、憲法「改正」に賛成41%・反対48%に大いに焦る(笑)
数年前にこういう報道がありました。
警察庁のまとめで2011年の1年間に懲戒処分を受けた全国の警察官と警察職員は、前年比18人減の367人だったけれども、ただ20代の処分者が増加し、同庁は「2000年の警察改革以降に採用した若い世代に心の緩みが見られる」と発表したというものです。
このとき監督責任だった20名を除く347人の年代別では、10代・20代が97人と最多で、次いで50歳以上が94人、30代と40代がそれぞれ78人だったということを、安藤キャスターが伝えているはずなのが、冒頭の写真なのですが。。。。。
良く見ると。。。。。
正面から見やすくした画像。ななな?!
つまり!
ぬおおおおお!
まず、若い10代と20代だけ合算してることも少しズルいことに気づかないくらい、円グラフの中心がずれまくってる!
97人の面積、デカ!
グラフが変過ぎて、78人で同数の30代と40代までおかしなことに!
そんなに若い奴らは悪いと言いたいのか、フジテレビ!!そんなに中高年の味方か、フジサンケイ!!
と、怒ってるふりをしてみましたが、ここまでは序の口。あくまで前座です。
今日の本題は、「歪んだ」グラフやパネルを使って誤った印象を与えるプロなら、フジテレビより、橋下徹大阪市長と大阪維新の会の方が一枚も二枚も上手だというお話です。
たとえば、大阪維新の会のHPにタウンミーティング情報 パネルというコーナーがあります。
橋下市長が大阪「都」構想を説明する維新の会のタウンミーティングで必ず使うパネルの紹介ですが、その一つがこれ。
これはどう見ても、大阪府知事に橋下徹氏が就任してから、大阪府が黒字に転換したという棒グラフです。
これが本当だとしたら就任一年で黒字転換させた橋下氏の手腕たるや空前絶後と言えるでしょう。
しかし、その実態は!?
左が平松前市長時代の大阪市。右が橋下府知事時代の大阪府の債務です。
大阪市ホームページ大阪市と大阪府の借金の状況についてより大阪市と大阪府の負債残高。平松前市長に比べて橋下前府知事がいかに無能かがよくわかるグラフでしたが、橋下市政になってから、ホームページから抹消されました(笑)。
この結果。
日本維新の会の幹事長である松井大阪府知事は、平成24年9月大阪府定例議会の一般質問で、平成23年度の決算見込みで、自治体の財政状況を示す指標の一つ、財政規模に対する実質的な公債費の比率を示す実質公債費比率が18・4%となり、地方債発行に総務大臣の許可が必要な起債許可団体となることを公表しました。
この中で、松井府知事は、今後も同比率の増大が懸念される財政状況にあることを告白しました。で、現にそうなったのですが、この結果は橋下・松井氏両氏ともによくよく知っていたはずなのに、よくもまあ、橋下府政で赤字を減らしただなんて大ウソをついてダブル当選したものです。
というか、彼らはいまだに黒字にした、黒字にした、とウソをついているんです。
黒字になってたら、夕張直前の起債許可団体になんかなるか!
大阪府が起債許可団体に転落 大阪を破産させる経済無策の橋下・松井維新の会に国政進出の資格なし
実際には、橋下・松井と続いた7年間の大阪府政で負債というか府債が増えに増えて、今や6兆4千億円にまで膨れ上がっているのですが、もう一回見ますが、維新のパネルはこうですよ。
でも、実際はこうです。
よく、こんなウソをつくなあと思うのですが、それ以上に驚くのは、こんな嘘のパネルを使うだけじゃなくて、堂々と維新のHPに残していることです。
まあ、住民投票で勝ってしまえば、あとで嘘つき呼ばわりされてもカエルの面に小便って奴なんでしょう。
というか、平松前市長が町内会に賄賂を贈ったと橋下市長が名誉毀損している演説のビデオを、未だにHPで閲覧できるようにしている彼らですからね。遵法意識も違法行為を隠さねばならないという気持ちも全くないのでしょう。
平松前大阪市長が橋下市長を名誉毀損で告訴。完全にアウトで今度は刑事責任が問われる。
そもそも、大阪市の税金を使っての説明会でさえ、橋下市長が住民投票で勝ったら次の大阪市長選挙に出るだの選挙運動をして、公選法違反でまた告発されていましたし。
橋下市長が大阪市主催の大阪「都」説明会で、次期市長選への出馬に言及は税金使っての政治活動でアウト。
そんな橋下市長と大阪維新の会の詐欺的な大阪「都」構想タウンミーティングの内情を暴露したのが、新潮45という月刊誌の5月号。
以下、いくら維新マインドとはいえ、あまりにも強烈です。フジテレビも真っ青。
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来る五月一七日、大阪市で住民投票が行なわれる。多くの人が誤解しているが、これは「都構想」の賛否を問うものではない。住民投票で賛成票が反対票を上回っても、「大阪都」にはならない。では大阪市民に何を問うているのか?
「大阪市を解体し、権限、カネを手放すのかどうか」である。実際、大阪市長の橋下徹本人が「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」(『読売新聞』二〇一一年六月三〇日)と発言している。
四月四日・五日の『産経新聞』の世論調査では、「都構想」に反対する大阪市民が四七・五%、賛成が三六・七%という数字が出ているが、まだ目が覚めていない市民が相当数いるわけだ。
私が橋下を批判すると必ず次のような反発が寄せられる。
「実際、大阪はよくなってきたんや」
「橋下さん以外に大阪の既得権益は破壊できない」
「橋下さんはばらまきの補助金をカットした」
こんな趣旨のメールも受け取った。
「二重行政を解消しないかぎり大阪の未来はない。適菜さん。一度、タウンミーティング(以下TM)に来てください。橋下代表が正しいことがわかると思います」
それならば行ってみよう。三月一五日早朝、私は簡単に荷物をまとめ、JR東京駅から新幹線に乗った。
橋下および大阪維新の会は、現在精力的にTMを行なっている。すでに四五〇回(四月四日時点)を達成。さらに住民投票に向けてペースを速めていくという。
JR大阪駅でタクシーに乗り換え、一〇時五〇分、この日最初のTM会場である此花区民ホールに到着。
開始一〇分前だが、会場の入り口には長い行列ができている。スタッフがたむろする一帯を通り抜けると、そこには昨年の出直し市長選の際、マック赤坂を羽交い絞めにした「大入道」と呼ばれる男がうろついていた。
参加者は老人がほとんど。若者を目にすることはなかった。男女比はおよそ半々か。入場時には、鞄の中身がチェックされ、空港にあるような金属探知機を通らされる。入り口付近で案内をしているスタッフは、普通のおじさん、おばさんであり、悪意があるようには見えない。おそらく橋下が大阪をよくすると深く信じているのだろう。
定員五〇〇名の会場は満席。私は椅子に座ることができず、会場の一番後ろで立ち見することになった。
最初に大阪府議会議員の尾田一郎が挨拶。続いて大阪市会議員の大内啓治が短いスピーチで会場を煽る。
「(都構想の)財政効果はもう無限大と言っていいほどあります。あります!」
壇上脇には左右にSPが二人。さらに椅子席周辺で八人が目を光らせている。
一五分後、満を持して橋下が登場。ニコニコしながら、聴衆に話しかけた。
「すみません、皆さん。おはようございます。こんな政治の話、別段面白くもなんともないと思うんですけど、これだけ多くの皆さんにお集まりいただきまして、本当にありがとうございます」
橋下は聴衆に感謝し、
「もう僕は今、この段階に至りましたから、賛成の立場だけでは言いません。賛成の立場と反対の意見、これを両方出します。そして、どこが考え方の違いなのかということをお伝えします」
とフェアに戦うことを宣言した。
橋下は軽口で笑いをとりながら、会場の空気を読み取っていた。都構想に批判的なジャーナリスト大谷昭宏の悪口を言ってウケると、方向を見定めたようにメディア批判を展開する。
「毎日新聞なんか、本当にどうしようもないです。相変わらずくだらんことばっかり社説で書いてね。ぐだぐだ、メリットがどうだ、こうだ。皆さん、大阪都構想というのは、もう立場の違いの話です。自分はどっちの立場につくのかという話で、細かなメリット、デメリットの話ではありません」
え?
「都構想」とはあくまでメリットとデメリットの話である。だからこそ橋下はメリットは「無限」と言い、大阪維新の会幹事長の松井一郎は「都構想はデメリットがない」(『産経新聞』三月一五日付)と強調してきたのではないか。
橋下は「住民の皆さんの理解を得ることが一番重要だ」と述べる一方で、TMでは「細かい内容を理解する必要はない」と吹聴しているのだ。
■催眠商法の手口
ここからが本領発揮である。
「今の大阪府、大阪市にはものすごい問題、これはもうある。これを解決しないことには大阪には未来がない。これが大阪都構想、賛成の立場」
「今の大阪府、大阪市を前提にしてもいくらでもそんなのはなんとかなるよという立場が、大阪都構想反対派の人たちです」
複雑な事象を単純化し二項対立に落としこむ。
「さあ奥さん。どちらを選びますか?」
というわけだ。橋下は畳み掛ける。
「ここで立場が違うんだから、話し合ったってしようがないわけですよ」
「大阪市という名前、死んでもこれは手放せないという人たちは、大阪都構想反対派です」
「東京を飛び越えてニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、バンコク、そういうところに並んでいく大阪というものを目指そうとする。これが大阪都構想賛成派」
次第に話が大きくなってくる。私の目の前に座っている中年男性二人が、深く頷きながら橋下の話に聞き入っている。催眠商法の手口だ。老人を密室に集めてテンポよく語りかける。
「スポンジ、今日は一円でいいよ」
老人たちは我先にと手を出してスポンジを奪い合う。
「洗剤は一〇円でいい。先着一〇人だ」
老人たちの鼻息が荒くなる。そして我に返ったときには、高額の羽毛布団を買う契約書に判を押しているわけだ。
政令指定都市である大阪市が解体されたら、金欠により都市計画も進まず、ニューヨーク、ロンドン、パリどころか、町や村以下の特別区になるのである。自民党大阪市会議員団幹事長の柳本顕が「毒饅頭」と言うのはこれだ。
「大阪が現状維持でいいというわけではありません。改革すべきところは変えなければならない。しかし、うまい話に飛びつくのは危険です。そこには毒が盛られているかもしれません」(柳本議員)
橋下はヒートアップしていく。
「これからの時代、やっぱりその枠を飛び越えた新しい大阪をつくっていこう。そして今の大阪を考えるんじゃなくて、子供たち、孫たちに二〇年後、三〇年後、四〇年後に新しい大阪を残していこうと考える人たちは、大阪都構想賛成派になります。大体これでどちらの立場に立つかということは決まってしまって、これで賛成、反対になるんです」
もちろん、ほとんどの聴衆は「大阪都構想賛成派」になるのである。
TMに参加して、驚いたことが二つある。一つは橋下の気迫だ。一時間以上一気に喋り倒す。私は聞いているだけで(肉体的にも精神的にも)疲れたが、橋下は喋り倒した上に、この日は五ヶ所の会場を回っている。普通ではない。相当強い動機があるのだろう。
二つ目は内容である。スピーチの構成はよくできており、心理学の手法を応用した巧妙な詐欺である。その場では検証できない数値や嘘を積み重ねていくので、ある程度の教育を受けた人でも事前に情報や知識がなければ騙されてしまう。ましてや地元の老人が橋下の嘘を見抜けるとは思えない。
橋下が毎回のようにTMで使っている「府市二重行政の弊害」というパネルがスクリーンに映し出された。
「WTCビル(現大阪府咲洲庁舎)は住之江区にあります」
「この高さ、二五六メートルです。一方、大阪府がつくったりんくうゲートタワービルは関西国際空港の前にありますが、高さ二五六・一メートル。一〇センチ高いんです、こっちのほうが。大阪府のほうが偉いだろうということで、大阪市よりも高くしたんです」
「同じだけの財布を握っている者が二人いると、結局、張り合うんですよ」
「二重行政」は重要なキーワードである。大阪府と大阪市の二重行政を解消することにより、税金の無駄遣いがなくなり、財源が生まれる。
現在、大阪市会の野党が出している「効果」は約一億円だ。この時点で当初の四〇〇〇分の一だが、さらに制度を移行するための初期投資に約六〇〇億円、年間コストが約二〇億円かかる。「一円儲かるから六〇〇円払ってください」と言うのと同じで、「都構想」とは足し算ができれば誰でもわかる詐欺なのだ。
なお、WTCビルは大阪市港湾局が中心となって計画し第三セクターが建てたもので、単なるゼネコン事業の失敗である。二重行政とはなんの関係もない。実際、大阪府議会で、自民党の花谷充愉幹事長が「こうした施設(WTCビルなど)は特別区でも設置できるのか」と質問すると、大都市局の理事が「特別区で実施できないものではない」と答弁している。
花谷は「二重行政を二度とつくらない大都市制度という宣伝は、有権者を騙すことになる」と指摘していたが、橋下の目的は最初から有権者を騙すことにある。過去の事業の失敗例を恣意的に抽出し、制度の問題にすり替えて批判するわけだ。
橋下は言う。
「なぜ二重行政になるのか」
「大阪府知事と大阪市長、一人一人がいるからです」
「これを一人にしてしまえばいいんです。これが大阪都構想の考え方」
「え、そんな単純なことなのと思われるかもわかりませんが、そうなんですよ」
そもそも、五月一七日の住民投票で問われるのは大阪市を解体するかどうかである。その手続きを記載した『特別区設置協定書』には、「大阪都」「都構想」「二重行政」という言葉は一切出てこない。「二重行政の解消のために都構想を実現する」という話は住民投票とはなんの関係もないのだ。
また、政令指定都市は国内に二〇あるが、二重行政を問題にしているところはほとんどない。『読売新聞』(三月二九日付)が政令指定都市および政令市のある道府県の首長計三三人(大阪市長、大阪府知事を除く)に対しアンケートを行った結果、政令市分割が必要とした首長は一人だけ。
過去に橋下はカジノ議連の席で、
「小さい頃からギャンブルをしっかり積み重ね、全国民を勝負師にするためにも、カジノ法案を通してください」
と発言している。未来ある少年少女を博打漬けにしたいのか?
橋下は言う。
「今から七二年前は東京府と東京市だった。東京でも二重行政だったんです」
「でもこれじゃあ問題だということでね。今から七二年前、一九四三年に東京府と東京市をあわせて一つにした」
「それ以来、東京では七二年間、二重行政ということは誰も言わなくなりました。完全に二重行政はなくなったんです」
もちろん嘘である。当然、東京にも二重行政は存在する。また、東京府市の合併を推進したのは内務省であり、戦時下において住民の自治を奪うことが目的だった。
橋下は続ける。
「これから大阪府と大阪市、ちゃんと話し合いをしなさいよという法律ができました。でもその法律は話し合いをしなさいよというだけなんです。最後、どうしても話し合いがつかない場合には、総務大臣が意見を言います。でも意見を言うまでなんです。従わなくてもいいんです。誰も従うわけありません、そんなもの、国から言われて」
これは驚くべき発言である。
実は此花区民ホールの後に行なわれた住之江区のTMにも参加したのだが、そこで橋下は総務大臣の発言がいかに重いものであるかについて憲法や法律まで持ち出して一通り語っているのである。
「医療・教育・福祉の住民サービスは、大阪都構想で絶対に下がることはありません。その理由の一つは、大阪都構想の設計図に『今の住民サービスは下げない』ときちんと書いてます。これを総務大臣に出して、総務大臣はそれを見て大阪都構想OKと出したんです」
すべてはご都合主義。要するに、総務大臣の発言の価値は、橋下が利用できるかどうかで決まるのである。しかも特別区になれば権限と財源が激減するので、当然住民サービスの質も低下する。
ご都合主義と言えば、以下の事例もそうだ。住之江区のTMで松井一郎はこう語っている。
「僕と橋下市長による関係で今二重行政を撤廃して、広域行政を一元化していますが、これは人によって成り立っている脆弱なものです」
その言葉を受けて橋下は言う。
「今、僕と知事の間では二人でうまく連絡し合ってやっているから二重行政なんかありませんが、それまで大阪市の歴史一三〇年の間、常に大阪府知事と大阪市長が張り合ってきたのが二重行政です」
要するに「オレたちなら話し合いで二重行政は解消できるけど、それ以外は無理」というわけだ。子供かよ。
橋下および維新の会は確信犯である。それを如実に示すのが詐欺パネルの数々だ。まず最初にパネル(1)を見てほしい。
これは「有効求人倍率の改善」の推移を示しているが、グラフの目盛りの幅に細工が施されている。
パネル(2)はグラフの一部を切り取る手法だ。
関淳一市政、平松邦夫市政において大阪市の借金は減り続けていたが、その部分は隠されている。
パネル(3)も同様に目盛りの数値が細工されており、大きな矢印を棒グラフに被せることで「その他」の借金が一気に減ったかのように見せかけている。
公明党大阪市会議員の辻義隆は憤慨する。
「ある意味、橋下市長はTMに集まる維新の会の支持者までバカにしているんです。こうしたパネルを使うのは、典型的なプロパガンダの手法ですよ」
もっともTMや街頭演説では、グラフの細かい目盛りまで見えない。悪質なのは、学者や市民団体がこうしたパネルの細工を指摘しているにもかかわらず、維新の会のウェブサイトに堂々と掲載し、使い続けていることだ。
「大衆は小さな嘘より大きな嘘の犠牲になりやすい。とりわけそれが何度も繰り返されたならば」
とヒトラーは述べている。橋下は「ウソをつかない奴は人間じゃねえよ」(『まっとう勝負!』)と述べているが、五月一七日の住民投票まで徹底的に嘘をつきとおす方針を固めたのだろう。
橋下は「無限」を繰り返す。
「大内先生は無限と言いましたけど、これは無限なんですよ」
「使えるお金がたまっていくんです。だから無限なんです」
「二重行政をやめて、税金の無駄遣いをやめれば、大阪市には税金が入ってくるんですから。だから使えるお金は無限」
無限エネルギーや永久機関のようなうまい話にはかならず裏がある。どんなに荒唐無稽な話でも、騙される人間が存在する限り、詐欺はなくならない。
パネル(4)を見てみよう。
「大阪維新の会ができるまで、大阪市の教育予算てわずか六七億円ですよ」
「(小中学校は)お金がないといってクーラーつけてなくて、何をやったかというと平松さんはゴーヤとヘチマを植えたんですよ。それで涼しくしようとして」
聴衆が笑う。橋下の得意ネタである。
「もう小学校、中学校、クーラーつけましたよ。中学校は全部ついています。小学校はあと一年で全部つきます。それだけで二〇〇億か三〇〇億ぐらいお金かかりました」
また、橋下は子供にタブレット端末を配ったことを自画自賛する。
「まあ見事に子供教育予算を五倍に増やしました。今まで大阪維新の会以前では本当にできなかった」
これも大嘘である。棒グラフに細工が施されているのは他のパネル同様だが、そもそも、平成二三年度の六七億円という数字が嘘なのだ。
平松市政が行なわれていた平成二三年度のこども青少年費は一六八七億円、教育費は九八〇億二二〇〇万円である。平成二六年度の橋下市政では、こども青少年費が一七一三億一九〇〇万円、教育費が八四五億五六〇〇万円。つまり、橋下は一〇八億四七〇〇万円も予算を削っているのである。維新のパネルは「塾代助成」などを恣意的に取り出して作成したものにすぎない。
ちなみに、橋下がクーラーをつけたというのも嘘らしい。前出の辻議員が言う。
「あれは平松市政のときに公明党の漆原良光議員が質疑をして補正予算をつけたんです」
二重、三重、四重に嘘をついているので、橋下本人も自分が何を言っているのかわからなくなってきたのではないか。次に橋下は弁解を始めた。
「七〇歳以上の方は今まで地下鉄・バスが完全無料だった敬老パス、僕が変えました。年間三〇〇〇円と一回五〇円のご負担をいただきましたけれども、これはね、高齢化を迎えるこの大阪において、完全無料はできません」
二〇一一年の大阪市長選で維新の会が撒いたビラにはこう書いてある。
「だまされないで下さい!!」
「大阪市をバラバラにはしません。」
「敬老パスはなくしません。」
騙しているのは一体どちらなのか?
さらに橋下は老人を恫喝。
「いろいろこういうところで話をすると、必ずただにしろという話になるんですが、もう説明するのが最近面倒くさくなってきたので、もうね、そういう方にはもう結構です。維新の会の応援要りません。共産党の応援に回ってくださいというふうに言うようにしているんです」
いつもの手法だ。
「共産党とまで手を組み、悪魔に魂を売ってしまった」
「田中さんがこの世の中で嫌いな人物は松井一郎。わら人形を作って、たぶん五寸釘で打っていると思う」
正常な人間の発言ではない。
橋下の嘘は続く。
「(反対派は)大阪市民の税金が大阪都に吸い上げられるというんです」
「皆さんは大阪市民でもあり、大阪府民でもあるんです。北朝鮮やアメリカに税金持っていかれるわけじゃないんですよ。皆さんが今までね、大阪市役所に預けていた税金を今度は大阪都庁のほうに預け直すと。仕事の担当者を変えるというだけなんです」
住民投票が通れば、大阪市からは確実に年間約二二〇〇億円の税金が流出する。自民党大阪市会議員団政調会長の川嶋広稔がカラクリを説明する。
橋下は言う。
「ところが自民党、民主党、公明党、共産党はこれを取られるという」
「今まで市議会議員がやっていた仕事、これが府議会議員に移るので、取られたと大騒ぎしているんです」
住之江区のTMでは市会議員が「都構想」に反対する理由は、大阪市立大学が大阪都立大学になれば、学長が市会議員のところに挨拶にこなくなるからだと主張していた。もう無茶苦茶だ。
「市会議員は既得権益を守りたいだけの守旧派」というデマを拡散することで、社会に蔓延する鬱憤、悪意、ルサンチマンを吸収し、「空気」を生み出していく。
橋下はラストスパートをかける。
「皆さんの住所も今のまんまです」と言った直後に、「ただ、皆さんはこれから湾岸区になります」と言う。
「東京は大東京としてどんどん発展していますけど、これは全部四〇年前、五〇年前の計画が今、花開いているんですよ」
「大阪の場合には大阪府と大阪市がばらばらで、四〇年、五〇年の計画が全然進んでおりません」
嘘である。一九八二年、府市合同で作った委員会で「大阪を中心とする鉄道網整備構想について」が策定され、これに基づき、両者が路線の整備を進めてきたのである。
パネル(5)も話にならない。堺筋線は阪急で京都に、中央線は近鉄で奈良につながっている。堺、八尾、門真など周辺自治体にもアクセスできる。新たな乗り入れができないのは技術的な問題だ。
最後には、大阪がニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、バンコクと並ぶ大都市になるという話が再び登場し、洗脳プログラムは終了した。
*
橋下は詐欺師である。大阪「都構想」は戦後最大の詐欺である。
橋下が今一番恐れていることは「事実」を大阪市民に知られることである。だから現在、メディアや学者、ジャーナリストに圧力をかけ続けているのだ。
前市長の平松邦夫が憤る。
「ここまで橋下をのさばらせたのはメディアです。橋下の嫌がらせに屈し、言うべきことを言わなくなった。ジャーナリズムの矜持を失ってしまったのです」
現在、大阪で進行中の橋下および維新の会の運動は、全体主義そのものである。冒頭で紹介した世論調査では、橋下の説明を「不十分」とする人は七四・九%と、「十分」の一七・四%を大きく上回っている。ここから読み取れるのは、「都構想」の内容を理解していない「賛成派」が大勢いるという事実である。
ナチスは狂気の集団としてではなく、市民社会の中から出現した。そして「ふわっとした民意」にうまく乗り、既得権益を批判し、住民投票を繰り返すことで拡大したのである。
現在、市民の代表が一度は否決した「特別区設置協定書」が、おかしな力により蘇り、住民投票にかけられる事態が発生している。そこに記載されていない事項の多くは、市長により決定されることになっている。つまりは白紙委任だ。
わが国の危機は目前に迫っている。
五月一七日の住民投票で問われているのは、橋下および維新の会という巨悪から、大阪市ひいてはわが国を防衛できるかどうかなのだ。(敬称略)
***
適菜収
1975年山梨県生まれ。早稲田大学で西洋文学を学び、ニーチェを専攻。著書に『キリスト教は邪教です!』『日本をダメにしたB層の研究』『バカを治す』。最新刊は『なぜ世界は不幸になったのか。』
見ている側の人間にとって、
こんな人たちがこんなヒドイことするわけない、
っていうギャップが一番大きく映る方々が
それを利用してるのが特徴ですね。
引っ掛かる側も、雰囲気で物事を考える方々ですね。
実際、このブログでも橋下支持者らしき人からのコメントを見ますが、中身の主張はありませんからね。何となく、で議論している。中身を理解せずに支持を決め込んでるわけですから、当たり前なわけですが。
何となく、しか議論できないというのは、その基(受け売り)になってる橋下の言ってることが、何となく、な内容だから、ということに気付くべきでしょう。手遅れかもしれませんけど
○10代と20代を合算したのは警察庁でしょうけど、グラフを作ったのはフジのスタッフですよね。どっちもどっちじゃありませんか。
ウソは当たり前らしいですよ。
難しい話なんて誰も望んでないかもよ。