新型コロナが5類となった後の島根県の感染状況を話す感染症対策室の田原研司室長=松江市殿町、県庁
新型コロナが5類となった後の島根県の感染状況を話す感染症対策室の田原研司室長=松江市殿町、県庁

 新型コロナウイルスの感染者が全国的に増加傾向になっている。島根、鳥取両県では今月17~23日に報告された1定点あたりの感染者数が島根10.68人、鳥取19.97人で、前週比それぞれ1.94人、7.28人増加。島根県では5類移行後、初めて10人を超え、鳥取県では、流行情報が注意レベルに達した。今後、お盆の帰省シーズンを迎え、ますます人の移動が活発化していく。今後の感染状況の見通しと、どのような対策が必要か、島根県感染症対策室の田原研司室長に聞いた。
(聞き手は、Sデジ編集部・林李奈)

 ―島根県内の新型コロナウイルスの感染状況はどうか

 新型コロナウイルスがインフルエンザと同じ5類に入り、5月8日以降、感染者数の全数把握はできなくなった。定点観測を続け医療機関からの報告やクラスターが発生した際には情報を発信しているが、感染者数が増加している。多くのPCR検査が有料となり、軽症患者が医者にかかっていない場合を考慮すれば、実態としては第6波(2022年1月~3月末)と同数以上の感染者がいると推測している。

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※図は定点の1医療機関あたりの感染者数の推移(5月8日以降)

 ―実際に毎日のように、クラスターが発生している

 夏休みに入り、学校内でのクラスターの数は少なくなると考えられる。逆に、イベントや部活での感染が増えるとみている。7月下旬のクラスター数は、第8波(2022年11月~2023年5月)の最初の頃と同じくらいだ。しかし、第8波と違うのは、コロナ禍が始まって以降3年間の経験で対策がきっちりととられ、保健所の指導の効果もあり、発生した施設内での抑え込みができ、運営状態に支障が出ていないことだ。
 

夏休みは花火大会などのイベントで人が集まることも多い



―鳥取では新型コロナウイルスが注意レベルに達した

 鳥取県では、定点あたり10人以上感染者が出たため、インフルエンザと同じように注意レベルを出した。20人以上では警戒レベルを出すというラインを設定している。しかし、島根県ではレベルを設定していない。理由は、感染者数ではなく、県民が医療機関にかかれるかどうかを重視しているからだ。

 島根県は高齢者が多い。高齢者施設や福祉関係の業務が停止しないことに一番注力をしている。感染者数でラインを定めていないが、今後、医療が逼迫(ひっぱく)すれば、鳥取と同じように注意レベルをあげる対応をとることも視野に入れる。

━コロナ以外の感染症も流行している

 手足口病、ヘルパンギーナ、RSウイルスも同時流行している。他のウイルスが流行しているため、コロナの感染者数が抑え込まれている。いずれも子どもにかかりやすい病気で、コロナと同じように注意してほしい。この夏は食中毒や熱中症と多くの危険が身の回りにある。コロナと同じく注視していく。

―この夏に注意すべきことは

 夏休みやお盆の時期は帰省やレジャー、夏祭りなど人の往来が活発となる。ウイルスは人が運ぶ。感染者が増えることは自然だ。5類となり、行動制限はなく自由となった。しかし、3密(密閉、密集、密接)の場所に訪れる時は、頭の片隅に感染対策を思い浮かべてほしい。熱中症の危険もあるため、暑い場所でのマスクは不要だが、定期的な換気を心掛けた方がよい。手洗いの徹底や、体調が悪いと感じたら無理に屋外で行動しないなどの対策が必要だ。

手洗いは引き続き徹底したい

 例年お盆までが感染のピークとなっている、この時期の感染者数の推移やクラスター、病床使用率についてしっかりとモニタリングしていきたい。コロナだけではなく他の感染症も流行状態となっているため「感染症と隣り合わせ」という危機感を持って過ごしてほしい。

 

 

 猛暑が続く東京都内で、新型コロナウイルスの感染がじわりと拡大している。感染症の専門家は感染状況を「(感染が急拡大した)昨年11月ごろの第8波の入り口と同規模だ」と説明。これまでと比べて増加の度合いが緩やかな傾向にあり、感染の波が低いまま一定の周期で拡大を繰り返す「エンデミック」の始まりの可能性を指摘している。(渡辺真由子)
 

 エンデミック インフルエンザなどのように、感染症の患者が一定の地域で一定の季節に繰り返し発生すること。通常より多くの患者が一定期間に急に増えるとエピデミックと呼ばれる。さらに患者が地域や国、大陸を超えて広範囲で同時期に発生するとパンデミック(世界的大流行)となる。

◆沖縄で感染急拡大 都内でも可能性

 都の27日の発表では、新型コロナの直近1週間(17~23日)の定点医療機関当たりの患者報告数は、感染症法上の5類移行後で最多の9.35人。都が分析を依頼した専門家は「高齢者などへの感染拡大に注意が必要」とした。
 「全数把握」だった5類移行前と比べて、感染はどの程度広がっているのか。都医師会顧問の猪口正孝医師は「定点医療機関当たりの患者報告数を約860倍にした数が1日の患者数ととらえられる」とみる。
 計算すると、27日公表の1日の患者数(1週間平均)は約8000人で、第8波の入り口の11月上旬と同じ規模となる。
 「現在と第8波が違う点は患者数の増え方だ」と猪口氏。第8波では患者数が11月上旬以降に急拡大し、12月下旬に2万人を超えたが、今は伸びが緩やかで「今後は『エンデミック』となる可能性がある」と説明する。
 ただ、沖縄県では7月上旬に感染が急拡大した。「都内でも第8波で感染した人の免疫力が低くなる。都内でも沖縄のように感染が急拡大する可能性もある」と動向を注視するという。
 24日時点の入院患者は1554人。病床は約3000床確保され、猪口氏は「逼迫ひっぱくはしていない」と話す。
 救急隊が五つの医療機関から患者受け入れを断られるか、20分以上搬送先が決まらない「東京ルール」の適用件数(7日間平均)は148.7件と高い水準のまま前週から横ばいだ。
 原因は熱中症患者の増加にある。気温が高い日が続き、環境省の「熱中症警戒アラート」は29日までに都内で10回発令され、今夏は昨夏全体の10回を超えるのは確実。熱中症で運ばれた患者が新型コロナの検査で陽性となる場合もあり、救急外来では感染対策に人手や時間を要している。
 都は、都新型コロナ相談センター=フリーダイヤル(0120)670440=などの利用を呼びかけている。

◆診察のキャンセル待ちや受診断念の人も

 「診察が追いつかない状況だ」。東京都北区の「いとう王子神谷内科外科クリニック」の伊藤博道院長は、新型コロナ患者対応の現状を語った。1日に100人以上の診察で、発熱などの症状を訴え、検査で新型コロナ陽性が判明する患者は7、8人という。診察のキャンセル待ちや予約できずに受診をあきらめた人なども40人ほどいる。
 「実感としては、第8波のピークに向かって上る中腹くらい」。受診できなかった人の中には、自ら抗原検査で陽性と確認された人や、5日間の療養期間を過ぎても症状が続くと訴える人もいるという。
 これまでの感染者は若年層が中心だったが、7月第2週以降は60代以上の高齢者の感染も増えてきたという。「高齢者の場合は、猛暑で熱中症を併発し、重症化する恐れもある。今後、厳しい局面が来るのではないか」と話した。

 

 

去年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳となりいずれも2年連続で前の年を下回ったことが厚生労働省のまとめで分かりました。厚生労働省は「新型コロナで死亡した人が増加した影響が大きかったのではないか」としています。

厚生労働省によりますと、去年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳で前の年より、女性は0.49歳、男性は0.42歳下回りました。

平均寿命が前の年を下回るのは、いずれも2年連続です。

平均寿命が公表されている世界の国では、女性は1位、男性はスイスとスウェーデン、オーストラリアに次いで4位でした。

また、去年とおととしの平均寿命の差を死因別に分析すると、特に新型コロナや心疾患、それに老衰で亡くなった人の割合が上昇していたということです。

去年、新型コロナで死亡した人は4万7635人で、前の年と比べると3万人余り増加していて、厚生労働省は「平均寿命が前の年を下回ったのは新型コロナで死亡した人が増加した影響が大きかったのではないか。今後、新型コロナの感染拡大が落ち着けば、平均寿命が再び上昇する可能性もあると考えている」としています。