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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

東電OL殺人事件 検察「ただちに再審事由にならず」 DNA再鑑定で別の男性の体液・体毛 当然再審!

2011年07月21日 | 刑事司法のありかた


東電という大会社に勤務する女性のプライベートが何かと話題になった事件ですが、法律的には、強盗殺人容疑なのに、不法滞在で逮捕するのが典型的な別件逮捕で、これだけでも憲法違反である大変なえん罪事件でした。

DNA鑑定のミスでえん罪に巻き込まれた事件としては足利事件が記憶に新しいのですが、今回は、女性の体内から採取された精液のDNA型と、殺害現場から採取された受刑者とは別の男性の体毛のDNA型が一致したことがわかったというのです。


これは決定的です。再審無罪決定でしよう。

だって、被告人のものとされていた、被害者の体内にあった精液と現場に遺されていた体毛が、DNA鑑定で被告人とは別の男性の物だとはっきりしたのですよ。

トイレにあったコンドームに入っていた被告人の精液と被害者の体内にあった第三者の精液。体内の精液はどんどん分解される以上、体内の精液が後に残された物であるのは明らかです。


だいたい、捜査中・公判中に、体内の精液のDNA鑑定をしていなかったというのが信じられません!


これで検察がそれでも被告人の単独犯だったというストーリーをどう維持できるというのか。じゃあ、複数犯なんだろうということにはなりません。だって、これまでの検察のストーリーが全部崩れてしまうのですから。

普通は後から来た第三者が犯人と言うことになるでしょう。


検察の重ね重ねの黒星はまたも検察の威信(まだ、あるとすれば)を傷つけるものです。しかし、いくらなんでも、悪あがきのコメントがひどすぎます。

「ただちに再審事由になるかと言えば、そんなことはない」。

ある検察幹部は現場に第三者がいた可能性を示唆する証拠であることを認めつつ「それで何が言えるかが問題だ」。

別の検察幹部も「そんな大騒ぎすることじゃない」


これでは、検察庁の検事という人種は、普段から合理的な考え方が出来ないのだということになります。せめて、「重大なこととして受け止める」とどうして検察上層部は言えないのか。


異国の地で、14年間もの間、無辜(むこ)の罪で獄につながれていた被告人に、日本という国の,この事件を有罪とした裁判官と検察官を象徴とする司法制度は、どう謝罪するのでしょうか。

東電という、福島原発事故で注目されている企業に被害者が勤めていたと言うことですけれども、またプライベートを云々する報道はつつしむべきです。

この問題の本質は、日本の司法制度のえん罪体質なのですから。

 

 

 

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 東京都渋谷区のアパートで1997年に起きた東京電力女性社員殺害事件で、強盗殺人罪により無期懲役が確定し、横浜刑務所に服役中のゴビンダ・プ ラサド・マイナリ受刑者(44)=ネパール国籍=の東京高裁の再審請求審で、東京高検が被害者の体内から採取された精液のDNA型鑑定を行ったところ、マ イナリ受刑者のものではなく、殺害現場の部屋に残されていた体毛の1本とDNA型が一致したことが分かった。

 確定判決は「第三者が被害者 と現場の部屋に入ったとは考えがたい」としていた。今回、第三者が被害者と現場に入った可能性を示す新事実が判明したことで再審開始の可能性が出てきた。 弁護団が東京高裁に鑑定を要請し、東京高検が専門家に依頼していた。検察側は「有罪主張は変わらない」としている。

 事件では、マイナリ受刑者は捜査段階から公判まで一貫して犯行を否認。しかし、検察側は状況証拠を積み上げて起訴した。

 一審地裁は、現場から受刑者以外の体毛が複数見つかっていることなどから、ほかに犯人がいる可能性を指摘し無罪とした。しかし、二審東京高裁は同じ証拠に基づき無期懲役を言い渡し、最高裁も二審判決を支持した。

 マイナリ受刑者は2005年3月、東京高裁に再審請求。弁護側の要請を受けた高裁が今年1月、現場から採取された精液などのDNA型鑑定をするよう高検に求め、鑑定を進めていた。

 当時、現場には、コンドームに入った精液▽遺体の下にあった体毛4本▽被害者の体内の精液-などが残されていた。

 二審判決は、マイナリ受刑者が部屋のカギを当時保管していたことや、コンドームの精液を自分のものだと認めていること、体毛4本のうち1本が同受刑者のDNA型と一致したことなどから同受刑者の犯行と断定した。

 体毛のうち1本は被害者のDNA型と一致し、残る2本は第三者のものだったが、判決は「第三者による犯行の可能性があるとは言えない」とした。

 今回の鑑定では第三者の体毛の1本と被害者の体内の精液のDNA型が一致した。

 確定判決によると、被害者殺害の約2時間前、被害者は現場近くのホテルでアリバイのある別の男性と性交しており、この精液は証拠として重視されず、DNA型鑑定をしていなかった。

  <東京電力女性社員殺害事件> 1997年3月19日、東京都渋谷区円山町のアパート室内で、東京電力の女性社員=当時(39)=の遺体が見つかり、隣の ビルに住んでいた元飲食店店員ゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者が強盗殺人容疑で逮捕、起訴された。確定判決によると、マイナリ受刑者は3月9日午前0 時ごろ、女性の首を絞めて殺害し、約4万円を奪った。「東電OL殺人事件」として話題を呼び、大企業の管理職だった女性の私生活を暴く報道が過熱した。

(中日新聞)

 

 

 

 

東電OL殺害 別人のDNA検出

7月21日10時23分 NHK

平成9年、東京・渋谷区で東京電力の女性社員が殺害された事件で、検察が被害者の体に付いていた体液と現場に残されていた体毛のDNA鑑定を行った結果、無期懲役が確定したネパール人の受刑者とは別の男性のものであることが分かりました。ネパール人の受刑者は裁判のやり直しを求めていて、裁判所が新たな証拠をどう判断するかが焦点になります。

この事件は、平成9年、東京・渋谷区のアパートで東京電力の社員だった39才の女性が殺害され、現金が奪われたもので、ネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)が強盗殺人の罪に問われました。犯人につながる直接的な証拠がないなか、マイナリ受刑者は一貫して関与を否定し、1審は「犯人とするには矛盾がある」として無罪としました。2審は逆に「状況証拠を総合すると犯行は明らかだ」として無期懲役を言い渡し、平成15年、最高裁判所で刑が確定したため、マイナリ受刑者が裁判のやり直しを求める再審請求を行っていました。関係者によりますと、検察が裁判所の要請を受けて被害者の体に付着していた体液や現場に残されていた体毛のDNA鑑定を行った結果、マイナリ受刑者とは別の男性のものであることが分かったということです。現場からはマイナリ受刑者の体液なども見つかっていましたが、マイナリ受刑者は被害者と会ったのは事件の10日ほど前だったと主張していました。今回の鑑定結果は、マイナリ受刑者とは別の男性が現場で被害者と会っていた可能性を示すものですが、その時間帯などまだ解明されていない点は多く、裁判所が新たな証拠をどう判断するかが焦点になります。

 

 

 発生から14年余りを経て、東京電力の女性社員殺害事件が新たな展開を見せた。事件当日に第三者が現場にいた可能性を示す新たなDNA型鑑定結果は、ネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)の有罪を覆す証拠となるのか。冤罪(えんざい)だと主張する支援者たちが「再審開始に向けた大きな一歩」と期待する一方、検察幹部は「直接無罪につながるものでない」と強気の姿勢を崩さなかった。

 事件発覚は97年3月19日。東京都渋谷区円山町の木造アパートの空き室で女性の絞殺体が見つかった。この部屋を借りる手続きを進め、所有者から鍵を預かっていたマイナリ受刑者が、直後から捜査線に浮上。マイナリ受刑者は同22日、無実を訴えるため警視庁渋谷署に出頭したが、翌日に不法滞在容疑で逮捕された。5月20日には不法滞在で有罪判決を受け、同日中に強盗殺人容疑で再逮捕された。

 97年10月14日の東京地裁の初公判で、マイナリ受刑者は「私はいかなる女性を殺したこともなければ、お金を取ったこともない」と起訴内容を全面否認した。

 東京地裁も現場のトイレから発見され、検察側が有力な物証としたマイナリ受刑者の精液が入ったコンドームについても「犯行のあった日よりも以前に残された可能性が高い」などと指摘。00年4月、「状況証拠はいずれも反対解釈の余地が残っている」と犯人性に疑問符をつけ、無罪を言い渡した。検察側は控訴した。

 しかし、東京高裁は検察側が控訴審で新たに提出した女性の古い手帳の記載などを根拠に「被告の弁解は信用できず、1審判決は証拠の評価を誤った」と結論づけ、00年12月、逆転有罪の判決を言い渡した。

 「神様、やってない」「神様、助けてください」。マイナリ受刑者は日本語で無実を訴えたが、最高裁も03年10月、高裁の判断を支持し、被告の上告を退けた。

 「再審が開始されることに希望を持っている」。マイナリ受刑者を支援する「無実のゴビンダさんを支える会」の客野(きゃくの)美喜子事務局長は鑑定結果を聞き、興奮気味に話した。

 今年3月ごろ、弁護団などから鑑定が進められていることを知らされ、横浜刑務所に収監されているマイナリ受刑者にも直接伝えた。マイナリ受刑者は「良い結果が出るように期待する」と明るい表情を浮かべ、7月15日に面会した際にも「再審が始まれば(無実を証明できる)自信がある」と繰り返していたという。客野事務局長は「この事件はマイナリ受刑者が犯人だという決定的証拠がない。新たな証拠が出た以上、裁判所は一日も早く再審開始決定を出してほしい」と訴えた。

 一方、検察側は「ただちに再審事由になるかと言えば、そんなことはない」と強調した。ある検察幹部は現場に第三者がいた可能性を示唆する証拠であることを認めつつ「それで何が言えるかが問題だ」と指摘。有罪判決は崩れないとの見方を示した。別の検察幹部も「そんな大騒ぎすることじゃない」と強気の姿勢を見せた。【山本将克、山田奈緒】

◇「改めて怒りわく」…「東電OL殺人事件」の著者でノンフィクション作家の佐野眞一さんの話

 初めからずっと冤罪だと思っていたし(有罪の根拠となった)DNA型鑑定もいいかげんだと著書に書いてきた。やっと再審の道が開けてよかったと思うが、有罪判決を出した東京高裁の裁判官は、どう申し開きができるのか。DNA型鑑定を証拠として犯罪者に仕立て上げるという手法は完璧に崩れた。マイナリ受刑者はいま横浜刑務所にいる。奥さんも娘さんも何度も何度もネパールから泣きの涙で日本へ通った。事件から14年の歳月を司法はどう補償するのか。改めて怒りがわく。

毎日新聞 2011年7月21日 14時19分(最終更新 7月21日 15時09分)

 


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4 コメント

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Unknown (小説に・・・)
2011-07-21 21:23:12
当時、いろいろと騒がれていましたが、
そのあと、この事件を題材とした小説とかルポか出ましたよね。ドラマにすらなっていた。

ルポか何かで、捜査の違法性や不可解性を示し、さらに今拘束されている方や、捜査途中で強制送還された方以外の「流しの第三者以外の犯行」を主張されている方がいらっしゃいましたが、それが佐野さんでしたでしょうか?

あぁもぅ二度とこんな冤罪はやめてほしい。
返信する
人種、民族的な国際都市東京都の偏見が見える捜査と検察の差別 (polotics)
2011-07-21 23:23:49
 この冤罪事件については、平成15年頃より支援団体の一つの会員になって、運動に参加してきたが、どうもネパール人マイナリ容疑者に対する、人種ないし民族的、文化的偏見の検察、東京警視庁刑事らによる差別、日本語の未熟さなど、特殊な東京という一種、国際都市にありがちの複合した要因に伴う、偏見によって生じた冤罪で、何よりも直接証拠がない実態に、有罪は刑法処理を誤った手続き瑕疵と、なっている。
 日本人の島国根性を、そろそろ「内向きの文化から開放すべき」刑事問題で、アジア人だからという差別的取扱いを脱却する契機の事件でしょう。
返信する
僕も人種差別を感じます (ray)
2011-07-22 13:15:00
アジア人でなく欧米のアングロサクソンだったらどうだったでしょう。

ネパールでなく、シンガポールの人だったらどうだったのでしょう。

と思います。
返信する
東電OL殺害、受刑者の妻「無実信じている」 (ray)
2011-07-23 15:10:15

2011年7月23日(土)14:34
 【カトマンズ=新居益】東京電力女性社員殺害事件の再審請求審で、無期懲役が確定したネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)以外の第三者が殺害現場にいた可能性を示すDNA鑑定結果が出た問題で、マイナリ受刑者の妻、ラダ・マイナリさん(41)が22日、読売新聞のインタビューに応じた。

 ラダさんは「家族で大喜びした。夫の無実を信じている。近いうちに釈放され、一緒に暮らすことができるはず」と語った。

 首都カトマンズ市内の自宅で取材に応じたラダさんによると、21日午前、家族で朝食を食べている時に、新聞報道を読んだという日本国内の支援者からの電話で、東京高検が行ったDNA鑑定の結果について知ったという。日本の支援者の援助で2001年から今年3月まで計8回訪日し、マイナリ受刑者との面会を繰り返してきたラダさんは、「夫は初めは落ち込んでいたが、私や日本の支援者が定期的に訪問するにつれ、勇気を得てきた」と話した。
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