![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/a4/04aee7015081ae32041426d32c01c322.jpg)
「孫がハリコフで死んでしまったの。地下室に避難したのに、そこに爆弾が落ちて200人が死にました。恐ろしい。私はこれまで誰かをののしったことはありません。でも神様、プーチンに罰を与えてください。こんなことをやっているのだから」
ロシア軍が使用したクラスター爆弾により孫を失った老女。
(2022年3月26日 報道特集より)
これからもぜひ一日一回、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!!!
当ブログに何度も寄稿してくださった青山学院大学の白井邦彦先生が始められたnoteの最近の記事で知ったのですが、ロシアがウクライナに何度もクラスター爆弾での攻撃をしてきたそうで、これに対してウクライナがNATO諸国に自分たちにもクラスター爆弾を供給しろと言っているそうです。
アメリカがイラク戦争で多用して有名になったクラスター爆弾とは容器となる大型の弾体の中に複数の子弾を搭載した爆弾、集束爆弾ということで、一度の投下で広範囲に散布できるため、単弾頭の航空爆弾より広い範囲に被害を与えます。
しかも、この子弾のうちの不発弾が使用後に地雷のように市民に被害をもたらすタチの悪い大量破壊兵器ということで、これを禁止する「クラスター弾に関する条約」(オスロ条約)が2008年に締結され、現在111か国が署名し、80か国以上が批准しています。
ところが、白井先生の同じ記事によるとロシアもウクライナもアメリカも、このクラスター爆弾禁止条約に署名していません。
それでもロシアがウクライナの民間人に対してクラスター爆弾を使用するのは無差別殺戮であり、戦争後にまで残る不必要な苦痛を与える国際人道法違反の戦争犯罪です。
「ウクライナ戦争・即時停戦を-多数の死傷者が出続けることには耐えられない」白井邦彦青山学院大学経済学部教授の特別寄稿。
白井邦彦青山学院大学教授特別寄稿「なによりもまず即時停戦、そして和平交渉へ ーウクライナ政権に軍事支援を行っている国の一市民としてー」
白井邦彦青山学院大学教授特別寄稿「ロシア・ウクライナ戦争の即時停戦・和平交渉による解決を強く訴えます。 ー奪われた領土は取り戻せても、失われた命は二度と戻らないー」
なぜか日本ではロシアによるクラスター爆弾を用いた攻撃のことがあまり報道されないので私も知らなかったのですが、調べてみるとロシアはウクライナに対してとてつもない数のクラスター爆弾による攻撃を、しかも民間施設にしています。
有名な国際人権団体「アムネスティ」は2022年6月の報告書で、ロシア軍が9N210型または9N235型のクラスター爆弾と「散布型」兵器を繰り返し使用している証拠をつかんだとしています。
また同じく有名な「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」がクラスター爆弾による被害や各国の政策をまとめた2022年8月の報告書によりますと、ロシア軍や親ロシア派の武装勢力によって2022年2月から7月の半年間に、少なくともウクライナの24州のうちの10州で合わせて数百!!のクラスター爆弾が使われたとみられるということです。
ロシア軍によるクラスター爆弾の使用対象は病院、住宅地など完全に市民に対する無差別殺戮に使われており、ウクライナ国内では、7月の時点で215人が死亡し、474人がけがをしていて、確認ができたウクライナ側の被害者はすべて民間人だったということです。
これらの人権団体の報告書によるとウクライナ側もロシア軍に2~3回クラスター爆弾仕様の砲弾を撃ち込んでいるそうですが、保有数に圧倒的な差があるので、ウクライナはNATOにもっとクラスター爆弾をよこせと言っているのでしょう。
2023年2月17日のミュンヘン安全保障会議で、ウクライナのクブラコフ副首相はクラスター爆弾の供与を求め
「ロシアはクラスター爆弾を使っている。(我々は)抵抗できない」
と言ったそうですが、確かにロシア軍によって半年間で数百回もクラスター爆弾で民間人が狙い撃ちで攻撃されているとなると、ロシアの使用を抑止するうえでもロシア軍に対抗するためにも、ウクライナ側がクラスター爆弾が欲しいというのは自然だとは思います。
しかし、双方がクラスター爆弾のような大量破壊兵器、しかも戦後も処理に困るような兵器を撃ち合うことになったら、ウクライナ戦争はますます泥沼化します。
ウクライナがロシア軍兵士に使用してもクラスター爆弾の使用は国際人道法に反します。
ですから、レオポルド2という最新戦車の供与を決めたドイツからも、ウクライナのクラスター爆弾供与要求には
「誤った要求だ」(独連邦議会のホフライター欧州委員会委員長)
と批判の声が上がり、NATOのストルテンベルグ事務総長が
「我々はクラスター爆弾を供与しない」
と明言したのは妥当です。
そもそも、ドイツなどNATO加盟国のほとんどがクラスター爆弾禁止条約に加盟しているのですから、NATOの供給拒否は当然の対応だし、その態度が変わることはないでしょう。
ウクライナがNATO加盟国にクラスター爆弾供給を要求し拒否されたことを伝えるロシア国営通信スプートニク。
さて、ロシア軍は2023年3月9日未明、ウクライナを広範囲にミサイルなどで攻撃し、首都キーウで複数の爆発が発生し、一部で停電も起きているとのことです。
南部オデーサ州の知事も州内のエネルギー施設や集合住宅が被害を受けていることを明らかにしています。
そして、東部ハルキウ州の知事は露軍がミサイル15発を州都ハルキウや周辺にある重要なインフラ(社会基盤)施設を標的に発射したことを明らかにしました。
さらに、ヨーロッパ最大の原発であるザポリージャ(ザポロジエ)原子力発電所がロシアのミサイル攻撃を受け、電力供給が停止したと、ウクライナ国営エネルギー企業エネルゴアトムが3月9日に発表しました。
恐ろしいことに
「ザポリージャ原発とウクライナの電力系統をつなぐ最後の系統が切断された」
ということで、ロシア軍の攻撃により5号機と6号機が停止し、10日間分の燃料を持つ18台のディーゼル発電機が電力を供給しているとしました。
まさに欧州最大の原発の外部電源が喪失したわけで、原子炉の暴走、福島原発事故の再来がロシア軍の戦争犯罪によって起こるかもしれません。
IAEAの担当者も「いつか命運が尽きる」と原発攻撃の危険性を訴えている。
このようなロシアが蛮行を続けている状況を客観的に直視すると、やはりロシアは停戦する気などさらさらないし、ウクライナも受け入れるわけがなく、停戦は当面絶対に無理だと言わざるを得ないでしょう。
そもそもロシアのプーチン大統領は停戦協議に応じる前提条件として
「ウクライナがロシアの要求に従い、新しい領土(占領地)の現実を受け入れるならば、ロシアは真剣な対話にオープンだ」
と明言し、ロシアがウクライナの4州を併合した現在の状況をウクライナが受け入れるのが条件だとしています。
このロシアの4州併合も国際法違反であることが明らかな上に、ロシア軍がこれだけ戦争犯罪を重ね、それによりウクライナ市民が徹底的に痛めつけられている現状では、停戦協議をウクライナに強いるのは無理です。
ロシアによる一部地域の併合を受け入れることが停戦条件ではなおさらです。
そして、世界の大半の国はロシア軍が「即時・完全・無条件」に撤退することを求めていますが、もちろんロシアは撤退する気など全くありません。
となると、ロシアの撤退は無理、両国の停戦も無理なことを前提に、国際社会はウクライナへの軍事援助を続けるのか止めるのか、ロシアに対する経済制裁も継続か断念かを決断しなければなりません。
そして、このまままだ戦争が続くことを前提にすると、今NATO諸国がウクライナへの軍事援助やロシアへの制裁を止めると、ロシア軍がウクライナ軍をいずれは圧倒して、ウクライナ兵士と市民を虐殺するのは必定てす。
従って、ロシアへの経済制裁はもとよりウクライナへの軍事援助も継続せざるを得ないというのが当ブログの結論です。
3月になってロシア軍が捕虜のウクライナ兵を殺害する動画が拡散し、またウクライナと国際社会の怒りを呼んでいる。
そして、ウクライナ各州のインフラを攻撃し続けていることから明らかなように、むしろロシア自身が戦争の長期化を望み、それをウクライナ戦争の戦略にしている節があります。
3月8日に開かれたアメリカの上院情報委員会の脅威に関する公聴会で、ヘインズ国家情報局長官やCIAのバーンズ長官、FBIのレイ長官、国防情報局(DIA)のベリア局長、国家安全保障局(NSA)のナカソネ局長ら、アメリカの情報組織の長たちが証言したのですが、その中でヘインズ長官はウクライナ戦争は
「どちらの側も決定的な軍事的優位を持たない過酷な消耗戦」
になっているが、ロシアのプーチン大統領はおそらく何年も戦争を続ける可能性があると述べ、
「ロシア軍が今年、ウクライナで領土を大きく獲得できるほど戦力を回復させることができるとは考えていないが、プーチン氏は時間がロシアに味方すると計算している可能性が極めて高い。
たとえ何年かかろうとも、戦闘の一時停止を含め、戦争を長引かせることが自国のウクライナでの戦略的な利益の確保につながる残された最善の策だと考えているのではないか」
と証言しています。
公聴会で証言するヘインズ国家情報長官=3月8日
このようにロシアは撤退はおろか停戦もする気はなく、一時的に休戦も戦争を長引かせることが目的で、この戦争をまだまだ何年も続ける気です。
だからこそ、ウクライナのインフラを狙って、その体力を削っているのです。
もちろん、これ以上戦禍によって人命が失われないよう、まず現状のまま停戦し、領土問題などはその後に話し合い解決といけばいいのですがそれは無理。
しかも、万一停戦できても、ロシアとプーチン大統領が話し合いになれば領土問題に関して妥協するという保証は当然全くありません。
日本の親露派の代表格である維新の鈴木宗男議員などは、日本がロシアへの制裁をやめればなぜか旧ソ連が違法に占有を開始した北方領土は戻ってくると断言して失笑を買いました。
もちろん、ウクライナ戦争前にあれだけ安倍元首相が貢いでも1ミリも返ってこなかった北方領土が、なぜか今、日本がロシアへの制裁をやめたら返ってくるなどと言うのはおとぎ話に過ぎません。
もう80年近く返ってこない北方領土や、ロシアが奪って併合してから10年近くになるクリミア半島の現状を見ても、とにかくまず停戦して停戦後にロシアと話し合いをすれば併合宣言された領土もなんとかなる、とウクライナの人に思ってもらうのは至難の業でしょう。
そんな鈴木宗男氏全盛時代の外務省の取り巻きで親露派の日本の元外交官東郷和彦氏も即時停戦を主張していて、そのためにはウクライナが
と言い切っています。
お土産とはロシアにウクライナが領土を割譲することなのだそうですが、こんな前提に立っている限り、ウクライナに対してはもとより国際的にも日本国内でも即時停戦論が説得力を持つことはないでしょう。
とにかく残念ながらロシアもウクライナも停戦協議に応じる状況では全くないので、即時停戦を唱えても実現は不可能。
今は停戦は無理で戦争はまだまだ続くのですから、ウクライナ市民の危険が去るまでの間は、ロシア軍によるウクライナ市民の大量虐殺を防ぐために、ウクライナへの軍事援助は続けざるを得ないのです。
ロシアで続く人権弾圧。軍事侵攻から1年目の2023年2月24日、サンクトベテルブルクでウクライナの詩人に献花しようとした市民が数十人逮捕された。
白井先生は最新の記事で、ウクライナがNATOにクラスター爆弾を要求したことと要求するときにクラスター条約を激しく批判したことをもって、ウクライナに対する軍事支援をクラスター条約に参加している国は全部停止せよと主張されています。
しかし、それは公正中立な提案だと国際的に受け止められるでしょうか。。。
白井先生の記事をきっかけに私がロシアによるクラスター爆弾使用の惨状を調べてみると、今回のこの記事で書いたように侵略国ロシアはクラスター爆弾を数百回もウクライナの民間人にばかり使用していました。
これに対してウクライナはクラスター爆弾をくれと欧米諸国に言っただけ。両国のクラスター爆弾への関与度はあまりにもかけ離れています。
また、ロシアからほとんど一方的にクラスター爆弾を病院や幼稚園に何百発も撃ち込まれているウクライナが、クラスター禁止条約について感情的に否定するのは仕方ない気もします。
それでいて、条約を罵ってクラスター爆弾をくれと言ったからとウクライナを罰し、ウクライナに対する軍事支援を米国以外の各国は全部やめるというのはいかにも不公平なので、ヨーロッパの国々もそれはしないと思われます。
それにそうした理由で今すぐウクライナへの軍事援助を止めたら、優勢になったあとロシアがどれだけ残虐な行為をするかわかりません。
また、白井先生は結論として去年の3月の和平案でまとめられると書かれていますが、その時期にはまだロシアがウクライナの4州を併合する宣言をしていないので、全く前提事実が違いますからあの和平案はもう役に立ちそうもありません。
さらにそれから1年間、ロシアがどれだけの戦争犯罪をやったかを考えると、同じ和平案にウクライナが乗る可能性はほとんどなさそうです。
そして何回も書いたように、プーチン大統領はそもそも停戦をする前提はウクライナがロシアの4州併合を認めることだと言っているので、停戦の実現は何重にもとても難しいのではないでしょうか。
これからもぜひ一日一回、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!!!
[ワシントン 6日 ロイター] - ウクライナが国際条約で禁止されている「クラスター爆弾」の供与を巡り米国への要求を強めていることが米下院議員2人の話で分かった。
米下院軍事委員会のジェイソン・クロウ議員とアダム・スミス議員によると、ウクライナはすでに要求している155ミリ榴弾砲向けクラスター弾に加え、無人機(ドローン)などから投下するクラスター弾「MK─20」を要求。ウクライナ当局者が先月行われたミュンヘン安全保障会議で米議員に対しホワイトハウスの承認を得るよう要請したという。
ウクライナは東部でのロシア軍との交戦を有利にするために米国にクラスター弾を要求しているが、MK─20の供与要求が報じられるのは初めて。
ウクライナ国防省は現時点でコメント要請に応じていない。
クラスター弾の製造、使用、保有を禁止する条約は2008年に北大西洋条約機構(NATO)加盟28カ国の大半を含む123カ国によって採択されたが、米、ロシア、ウクライナは署名していない。
2023年2月19日 18:05 (2023年2月19日 21:47更新) [有料会員限定]日本経済新聞
![](https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO3006709018022023000000-1.jpg?ixlib=js-2.3.2&w=525&h=350&auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&q=45&fit=crop&bg=FFFFFF&s=ef6ef90fdfaa98188904330f32d1fd55)
【ミュンヘン=南毅郎、中島裕介】ウクライナへの軍事支援を巡り、欧米諸国が供与する兵器の線引きで選択を迫られている。ドイツ南部で開催したミュンヘン安全保障会議で、ウクライナ政府幹部が国際条約で禁止されている「クラスター爆弾」を要求。ウクライナは戦闘機の供与も求めており、支援を続けてきたドイツで波紋を呼んでいる。
「ロシアはクラスター爆弾を使っている。(我々は)抵抗できない」。ウクライナのクブラコフ副首相は17日、クラスター爆弾の供与を求めた。激しい戦闘が続く東部地域などで、ロシアから国土を奪還するには強力な兵器が必要との訴えだ。
クラスター爆弾は殺傷能力の高い兵器だ。戦闘機などから投下した後に空中でさく裂し、複数の子爆弾を広範囲にまき散らすことで被害を与える。不発弾が民間人に危害を与える恐れがあり、オスロ条約で使用を全面的に禁止した。過去にはイラクやアフガニスタンで使われたこともある。
ウクライナではロシアが幼稚園など民間施設への攻撃に使用したとみられている。ウクライナはオスロ条約を批准していないため「法律的には何の障害もない」(クレバ外相)との立場だ。
欧米諸国が容認するにはハードルが高い。国際条約の理念や人権団体の反対を押し切ってまで使用に踏み切れば、国際社会から批判を招く懸念がある。ロシアの侵攻を受けるウクライナが戦況を好転させるためとはいえ、支援の機運そのものがしぼみかねない。
実際、軍事支援を進めてきたドイツからは「誤った要求だ」(独連邦議会のホフライター欧州委員会委員長)との批判が早くも噴出。独メディアによると、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は「我々はクラスター爆弾を供与しない」と否定した。
戦闘機の供与の是非も焦点だ。ドイツや米国は主力戦車の引き渡しを1月に決めたばかりだが、ウクライナは戦闘機の提供を強く求めている。
英国のスナク首相はミュンヘン安保会議で「他の国が戦闘機をすぐに提供できるなら、英国は喜んで支援する」と踏み込んでみせた。英国はゼレンスキー大統領が2月上旬に訪英した際、英軍によるウクライナ兵への戦闘機の操縦訓練の提供を約束した。
英政府は戦闘機供与を「長期的な選択肢」と位置づけ、否定はしない立場だ。ロイター通信によると、ポーランドのモラウィエツキ首相も、保有する旧ソ連製の戦闘機を「供与する用意がある」と表明した。
一方、ドイツのショルツ首相は「送ることはない」と否定してきた。主力戦車「レオパルト2」の供与を決めた直後から、要求が過熱しないようクギを刺している。
「軍備拡張ではなく軍縮に取り組むべきだ!」。ミュンヘン安保会議の会場周辺では18日、ウクライナへの兵器供与に反対する親ロ派のデモ隊が一斉に押しかけた。逆に支援の拡充を求める別のデモ隊も集結し、ウクライナ国旗を片手に激しい抗議の声が上がった。
欧米諸国は武器供与にどこまで踏み込むべきか。ウクライナがクラスター爆弾に言及するのは、ロシアの侵攻開始から1年でなお激しい戦闘が続いている現実を映す。次回2024年のミュンヘン安保会議を「戦後」の開催とするには課題が残ったまま、19日に3日間の会期を終えて閉幕した。
![Emergency workers at the site of a Russian missile strike in Kyiv, Ukraine, on 9 March, 2023](https://ichef.bbci.co.uk/news/640/cpsprodpb/DB31/production/_128931165_8b16153f2a4dd6a3e4356d9e3053431ca03c7bda0_322_6000_33751000x563.jpg)
画像提供,REUTERS 画像説明, キーウでは救急当局が、ロシアによるミサイル攻撃の被害を受けた車両の対応にあたった(9日)
ウクライナの広い範囲で9日、ロシアによる大規模なミサイル攻撃があり、少なくとも9人が死亡した。80発以上が撃ち込まれた様子で、首都キーウへの攻撃も報告されている。ロシアが支配する南部のザポリッジャ原子力発電所では電力供給が失われたとみられている。
ミサイル攻撃は、北東部ハルキウから南部オデーサ、西部ジトーミルまでの各州に及んだ。また、いくつかの地域で停電が発生した。
ウクライナ軍は、ロシアが81発のミサイルを発射したと発表。ここ数週間で最大規模の攻撃となった。一方で、巡航ミサイル34発と、イラン製ドローン「シャヘド」8機のうち4機の撃墜に成功したとしている。
これほどの規模のミサイル攻撃は、全国で計11人が死亡した1月26日以来。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアが「悲惨な戦術」を再開したと指摘。「厳しい夜だった」と話した。
また、「大規模」なロケット攻撃が重要なインフラや住宅を襲ったものの、エネルギーシステムは復旧し、すべてのサービスが機能していると述べた。
こうしたなか、東部の都市バフムートでは依然、激しい戦闘が続いている。
首都キーウでも爆発
西部リヴィウ州のマクシム・コジツキ知事はメッセージアプリ「テレグラム」で、住宅にミサイルが直撃し、少なくとも5人が死亡したと述べた。
ドニプロペトロウシク州のセルヒイ・リサク知事は、ドローンとミサイルの攻撃により1人が死亡、2人が負傷したと発表した。
キーウ市内では西部と南部で爆発があり、救急隊が駆けつけた。ヴィタリー・クリチコ市長は、集合住宅の中庭で車が炎上しているとし、住民らに避難所にとどまるよう呼びかけた。また、市内の大部分が停電に見舞われており、10人に4人が影響を受けていると述べた。
キーウで取材中のジェイムズ・ランデイルBBC外交担当編集委員は、午前5時50分(日本時間午後12時50分)ごろに「最初に首都で爆発音が聞こえ」、首都の南西部で煙が上がるのが見えたと話している。その際には自分たちもシェルターに避難したものの、その約5時間後にはすでに空襲警報は解除され、市民はいつも通りに歩いて出勤したり、途中でコーヒーを買ったりしているという。
オデーサ州のマクシム・マルチェンコ知事によると、港湾都市オデーサのエネルギー施設も激しいミサイル攻撃を受け、停電が発生した。住宅地も攻撃されたが、死傷者は報告されていないという。
ハルキウ州のオレグ・シネグボフ知事は、ハルキウ市など州内で「15回ほど」の攻撃があり、「重要インフラ施設」と集合住宅が標的になったと述べた。
![People react at the site of a Russian missile strike in Kyiv](https://ichef.bbci.co.uk/news/640/cpsprodpb/15AF7/production/_128932888_72df351ff7bca35042f954168babf81cb63c87c70_241_4138_23281000x563.jpg)
キーウで攻撃の後、集合住宅の前に集まった人たち
原子力事業者エネルゴアトムは、欧州最大のザポリッジャ原発への攻撃で、同原発とウクライナの電力システムを結んでいた「最後のリンク」が切られたとした。
同原発が攻撃を受けたのは、ロシアに占領されて以来、6回目。現在はディーゼル発電機で稼働しており、10日間分の物資が確保されているという。
ザポリッジャ州のロシア支配地域にいるロシア関係者は、ザポリッジャ原発にウクライナ領内から電力が供給されなくなったのは「挑発行為」だと述べた。
このほか、西部ヴィンニツァ、リウネ、中部ドニプロ、ポルタヴァの各州などでも攻撃があった。
数州で被害が出た1月末の攻撃以来、最大の攻撃となっている。当時は多数の建物が攻撃され11人が死亡した。
米情報当局の戦局分析
アメリカのアヴリル・ヘインズ国家情報長官は8日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、何年も戦争を引き延ばすつもりかもしれないとの見方を示した。また、ロシアには年内に新たな大規模攻勢をかけるほどの強さはないとした。
ヘインズ氏はさらに、ウクライナにおける戦争は「双方とも決定的な軍事的優位性をもたない過酷な消耗戦」になっていると分析。
「ロシア軍が今年、領土を大きく広げるのに十分な軍事的回復をするとは思わない。だがプーチンは、時間が自らに有利に働くと計算しているようだ。一時停戦も含めて戦争を長引かせることが、たとえ何年もかかるとしても、最終的にウクライナにおけるロシアの戦略的利益を確保するうえで、残された最善の道だと考えているようだ」と話した。
ヘインズ氏は、ロシアが現在制圧している地域の防衛に転じるかもしれないとも述べた。そして、ウクライナでの作戦レベルを維持するためには、ロシアは追加的な「強制動員や第三者による弾薬の提供」が必要になるだろうと付け加えた。
画像提供,REUTERS 画像説明, キーウ市内ではミサイル攻撃によって車にも被害が出た
ロシアは数カ月前からバフムートの占拠を狙っている。激しい消耗戦となっており、双方が大きな損害を出している。
ウクライナ軍参謀本部は、「敵は攻撃を続け、バフムート市への襲撃をやめる気配はない」、「私たちの防衛隊はバフムートと周辺地域への攻撃を撃退した」とした。
西側当局によると、バフムートの戦闘が始まった昨夏以降、2万~3万人のロシア兵が死傷している。この数字は独自に検証できていない。
公聴会で証言するヘインズ国家情報長官=8日/Mandel Ngan/AFP/Getty Images
(CNN) 米国の情報機関が、ロシアはおそらく米国や北大西洋条約機構(NATO)軍との直接的な軍事衝突を望んでいないものの、衝突のリスクはあり得ると考えていることがわかった。また、ロシアは核兵器への依存を高めているともみている。脅威に関する年次評価報告書で明らかになった。
ヘインズ国家情報長官や中央情報局(CIA)のバーンズ長官、連邦捜査局(FBI)のレイ長官、国防情報局(DIA)のベリア局長、国家安全保障局(NSA)のナカソネ局長が8日、上院情報委員会の脅威に関する公聴会で証言した。
報告書は「ロシアの指導者らは紛争をウクライナ国外へと拡大する行動をこれまでのところ避けているが、エスカレートするリスクは依然大きい」と指摘した。
ヘインズ氏は公聴会で、ウクライナでの戦争が「どちらの側も決定的な軍事的優位を持たない過酷な消耗戦」になっているが、ロシアのプーチン大統領はおそらく何年も戦争を続ける可能性があると述べた。
ヘインズ氏はさらに「ロシア軍が今年、ウクライナで領土を大きく獲得できるほど戦力を回復させることができるとは考えていないが、プーチン氏は時間がロシアに味方すると計算している可能性が極めて高い。たとえ何年かかろうとも、戦闘の一時停止を含め、戦争を長引かせることが自国のウクライナでの戦略的な利益の確保につながる残された最善の策だと考えているのではないか」と説明した。
報告書によれば、ロシアはウクライナでの戦争による「甚大な被害」に対処する中で、今後は核やサイバー、宇宙などの分野の能力により依存するようになる」という。
ヘインズ氏は報告書で、ウクライナでの大きな損失により、地上と空中での従来の戦闘能力が失われ、ロシアの核兵器への依存が増したと指摘している。
鈴木宗男氏「ロシアへの経済制裁やめれば北方領土は返ってくる」 ムネオ節がさく裂
2/25(土) 20:54配信 テレビ愛知
ロシアに対する日本の経済制裁について、参議院議員の鈴木宗男氏は「日本が経済制裁をやめれば、北方領土は返ってくる」と繰り返し主張した。
これは2月25日にテレビ愛知で放送された「激論!コロシアム」で、経済制裁を見直すべきかとの質問に答えたもの。
宗男氏は「ロシアに対して経済制裁はすべきでない、意味もない。それより停戦、話し合いの場を作ることだ」と発言。その上で、経済制裁をやめるメリットについて問われると、「日本の国益に北方領土がある。経済制裁をやめれば、北方領土が返ってくる」と主張した。
宗男氏「総理がウクライナに行ったら日本の明日は厳しくなる」
北方領土交渉は進展せず、解決のめどは立っていない。他の出演者から「ロシアに加担することで本当に返ってくるのか」と念を押されると、「返ってくる! 安倍さんが(2018年に)シンガポールで合意したラインで交渉すれば返ってくる!」と力説。ムネオ節をさく裂させた。
また、岸田総理がウクライナ訪問を検討していることについて、宗男氏は「総理がウクライナに行ったら日本の明日は厳しくなる。日ロ関係は終わる」と、ウクライナに同情的な世論を批判、ロシアとの関係を重視すべきと訴えた。
愛知のニュース