維新の再建を担う吉村洋文代表

「代表になったとたんに、スキャンダルじゃなぁ」と、気の毒そうに話すのは、維新の国会議員。日本維新の会は12月1日に代表選を行い、吉村洋文大阪府知事が新代表に就任したが、早々に身内の“女性スキャンダル”対策に追われることとなった。

 大阪府岸和田市の永野耕平市長が、府内の女性から「性行為を含む関係を強要された」と訴えられ、和解していたことが明らかになった。

 永野市長は2015年に大阪維新の会公認で府議会議員選に出て初当選。18年に維新公認で岸和田市長選にくら替え出馬して当選し、現在市長2期目だ。

 今年11月28日にあった女性側代理人の弁護士の会見や訴状によると、女性は2019年に市長と知り合った直後から強引な誘いを受けて性行為を強要された。21年1月ごろまで何度もホテルに連れていかれたが、「上下関係があり、仕事を辞めさせられるかもしれないと思うと拒み切れなかった」という。女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症して仕事を休職。大阪府警に強制性交罪で被害届を出したが不起訴となり、22年6月に民事提訴した。今年11月14日に、永野市長が女性に500万円の解決金を支払うことで和解が成立したという。

 大阪地裁の和解調書は、永野市長と女性の関係について、

〈被告(永野市長)は原告(女性)の就職や雇用維持を左右し得る優越的な立場にあって、両者の間には社会的な上下関係が自ずと形成されていた〉

 と永野市長が優越的な立場を利用し、女性は応じざるを得ない状況だったと指摘。

〈被告は公人であるとともに配偶者を有する身であることも考慮すると、原告と性的関係を持つことはよくよく自制すべきであったとの非難を免れることはできない〉

 と永野市長の不貞行為をとがめている。

 女性は弁護士を通じてコメントを公表したが、そこでは和解について、こう記していた。

〈これ以上、被告と関わりたくありませんし、裁判を早く終わらせたい思いが強く湧くようになり、諦めたというのが実情です。裁判上の和解をしたからといって、被告を許した訳ではありません〉

〈被告は、最初から最後まで、同意があったと主張していました。泣きながら拒絶する私を、立場(地位)や権力を乱用し、恐怖でおさえつけ、人格否定などの言葉の暴力で精神的に支配し、逃げられないようにすることが同意なのでしょうか〉

会見で女性問題について説明する永野市長

■市長は「辞めるような悪いことはしていない」

 また、府警に被害届を出しても不起訴となったことについては、こうコメントしている。

〈警察へ被害届を提出した当時は、強制性交罪から不同意性交等罪への刑法改正は、まだ施行されていませんでした。もっと早く施行されていれば、永野市長は不起訴にならなかったのではないかと考えることもあり、無念でなりません〉

 弁護士によると、女性はいまもPTSDに苦しみ、社会復帰ができない状況だという。

 これに対し、永野市長は、

「辞めるような悪いことをしたのではない」

「裁判に発展したこと以外の責任は特に思い当たらない」

 などと女性の気持ちを逆なでするような発言を繰り返した。自身のXでは、

〈既に解決済みです。これ以上の報道は僕も含めて双方の当事者とその家族の今後の社会生活を危うくする可能性があります〉

 と報道を控えるよう求める発言もしていた。

 だが、大阪維新の会(代表・吉村大阪府知事)が12月4日、永野市長に「離党勧告」を通告。吉村代表が、

「説明責任を果たすべきだ。しないなら除名処分もありうる」

 と厳しい姿勢を見せると、永野市長は態度を一変した。12月6日の記者会見で、

「一定期間、一般女性と不適切な関係、不倫の関係にあった。心から謝罪させていただきたい」

 と不貞行為について謝罪。優越的な立場にあったと指摘されたことについては、

「対等な人間関係だと思っていたが、世間から見ると年齢や公人ということもあり、上下関係があると言われても仕方ない」

 などと説明した。

 ただし、女性が性行為を強要されたと訴えていることについては、

「交際関係にあったと思っている」

 と否定。

「市民から励ましの連絡ばかりがきている。市民のために尽くしたい」

 と市長職は続投するとした。

 維新は、この説明を受けて市長を除名せず、永野市長の離党届を受理することを決めた。吉村代表は、

「性加害があれば除名だが、それが確認できない」

 と離党勧告の理由を説明している。

 しかし、岸和田市議会は維新も含めた全会一致で、12月20日まで開催予定の本会議や委員会に永野市長の「出席を求めない」と申し入れた。その後、永野市長不在で議会が進むという異例の状態となっている。

 市議会や自身のYouTubeで永野市長を追及してきた岸和田市の高比良正明市議(無所属)はこう話す。

「市長が女性に性加害をした疑いが出た前代未聞のスキャンダル。市民から永野市長に励ましの声はまったくありませんよ。今後、市議会では永野市長の不信任決議が焦点になるでしょうが、維新は反対するので、残念ながら可決されるか厳しいところです」

田淵正文容疑者

■“ミニスカ”選挙運動で話題の元候補は公選法違反容疑で逮捕

 AERA dot.では、これまでも維新の不祥事を取り上げてきたが、維新に所属、あるいはかつて所属した議員や候補者の不祥事は次から次へと出てきて後を絶たない。

 11月30日には、警視庁が10月の衆院選で東京26区から無所属で出馬した医師の田淵正文容疑者を、運動員に報酬を支払う約束をした公職選挙法違反(買収約束)の容疑で逮捕した。

 田淵容疑者は東京大学医学部出身の医師。自身のホームページでは、上皇陛下の内視鏡検査も手掛けたと記載している。

 田淵容疑者は20年4月には東京都の目黒区長選に維新の公認で立候補し、落選した。目黒区長選で維新のスタッフとして田淵容疑者の選対で活動していたAさんは、

「田淵容疑者は、自民党から出馬しようと目論んだがダメで、維新から出ることになった。この前の衆院選も維新公認で出ようと思っていたようですが、意見が合わずに無所属となった。東大出身の医師で、立派な経歴ですが、実際に一緒に選挙をやった経験から言うと、今回の逮捕はやっぱりな、というしかない」

 と打ち明ける。

 田淵容疑者の衆院選の選挙運動は、逮捕前から話題だった。ミニスカートやホットパンツ、網タイツ姿の若い女性運動員がビラを配ったり、選挙カーのはしごを上ったりして、その画像をSNSに繰り返し投稿していたのだ。

 公職選挙法では一部の運動員以外には、選挙期間中の活動で報酬を支払うことができないが、

「最初から、報酬を渡す約束で若い女性を募っていたようだ。ミニスカでビラを配るような活動を若い女性がボランティアでやるなんてありえない。報酬があるはずと、選挙期間中からずっとマークしていたことが立件につながった」(捜査関係者)

 Aさんはこう話す。

「目黒区長選のときも、法を守って選挙をする意識に欠けた人でした。選挙スタッフに『カネをかけてドンドンやろう』と言うので、『選挙違反になるのでできない』とストップをかけると、不満げで嫌そうな顔をしていた。『オレは東大から医師になって上皇陛下も診察したんだ』が口ぐせで、エリートだから少々の違反は許される、特別扱いされるという思い上がりがある人。さすがに維新もヤバイ人物と察知して衆院選では公認を出さなかったと聞いている」

国会で質問する衆院議員時代の椎木被告

■元維新議員は不同意性交罪を認める

 また、12月5日には、東京地裁で維新の元衆院議員・椎木保被告の初公判があった。椎木被告は、東京・新宿のカラオケ店で中学1年の女子生徒に性的暴行を加えた不同意性交罪に問われており、初公判で起訴内容を認めた。

 検察側の冒頭陳述によると、椎木被告は8月に新宿で若者が集まる歌舞伎町の“トー横”で若い女性を物色し、被害者の女子生徒に声をかけた。女子生徒の年齢を確認した上で、金銭と引き換えに性交を持ち掛けたという。

■吉村代表は身内の立て直しが急務

 新代表になった吉村氏は、

「維新を立て直す」

 と代表選で意気込みを語っていた。

 まずは“不祥事のデパート”と揶揄される身内の立て直しが急務ではないか。

(AERA dot.編集部・今西憲之)